株式会社セブン&アイ・ホールディングスおよびその連結子会社(以下、「当社グループ」)では、気候変動問題は企業の持続的な発展に欠かせない安定した社会に負の影響を与えるものと認識し、パリ協定を始めとする国際的方針、日本国が決定する貢献(NDC)や気候変動に関連する法規制(省エネ法や地球温暖化対策推進法等)などの政策を支持し、パリ協定の温室効果ガス削減目標の達成を目指しています。2019年5月に策定した環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』において、「脱炭素社会」を目指すべき社会の姿として掲げ、店舗運営に伴うCO2排出量を2013年度比で2030年までに50%、2050年までに実質ゼロを目標に、省エネ・再生可能エネルギーの利用拡大を進めています。
当社グループ各社は、年2回、グループ共通のリスク分類に基づき、自社のリスクの洗い出しを実施し、影響度・発生可能性を考慮したリスク評価の定量化とともに、各リスクへの対応策をリスク調査票にまとめてセブン&アイ・ホールディングスガバナンス統括部(リスクマネジメント委員会事務局)へ提出しています。このリスク調査票には、CO2排出規制、昨今の大型台風などによる事業継続リスク、さらには、商品原材料の生産地・漁場の変化など、定量面だけでなく定性面も含めたリスクなども含まれています。
年2回開催されるリスクマネジメント委員会は、グループ各社から提出されたリスク評価と対策をもとに、グループのリスク状況を網羅的に把握し、重大性・改善の喫緊性などの観点から、各社のリスク管理・改善の取り組みに対するモニタリングを実施しています。
こうしたリスク管理の状況は原則、年1回、セブン&アイ・ホールディングス取締役会に報告が行われています。 セブン&アイ・ホールディングスおよびグループ各社では、経営環境およびリスク要因の変化を踏まえ、各事業におけるリスクを適正に分析・評価し、的確に対応するため、リスク管理の基本規程に基づき、リスクマネジメント委員会を中核とする統合的なリスク管理体制を構築・整備・運用しています。気候変動に関わるリスクについても、この統合的なリスク管理体制のもとで管理しています。
リスクマネジメント委員会は、各リスク管理統括部署より自社のリスク管理状況に関する報告を受け、リスクの網羅的な把握、その評価・分析および対策について協議し、今後の方向性を定めています。また、こうしたリスク管理の状況を原則年1回、セブン&アイ・ホールディングス取締役会に報告しています。
近年は、当社グループの内部環境の変化に加えて、CO2排出規制、大型台風、商品原材料の生産地・漁場の変化などの気候変動関連リスクの高まりなど、外部環境の様々な変化による事業活動への影響が大きくなっています。2023年度には、これらの変化に対応するため、短期的なリスクだけでなく、中長期的なリスクも考慮に入れ、リスク管理の仕組みを見直しました。リスク評価プロセスにおいては、 リスクが顕在化した場合の業績に与える影響度の評価観点として、これまでの定量的な要素に、事業継続やグループのブランドイメージの毀損などの定性的な要素を追加することで、各種リスクの評価・分析の多角化・高度化を図っています。 また、各種リスクを重要性、共通性等の観点から優先度の高いリスクを特定し、セブン&アイ・ホールディングスとグループ各社における役割と責任を明確化することで、グループ全体のリスク管理の実効性を高めています。
当社グループの各店舗では、常に天気・気温の変化に関心を持ち、毎日の発注や売場作りに反映しています。また、商品開発・品揃えにおいても、数カ月単位の天気の変化を踏まえた仮説を立て、お客様のニーズに合致した商品の提供に努めています。同様に、気候変動による異常気象や気温の変化によるお客様の購買行動の変化に対しても、きめ細かく対応していきます。
また、イトーヨーカ堂による環境循環型農業「セブンファーム」は、収穫した農作物を規格外も含めて商品を買い取っているため、市場の動向に影響されずに仕入れ、販売することができるなど、商品の安定調達という側面も持ち合わせています。
加えて、セブン&アイ・ホールディングスでは、最近国内で多発している豪雨や土砂災害など、突発的な気象現象による災害に備えた体制を整備しています。例えば、緊急時の対応方法をまとめた冊子を社員へ配布しているほか、テレビ会議システムなどを利用した模擬訓練を定期的に開催しています。また、グループ内にある情報を集約するだけでなく、お取引先様などと協力して、災害情報の提供・共有・共用ができるシステム「7VIEW」(ビジュアル・インフォメーション・エマージェンシー・ウェブ)の構築に取り組んでいます。
気候変動への緩和策については、店舗での省エネ、再生可能エネルギーの使用、日本国内での森林整備活動など、環境負荷の低減に係るさまざまな取り組みを行っています。
「セブンファーム」の展開状況
| 2022年2月末 | 2023年2月末 | 2024年2月末 | 2025年2月末 |
|---|---|---|---|
|
日本全国12カ所 (合計 約250ヘクタール) |
日本全国11カ所 (合計 約250ヘクタール) |
日本全国11カ所 (合計 約250ヘクタール) |
日本全国11カ所 (合計 約250ヘクタール) |
当社グループ各社が排出するCO2排出量の約9割は、店舗運営のための電気の使用に由来しています。そのため、事業の拡大や店舗数の増加に伴い、CO2排出量が増加しないように、店舗運営に伴うCO2排出量を、2050年までに実質ゼロにする目標を定め、目標達成に向けて「省エネ」「創エネ」「再エネ調達」の3本柱を重点的に取り組むことを方針に、CO2排出量の削減を進めています。
当社グループ各社では、店舗における電気使用量削減と、従業員への環境教育、意識向上を促すために、従業員とともに店舗での省エネ活動を推進しています。
例えば、セブン-イレブンでは店舗での「省エネ対策重点6項目」を定め、全国の店舗従業員に省エネ活動への取り組みを呼び掛けています。合わせて、各店舗では従業員の中から省エネに関する目標設定や取り組みを進める「省エネリーダー」を選任し、組織的な推進体制を整備しています。これらの店舗での活動については、OFC(オペレーションフィールドカウンセラー:経営相談員)が電気使用量に関する分析ツールを使用して確認・検証し、加盟店との日頃のコミュニケーションの中で省エネにつながるカウンセリングを実施しています。
また、イトーヨーカ堂では、ポスターなどで従業員へ省エネ活動を周知するなど、各社の事業特性に合わせた取り組みを行っています。
このように、店舗における電気使用量の削減を最優先に行うことで、CO2排出量の削減を進めています。
店舗や事業所での省エネ促進とグループ内での好事例拡大を目的に、2023年からグループ横断※1による「省エネコンテスト」を実施しています。グループ各社の店舗で実施した省エネ活動を募集し、チーム力・アイデア・継続性・各社オリジナルの取り組み(各社特性・地域与件など)の項目で、セブン&アイ・ホールディングス代表取締役および参加各社の代表取締役社長が審査を実施し、毎年2月に、セブン&アイ・ホールディングス代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会で、社長賞を受賞した店舗・従業員を表彰しています。
当社グループ各社では、店舗の増加や大型化、商品・サービスの拡充に比例した環境負荷の増加を抑制するために、新店オープンや既存店の改装に合わせ、LED照明や太陽光発電パネルなどの省エネ・創エネ設備の導入を進めています。店舗での省エネの推進は、エネルギー使用に関わるコストの削減にもつながります。
例えば、セブン‐イレブン・ジャパンでは、環境に配慮した店舗づくりを推進するために、店頭看板や店内照明、サインポールなど、あらゆる照明のLED化を進めています。加えて、太陽光発電パネルの設置も進めています。イトーヨーカ堂は、全店舗にLED照明を導入し、太陽光発電パネルの設置を進めています。ヨークベニマルも太陽光発電パネル導入店舗を拡大し、再生可能エネルギーの利用拡大に取り組んでいます。
太陽光発電パネル設置店舗数
| 事業会社 | 2022年2月末 | 2023年2月末 | 2024年2月末 | 2025年2月末 |
| セブン‐イレブン・ジャパン | 8,775店舗 |
8,823店舗 |
8,962店舗 |
9,025店舗 |
| イトーヨーカ堂 | 19店舗 |
23店舗 |
23店舗 |
26店舗 |
| ヨークベニマル | 21店舗 |
42店舗 |
85店舗 |
113店舗 |
| デニーズジャパン | 4店舗 |
4店舗 |
4店舗 |
4店舗 |
LED照明
太陽光発電パネル
セブン‐イレブン・ジャパンは、エア・ウォーター株式会社が開発した垂直ソーラー発電システム「VERPA(ヴァルパ)」による、積雪地域の店舗における太陽光発電の有効性に関する実証実験を2024年8月から開始しています。実証実験の結果、さまざまな有効性が認められれば、エリア拡大および追加設置によってCO2排出量のさらなる削減を推し進めていきます。
当社グループの環境宣言『GREEN CHALLENGE2050』に基づき、店舗運営に伴うCO2排出削減の取り組みの一環として、2020年7月より、イトーヨーカ堂が運営する「アリオ市原」にて、 大規模な太陽光パネルによる発電システムを稼働しました。この取り組みは、「アリオ市原」のスペースの有効活用の一つとして、その屋上部分に太陽光パネルを敷設し、店舗の使用電力の一部として活用するものです。今回「アリオ市原」全体の電力使用量の約25%を太陽光パネルによる発電で賄うことが可能となり、それに伴い使用電力におけるCO2排出量も約25%削減することができます。
「アリオ市原」の大規模太陽光パネル
セブン‐イレブン・ジャパンは、2023年6月から埼玉県三郷市の三郷彦成2丁目店において、次世代の技術を取り入れて従来のCO2排出量削減の効果を大幅に向上させる実証実験を始めました。
まず、“創エネ”をするために複数タイプの太陽光発電設備を設置。従来使われてきた店舗の屋根に設置するタイプのものに加え、駐車場型太陽光発電設備、店舗の窓ガラスに貼るカラーシースルー色素増感太陽電池、店舗壁面に設置するペロブスカイト太陽電池などを導入しました。また、“省エネ”をするために新型冷凍冷蔵設備や新除霜制御。さらに、複層ガラスやLED照明などの技術も組み合わせることで、2013年度と比較して購入電力量は約60%減、CO2排出量は約70%の削減を見込んでいます。
セブン‐イレブン・ジャパンは、岩谷産業株式会社と水素ステーションの店舗併設に関する包括合意書を締結しています。2017年3月に宮城県仙台市に併設店舗を開店し、すでに設置済みの東京都大田区池上と愛知県刈谷市の併設店舗と合わせ、合計3店舗(2025年度2月末)を運営しています。水素ステーションを併設したセブン-イレブン店舗においては、純水素型燃料電池を設置しており、小売店舗における水素活用の将来性について検証しています。 地域に根差した「商品」「サービス」「クリーンエネルギー」を1カ所で提供することができる社会インフラとしての拠点づくりを目指します。
水素ステーション併設のセブン‐イレブン大田区池上8丁目店
セブン&アイ・ホールディングスと日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、当社グループの店舗運営における使用電力の100%再生可能エネルギー化の実現を目指し、2021年4月から順次、国内初※1のオフサイトPPAによる電力とNTTグループが所有するグリーン発電所からの電力を一部店舗に導入しています。この取り組みによって、セブン‐イレブン40店舗とイトーヨーカドーアリオ亀有の店舗運営の100%再生可能エネルギー使用を目指します。
オフサイトPPAとは、需要場所から離れた場所に発電設備を設置し、発電電力を需要場所に供給するモデルです。今回はNTTアノードエナジー株式会社が2つの太陽光発電所を設置し、送配電網を介して電力供給※2をします。このように事業者が電力消費者である企業・自治体専用の再生可能エネルギー発電所を遠隔地に設置し、その電力を長期間供給するオフサイトPPAは、国内初の取り組みとなります。また、オフサイトPPAだけでは不足する部分を、NTTグループが所有するグリーン電力発電所を活用することで、店舗運営に使用する電力を100%再生可能エネルギー化します。
オフサイトPPAの仕組み(略図)
当社グループは、セブン‐イレブン、イトーヨーカドー、ヨークベニマル、デニーズなどの店舗に電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド自動車(PHV)用充電器を設置し、有料充電サービスを提供しています。2025年2月末現在、グループ全体で約350店舗に設置しています。商業施設としての利便性の向上を目指すとともに、お買物のついでに充電していただけるEV・PHVの利用スタイルの確立や、環境配慮型の次世代自動車の普及促進による脱炭素社会の実現に貢献していきます。
電気自動車用充電器
セブン‐イレブン・ジャパンは、店舗経営相談員であるOFC(オペレーションフィールドカウンセラー)が各店舗を訪問する際に使用しているリース車両を順次、ハイブリッド車へ切り替えています。
ハイブリッドリース車の導入状況
| 2023年2月末 | 2024年2月末 | 2025年2月末 | |
| ハイブリッド車 | 4,182台 |
3,941台 |
4,028台 |
| 比率 | 98.2% |
99.8% |
99.9% |
セブン銀行は、従来のATMよりもさらに消費電力量を抑えた新型ATM(第4世代ATM)を、2019年9月から順次導入しています。第4世代ATMは、第2世代ATMよりも消費電力量を48%削減した第3世代ATMに対して、さらに消費電力量を約40%削減できます。
2024年度に全入替・設置を完了し、2025年3月末時点で設置している約28,000台のすべてが新型ATMとなっています。その結果、新型ATM導入前(2019年3月末)と比較して、ATM台数は約3,600台増加しましたが、CO2排出量は約3割も削減しています。
新型ATM(第4世代ATM)導入台数
| 2022年3月末 | 2023年3月末 | 2024年3月末 | 2025年3月末 | |
| 新型ATM(第4世代ATM)導入台数 | 約10,000台 |
約13,400台 |
約19,700台 |
約28,000台 |
ATMの消費電力量の推移