気候・自然関連情報開示 -TCFD・TNFDへの対応-

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2025年9月8日(月)​

気候変動(TCFD)・自然資本(TNFD)への対応についてまとめた「気候・自然関連情報報告書-TCFD・TNFD統合開示-」を発行しました。​

1. 気候変動・自然資本に対する考え方

株式会社セブン&アイ・ホールディングス(以下、「当社」)およびその連結子会社(以下、「当社グループ」)は、重点課題3「地球環境に配慮する、脱炭素・循環経済・自然と共生する社会を実現する」と定めて取り組みを推進しています。具体的には、環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』において、「CO2排出量削減」、「プラスチック対策」、「食品ロス・食品リサイクル対策」、「持続可能な調達」の4分野の2030年、2050年の目標と目指す姿を定め、気候変動・自然資本に関する取り組みを行っています。

気候変動に関しては、2019年からTCFDに賛同し、TCFD提言に基づいた分析を開始し、情報開示を行ってまいりました。また、自然資本に関しても、2023年1月にTNFDフォーラムに参加し、2024年3月TNFD Adopterに登録、2024年9月に初めてTNFD提言に基づいた情報開示を行いました。

2025年9月には、気候変動と自然資本は相互に影響し合っており、その関係性を認識し、統合的に対応することが不可欠であるとの認識のもと、両者を統合的に分析・開示する「気候・自然関連情報報告書-TCFD・TNFD統合開示-」を公開し、ステークホルダーの皆様にわかりやすい情報開示に努めています。


●自然資本方針の策定

2024年10月には、従来の自然資本・生物多様性に関する考え方・取り組みを再確認し、改めて当社グループがネイチャーポジティブ実現のために積極的に取り組む姿勢を明確にする目的で、「セブン&アイ・ホールディングス自然資本に関する方針」を策定しました。方針の策定にあたっては、SBTs for Nature*で示されたAR3Tフレームワーク(「回避(Avoid)」「削減(Reduce)」「回復(Restore)・再生(Regenerate)」「変革(Transform)」)を踏まえて、当社グループがネイチャーポジティブ実現に向けて取り組むステップをまとめました。

※ SBTs for Nature:科学に基づく自然関連目標設定。企業や都市が科学に基づいて自然関連目標を設定することを促すフレームワーク、技術的ガイダンスのこと


セブン&アイ・ホールディングス自然資本に関する方針(主な項目)

  1. 1自然との関わりを把握するよう努めます
  2. 2自然の恵みを大切にし、自然に与えるネガティブな影響を回避・最小化します
  3. 3自然環境や生物多様性の回復・再生に貢献します
  4. 4イノベーションを取り入れ、あらゆるステークホルダーと自然に貢献する価値を共創します
  5. 5透明性の高い、信頼される誠実な開示・報告に努めます

2. ガバナンス

当社では、取締役会の監督と、代表取締役会長を委員長とするサステナビリティ委員会および傘下の関連する部会によって、気候変動や自然資本を含むサステナビリティの取り組みを推進しています。(2025年9月時点)

3. リスクと影響の管理

リスク管理の基本規程に基づき、リスクマネジメント委員会を中核とする統合的なリスク管理体制を構築・整備・運用しています。サステナビリティに関わるリスクについても、この統合的なリスク管理体制のもとで管理しています。 

4. 戦略

(1)分析の前提

以下の前提に沿って、気候変動・自然資本に関するリスク・機会の分析、対応策の検討を行いました。

項目 分野

内容

開示スコープ 気候

国内コンビニエンスストア事業(以下、「国内CVS事業」)、海外コンビニエンスストア事業(以下、「海外CVS事業」)を対象に、店舗が直接受ける物理的な影響に加え、店舗運営に伴って発生するコスト、店舗運営に大きな影響を与える商品のサプライチェーン(原材料・商品製造工場・商品配送等)やお客様の行動について、シナリオ分析を実施し、特定した気候変動のリスク・機会・対応策を開示。

自然 当社グループの事業と自然との関連を評価し、当社グループが「食」を中心とした事業を展開していることから、今回の評価では「農産物」に関連するリスク・機会と対応策を開示
シナリオ 気候

IEA「World Energy Outlook」で示されているSTEPS、APS、NZE2050などのシナリオをはじめとして、政府や国際機関が発行した将来予測に関するレポートなどを参考に、「脱炭素シナリオ(1.5℃~2℃)」と「温暖化進行シナリオ(2.7℃~4℃)」の2つのシナリオを設定。2030年時点の事業成長率も加味する。


●脱炭素シナリオ(1.5℃~2℃)

1.5℃目標達成に向けてさまざまな法律や規制の導入が進み、その対応コストによる店舗運営コストの上昇やポートフォリオの多様化が求められる世界を想定。


●温暖化進行シナリオ(2.7℃~4℃)

自然災害の発生増加や甚大化、気象パターンの変化が顕著に表れ、店舗などへの損害や原材料調達への影響、また、気温上昇による店舗での冷房コストの増加などが予測される世界を想定。

自然 TCFD分析で想定した2つのシナリオのうち、「温暖化進行シナリオ(2.7℃~4℃)」の範囲に収まる複数の外部環境パターンを想定。
時間軸 気候 環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』の中間目標設定時期である2030年時点の影響を基本に、海外CVS事業では、短期(0~5年)、中期(5~10年)、長期(10~30年)の時間軸でリスク・機会・対応策を検討。
自然 調達の成否を左右する長期トレンドを捉えるため、リスク・機会が顕在化する時間軸である2050年を対象期間として設定し、TCFD分析の対象期間と同じ2030~35年を短期的なターゲットとして、具体的な対応策を検討。

(2)気候変動・自然資本関連のリスクと機会

分析により把握した、気候変動・自然資本に関する主なリスクおよび機会は、以下の通りとなりました。

●認識した主要なリスク

リスクの項目 分野 対象 想定シナリオ 認識した重要なリスク
物理的リスク 急性 気候 直接操業 温暖化進行シナリオ ・深刻な自然災害の発生頻度や強度が強まり、店舗被害や商品損害、サプライチェーンの混乱、店舗へのアクセス遮断、休業による売上損失、またその復旧費の発生等で損害額が増加
気候 原材料 ・降水、気象パターンの変化により、サプライチェーンの混乱の発生、サプライチェーン上の水リスクの増大、商品原材料の収穫量減少に伴う商品原価の上昇
慢性 自然 原材料 ・降水、気象パターンの変化および病害虫発生による収量減少・品質低下により、商品原材料の原価上昇や、自社調達担当者の調達に係る労働時間増加による調達コストや人件費の増加
移行リスク 政策 気候 直接操業 脱炭素シナリオ ・世界的な排出量規制や炭素税などのカーボンプライシング導入により、店舗運営にかかるCO2排出量に対してのコスト負担や、サプライチェーンでのコスト増加による商品等への影響が発生
気候 直接操業 ・(海外CVS事業)製品廃棄物規制による拡大生産者責任(EPR)関連コストの増加(中期)
市場 気候 直接操業 ・再エネ導入などに伴う電力小売価格上昇で電気料金支払い増加
気候 直接操業 ・(海外CVS事業)消費者の嗜好の変化、新技術の採用、燃料効率の改善により、特に脱炭素シナリオにおいて石油系燃料の需要が減少し、石油系燃料からの収益が減少(長期)
気候 直接操業 温暖化進行シナリオ ・世界的な気温上昇に伴う冷房運転・冷凍冷蔵設備運転コスト上昇
評判

気候

自然

直接操業 ・気候変動による調達量の不足や原材料の品質低下によって、商品品質の維持が困難となり、ブランド価値低下や顧客満足度が低下
自然 原材料 ・環境・人権に配慮しない原材料調達(例:森林破壊、先住民族・地域住民の土地環境破壊・利権侵害、児童労働・強制労働など)を行うことによるレピュテーションリスク発生による売上減少
賠償責任 自然 直接操業

・自然環境関連の規制への対応コストの増加や、対応不十分であることによる罰金・罰則


●認識した主要な機会

機会の項目 分野 対象 想定シナリオ 認識した重要な機会

ビジネス

パフォーマンス

市場 気候 直接操業

温暖化進行

シナリオ

・夏季の高温によりお客様の外出頻度が低下し、お届け事業・ECサービスの需要が増加
自然 原材料 ・サステナブルな代替品の活用や、これまでと異なる品種を活用した新商品開発による新規市場の開拓

市場

評判

気候

自然

直接操業 脱炭素シナリオ ・消費者のサステナブル商品やサービスへの関心が増加

市場

評判

資源効率

気候 直接操業

脱炭素シナリオ

温暖化進行

シナリオ

・規則の強化や消費者の嗜好の変化により、EV充電の需要増加
自然 原材料 ・農家との直接取引の拡大および長期的なパートナーシップ構築による安定供給体制の確立
気候 直接操業 脱炭素シナリオ ・(海外CVS事業)エネルギー効率化対策に投資することで、エネルギー使用量を全体的に削減(中期)

サステナビリティ

パフォーマンス

資源効率

自然資源の

利用・保護・

復元・再生

自然 原材料

温暖化進行

シナリオ

・農家への再生農業(リジェネラティブ・アグリカルチャー)等の導入支援による生物多様性の保全活動を通した生態系サービスの向上および各原料の収量・品質の向上、安定化

(3)気候変動

1. 気候変動に関わるリスク・機会と財務影響

2019-2021年度にセブン‐イレブン・ジャパン(以下、「SEJ」)を、2023年度に7-Eleven Inc.(以下、「SEI」)を対象としてシナリオ分析を行い、上記の「認識した重要なリスク、機会」に記載されている12の主なリスク・機会を特定しました。なかでも脱炭素シナリオにおいては「炭素税の課税」が、温暖化進行シナリオにおいては「自然災害による被害」「原材料原価の上昇」が、特に2030年における財務影響が大きいリスクとなりました。


●財務影響の試算

・脱炭素シナリオ:炭素税の課税

277億円

・炭素税額:135ドル/トン-CO2(IEA「World Energy Outlook 2022」において想定される最大の金額)

・為替レート:150円/1ドル(2025年2月28日現在のおおよその為替レート)

※277億円の内訳:国内CVS事業-144億円、海外CVS事業-133億円

・温暖化進行シナリオ:自然災害による被害(SEJ)

111.9億円

・SEJ首都圏店舗の洪水被害(荒川の氾濫を想定)を試算。

・過去の洪水被害の実績から試算。被害の程度を把握するため、保険適用を考慮せずに試算

・温暖化進行シナリオ:原材料原価の上昇(SEJ)

57億円

・気候変動により収量が低下したことのみによる原価上昇を試算

・資産対象はSEJの仕入れ金額構成から「米、海苔、畜産物(牛肉、豚肉、鶏肉、卵)」を選定

※57億円の内訳:米-22.3億円、海苔-19.3億円、畜産物(牛肉、豚肉、鶏肉、卵)-15.4億円

2. 気候変動に関わるリスク・機会の対応策

特定した12の主なリスク・機会については、リスクの低減、機会の最大化のための対応策を検討しました。

検討を通じて、脱炭素シナリオ、温暖化進行シナリオともに、『GREEN CHALLENGE 2050』に基づいて進めている環境負荷低減活動が、有効な対策であることが確認できました。


●主な対応策

シナリオ

対応策(例)

具体的な取り組み事例

脱炭素シナリオ

・環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』に基づいたCO2排出量削減の各施策推進(2013年度比で2030年に50%削減、2050年に実質ゼロを目指す)


・店舗における省エネやエネルギー効率の改善に向けて、取り組みや投資の推進


・店舗での再エネ比率の積極的な拡大


・サステナブルな商品やサービスの拡充(低炭素商品、環境配慮型容器包装、ペットボトル回収・リサイクル、認証商品など)


・環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』食品ロス・食品リサイクル対策に基づいた食品廃棄物の発生量削減施策を推進(焼却処分量の削減)


・環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』プラスチック対策に基づいた、製品パッケージにおける各施策推進


・店舗でのEV充電サービスの拡大(海外CVS事業:電気自動車用急速充電ネットワーク「7Charge」のEV用急速充電ポートを、今後米国とカナダ全土で配備拡大予定

【省エネ】

「省エネ対策重点6項目」(SEJ)

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【再エネ創出】

太陽光発電パネル設置

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【再エネ調達】

オフサイトPPAでの調達

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【小売電気事業者設立】

2024年8月に株式会社セブン&アイ・エナジーマネジメントを設立

【EV充電スタンドの導入】

2024年12月末現在、8つの州とカナダの2つの州の53店舗に合計180の充電スタンドを設置(SEI)

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温暖化進行シナリオ

・洪水や暴風雨などの悪天候時に取るべき危機管理計画の策定


・災害時の情報収集と早期復旧の体制構築(「セブンVIEW」など)


・野菜工場や陸上養殖などの調達拡大による安定的な仕入の確保


・店舗における省エネ推進、省エネ設備の導入


・お届け事業、ECサービスの拡大

【セブンVIEW】

店舗や物流の状況をGoogleマップ上に"見える化"

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【工場野菜の調達】

気候耐性のある原材料の仕入を拡大

(4)自然資本

当社グループは、サプライチェーン全体において直接的・間接的に自然資本を利用し、また影響を与えています。例えば、サプライチェーン上流にあたる原材料調達は、栽培のための豊かな水資源や花粉を運んでくれる昆虫などのさまざまな自然の恵みによって成り立っています。また、資源の過剰採取や農薬・肥料の過剰な投与は、自然にネガティブな影響を与えてしまう可能性があります。さらに自然の変化によって、原材料の調達・利用が困難になるなど、事業への影響も懸念されます。

中長期的に事業を存続させるためには、事業と自然との関わりを把握・管理することで、事業における自然に対するネガティブな影響を最小限にし、また自然に配慮した事業活動を推進することで「生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)」ことが重要だと考えています。 

1. LEAPアプローチ

当社グループにおける自然関連の依存・影響、リスク・機会の評価を、TNFDが推奨する評価手法であるスコーピング(Scoping)、およびLEAPアプローチに沿って実施しました。


●LEAPアプローチ

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2. Scoping

 2024年度上半期は、まず、当社グループの全事業会社および上流から下流まですべての関連サプライチェーンを対象に、事業がどのように自然と関連しているかの調査を行いました。
 評価にあたっては、TNFDが推奨するツールであるENCOREを用いてその産業に一般的な依存・影響を抽出し、結果をスコア化して依存・影響の2軸でマッピングしました。
 マッピングの結果を踏まえ、当社グループは、「食」を中心とした事業を展開していることから、まず「農産物」に焦点をあてることとしました。その中でもグループ全体で取扱量が多く、かつ自然への影響が指摘されている「コーヒー豆」「米」「大豆」を重要原材料として選定し、特に影響が大きい「コーヒー豆」と、事業機会が期待される「米」の2原料を選定し、2024年度下期からTNFDが推奨するLEAPアプローチに沿ってより詳細な自然への依存・影響の評価を実施することとしました。
●当社グループの主な事業と自然への依存と影響


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●重要原材料と選定した3原材料の自然への依存・影響評価

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3. コーヒーのLEAPアプローチ

コーヒーのLEAPアプローチ
●Locate 自然との接点の発見

 SEJ、SEI、セブンプレミアムの調達国を対象に、「生態学的な繊細さ」と「事業上の重要性」の2軸で評価・整理。両観点を満たす、特に優先すべき分析対象調達地としてブラジル、コロンビア、グアテマラの3カ国を特定しました。


■コーヒー豆の優先分析対象調達地マップ

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●Evaluate 依存と影響の診断

 最も調達量が多いSEJの調達割合が高い上位5か国(ブラジル、コロンビア、タンザニア、グアテマラ、エチオピア)の自然への依存と影響を調査。調査項目は、ENCOREの結果とTNFDとSBTNが整理する内容を参照し、コーヒー豆の一般的な依存・影響を評価するとともに、調達地ごとの生態学的特性・事業特性を整理しました。


●Assess リスクと機会の評価

 お取引先からの知見も反映し、自然への依存・インパクトからリスク・機会を整理。最も影響があると考えられるコーヒー豆の収量減少について、農協・農園レベルで分析を行いました。


■コーヒー豆を取り巻く外部環境

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 上記の整理に基づいて、コーヒー豆のリスク・機会を分析した結果、気温上昇や降雨パターンの変化に伴う栽培適地の縮小・変化による収量減少リスクが特に大きいことがわかりました。その他、病害虫の発生などによる品質低下・収量減少等のリスクや自然環境関連の規制対応コストの発生、IPLCsの土地の環境破壊や権利侵害を伴う方法で生産されたコーヒー調達によるレピュテーション低下のリスク等を特定しました。

 そこで、気候条件がコーヒー豆生産にどれだけ適しているかの度合を示した「気候適合度」を用いて、SEJにおいて調達割合が高い5カ国を対象に、農協・農園レベルまでさかのぼって分析しました。その結果、対象5ヶ国全体では、現在から2050年にかけて、コーヒー豆栽培に適する地域が約30%減少し、さらに調達地が位置する州レベルの分析では、約40%も減少する可能性がある州も把握しました。

 今回、農協・農園レベルまでさかのぼって把握したリスクを踏まえ、調達先への支援も含めた具体的な対策を検討・実行していきたいと考えています。


■ミナスジェライス州における2050年での気候適合度のシミュレーション

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■コーヒー豆の自然関連のリスク一覧

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 また、こうした収量減少リスクがSEJに及ぼすインパクトを、「コーヒー豆価格は高騰するが、当社が求める品質・量を現在の調達地から調達し続けられる場合」と、「当社が求める品質・量のコーヒー豆が現在の調達地から調達できなくなる場合」の2つの外部環境パターンに分けて試算しました。これは、現在入手できる気候変動に関わるデータをもとに試算したもので、さらに試算の精度を上げていく必要がありますが、影響の金額を試算することは、当社内で対応策を検討するための有効な材料のひとつになると考えています。


245億円 価格は高騰するが求める品質・量のコーヒー豆を調達できる場合の売上減少額を試算
497億円 求める質・量のコーヒー豆が調達できない場合の売上減少額を試算


 機会に関しては、環境負荷の少ないコーヒー豆の調達による、消費者のブランドロイヤルティの向上や、自然災害対策の実施によるレジリエンスの向上などが特定されました。これら機会は、対応策としても活かしていきたいと考えています。


■コーヒー豆の自然関連機会の一覧

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●Prepare 対応や報告の準備

 Assessで特定したリスク・機会を踏まえ、対応策の方向性を整理しました。

 持続的な調達を確保し事業のレジリエンスを高めるには、将来シナリオや地域ごとのリスクの特徴を踏まえて、対応策の方向性を検討し、優先順位をつけて対応する必要があると認識しています。現在の生産地が直面する課題へのきめ細かな支援を行うとともに、気候変動により栽培不適地となり栽培継続が不可能になる地域が発生することも念頭に、新たな調達先の開拓等の長期視点での取り組む必要があると考えています。さらに、ステークホルダーとの連携をさらに進めることで、コーヒー豆調達の持続可能性と、地球環境・地域の持続可能性に貢献できる取り組みを推進してまいります。


■対応策の方向性

分野 取り組み状況 検討内容

サプライチェーンマネジメント

実施中 ・グループ・お取引先と連携した共同調達、サプライチェーンの強靭化
生産地支援 実施中~今後検討

・生産性向上、環境配慮型設備の提供等産地の社会課題解決のための支援拡充、ステークホルダーとの連携の拡充

・再生農業の導入支援

・ステークホルダーとの連携・協力によるランドスケープアプローチ

研究開発協力 今後検討 ・品種改良、生産性向上の研究開発への協力
調達先の選定 実施中~検討中

・調達地の分散の推進

・気候適合度変化が少ない地域からの調達

・新規調達地の開拓

原材料の見直し 今後検討

・使用品種や調合の見直し

・代替コーヒーの開発・導入


4. 米のLEAPアプローチ

米のLEAPアプローチ
●Locate 自然との接点の発見

 調達量が最も多いSEJの米の調達地域を県レベルで分析し、「生態学的な繊細さ」と「事業上の重要性」の2軸で評価・整理しました。


■米の優先分析対象調達地マップ

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●Evaluate 依存と影響の診断

 次にENCOREスコアとTNFDセクター別ガイダンス(食品・農業、飲料セクター)、SBTNのHigh Impact Commodity Listをもとに、米において着目すべき影響要因と生態系サービスを抽出し、県単位で生産地の自然への依存と影響を確認しました。

※High Impact Commodity List: SBTs for Natureが公開している自然への影響が大きいとされる原材料リスト

●Assess リスクと機会の評価

 Evaluateにおいて診断した自然への依存と影響、および簡易的な米生産に関する外部環境分析実施により、自然への依存・影響からリスク・機会に至る道筋を整理しました。


■米をとりまく外部環境

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※出典:Yasushi ISHIGOOKA” Revision of estimates of climate change impacts on rice yield and quality in Japan by considering the combined effects of temperature and CO2 concentration“


 この整理に沿って米のリスク・機会を分析した結果、気温上昇や降雨パターンの変化に伴う一等米比率の低下や病害虫の発生が米の品質低下のリスクをもたらすことを認識しました。中でも、当社グループの事業持続性の観点から、米においては「品質(一等米比率)の低下」が最も重要なリスクであると捉えました。


■米の自然関連のリスク一覧

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 また、今後の一等米の比率に関する予測を参考に、一等米の比率低下がSEJに及ぼす財務影響を、将来想定される一等米比率の減少幅の上限(減少幅が大きい)と下限(減少幅が小さい)をとり、試算しました。この試算では、品質の低下のみの要因に注目したため、国の政策からも影響を受けると考えられる米の生産量自体の増減や、急性の異常気象による一時的な品質の低下に関しては考慮できていません。そのため今後も試算の精度を上げる必要がありますが、米の調達に関わる リスクを定量的に把握することで、社内で議論する材料を得ることができました。 機会については、生産者の方々との連携や支援や新しい技術の導入・商品開発等を通じた機会も抽出できました。


13~322億円

一等米比率の低下によるサプライチェーン上の調達費用の増加額


機会については、生産者の方々との連携や支援や新しい技術の導入・商品開発等を通じた機会も抽出できました。


■米をめぐる自然関連の機会

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●Prepare 対応や報告の準備

 Assessで特定したリスク・機会を踏まえ、対応策の方向性を整理しました。将来にわたって米を安定的に仕入れるためには、効果がでるまでに時間がかかる新農法の導入や品種改良等において生産者の方々への支援が重要になると考えています。さらに、米の輸出や輸入、社会的なさまざまな背景も対応策の検討にあたって考慮すべき要素であると認識しています。今後も、生産者の方、お取引先と対話をしながら、対応策の検討を進めてまいります。


■対応策の方向性

分野 取り組み状況 検討内容
サプライチェーンマネジメント 実施中

・生産者とのコミュニケーションの向上

・グループ・お取引先と連携した共同調達・サプライチェーンの強靭化

生産地支援 実施中~検討中

・温室効果ガス削減、メタン削減J-クレジット化の協力

・高温耐性米栽培、乾田直播、再生農業、営農型太陽光発電導入等持続可能な農業のための生産者の支援

調達先の見直し 実施中~検討中

・調達地の分散の推進

・新規調達地の開拓

・調達契約の見直しや当社グループの上流工程への参入

原材料の見直し 中長期の検討 ・品種の変更と精米、商品化手法等の高度化
機会の活用 検討中~中長期の検討

・生産地支援と連動した商品のブランド化

・高品質米を使った商品の輸出

・廃棄物・副産品の活用


(5)移行計画

脱炭素社会、循環経済社会、自然共生社会への移行のため、環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』に基づく移行計画を作成しています。今後、TNFDが公開する予定の正式な移行計画に関するガイドラインを参考にするとともに、気候変動・自然・資源循環の相互のトレードオン、トレードオフ等の影響関係を踏まえた総合的な視点で、実効性ある移行計画にブラッシュアップしていきたいと考えています。


●2050 年に向けた移行計画

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5. 指標と目標

当社では、2019年に策定した環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』において、「CO2排出量削減」、「プラスチック対策」、「食品ロス・食品リサイクル対策」、「持続可能な調達」の4分野で、2030年、2050年の目標と目指す姿を定め、進捗を管理しています。また、TNFDが示すコアグローバル指標のうち、当社グループの依存・影響および、リスク・機会と関連に鑑みて、データが入手可能なものから、指標として、そのデータの把握と開示を進めております。今後、自然関連の指標に関しては、特に、サプライチェーンの各ステークホルダーに協力を求めながら、データの把握と開示に努めてまいります。


●コアグローバル指標

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