従業員の能力向上支援

 株式会社セブン&アイ・ホールディングスおよびその連結子会社(以下、「当社グループ」)は、企業価値向上における源は「人財」にあり、さらなる成長のためには「自ら考えて、自ら行動する人財」が不可欠であると考えています。グループの創業理念であり社是である「信頼と誠実」を礎に従業員の育成・教育に取り組むなど、常に人財に注力し、グループ各社においても、それぞれの事業に適した人財の育成を行っています。

 また、セブン&アイ・ホールディングスは、2020年に人事企画部から教育機能を組織として独立させ、グループ従業員の能力開発と育成を推進する「人財共育部」を設置しました。グループ各社の従業員の成長支援施策を後押しし、価値創造の担い手である従業員一人ひとりの能力開発と自律的な学びを支援しています。

  • SDGs4 質の高い教育をみんなに
  • SDGs8 働きがいも経済成長も
  • SDGs10 人や国の不平等をなくそう

自律的な学びの支援と能力開発

 当社グループは、2021年7月発表の中期経営計画に基づき、会社と従業員がともに成長できる組織づくり、誰もが働きやすい職場づくりを目指しています。一人ひとりの従業員の能力開発と、自律的な学びの支援などを通じて働きがいを向上し、働き方改革、生産性の向上、DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進などを通じて、働きやすさを実感できる職場づくりに取り組んでいます。

 この一環として、次世代を担う人財を育成するグループの教育拠点「伊藤研修センター」を2012年に開設しました。同研修センターには、グループの創業理念である「信頼と誠実」の精神や、挑戦・革新の歴史を学ぶための史料室を設置しているほか、大小合わせて22室の研修室、合宿研修に対応した宿泊室も用意しており、さまざまな形の研修に対応しています。また、グループ各社の事業特性に合わせ、店舗オペレーション、販売や調理などの専門技術を習得するための研修室も設置するなど、従業員が積極的に学べる環境を提供しており、これまでに延べ約51万人の従業員が利用しています。

 当社グループ各社においては、管理職層のリーダーシップ・マネジメント力の向上を図る各種階層別の研修のほか、職務に応じたスキル・技能研修や自己啓発など、事業特性に応じて研修体系を整備し、パートタイマーを含めた一人ひとりの能力開発とキャリア形成に努めています。2024年度におけるグループ社員1人当たりの教育費は約9万円、1人当たりの教育時間は31時間でした。

  •  グループ3社(セブン&アイ・ホールディングス、セブン‐イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂)の月給制社員対象

伊藤研修センター

 セブン&アイ・ホールディングスでは、伊藤研修センターで「グループ理念研修」を実施しています。2024年の「グループ理念研修」には、セブン&アイ・ホールディングス従業員をはじめ、一部グループ会社の従業員と新入社員約950人が参加しました。

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理念研修の様子

さまざまな成長機会の提供

 当社グループは、従業員一人ひとりのありたい姿の実現に向けて、定期的に自身のキャリアを考える機会を設けています。グループ横断での研修のほか、グループ各社が事業特性に応じて整備した多様な研修を実施しています。

 また、自己申告の仕組みや上長などとの面談を通じて、従業員による主体的なキャリア形成の支援も進めています。

リーダーシップの開発

 セブン&アイ・ホールディングスでは、グループ各社から選抜した幹部社員を対象に次期経営リーダー育成プログラムを実施しています。この研修は、講師陣から経営の理論と実践を学び、ディスカッションなどを行うもので、2012年の開始以来、2025年2月末までに約320人が参加しました。

 また、グループ各社ではマネジメント職に対して360度フィードバックの実施を拡大しています。自身の行動について上長、同僚、メンバーから多面的なフィードバックを得て、強みや課題を把握することは、行動変容や風通しの良いコミュニケーションにつながるため、定期的に実施しています。

グローバル人財の育成

 当社グループでは、2030年に目指すグループ像のもと「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略」を推進し、グローバル規模で当社ブランドの価値向上に挑戦しています。

 その実現のため、グローバル人財の育成、および人財ポートフォリオの策定と運用に向けた各施策を強化・加速しています。例えば、2021年より英語研修プログラム「Seven English Training」を継続しています。また、2024年はグローバル人財の育成を目的に「海外短期留学プログラム」と「グローバル研修」を開始しました。海外短期留学プログラムでは、MBAコースの受講や「食」の未来を探求するプログラムへの参加を通じて、現地のビジネス環境や市場動向を把握。あわせて、語学力の向上や異文化理解を図り、グローバルな視点を養っています。国内外の事業会社をまたぐグローバル研修では、海外での活躍が期待される人財を短期派遣し、現地ビジネスへの理解促進と実践的なコミュニケーション力などの育成を図っています。

 グループ各社でも、社内研修や自己啓発支援制度などの成長支援策を用意しており、グローバル人財の育成を推進していきます。

加盟店従業員向け接客研修や接客コンテストの開催

 セブン‐イレブン・ジャパンでは、従業員が安心して働き、活躍できるように、育成ステージに応じたさまざまな研修を行っています。従業員の初期教育を支援し、業務不安の払拭・定着を目指す「新人研修」や、店舗の時間帯別責任者の育成を目的とした「シフトリーダー研修」を実施。ほかにも、多様化する人財に対する研修として、外国籍従業員向けの「おもてなし研修」や、シニア従業員向けの「新人研修(ゆっくり基本コース)」などにも力を入れています。

 加えて、従業員の働きがいやモチベーション向上を支援する取り組みの一環として、2022年より「接客コンテスト全国大会」を開催しています。この取り組みは、加盟店オーナーから寄せられた「活躍している従業員を評価する場を設けてほしい」との声を受けて実施しているものです。店舗従業員の日頃の接客業務における努力や工夫を可視化し、成長を支援することを目的としており、参加者が実際の接客シーンを再現しながら、お客様へのおすすめ接客を実演。接客技術やホスピタリティの高さを競い合うとともに、互いの取り組みを学び合う貴重な機会となっています。

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シフトリーダー研修

職務に応じた研修の実施

 イトーヨーカ堂は、パートタイマーを含む全従業員を対象に、会社の方針や商売の基本、仕事に必要な知識・技術を学ぶための研修を実施しています。特に入社時研修では所属部門の商品知識や接客応対・生鮮技術のレベルアップを目的に、店舗でのOJTにつなげるための研修を継続的に実施し、従業員の能力向上をサポートしています。そのほか、新入社員から売場担当者、売場マネジャー、副店長、店長に至るまで、その職務に応じた「売場管理」や「マネジメントスキル」を段階的に身に付ける研修や、希望すれば誰でも参加できる公募研修など、本人の学ぶ意欲を引き出しながら次のステップに向けたスキルアップを図る研修も実施しています。

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研修の様子

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「目標設定カルテ」の運用

 ヨークベニマルは、従業員一人ひとりの現在の技術・能力や今後習得すべき教育上の課題と目標を従業員個人とその上長で明確にするため、「目標設定カルテ」を運用しています。「目標設定カルテ」は、接客や売場管理、発注、調理技術など、業務遂行に必要な項目が細かく設定されており、0~5までの6段階で個人の技術・能力を診断。担当社員・パートタイマー向けの「技術編」については、担当している業務の特性・取扱商品に応じて部門ごとに診断項目を設定しています。また、店長、副店長、CS(カスタマーサービス)統括マネジャー・部門マネジャーなど店舗責任者の管理能力の向上と標準化を目指した「マネジメント編」も設定しています。 従業員は、このカルテをもとに、自分のレベルを上長と確認し、年2回、上長と進捗状況を共有して次の目標を設定することで、自分の成長を確認するとともに、モチベーションの向上を図っています。

新規入社者へのオンライン研修

 赤ちゃん本舗は、本社研修部門において新規入社パートタイマーに向けた「オンライン店舗入社時研修」を開催しています。入社後、動画教材を2時間半受講し、その後、オンラインで動画内容の補習と確認を1時間実施。すべての入社者を対象に会社の方針や業務の基本について学ぶ機会としています。さらに、店舗では研修計画に基づいてOJTを実施し、3カ月かけて基礎知識の定着を図っています。

 また、「3カ月フォロー共有会」も行い、入社後に抱える悩みの解消に努めるなど、入社後長く働き続けられるサポート体制を整えています。

自己啓発研修

 当社グループは、従業員が自ら学べる機会を提供するため、ビジネススキルや知識に関する通信教育やeラーニングを受講する従業員に対して費用の補助などを行っています。

通信教育の受講支援

 イトーヨーカ堂は、パートタイマーを含む全従業員に対して191種類の通信教育の講座を提案し、修了者には一部費用を補助しています。2024年度は267人が受講しました。

自己啓発講座の開催

 セブン銀行は、従業員が業務遂行に必要な知識・スキルを習得できるよう、通信教育(英語、金融知識など)、オンライン講座(ビジネス知識、IT/DX領域)、通学講座(MBAなど)などの環境を整備し、「社員の自律的な学び」を支援しています。講座数は約240種類に及び、多くの従業員が受講しています。

人材公募制度の運用

 当社グループでは、グループ各社において、社内公募制度を導入しています。2024年度は、555名がこれらの制度に応募し、131名※が希望の職務に異動しています。

 また、イトーヨーカ堂では個人のキャリアに対する自律意識を醸成し、適正な人財配置を実現するために、2024年度より「キャリアプラン申告制度」を導入しています。

  •  セブン&アイ・ホールディングス、セブン‐イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、ヨークベニマル、ロフト、赤ちゃん本舗、デニーズジャパン、セブン銀行の8社合計

重点課題5の取り組み