社外取締役メッセージ

最終更新日:2021年3月23日

伊藤 邦雄伊藤 邦雄

指名委員会委員長・報酬委員会委員長
社外取締役
伊藤 邦雄
一橋大学CFO教育研究センター長。一橋大学名誉教授。中央大学大学院戦略経営研究科特任教授。専門は会計学、マーケティング・ブランディングを含む経営学、コーポレートガバナンス論、企業価値経営論、ESG(環境・社会・ガバナンス)等。2014年に経済産業省のプロジェクトでいわゆる「伊藤レポート」を発表した。 2019年5月27日に設立された「TCFDコンソーシアム」会長。2014年5月より当社社外取締役。

株主の負託を受けて議論に臨んでいることを、
常に忘れることなく、意識しています。

時にブレーキを踏み、時に背中を押す、社外取締役の役割

取締役会が機能するための最も重要な条件は、社長を含めた社内取締役に社外取締役の意見を傾聴する姿勢があるか否かです。それがあると、社外取締役もより有用な発言をしていこうという意識が働き、社内と社外、両方のモチベーションがアップします。そのような意味でも、ここ数年でセブン&アイ・ホールディングスの取締役会は緊張感と自由闊達さが両立されたうえで議論が充実しており、非常に良い状態になってきたと認識しています。

取締役会の議論の過程において、社外取締役はともすれば、執行の決断に対してブレーキを踏む役割と捉えられがちですが、私はブレーキを踏むべき時は踏み、逆に背中を押すべき時は押すことを意識してきました。これまでの経験から、企業が成長を目指す時には、単にリスクを取って成長するというだけで割り切れない、さまざまなポイントが存在します。日本の小売業界のリーダーとしてセブン&アイグループが成長を目指す時も、もちろんリスクテイクは避けられませんが、同時にリスクをいかに最小化できるのかという観点が重要です。今回のSpeedway取得のプロセスにおいても、取締役会で十分に練磨し、買収価格やPMIなどだけではなく、様々な観点から議論を重ねたうえで最終的に取締役会にて決定しました。

私たち社外取締役は株主の代表として取締役会に参加しています。株主の負託を受けて、議論に臨んでいるということを忘れることなく、常に強く意識しています。

※PMI=Post Merger Integrationの略で、M&A(企業の合併・買収)成立後の統合プロセスを指す

ESG、人材育成、DXに戦略的に取り組み、企業価値と社会価値を両立

当社グループは、ガバナンス改革を通じて企業価値を持続的に成長させていこうとしており、指名・報酬委員会を指名委員会と報酬委員会に分離するなど取締役会の諮問委員会について改善を図っています。また、役員報酬を決定する重要要素に中長期的かつ非財務的視点を加えようと、株式報酬のKPIにCO2排出量を導入したことも企業価値と社会価値の両立を目指す当社らしい取り組みといえます。

取締役会では、以前から人財ポートフォリオやサクセッションプランについて議論を行ってきましたが、2020年も、従業員の皆さんがどのような気持ちで働いているのか、情緒的かつ理性的に会社をどう思っているのかを把握すべきだと従業員エンゲージメント調査を実施しています。従業員一人ひとりの想いや心の動きを把握することはホールディングスの重要な役割のひとつで、これらの積み重ねが良いサクセッションプランに結びついていくと思っています。

また、人財戦略とともにDX戦略も非常に重要で、私は、デジタルトランスフォーメーションとデジタル化は本質的に違うと強調しています。DXとは、単なるデジタル化ではなく、それによって顧客、従業員など、ステークホルダーの体験価値を飛躍的に高めることを指します。二つ目は、企業文化を変えること。デジタル化はしたが企業文化は旧態依然では意味がありません。三つ目のポイントは、DXによって組織のさまざまな壁をどう壊していくかです。経営層と社員、部門や事業会社ごとの壁を突き崩していけるようなものをDXと呼ぶのです。

真のベストオーナーとして、グループガバナンスの向上を目指す

新中期経営計画については、まさに議論を進めているところですが、グループ各社が有機的なつながりをもって構成され、独自のビジネスモデルを創出することが重要と捉えています。それを実現するにはホールディングスと事業会社の対話が不可欠ですが、その時に忘れてはいけないことは、ホールディングスが個々の事業会社にとって真のベストオーナーなのかと自問する姿勢です。グループ構造改革や事業ポートフォリオの再編において重要なことは、個社の事業リソースを活かし、伸ばしていくために、ホールディングスが最適な経営判断を行っているのか。逆にいえば、ホールディングスの采配が、各事業会社が独自の存在意義をもって、顧客やステークホルダーから親しまれる存在になっていくという目的に適っているかを自ら問うべきなのです。

そして、経営戦略を成功に導くには人財戦略とのマッチングが不可欠です。5年後、10年後に目指すビジネスモデルと人財リソースが適合しているのか、それによってグループがサステナブルになるかが決まります。私たち社外取締役は、外部の視点で経営の監督を行う役目を担っており、その際に、単に世の中がこうだ、時代はこうだというだけではなく、地球規模の環境問題や社会課題を踏まえ、広い視野から意見をしていかなければ、十分に監督責任を果たしたとはいえません。今後も、世界のメガトレンドから従業員の心の動きまで、マクロ、ミクロ両方の目をもってバランスの取れた問題提起をしていくべきだと思っています。

月尾 嘉男 月尾 嘉男

社外取締役 月尾 嘉男東京大学名誉教授。月尾研究機構代表取締役。専門はメディア政策、システム工学。名古屋大学工学部建築学科、東京大学工学部産業機械工学科・大学院新領域創成科学研究科の教授を歴任し、2002年12月より総務省総務審議官として政府のIT政策を担当。世界各地で自然環境問題の実態を見聞し、持続可能な社会をめざした地域計画に参画。2014年5月より当社社外取締役。

長期的視点に立った経営の方向づけが、
社外取締役に求められる重要な役割のひとつ

10年、20年先を見据えた経営を実現し、社会課題に対応する

セブン&アイグループに限らず、すべての企業が避けて通ることができない大きな課題が二つあると思います。ひとつは情報社会への対応です。セブン&アイグループにもコンビニエンスストアを始め、小売、外食など多業態の膨大な顧客情報が蓄積されており、これらを集約し、長期的な戦略に基づいて有効に活用していくことが10年、20年先の企業の姿を決定づけるでしょう。4月に発足した「グループDX戦略本部」はグループ横断でDXを推進する体制ですが、ここを中心に新しい企業価値をつくっていくことで、セブン&アイグループは国内市場においても、また、グローバルリテイラーとしても大きな成長の機会を掴むことができると思います。

もう一つの大きな課題は環境問題です。投資の世界ではESG投資が推進されていますが、今後も、社会が企業を評価する判断基準のなかでも「地球環境に貢献」しているかという観点はより大きくなっていくでしょう。地球温暖化がさらに進み、全人類的な課題になる時、企業が組織として環境問題に真摯に取り組み、結果を出していかなければ、批判を浴びることも考えられます。私は、社外取締役が果たす重要な役割のひとつは、より長期的な視点で企業の方向づけを支援し、戦略を立てることだと考えています。私たち社外取締役は、日々の経営情報を目の当たりにしている社内取締役とは違ったスケールをもって組織が目指すところや、議論されるべき社会問題に対し、どう役割を果たしていくかを問いかける存在でなければなりません。それが社外取締役の果たすべき重要な役割だと思います。

米村 敏朗 米村 敏朗

社外取締役 米村 敏朗1974年に警察庁に入庁し、2008年に警視総監、2011年からは内閣危機管理監、内閣官房参与などを歴任。現在は、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会チーフ・セキュリティ・オフィサーを務める。組織マネジメント、リスクマネジメント等に関する幅広く高度な知見・経験をもつ。2014年5月より当社社外取締役。

危機管理の基本は「想像と準備」。
リスクを踏まえて、しっかりと情報を共有し、実のある議論を

「攻め」を成功に導くための「守り」の視点が重要

私の専門分野は危機管理ですが、組織の危機管理において重要なことは「想像と準備」だと常々、考えています。企業経営は危機管理とは異なりますが、経営においてもこの「想像と準備」が非常に大事ではないかと感じます。そして、「想像と準備」をいかにしっかりと行えるかは、情報収集と議論の質にかかっています。企業のコーポレートガバナンスにおけるポイントは、まさにこの情報と議論の部分です。セブン&アイ・ホールディングスの取締役会は、しっかりと情報を共有し、実のある議論を行うことが当たり前となっており、そのような観点からも十分なガバナンス体制が整ってきたといえるでしょう。

そして、危機管理というと一般に「守り」を意味しますが、企業経営の危機管理には、「守り」の観点だけでなく、「攻め」を成功に導くためにどのような「守り」を固めるべきかという視点も必要です。たとえば、この8月に発表した米国Speedwayの取得についても、世界的な脅威となっているCOVID-19はもちろん、異常気象や環境問題、自動車のEV化などのさまざまなリスクを想定し、そのリスクをどうモニタリングし、どう備えていくかといった議論を十分に行いました。

企業が成長を目指すにあたって、危機や不安定な事態は他から抜きん出て飛躍に転ずるチャンスともいえます。セブン&アイグループが大きな想像力を働かせ、これまであり得ないような新しいビジネスモデルやコンビニエンスストアの未来像を描き、もっと先の将来に向かって「想像と準備」を進めていってほしいと思います。

東 哲郎 東 哲郎

社外取締役 東 哲郎半導体装置のグローバルメーカー東京エレクトロン株式会社の代表取締役社長、代表取締役会長、取締役相談役として同社の発展を長きにわたって牽引。国際的な企業経営、経営管理、財務・会計等の幅広く、高度な知見・経験をもつ。SEMI国際役員会会長、一般社団法人日本半導体製造装置協会会長を歴任し、2015年ボブ・グラハム記念SEMI セールス・アンド・マーケティング・エクセレンス賞受賞。2018年5月より当社社外取締役。

ステークホルダーや社会の視点を踏まえた、
有意義な対話ができる取締役会に、年々進化している

世界の拠点網とDX戦略を組み合わせ、大きな成長ビジョンを描く

セブン&アイ・ホールディングスは、ガバナンス改革に積極的に取り組んでいます。社内役員の皆さんが、私たち社外取締役の意見をよく聞き、真摯に受け止めようとする意識を強くもっておられるので、ステークホルダーや社会の視点を踏まえた有意義な対話と議論ができる場に年々、進化しているように感じます。

社外取締役として私に求められていることは、主に事業会社でグローバリゼーションを担ってきた経験だと認識しています。今、世界で重要視されている事象等について、適切に取締役会において伝えることでセブン&アイグループの経営に活かしていきたいと思っています。

私は社外取締役へ就任当初から、DXについては都度、意見をしてきました。DXとは単に効率化のためのツールではなく、企業価値を高めるツールであると私は捉えています。ですから、技術の先取りをするというだけでなく、他社との差別化を図る、自社の固有のDXを実現していくことが重要です。とくに今後、積極的な海外展開を行うセブン&アイグループとしては、グローバルレベルの戦略をしっかりと持つべきでしょう。また、コンビニエンスストアやスーパーだけでなく、外食や専門店などの多様な業態を持つことがグループの強みですから、これらの異なる業態をDXでつなぎ、横の連携を強化することで、各事業の持つ力をより大きくすることができるはずです。今後は、世界に保有する拠点網と独自のDX戦略を上手く組み合わせ、小売業の新しい形態と価値を創り出し、より大きな成長ビジョンを描いてもらいたいと期待しています。

ルディー 和子 ルディー 和子

社外取締役 ルディー 和子マーケティング・コンサルティング会社ウィトン・アクトン社代表取締役社長。立命館大学大学院経営管理研究科教授、米国エスティ・ローダー社のマーケティングマネジャー、タイム・インク タイムライフブックス部門のダイレクトマーケティング本部長を歴任し、マーケティング、ブランド戦略等に豊富な知見・経験をもつ。2014年5月より当社社外監査役、2019年5月より当社社外取締役。

お客様、従業員、すべてのステークホルダーに対して
誠実なセブン&アイグループらしいコーポレートガバナンスを

お客様満足を高めるには、まず従業員満足度

新型コロナウイルス感染拡大を機に、小売業はエッセンシャル産業とされ、従業員を守り、お客様の生活を支えるといった社会的使命が重要視されましたが、私はこのような流れはそれ以前からあったものだと捉えています。小売などのサービス産業でお客様により満足していただくには、まず、従業員の満足度を高めなければなりません。企業が人的資本に積極的に投資し、従業員が働きがいと生きがいを同時に感じられるような職場環境をつくっていくことがお客様価値を生み、ひいては企業価値を高めることにつながるのです。少子化や労働力不足といった社会課題は今後も深刻化が予測されており、いずれの企業もDXに力を入れていますが、DXによって人が減らせるのではなく、これまで人がやっていたルーティンワークを機械が行うことで、人が人にしかできない仕事に集中することが可能になります。従業員にはいかにお客様満足を高めるかを考えることに力を注いでもらい、より楽しく働いてもらうことができるでしょう。セブン&アイグループの理念には、「変化への対応」という言葉がありますが、社会の流れを捉えながら、人を通じてお客様満足を創出していく基本を忘れずにいることがこれからも大切だと思います。

2020年、役員報酬のKPIに初めて非財務指標であるCO2排出量を導入しました。今後も社会の変化や株主・投資家の方々の関心事に応じて新たな評価指標を取り入れていく行くことを検討すべきだと思います。私も社外取締役の一人として責任ある意見を述べていくため、広い視野をもって勉強する姿勢をもち、自らを高めてまいりたいと思います。