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社外取締役対談

最終更新日:2019年6月26日

社外取締役対談 2010年4月実施
  • 社外取締役 伊藤 邦雄
  • 社外取締役 米村 敏朗
社外取締役 対談

多様性ある社外役員の多角的なアドバイスで
透明性の高い経営を実現する

セブン&アイグループの経営やガバナンスに対する評価、社外取締役の役割、持続的成長に向けた課題などについて、伊藤邦雄社外取締役、米村敏朗社外取締役が対談を行いました。

取締役会での議論や実効性について

「タブーなき議論」のできる文化が醸成されている。(米村)

経営陣に良きガバナンスを作り上げたいという思いがある。(伊藤)

米村:民間の企業のトップは、官庁のトップとは異なり、組織に対して大きな影響力を持っている印象があります。ですから取締役会ではトップに忖度することなく、意見のあるときはきちんと言うことが重要になります。当社の取締役会では、「タブーなき議論」のできる文化が醸成されてきたように感じます。

伊藤:3年前に新しい経営体制になって、取締役会は大いに変わりました。グループにおいてセブン&アイ・ホールディングスが担うべき役割や、取締役会で議論すべきテーマを明らかにしながら、議論の結果を実行に移せるようになってきました。取締役会のクオリティはずいぶんと向上していると思います。

米村:暗黙のうちに当たり前とされていることも、あらためて多様な視点から議論することで、今までに蓄積されていた問題が明らかになります。当社のように、お客様やお取引先、地域社会、社員などステークホルダーの多い企業が持続的に成長するには、画一的ではない多様な思考が求められます。私は、取締役会の実効性も含めて、あるべき形になってきたという印象を受けます。

伊藤:当社の取締役会において自由闊達な雰囲気が醸成されている理由の一つは、井阪社長をはじめとする社内の経営陣が、社外取締役から厳しいことを言われても嫌な顔をせず、傾聴の姿勢を絶やさないからです。そのため私たち社外取締役もフランクに意見を述べることができ、建設的な議論が交わされるようになっています。一般的に、社外取締役がいい質問をすることでガバナンスの向上につながると言われますが、当社の場合は質問というレベルを超えて、アドバイスやサジェスチョンが多くなっています。

米村:各自の社外取締役が有する知見やスキルが充分に活用され、多面的な議論ができていると感じます。

伊藤:社内の経営陣に良きガバナンスを作り上げたいという思いがあることも、取締役会が活性化してきた理由です。良きガバナンスは、社内だけでなく、社内と社外のボードメンバーが議論することで作りあげられます。井阪社長は、株主総会も取締役会も「対話型」であることを重視しています。社外取締役は少数株主の権利も代表しているわけですから、取締役会での対話は、株主総会での対話と似たものになっていると井阪社長から指摘されることもあります。「対話型」の姿勢は、指名・報酬委員会にも反映されており、候補者に面談をして取締役会に答申を行うかたちを取るようになりました。また、報酬に関しても、株式報酬にどのような考えで取り組むべきか、KPIなども含めて議論を繰り返しています。

伊藤 邦雄伊藤 邦雄

社外取締役 伊藤 邦雄一橋大学大学院 経営管理研究科 特任教授。中央大学大学院 戦略経営研究科 特任教授。専門は会計学、コーポレートガバナンス論、企業価値経営論。2014年に経済産業省のプロジェクトでいわゆる「伊藤レポート」を発表した。2019年5月27日に設立された「TCFDコンソーシアム」会長。2014年5月より当社社外取締役。

取締役会が適切に機能するかは、議長の資質にかかっている。(伊藤)

どういう議論をするかという発想で臨むことが重要。(米村)

伊藤:取締役会の議長は井阪社長が務めていますが、取締役会が適切に機能するかどうかは議長の資質にかかっていると私は感じています。監督側である議長を、執行側である社長が務めるのは、通常は好ましいことではありません。しかし、取締役会の実効性評価の中で議論したうえで、井阪社長は二つの役割をきちんと果たしているという結論になりました。

米村:私自身も警視総監時代に議長を務めていましたが、議長は議案に対する決裁を行うことよりも、どういう議論をするかという発想で臨むことが重要です。そうでなくては、会議がいい意味で踊らない。井阪社長は、そのあたりの人力が備わっていると感じます。また、議長が執行責任を負っているからこそ、徹底的な議論を行うことも、その結果を執行に移すこともできる部分があると思います。

社外取締役が取締役会で果たす役割について

危機管理はブレーキではなく前に進むためのチェック。(米村)

長期的な価値創造ストーリーの中に各案件を位置付ける。(伊藤)

米村:私は危機管理の経験が長く、現在も危機管理の仕事に関わっています。危機管理といえばブレーキを踏む役割だと思われるかもしれませんが、そうではありません。危機管理はある種のガバナンスであり、いざという時に組織の能力を発揮できるように、あらかじめ対応策を用意しておくことです。私は、セブン&アイ・ホールディングスが前に進むためのチェック機能を果たせるよう、危機管理の視点からアドバイスをしているつもりです。

伊藤:取締役会での議論は、企業価値を持続的に高めるために行っているわけで、適切にブレーキを踏むことでリスクが下がり企業価値が向上することもあれば、リスクを最小化したうえでアクセルを踏むことで持続的な成長が果たせる場合もあります。ブレーキを踏むように促すことも、アクセルを踏んで企業価値を高めようと背中を押すことも、社外取締役の役割だと考えています。こういった判断をするにあたって、長期的な価値創造ストーリーの中で、それぞれの案件がどのように位置づけられるのかという視点を持つことが重要だと考えています。

セブン&アイグループの中長期的な成長に向けて

社会が変化する中、視点を変えることで得られる発想がある。(米村)

「素人のように発想し、玄人のように実行する」ことが重要。(伊藤)

米村:どのような企業も当面の課題を抱えていますし、それに全力で取り組む傾向があります。しかし多くのことが劇的に変化する中、今までの延長線では解決できないような課題も出てくるはずです。そういった時には、視点を変えることも大事だと思います。かつて警視庁では、増加する犯罪を低減するために、発生した犯罪の検挙数を上げることよりも、被害者が被害に遭わないようにする抑止対策に視点を変えたことがあります。視点を変えることで得られる発想や成果は必ずあると思います。今後の変化に対応していくためにも、視点を変えて会社のあり方を見ることも重要だと思います。

伊藤:セブン&アイグループは、コンビニエンスストア事業というビジネスモデルを成功させることで現在の繁栄を築いてきました。これは大きな成果ですが、いわゆるイノベーションのジレンマに陥り、改善を繰り返していくうちに、消費者のニーズや嗜好と離れてしまうこともあるかもしれません。社外取締役として、距離を置いて長期視点で見ることを心がけていますが、距離を置くことで、どのような成功モデルも、どこかに危ういところを孕んでいることを察知することが重要だと認識しています。私は、コンビニという成功モデルには「素人のように発想し、玄人のように実行する」ことが必要ではないかと考えています。先入観や固定概念にとらわれず、頭と心の中に白地のキャンバスを用意し、現在の消費者ニーズや加盟店の置かれた状況を直視して新たな絵を描いてみる。今までの延長線で、自分たちには長年の実績があるという視点に立つと、白地のキャンバスにはなりません。一方、実行プロセスについては、玄人である必要があり、セブン&アイグループには、これまでに築き上げてきた確たるものがあります。発想は一度素人に戻り、実行のレベルはよりクオリティを高めていくことが必要だと思います。これは、セブン&アイグループの事業ポートフォリオを組み替えていく議論にもつながると思います。

米村 敏朗 米村 敏朗

社外取締役 米村 敏朗1974年に警察庁に入庁し、警視総監、内閣危機管理監、内閣官房参与などを歴任。現在は公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 チーフ・セキュリティ・オフィサーを務める。2014年5月より当社社外取締役。

SDGsのゴールを達成するのは大変な取り組みになる。(米村)

経営資源を、短期・長期視点で統合していくことが重要。(伊藤)

米村:井阪社長はESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)に対する意識が高く、会社としても社会課題に対する積極的な姿勢を感じます。今後の具体的な取り組みに期待したいと思います。SDGsのゴールを達成するには、私たちの考え方を根本的に変えなくてはならないかもしれません。もっと欲しい、もっと使いたいという人間の本性と反する作業になるので、大変な取り組みになると思います。

伊藤:株主の皆様から預かった経営資源を効率的に使うことは企業の使命であり、また、サステナブルな社会の実現に貢献することも求められています。そこで私は、資本生産性をROEという言葉に、サステナビリティをESGという言葉に代表させ、これらを組み合わせた造語「ROESG」をアピールしています。当社の取締役会では気候変動やフードロスといった社会課題に関わっていこうという強い姿勢を感じます。しかし、経営資源は無尽蔵にあるわけではなく、一方では生産性を高め、一方ではサステナビリティを高めることに使っていかなくてはなりません。経営資源の出所は一つなのだけれど、二律背反でなく、いかにROESGの視点でインテグレーションしながら循環させていくか、これからの取締役会で議論を深めていく必要があると思っています。

組織は多様性に富んだワンチームであることが重要。(米村)

「セブン&アイ経営レポート」は、当社の姿勢を象徴している。(伊藤)

米村:組織はワンチームであることが大事ですが、単一の色に染まっては意味がなくなります。今後の発展に向けて多様な人材を育成してもらいたいし、そういった人材が責任ある立場に立って、多様な価値観を持ちながら一緒になって会社を発展させていってもらいたいと思います。

伊藤:今回、「価値協創ガイダンス」をフレームワークに、コーポレートガバナンス・レポートと統合レポートをインテグレーションした形で発行することになりましたが、これは良いものを積極的に取り入れようという当社のガバナンスの姿勢を象徴的に表していると思います。また、今後の発展に向けて、バランスシートに関する議論も深めていきたいと思います。企業価値の向上には、バランスシートを良い形にすることと、バランスシートには載っていない無形資産を作り上げていくことの両面が必要です。バランスシートに記載された資産、負債、資本を、どのような形で保有したり縮減したりしながら資本コストをコントロールしていくか、そして、ブランド価値などの無形資産をどのように作り上げていくかという両面について、暗黙知にしておくのではなく、きちんと取締役会で議論していくことが大事だと考えています。