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CFOメッセージ

取締役常務執行役員 最高財務責任者(CFO) 丸山 好道の写真

中期経営計画の完遂と
その先の成長戦略を支える
3つの財務KPIの目標達成に
努めてまいります

取締役常務執行役員
最高財務責任者(CFO)
丸山 好道

中期経営計画の目標達成に向けて

 中期経営計画2021-2025(中計)における財務的な基本方針は、資本コストを上回るリターンを拡大するとともに、キャッシュフローの創出力を高め、企業価値を持続的に向上させていくことです。そのために、当社では「量的な成長」「質的な向上」「財務の健全性の確保」の3つの観点からKPIとその目標を定め、2023年3月に上方修正しました。
 「量的な成長」については、国内外コンビニエンスストア(以下、CVS)事業をはじめとしてキャッシュ創出力が着実に高まっており、EBITDA、営業CF(除く金融)ともに達成の目途が立ってきました。
 「財務の健全性の確保」については、指標とするDebt/EBITDA倍率において、有利子負債の返済を計画どおりに進めたことに加え、大きな有利子負債を抱えたそごう・西武の株式譲渡が完了したことで、計画外のM&Aを実行したものの、計画どおりの改善基調にあります。ただし、このDebt/EBITDA倍率については、2024年4月に、2025年度の目標を1.8倍未満から1.8~2.5倍のレンジへと修正しました。これは、戦略委員会からの提言も踏まえ、グループの中長期的な企業価値・株主価値向上に向けた成長戦略を推進するため、最適資本構成の観点から財務の健全性と成長投資のためのデットキャパシティのバランスを再考したものです。良質な戦略的投資案件がなければ当初の想定どおり1.8倍までレバレッジを引き下げ将来の大きな投資に備える一方、現在の財務の健全性を維持しつつ、今後どの程度の資金を投資に振り向けられるかについても開示していくという考えに基づいています。
 一方、「質的な向上」の指標であるROEとROICについては、2022年度までは当初計画を上回るパフォーマンスを上げてきましたが、2023年度には、そごう・西武の株式譲渡をはじめとする事業ポートフォリオ最適化の取り組みなどにより大きく下回り、 2024年度も、中計目標達成に向けて、抜本的な事業ポートフォリオ変革による先行的な損失や日米CVS事業を中心とする戦略投資の前倒しなどにより、当初計画を下回る見込みです。
 したがって、「質的な向上」については、2025年度の計画達成に向けた施策を2024年度にいかにやり抜くかが、財務の観点からは最も重要であると認識しています。
 そのためには、まず第一に、成長の加速と資本効率の改善に向けて、我々グループの事業モデルを進化させなければなりません。その次に、利益を生まない、あるいはリターンが低い資産や事業の処理を加速させなければなりません。この二つの施策を2024年度までに実行して、その果実を2025年度に最大限に享受することが重要です。そうした意味で、この2024年度は、我々にとって非常に重要な1 年になります。
 これ以外にも、消費を取り巻くマクロ環境が当初想定から大きく変化しています。一つは、特に昨年後半から日米ともにインフレの影響が大きく出ており、お客様の購買行動が大きく変化していることです。また、円安による影響もあります。これらの変化に対応していくためには、前述した二つの施策をより加速、かつより進化させることが大きな課題です。

連結財務KPI

EBITDA・営業CF

2025年度:EBITDA 1. 1 兆円以上/営業CF(除く金融) 9,000億円以上

EBITDA・営業CFのグラフ

(注)営業CF : NOPATをベースとした管理会計数値為替レート:当初計画:1$=107円(2021年度)、1$=105円(2022~2025年度)
実績、更新後:1$=109.90円(2021年度)、1$=131.62円(2022年度)、1$=140.67円(2023年度)、1$=145.0円(2024年度)、1$=1 16.0円(2025年度)当初計画の数値はセール・リースバックの影響除く

EPS成長率

2021~2025年度:EPS成長率18%以上を目標※1

EPS成長率のグラフ
  1. ※12020年度に対してのCAGR(年平均成長率)にて試算
  2. ※22023年度実績:そごう・西武、バーニーズジャパン株式譲渡影響を調整した数値

(注)2024年3月1日付で普通株式1株を3株に株式分割。2020年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、「EPS」を算出

ROE・ROIC

2025年度:ROE 1 1.5%以上/ROIC 8%以上(除く金融)

ROE・ROICのグラフ
  1. (注)1 2023年度実績:そごう・西武、バーニーズジャパン株式譲渡影響を調整した数値
  2. 2 当初計画の数値はセール・リースバックの影響除く
  3. 3 ROIC:{純利益+支払利息×(1-実効税率)}/{自己資本+有利子負債(ともに期首期末平均)}
Debt/EBITDA倍率

2025年度目標:1.8倍未満 → 1.8~2.5倍

Debt/EBITDA倍率のグラフ

(注)グループ全体の成長戦略推進に向けて、機動的かつ柔軟な財務規律に基づき、CVS事業への戦略的投資(新規M&Aを含む)を実行するため、2025年度目標を変更

企業価値・株主価値の向上のために

取締役常務執行役員 最高財務責任者(CFO) 丸山 好道の写真

 現在、当社は、戦略委員会からの提言に基づいて取締役会で決定した三つの領域におけるアクションプランを推進しています。その大きなねらいは、グループ各社の事業モデルを進化させて成長を図るとともに、収益を生まない資産の見直しやグループ事業構造を最適化することで資本効率を改善すること、さらに投資家とのエンゲージメント強化により、それを適時適切に資本市場に認識いただくことで、グループの中長期的な企業価値、ひいては株主価値の最大化を図っていくことです。
 このアクションプランは、中計目標の達成、さらにはその後の持続的な成長を確かなものにする大きな取り組みであると考えています。その意味でも、この一年は我々にとって極めて重要な年となります。

北米CVS事業の質的な向上

 グループのEBITDAの約6割を占め、成長のけん引役となっている北米CVS事業では、収益性や資本効率の改善が急務となっています。その鍵となるのは、オリジナル商品の拡大です。インフレが長引き、お客様の価格志向が強まるなか、ナショナルブランドより安く品質も同等、かつ荒利率の高いオリジナル商品の比率を高めることによって収益性の改善を推進していくことが重要です。
 同時に、コストの見直しも必要です。7-Eleven, Inc.(以下、SEI)ではコストリーダーシップ委員会の活動を通じて2023年度に約3億800万ドルのコスト削減を実現しており、2024年度は、当初の3億5,000万ドルから5億ドルの削減へと計画を上方修正しています。これは、販管費だけではなく、原価低減を企図した施策であることから、利益率も改善できることになります。

最適なグループ構造への移行

 グループ構造改革の一環として、昨年はそごう・西武の株式譲渡を行いました。また、スーパーストア(以下、SST)事業では抜本的変革に向けた5つの施策がロードマップに沿って進展しており、収益構造が着実に改善されています。さらに、今後は売上・利益改善策を重点的に進めていくことで、2025年度の首都圏SST事業のEBITDA550億円以上、ROIC4%以上という目標達成を目指すとともに、当社と関連事業会社の経営陣が成長戦略を協議する「SSTコミッティ」において、将来のIPOへの道筋を具体化していきます。

投資家とのエンゲージメント強化

 当社は、以前から株主・投資家の皆様との対話を重視してきましたが、その頻度や密度を高めていくために、2023年度から、各事業の統括責任者が登壇し、中長期的な事業戦略について投資家と直接コミュニケーションを図るIR Dayを開催しています。また、社外取締役と投資家との対話の機会を増やしています。株主・投資家の皆様からのご意見・ご示唆を定期的に当社経営陣や取締役会に報告するとともに、関連する事業会社と共有し、事業会社における経営戦略、マイルストーンの策定に活かしています。
 こうした対話機会の充実や情報開示の進展などについては、海外ロードショーで対話した際に一定の評価をいただいていますが、一方で、連結財務KPI達成に向けた施策の具体的な定量目標やマイルストーンの開示に対するご要望をいただくなど、IR・SR活動や体制の改善余地があることも認識しています。引き続き開示内容の充実や対話を通じて要請に応えてまいります。

「資本コストや株価を意識した経営」を推進

 当社では、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、ROEに加え、セグメント別ROICについても目標を開示しており、それらが連結の資本コストを上回っているか、どの程度スプレッドがあるかについてモニタリングを継続しています。特に、グループの成長の柱となる国内外CVS事業の資本効率は重要であることから、当社とCVS事業を担う3社の経営陣が成長戦略を協議する「グローバルCVS・ステアリング・コミッティ」で各種施策や投資基準の見直しを協議しています。また、SST事業においても、2025年度のROIC目標4%以上に向けた進捗を「SSTコミッティ」で検証しています。
 当社はこのように、各事業会社と適時適切に連携、協議しており、実効性を伴った資本効率改善策につなげていくよう努めています。
 なお、当社の株価について「上値が重い」というご指摘をいただくことがありますが、その要因の一つとして、会計基準がグローバル企業と異なるために過小評価されている可能性があると考えています。当社はJGAAPを採用していますが、SEIはUSGAAP、2024年4月に買収した7-Eleven AustraliaはIFRSと、連結会計処理が複雑化している状況にもあります。そこでCVS事業についてはIFRS適用の検討を開始しています。ただし、SST事業は国内中心のため現状の日本会計基準を想定しています。

セグメント別ROIC
セグメント別ROICの図

(注)グループ内資本・資金取引を調整した管理会計ベース数値

株主還元を拡大

 当社はもちろんのこと、株主の皆様にとっても重要なことは、どのように資金創出力を高め、その資金をどのように成長投資や財務の健全性確保、株主還元に充てるかというキャピタル・アロケーションプランだと考えています。
 このうち、株主還元については、2025年度までの中期経営計画期間においては、国内外CVS事業への成長投資に加え、財務の健全性回復に向けた有利子負債の返済にも一定程度配分することを前提に、 2023年度は1,100億円の自己株式取得を実施しました。さらに2025年度までに、約1,000億円の自己株式取得を計画しています。
 また、小売業としての事業特性を踏まえ、配当金は継続的に増配または維持する「累進配当」とすることを明確にし、フリーキャッシュフローの状況に応じて機動的に株主還元策を実施することにより、 2023年度から2025年度の累計で総還元性向50%以上をコミットしました。加えて、投資しやすい環境を整備し、投資家層のさらなる拡大を図るため、2024年3月1 日を効力発生日とする株式分割を実施しました。
 また、多くの個人株主の皆様は当社グループ店舗を利用いただいているお客様でもあり、より一層、株主・お客様のお立場で中長期的にご支援いただき、当社グループのファン株主となっていただけるよう、新たに株主優待制度を導入しました。これについては、資本コストの観点からも株価のボラティリティ引き下げによる資本コストの適正化や流動性の向上が期待され、株主価値の向上に資すると判断しています。

キャピタル・アロケーションプラン
キャピタル・アロケーションプランの図
  1. ※12023年度から2025年度までの累計値
  2. ※22023年度から2025年度までの累計の総還元性向
  3. ※3自己株取得以外の大規模な戦略投資(M&A等)に充当された場合には金額規模が変動する可能性があります

非財務価値の定量化・指標化を検討

取締役常務執行役員 最高財務責任者(CFO) 丸山 好道の写真

 近年、ESGへの関心の高まりとともに、当社グループにおける「財務価値の源泉である非財務価値とは」と尋ねられることも多くなっています。その際、私は、海外CVS事業の成長の鍵となるオリジナル商品の開発・製造を担う協力メーカーとのバリューチェーンとその構築力、さらには、それをもたらす人的資本がグループ最大の非財務価値と答えています。
 オリジナル商品の投入によって収益力が高まることは前述したとおりですが、今後は改めてバリューチェーンの拡充が財務面でどのような成果をもたらすのかについて定量化の検討を進めていきます。

資本効率への意識を持った人財を育成

 最適グループ構造を実現していくためには、「資本コストや株価を意識した経営」を実践する人財をグループ各社が育成し、実践していく必要があります。
 この課題意識のもと、当社はROICを連結ベースだけでなく事業会社の重要KPIとして設定するとともに、株主・投資家の皆様とのエンゲージメントの内容を事業会社の経営陣にフィードバックしています。
 これらの取り組みを継続してきたことで、バランスシートや資本コストに関する理解は着実に高まっており、特にSST事業においてはROICの目標値を内外にコミットしたことで、現場レベルまでその意味が浸透してきたことを実感しています。さらに、こうした指標によって視座が上がり、経営的な視点を持つ人財も増えています。こうした成果をさらに拡大すべく、今後もグループ各社とともに財務KPIに関する会話を増やしていきます。
 前述したように、2024年度は、中計目標の達成とその後の成長戦略に向けて重要な1年となります。足元の一つひとつの施策を丁寧に、迅速に実施していくと同時に、株主・投資家の皆様との対話を重ねながら、長期的な株主価値の最大化に努め、ステークホルダーの皆様の期待に応えてまいります。