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CFOメッセージ

取締役常務執行役員 最高財務責任者(CFO) 丸山 好道の写真

アップデートした中期経営計画の
目標達成に向けて
着実かつ迅速に改革を進めてまいります。

取締役常務執行役員
最高財務責任者(CFO)
丸山 好道

グローバルな対話力を高めながら改革を推進

 当社グループは、かねてより株主様および多様なステークホルダーの皆様と「グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上」に資する真剣かつ建設的な対話に努めています。これら対話を通じていただいたご意見やご指摘、経営環境の変化をもとに、当社グループでは、2022年6月から、社外取締役が過半数を占めるようになった取締役会において、「中期経営計画2021-2025(以下、中計)」の進捗状況を継続的に議論してきました。そして、その結果を「中期経営計画のアップデートならびにグループ戦略再評価の結果」としてとりまとめ、2023年3月に社内外に発表しました。
 ここにおいて、中計策定時に定めた「2030年に目指すグループ像」を一部改訂し、「セブン-イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する、『食』を中心とした世界トップクラスのリテールグループ 」としました。この目指す姿に対しては、 Speedwayの買収やベトナム事業への追加投融資などを通じて着実に近づいている実感を得ています。一方で、事業ポートフォリオ改革も着実に進め、その結果、2022年度はエネルギーコストの上昇や円安などによるコストプッシュ型のインフレが進行しましたが、連結業績は営業収益および各段階利益ともに計画を上回り、過去最高益を更新しました。
 グループ戦略のアップデートは、これら改革の成果を踏まえたものですが、グループの本源的価値と、時価総額に表される株主価値の間には残念ながらまだ乖離があり、改革のスピードが遅いという声もあります。とりわけ海外の投資家からこの点を強く指摘されていることはステークホルダーの皆様もご承知のとおりであり、我々も真摯に受け止めなければなりません。また、そうした状況であればこそ、当社グループとしても、事業のグローバル化と同時に、コミュニケーションのスキルを高めながら、より丁寧なIR・SR活動を目指しています。例えば“計画どおり実施したこと”を事後報告するだけではなく、改革の針路や計画、予定を早め早めに発信するなど、コミュニケーション文化の違いを踏まえた対話に努め、引き続き改革に注力してまいります。

目標達成に向けた基盤固めの年

取締役常務執行役員 最高財務責任者(CFO) 丸山 好道の写真

 中計の進捗については、5年間の前半3年間で構造改革を完遂し、成長戦略分野に経営資源を集中投下しながら、後半の2年間で新たな成長に向けた戦略投資や株主還元を強化していく計画です。
 3年目となる2023年度は、中計に基づいて投資したインフラが順次稼働を開始する、中計目標の達成に向けた基盤固めの年であり、後半の2年間に向けて、企業価値向上に向けた真価が問われる期間であると認識しています。
 具体的には、グループの核となるセブン-イレブン事業のうち、北米のセブン-イレブンでは、フレッシュフード強化に向けたデイリー工場がヴァージニア州で立ち上がり、以降も新工場の展開を進めてまいります。国内のセブン-イレブンでは、7NOWデリバリーのアプリが立ち上がり、お客様がより便利にお店の商品を購入いただける環境が整備されます。また、グループの顧客情報基盤である「7iD」の各業務システムとの連携も進んでおり、今後はセブン-イレブンアプリとイトーヨーカドーのネットスーパーとの相互送客を実現するなど、グループで合計2,800万人にのぼる会員情報を活用したシナジーおよび新たなビジネスの創出を強化してまいります。
 一方、構造改革を進めてきたスーパーストア事業(以下、SST事業)においては、抜本的な変革に向けた施策の一つとして、惣菜や冷凍食品など「食」を強化するための大型のプロセスセンターやセントラルキッチンなどの戦略投資を進めており、これらの施設が順次稼働することで、首都圏SST戦略が大きく前進し、収益性の向上を見込んでいます。

3つの視点で最適な財務戦略を計画

 これら成長投資に関連して、当社は、中計アップデートにおいて、キャピタル・リアロケーションの方針もアップデートしました。
 大きな方向性としては、営業キャッシュフローの増大を図りつつ、国内外のCVS事業の成長投資にフォーカスするとともに、財務健全性も確保、併せて株主還元も充実させるというものですが、財務戦略における量的拡大、質的向上、健全性確保という3つの視点は従来変わりません。
 量的拡大に関しては、純利益ベースで成長を捉えるためにEPS(1株当たり純利益)成長率を重視するとともに、フリーキャッシュフローの拡大も重要な指標です。この点に関しては、Speedwayとの統合シナジーが順調に推移し、国内外のCVS事業のキャッシュ創出力も高まっていることから、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローともに2022年度は期首計画を大きく上回りました。
 質的向上の点では、グループ各社の拠って立つ指標としてROIC(投下資本利益率)、とりわけWACC (資本コスト)との差であるROICスプレッドを重視しています。この点に関しては、足元の好業績およびグループ戦略の再評価結果を踏まえ、ROE、ROICなど中計の目標値を上方修正しました。
 財務の健全性に関しては、Speedwayの買収に際して、全額を有利子負債で調達したことで、一時的に健全性が低下したことから、その早期回復に取り組むという意思を内外に示すために、Debt/EBITDA倍率を指標としています。これに関しては、今回の中計アップデートで2025年度の目標値を2.0倍から1.8倍未満へと修正しています。
 このように、財務戦略全体として資本効率性やバランスシートの健全化が進みつつありますが、特に質的な観点、投資効率についてはまだまだグローバルな水準には達していないと考えています。
 Speedwayの買収という思い切った投資が実現できたのは、当時(2019年度)のDebt/EBITDA倍率が約1.5倍、格付もAA格が中心という強固な財務基盤を背景に、円滑かつ有利な資金調達が実行できたことが大きな要因であったことを勘案すれば、今後の戦略的選択肢を拡げていく意味でも、また十分な株主還元を続けていくためにも、財務の健全性回復は重要です。
 一方で、ROEなどの資本効率を追求する経営の観点からは、「Debt/EBITDA倍率が1.8倍未満というバランスが最適なのか」という一段高いレベルでの議論を深めていく時期になっています。

連結財務数値目標 ※セールリースバック影響除く
財務の量的拡大のグラフ
財務の質的向上のグラフ・健全性確保のグラフ

グローバル経営を支える人財育成に注力

 これら財務の観点を事業会社と共有していくこともますます重要になっています。当社は、2005年に持株会社になって以来、当社がグループ各社の結節点となって連携を強化し、シナジーの創出に力を注いできました。ところが、財務に関しては従来現場の営業利益へのこだわりが強く、そのこと自体は大事なことですが、資本コストという概念がまだ十分には浸透し切れていないという課題があります。特に、改革を進めているSST事業においては、今後3年間の成長投資はSST事業の資産圧縮や強化した食のインフラを活用したキャッシュインで賄うことを宣言しており、グループ全体の財務状況を踏まえた規律ある資本の活用が求められます。
 また、このことは、グループ経営を担う人財面での課題でもあります。株主、投資家の皆様との対話のなかでも、小売業の現場を支える高い商品開発力やオペレーション力を担う人財が育っていることは認めつつ、海外事業が売上の過半を占めるグループの資本政策や投資計画を担う人財は不十分との指摘もあり、戦略投資の重要なテーマと考えています。

企業価値と株主価値の双方を視野に

 エネルギー価格や原材料費の高騰による世界的な物価上昇に、地政学リスクの拡大なども相まって、お客様の消費心理はこの先も不透明感がぬぐい切れません。
 そうしたなかで、当社グループは、「食」を中心としたグループシナジーの創出によるさらなる成長を通じた企業価値と株主価値の向上を約束しています。
 その約束を果たすため、また、果たせることを皆様に確信いただくために、当社グループは小売業の原点である地域社会のニーズ・ウォンツに応えるビジネスを徹底するとともに、冒頭でもお話ししたように、日本をはじめ世界各地で発現されるグループとしての「食」のシナジーの在り方や方針、進捗、実績をグローバルに発信することで、当社グループへの期待を創出してまいります。セブン&アイグループが生み出す価値にどうぞご期待ください。