ホーム サステナビリティ 明日にいいこと。つなげる、つづける。 「7つの重点課題」活動レポート グループの店頭で回収したペットボトルが『肌着』になるまで

「7つの重点課題」活動レポート

2021.5.21

  • 課題2
  • 課題3

グループの店頭で回収したペットボトルが『肌着』になるまで

日本における廃プラスチックのリサイクル事情について、皆様はどのくらいご存知でしょうか?
2019年の廃プラスチック総排出量は850万トンにもおよび、リサイクル率は85%と発表されました(参考:プラスチック循環利用協会)。しかし、実際にはその内の約61%は焼却からなるエネルギーへの変換(サーマルリサイクル)で、モノからモノへと生まれ変わるリサイクルは約25%しかありません。サーマルリサイクルを除いたリサイクル率はOECD(経済協力開発機構)加盟34か国の中で比較すると、27位と低いのが現状です。そのため日本においてもペットボトルを原料としたポリエステル再生糸など資源の再生循環が可能なリサイクルに注目が集まっています。このように限りある資源を循環させる「循環経済社会」を実現し、環境への負担を減らすことが重要です。

今回ご紹介するのは、セブン&アイグループの店頭でお客様から回収させていただいたペットボトルを“肌着”として再生させた、快適な着心地のインナーシリーズ「セブンプレミアム ライフスタイル ボディクーラー」。持続可能な資源活用に強い関心を持つライター岸が、環境に配慮した商品開発・改良について、イトーヨーカ堂販売事業部の木原基博さんと衣料雑貨部の成冨英子さんにお話を伺いました。

Chapter 1

多くの協力があって実現する「循環経済社会」

セブン&アイグループが発表した環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』。そのテーマの一つであるプラスチック対策の取り組みとして、セブン&アイグループの店頭にペットボトル回収機を設置し、2020年度には年間で約3億3,000万本ものペットボトルを回収しました。回収したペットボトルは、新しいペットボトルに再生されたり、セブン&アイグループのプライベートブランド商品「セブンプレミアム」のパッケージなどに使用されたりしてきました。
そして、2020年2月からは、「循環経済社会」を目指すべく、セブン&アイグループの店頭で回収したペットボトルを原料とした再生糸を作り、ポリエステル繊維の一部にその再生糸を使用した肌着「セブンプレミアム ライフスタイル ボディクーラー」を展開しています。

このボディクーラーは、セブン&アイグループで回収したペットボトルを中心に使用して作ることができます。それが実現できるのも、グループ全体でペットボトル回収機を1,001台設置(2021年3月時点)し、多くのペットボトルを回収できているためです。さらに、この回収機を使用してペットボトルリサイクルをすることで、nanacoポイントが溜まるのでお客様にも還元される取り組みをしております。回収したペットボトルはお客様のご協力もあり汚れが少ない物が多いため、質の高い肌着を作るための不純物が少ないチップ・再生糸にすることができています。
では、ペットボトルからどのようにして肌着が生まれるのでしょうか?回収から製品化への流れについてご説明したいと思います。

セブン&アイグループの店頭に設置されているペットボトル回収機を使うと、簡単なボタン操作でペットボトルを自動圧縮することができます。
回収機に投入されたペットボトルは回収業者様により、リサイクル工場に運ばれます。ここでは粉砕機を使ってフレーク化し、アルカリ洗浄で表面の汚れを除去したのち、さらに細かくチップ化されます。その後、検査を経て糸工場に輸送されると、高温で溶融し、ポリエステル糸に再生されます。そして、生地となり縫製され、商品として店頭に並びます。

「ペットボトル回収機をご利用くださっているお客様の姿を店頭で拝見するたび、頭が下がる思いです」と話すのは、立ち上げから、「ボディクーラー」の商品開発に携わってきたイトーヨーカ堂衣料雑貨部の成冨英子さん。
キャップを取り、パッケージをはがして、汚れが少ない状態で、頻繁に持ってきてくださる方が多く、とても感謝しています。リサイクル工場でも、透明と色付き、異物の有無などを丁寧な仕分けをしていただいています。こうしたお客様をはじめ、多くの関係者の方のご協力があってこそ、インナー素材に欠かせない純白に近いチップを生み出すことができています」

Chapter 2

ペットボトルリサイクルから質の高い肌着が作れる理由

日本で回収されるペットボトルは、他国に比べて全体的にきれいな状態ですが、「その中でも、セブン&アイグループのペットボトル回収機で回収されたものは特に汚れが少なく、キャップやラベルもしっかり分別された状態のものが多い」とペットボトル回収業者の方は言います。
だからこそ純白に近く、繊細な肌着としても質の高い商品としてリサイクルすることができているのです。そんなお墨付きのリサイクルペットボトルから作られる「ボディクーラー」ですが、商品として再生されるまでには、実に約1年の年月を要するのだそうです。

ボディクーラー

「ボディクーラーの製造は、通常の商品に比べてペットボトルから繊維への再生の工程が加わるため、その分だけ商品化には多くの時間がかかります。当初は商品化・納品までの時間が長く苦心しましたが、製造にかかる時間を少しでも縮められるよう、サプライヤー様とも検討を重ねてペットボトル回収後のリサイクル作業から商品化までのスケジュールを見直しました。そうすることでお客様のニーズの変化に寄り添う商品開発ができ、さらに、お客様に納得いただけるクオリティを担保した商品を作り上げることに尽力しています」と成冨さんは話します。

近年、肌着の市場規模は拡大中。中でも婦人用インナーの需要は増加傾向にあります。購入先もスーパーマーケットが圧倒的なシェアを占めている中、このペットボトルから生み出される再生糸を使って肌着を製作するというアイデアが生まれました。2020年2月ペットボトルを再利用した素材を原料の一部に使用した「セブンプレミアム ライフスタイル ボディクーラー」の発売に併せて記者会見を開いて商品説明を行ったところ、「ペットボトルから作られた肌着」は、その日のうちに、テレビ局や新聞社など多くのメディアで取り上げられ、大きな注目を集めました。
この循環経済社会の取り組みをけん引し、市場の動向にいち早く適応してきたイトーヨーカ堂 販売事業部の木原基博さんは、次のように話します。

「さまざまなメディアに取り上げていただき、環境問題に対する関心の高さを実感しました。ペットボトルを原料とした再生糸を作り、それを使って商品化するとなると、通常の商品と比べ製造が大変であることは開始当初からわかっており、最大の課題でもありました。しかし、小売業としての社会的責務は何かと考えた時、やはり地球の環境問題への対応は不可欠ですので、これまで全力で取り組んできました

Chapter 3

新しい生活様式のニーズを叶えた、進化系「ボディクーラー」

2021年2月、新たに進化した「2021 セブンプレミアム ライフスタイル ボディクーラーインナー」が発売されました。全40アイテム中、25アイテムで、ポリエステル繊維の一部に、ペットボトルを原料とした再生糸を使用。環境に配慮しながら、汗ばむシーズンも快適な着心地を実現したラインアップが揃っています。

ボディクーラー 汗すぐサラリ

「肌着としての衣料で需要が高かったのは、レディースのカップ付きインナーです。これまでは、しっかりとバストをホールドするワイヤーブラを付けていた女性からも、“リラックス感のあるものがいいけれど、快適な機能性も欲しい”という声が多く挙がりました」

こうしたお客様の声をもとに生まれたのが「ボディクーラー 汗すぐサラリ」という新シリーズです。夏場、気になるのは、やはり汗とニオイ。吸汗速乾性と通気性を高めることで、快適な着心地を叶えながら、大汗にも対応したフレンチ袖にもさらなる改良を加え、前ワキの汗をしっかりカバーし、気になる汗じみを出さない仕様を採用。また、生地全体に抗菌防臭加工、特に気になるワキ汗の汗取り部分には効果の高い消臭加工を施し、ニオイ対策の強化を図っています。ペットボトルを原料にした環境素材(ポリエステル再生糸)を使用しながらも、実用的かつ高い機能性をもった衣料品を作り上げることが実現できたのです。

Chapter 4

未来に向けて、循環経済社会の実現を加速させていく

循環経済社会の実現に向けた取り組みについて、木原さんのもとにはさまざまな声が寄せられているようです。
「ポリエステル再生糸を使って、こんなに柔らかい肌触りのインナーができるなんて、と驚かれる方が非常に多いですね。店舗の従業員からは、衣料品と一緒にペットボトルを陳列するなど工夫することで、お客様に対して商品の魅力をより訴求しやすくなったという声が挙がっています。あと、これは業界全体について言えることですが、ポリエステル再生糸やオーガニックなど、環境に配慮したものを使おうという意識が高まっていると思います」
今後の展開について尋ねると、木原さんは、「セブンプレミアム ライフスタイル ボディヒーター」について触れ、こう話してくれました。「ボディヒーター」は、「ボディクーラー」と同様、再生ペットボトルを原料としたポリエステル再生糸を使った、秋冬向けの肌着シリーズです。

「今年の秋冬シーズンからは、「ボディヒーター」のソックスにもポリエステル再生糸を使用する予定です。今後は、ルームウェアなども含めて、「ボディヒーター」、「ボディクーラー」の全商品に、お客様から回収させていただいたペットボトルを原料とするポリエステル再生糸を使用していきたいと考えています。5年先、10年先、あるいはもっと先の未来において、環境に配慮した商品がよりスタンダードになるために、サステナブルな商品開発していくことが、自身の役目だと思っています。地球環境のためにも、お客様と一緒に、循環経済社会への流れを加速させていきたいです」

成冨さんも、「自社で、お客様から回収させていただいたペットボトルから肌着を作っているということが強みだと思っているので、もっと拡大していきたいです」と熱く語ってくれました。
お客様のニーズを具現化し、進化を遂げた「ボディクーラー」。2021年の新商品は発売当初から売れ行きが良く、その人気から、お客様の環境に対する意識の高さがうかがえました。

今回の取材では、実際の商品も拝見したのですが、驚いたのは、ペットボトルを原材料としたポリエステル再生糸を使用していながら、いつまでも撫でていたくなるような優しい肌触りだったこと。自宅で過ごす時間が多い中、私も早速、「ボディクーラー」を一着購入してみました。成冨さんの言う、快適フィットな着心地を体感した今、手放せなくなりそうです。

Writer:岸由利子
Photographer:落合明人
イトーヨーカ堂
販売事業部

木原 基博

イトーヨーカ堂
衣料雑貨部 マーチャンダイザー

成冨 英子

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