迅速な営業再開を可能にしたグループ一体となったパワー
一方、セブン&アイ HLDGS. 本部では地震発生直後に「震災対策本部」を立ち上げ、傘下各社店舗の被害状況の把握、被災地への緊急支援物資の配送、被災店舗の営業再開に向けた対応に傾注。刻々と入ってくる情報から、店舗だけでなく、物流拠点、お取引先の生産工場など事業インフラも大きな被害を受けたことが次第に明らかになっていきました。セブン‐イレブンでは、東北・北関東地域に展開する20の物流センターが被災。おにぎり、お弁当などの専用工場は84工場中、41工場が被災し、生産できない状態に陥りました。イトーヨーカドーでは、東北地方にある9カ所の物流拠点のうち3拠点が被災し、機能を停止していました。それだけでなく、被災地域が広範囲にわたり、燃料、電力、物流など産業インフラそのものにダメージが広がっており、商品調達も配送も、簡単には代替機能が見つけられないという、過去に経験のない事態に直面しました。
被災地には甲信越、関東圏から商品を送り込み、関東圏には関西圏から補充するなど、全国一体となった供給体制を整え、おにぎり、弁当などは、量を確保するためにアイテムを絞って提供しました。
また、震災後には首都圏などで計画停電が実施され、食品をはじめ多くの製造業で工場の稼働率が大幅に落ち込み、商品供給がさらに不安定化。それとともに、お客様の不安感も高まり、首都圏でも、飲料水やカップ麺などが買いだめによる品薄状態になりました。
この中でも、セブン&アイ HLDGS. はグループシナジーを活かして商品確保に傾注しました。各社トップも交えた緊急対策本部で、毎日、各社が情報を共有し、商品情報を集約。商品調達の際もグループ全体の視点で交渉を進め、各社に配分することで、通常時以上の商品供給を続けることができました。
このようなグループ一体となった体制を迅速に構築できた背景には、「セブンプレミアム」を通じ、各社の商品担当者が日常的に情報共有を行い、商品開発を進めてきたグループMDの構築があります。さらに、現在は、海外からも生産情報を取り、調達を図っています。これも、ワインなどセブン&アイグループが取り組んでいるグローバルMDの実績が活かされています。飲料水は、海外のセブン‐イレブン各社からも情報が寄せられるなど、多大な協力を得ることができました。
グループ各社のふだんの取り組みも、緊急時に多くの成果を生み出しました。たとえば、セブン‐イレブンで取り組んでいる「チルド弁当」は、長時間味や鮮度が落ちないため、今回の緊急対応で関東甲信越地区から東北地方へお弁当を供給する際、長途の配送にその優位性を発揮しました。また、東北地方産の一部原材料の供給が途絶したため生産できなくなったメニューも、原材料管理データベース「レシピマスター」システムにより、商品ごとの原材料やメーカー、包装材料の種類や量を一元管理してきたため、即座に生産できる商品、原材料や資材の残量などを把握して、変更や代替の対応を図ることができました。これにより、弁当類などを充実させて提供していくことができました。
イトーヨーカドーでは、緊急物流体制を組んで、震災の翌日3月12日には被災した全店で営業を再開(一部店舗は部分営業)。日用品および生鮮品は首都圏から、また冷凍食品は首都圏と北海道から東北エリアに商品を届ける体制を構築し、3月13日より供給を開始。深刻な被害を受けた仙台生鮮センターについては、仙台市内に代替拠点を暫定的に開設して対応を図りました。
震災発生当時、被災地のガソリン不足により、商品はあっても帰りの燃料がなく車が出せないという、遠距離輸送が難しい状況にありました。グループでは「いま必要な生活物資や食糧を届けることが最優先」と、各行政に積極的に働きかけ、緊急車両としての認可を得て配送車両への燃料補給を確保。
さらにイトーヨーカドーでは延べ約100台の配送車両を手配し、メーカーに直接商品を引き取りに行くなどして、供給を絶やすことはありませんでした。前出の石巻あけぼの店では、本部との通信機能が途絶えた中、商品の納品車が来たことで、運転手に必要な商品のリストを渡し、本部と連絡を取ってもらうなどの工夫をし、営業を継続できたのです。
それとともに、本部や各店舗から応援スタッフを派遣。ヨークベニマルの物流拠点である福島の配送センターには、グループ各社から応援が入るなど、グループをあげて、被災地店舗の一日も早い復旧を目指しました。
「災害などの緊急時にも、お客様の日常生活に欠かせない商品を提供し続けることが小売業の使命」、セブン&アイ HLDGS. はその使命感のもと、グループの力を結集して、緊急時対応に取り組みました。今後とも、各社一体となって持てる能力をよりいっそう効果的に発揮し、お客様の「ふだんの生活」を支えていきます。