このページの本文へ移動します

[対談] イノベーションの視点

全体最適を一段と進化させる「オムニチャネル戦略」

鈴木 グループの横串を通すという点では、今年の秋に本格的にスタートを予定しているオムニチャネルの取り組みが、重要な役割を果たすと考えています。

伊藤 リアルとネットを融合するオムニチャネルの取り組みは、非常に重要だと思います。リアルな店舗だけで個別最適を打破しようとするのは困難ですが、情報や通信というのは、個々の会社を貫いて、つないでいく機能を持っていますから、真の全体最適に向かっていく有力な手段になると思います。

鈴木 オムニチャネルによって、グループの百貨店、スーパー、専門店などあらゆる店で売っている商品が、近くのセブン‐イレブンで注文したり、受け取ったり、返品したりできるようになります。お客様にとっては、今まで近くになかった百貨店や専門店が、身近にある場合と同様に利用できるようになります。また、各社にとっては、コストをかけて新たに出店しなくても、マーケットが広がるという効果も生まれます。今、準備を進めている最中ですが、何よりも心強いのは、セブン‐イレブン加盟店のオーナーさんたちが、大きな期待を寄せてくださっていることです。百貨店商品など取り扱える商品が広がり、商品の受け取りにご来店される機会も増えると、大変興味を持っていただいています。

伊藤 鈴木さんは、オムニ戦略を通じて、「究極の接客」を実現していくとおっしゃっていますね。ITを従来の事業と切り離してとらえるのではなく、接客を格段にレベルアップするためにITがあるというように、事業の中にしっかりと位置づけている点も、大変重要だと思います。
今後、グローバル競争に打ち勝つためには、ITやICT※への視点で「攻めのIT」を推し進めていくことが大切です。そういう視点からもオムニ戦略は素晴らしいと思います。

鈴木 グループ各社も、情報共有を徹底し、実験を進めてきた結果、各社ともその重要性を認識して取り組んでいます。

伊藤 ロフトやフランフランなど、グループが擁する個々のブランドのブランディングも大切になると思います。各ブランドは、それぞれの「匂い」のようなものがあるので人気を呼んでいるわけですから、これが平準化されてしまうと逆効果になりますね。
 一方、お客様はオムニチャネルでのサービスを通じて、グループ全体を評価することになります。たとえば、セブン‐イレブンの店頭で靴を試しに履いてみる時、リアルな接客対応について、お客様は百貨店などと比較して、やはり百貨店の方が良かったということになると、却ってグループ全体のブランドイメージが損なわれてしまいます。「究極の接客」の具体像を、グループ企業や加盟店オーナーさん、働く人たちと共有しないと、個店間や担当者間でサービスレベルのバラツキが生じてしまいます。グループ全体がセブン&アイというブランドに対する意識を高めて、誇りを持つことで、自発的に仕事のレベルを上げていくようになれば、エクセレントなグループになると思います。

鈴木 新しい商品やサービスを提供し続けることで、お客様が持つ業態やお店に対する印象はどんどん変えていくことが可能です。
 オムニチャネルなど新しい挑戦を通じて、環境への全体最適化と個々のブランド力の強化を進めることで、グループ全体のブランドイメージをいっそう高めていきたいと考えています。今日は、貴重なご意見をお聞かせいただき、ありがとうございました。

※ICT= ITの概念をさらに進めた情報・通信に関する技術の総称。

  • 全3ページ
  • 1
  • 2
  • 3