野口 「ブルーオーシャン」を見出す新しい挑戦を数々手がけている中で、今、オムニチャネルに力を注いでいるとうかがっています。
鈴木 「オムニチャネル」は、10年ほど前から私の言ってきた「リアルとネットの融合」そのものです。昨年、グループ各社の幹部が先行しているアメリカに視察に行きました。実際にその取り組みを見ることで、その後、グループ全体で足並みを揃えてオムニチャネルを推進していく体制も整ってきました。
グループのあらゆる店舗がお客様との接点になることで、リアル店舗とネットの垣根を感じることなく、24時間いつでもどこにいても、どの業態で扱っている商品でも買えるようにするのが、私たちの考えているオムニチャネルです。そうなると、お客様にとって業態間の垣根もなくなりますし、時間や場所の制約もなくなりますから、小売業のあり方が一変すると考えています。
野口 まさにチャネル間の垣根をなくして、あらゆる(=オムニ)チャネルが一体となるわけですね。
鈴木 私たちのグループは、百貨店、スーパー、コンビニ、専門店など他の流通グループにはない多彩な業態が揃っています。また、1万7000店近くのセブン‐イレブンをはじめ、全国に多くの店舗を擁しています。
それから情報通信システムや物流システムなど事業インフラの点でも、独自の基盤を築いてきました。これらは世界的に見ても他に類がありません。オムニチャネルの推進にあたっては、これらがすべて活かせますから、とても有利な立場にあると考えています。
鈴木 今、少子高齢化が進み、国内市場が収縮していくので大変だという声が、あちこちで聞かれますが、野口さんはどうお考えですか。
野口 従来と同じ発想でやっていったら、まさにマーケットが小さくなることで競争が激化していくでしょう。
しかし、独自の視点で、他としっかりと差別化できるような商品やサービスを生み出していけば、新たな市場が創造できるので、少子化や高齢化は決してマイナス要因だとは思いません。
鈴木 人口減少や高齢化という変化が生じれば、そこには必ず新しいニーズが生まれます。それに応える商品やサービスの提供を行っていけば、成長の途が拓かれると、私は確信しています。ですから、変化を恐れずに、新しい挑戦をするように、グループ各社にもつねづね言っています。
野口 たとえば私が奉職している大学という産業にしても、少子化による受験生の減少は脅威だと盛んに言われています。しかし、見方を換えれば、子どもが多い時代より一人当たりに投下できる教育費用は増えてきます。ですから、そういう親のニーズや、受験生自身のニーズにマッチした新しい対応を図っていけば、成長は可能です。
鈴木 まったくその通りですね。野口さんのお話をうかがって、新しいことに挑戦し続けることの大切さを確信しました。本日はありがとうございました。