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[対談] イノベーションの視点

多様な業態と数多くの店舗が優位性を発揮

鈴木お客様のお買物全体の中でどれだけのシェアを占めていくかという視点で考えると、私どものグループのように、コンビニ、スーパー、百貨店、専門店など多様な業態を擁していることは、ますます大きな意味を持つようになります。

石黒それは、たいへん大きな強みだと思います。ネット市場が拡大してきた結果、ネットビジネスもお客様中心に考えなければ成功しないということが見えてきました。お客様の1日の行動を考えれば、ネットだけでお買物が完結することなどあり得ないといえます。たとえば、会社勤めの人は帰りにセブン‐イレブンに寄るでしょうし、イトーヨーカドーやヨークベニマルでも買物をするでしょう。ネットで注文した商品を、近くの店舗で受け取ることができるようになれば、お客様の利便性は高まります。

鈴木昨年末から広島で、そごう・西武のショッピングサイトで取り扱う銘菓をネットで注文して、広島地区にある470店舗のセブン‐イレブンで受け取ることができるサービスの実験を開始しました。お客様からは、身近なセブン‐イレブンで百貨店の商品を買うことができると好評です。このようなグループ各社の連携が進めば、お客様により大きな利便性を提供できるようになると考えています。

石黒アメリカでオムニチャネルに取り組んでいる多くの小売業は、店舗数がそれほど多くなく、業態も一業種で完結していますので、商品やサービスについてお客様の利便性は限られています。この点、さまざまな業態を擁し、多数の店舗を展開しているセブン&アイHLDGS.ほど、オムニチャネルに有利な企業グループは見当たりません。リアルとネットの融合によって、世界で最も強力な顧客中心のサービス網を構築できるのはセブン&アイをおいて他にないと思います。

商品力とともに接客力もよりいっそう重要に

鈴木私は、オムニチャネルを成功させていくうえでは、商品やサービスの質や新しさが、よりいっそう重要になってくると考えています。この点はどうお考えですか。

石黒オムニチャネルは、重要な顧客対応のサービスですから、そのベースとなる商品力や接客力がなければ勝負になりません。セブン&アイがこれまで追求し続けてきた、お客様のニーズに合った新しさ、上質な商品はますます大切になると思います。
 新しさという点では、セブン&アイはこれまでも、潜在ニーズをいち早く見極めて実現してこられたと思います。たとえば、セブン‐イレブンの公共料金収納サービスや銀行ATMの設置などもそうです。これらのサービスも、実際に形となって提供されるまで、お客様ははっきりとこういうサービスがほしいとは考えていなかったでしょう。しかし、形になってみると、自分が望んでいたのはまさにこれだったと気づきました。このように、お客様には具体的に想像できない潜在ニーズを顕在化させていくイノベーションの力が、オムニチャネルの成功には不可欠です。

鈴木リアルとネットの融合には、リアル店舗で接客をする販売担当者もネットについて理解を深める必要があるかと思います。eコマースだけの仕組みをつくるなら、外部のITの専門家などにご協力いただけばいいと思いますが、リアルとの融合となると、商品を調達する部門の人も、売場の人も、ネットでどんなサービスができるか、お客様はネットに対してどんなニーズをお持ちかなど、積極的に情報をとることが必要でしょう。

石黒お客様の中にはデジタルが苦手という方もいるはずです。そのようなお客様に対しては、セブン‐イレブンやイトーヨーカドーに寄っていただいた折に、「ネットを利用すればお店にはないこういった商品も注文でき、こ のお店で受け取ることができますよ」とお声かけして、実際にお客様の注文をサポートすることも必要になるでしょう。また、お客様にお声かけする際に、そのお客様の好みや、日頃どんな商品を買い求めているかといった傾向などがわかっていて、それに合わせたご案内ができれば、よりいっそうお店や店員に対する信頼度や好感度が増すでしょう。お客様一人ひとりを対象にしたデジタルマーケティングの強みが、そこで発揮できます。

鈴木リアル店舗がお客様との接点として重要な役割を果たしていくわけですから、そこでの接客は、従来以上に大切になりますね。商品の品質がどんなに良くても、接客に満足できなければ、お客様はがっかりしてしまいます。そのために販売に携わるものが心がけることはどういったことでしょう。

石黒お客様中心に考えるという点では、従来のセブン&アイHLDGS.の考え方と基本的に変わるところはないと思います。そこにオムニチャネルという新しい顧客対応の手段が入ってきただけです。オムニチャネルはあ くまでも販売を助ける手段なので、お客様がどんな商品やサービスを望んでいるかを理解するということが接客のポイントになるという点は従来と変わりなく、接客の基本を徹底することが重要でしょう。
 ただ、同じ接客と言っても、従来はお店に見えたお客様に対する接客だけを考えていたのですが、これからはお店の外にいるお客様への接客も大切になってきます。たとえば、商品をお客様の自宅にお届けする配送担当者も、訪問先でお客様の次のご注文をうかがったり、新しい商品やサービスをおすすめするなどの接客をすることが重要になります。

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