鈴木 女性の中にも、働くことにたいへん高い意識を持っている人と、そうではなく早く結婚して家庭に入った方が幸せと考えている人の間で、働くことに対する意識のギャップが広がっているようにも思いますが。
岩崎 確かに、女性たちに話を聞くと、バリバリ働きたいという人から、そこそこ働ければいいという人まで多様です。その中で私が問題だと思うのは、たいへん高い 能力を持っているのに、それを活かせる職場が見つからない女性が大勢いる点です。あるアメリカのシンクタンクが高学歴の女性を対象に調査を行ったところ、 日本では高学歴の女性社員のうち4人に3人がキャリアに行き詰まって会社を離れているという結果が出ました。アメリカやドイツでは、育児のために辞める人 が多かったそうです。
日本では、子育てと仕事を両立できるよう支援政策を実施してきましたが、これは子どもを増やすという側面に力点が置かれていて、女性の能力を活用すると いう面が不十分でした。そのため、能力が高く、働くモチベーションも高いのに、働いていない女性人材がたくさんおり、その数は600万人いると言われてい ます。この人たちが希望に合った就職ができれば、所得の総額は4兆円にもなると推計されています。消費支出も増えるわけですから、日本の経済はもっと豊か になります。
鈴木 そういう人材が活用されていないのは、 たいへんな社会的損失ですね。
岩崎 優秀な人材でも仕事からしばらく離れていると、再就職が困難になりますから、日本女子大学では、リカレント教育※ 課程を新設し、東京商工会議所などと一緒になって、そういう人材を企業に紹介していく取り組みを始めています。
鈴木 なるほど、それはたいへん重要な取り組みですね。
今日は、女性の活用について、いろいろと参考になるお話をうかがうことができ、女性の能力を活かしていくことは、企業の成長ばかりか経済の活性化にとっても、たいへん重要な課題だと改めて認識しました。本日はありがとうございました。