[対談] イノベーションの視点

予定調和を壊すことがお客様への新鮮な提案になる

数々の名曲の作詞や社会現象ともいえるブームをいくつも巻き起こし、時代の最先端を走り続けているクリエイター秋元康氏。激しく変化し続ける社会の中で、つねに人の心をとらえる「提案」を送り出すには?人の心に響く「新しさ」とは?消費飽和と呼ばれる時代を打ち破る発想の秘訣をうかがいました。

HOST

セブン&アイHLDGS.
CEO兼会長
鈴木 敏文

GUEST

作詞家/放送作家/音楽プロデューサー

秋元 康 氏

(あきもと・やすし)

1956年生まれ。高校時代より放送作家として多くの人気TV番組の企画構成を手がける一方、作詞家としても美空ひばり「川の流れのように」をはじめ、数多くのヒット曲を送り出すとともに、アイドルグループAKB48などの総合プロデューサーとしても手腕を発揮。第41回日本作詩大賞(2008年 ジェロ「海雪」)受賞。2005年京都造形芸術大学教授に就任し、07年より同大副学長就任。日本放送作家協会理事長、日本著作権協会(JASRAC)理事も務める。

●小説『象の背中』、『企画脳』など著書多数

2011年5月収録

勝ち残っていくために
変化に対応し続ける

鈴木 今年のバレンタインデー商戦では、秋元さんのご協力もあり、グループ5社共同(イトーヨーカドー、セブン‐イレブン、そごう・西武、セブン&アイ・フードシステムズ、セブンネットショッピング)で取り組むことができました。「『告白』から『感謝』へ」という今までにない切り口は、多くのお客様の心に響き、グループでも大きな成果をあげることができました。また、母の日のプロモーションでは「ありがとうを声に出そう。」というテーマで、母と娘がいっしょに楽しむという、かつてないコンセプトをご提案いただき、こちらも大きな反響でした。

秋元 エンタテインメントという、小売業とはまったく違う視点からお手伝いさせていただき、僕も勉強になりました。

鈴木 まず秋元さんにうかがいたいと思っているのは「長期計画」の重要性についてです。昨今のように世の中の変化が激しくなってきますと、計画を立ててもその通りにはうまく運べません。秋元さんが活躍されてきたエンタテインメントの世界も、たいへん変化が激しいと思いますが、秋元さんは長期計画ということについてどうお考えですか。

秋元 セブン&アイHLDGS.は、スローガンとして「変化への対応と基本の徹底」をあげていらっしゃいますが、僕も変化に合わせてこちらの対応をどんどん変えていかないと、勝てないと考えています。
消費ということでは、いまの若い人たちと、僕のような50代ではまったく感覚が違います。たとえば、11歳離れた僕と妻では、モノを所有するという観念が全然違います。もちろん、非常時にはそうしたことはできませんが、例えば、僕は、電球やトイレットペーパーなどの必需品は、予備を家に置いておきたいと考えました。しかし、妻は、近くにコンビニがあるのだから、なくなったら買いに行けばいいという考え方です。また、音楽なども、僕たちの世代はLPアルバムを買い求めて、好きなアーティストの世界を楽しんでいました。ところがいまの若者は、ほしい曲だけをネットでダウンロードして楽しみます。
5年、10年経つと「価値観」にも大きな違いが出てくるので、長期計画を立てても、それに縛られない柔軟性が大切だと思います。

鈴木 おっしゃる通り、消費に対する感覚は、全然違ってきました。私は高度成長期から現在までの消費パターンについて、売れ始めてから緩やかに落ちる「富士山型」から、突然人気が出てしばらくしてぱたっと売れなくなる「茶筒型」に、現在はさらに売れている期間が短い「ペンシル型」に変化したと言っています。

秋元 お笑いの世界で言えば、ビートたけしさんやとんねるず、ダウンタウンなどは、もう何十年も第一線に立って、人気を保ってきました。彼らが売れ続けてきた理由は、普遍的な笑いだからです。何か流行語になるような言葉を生み出して、それに頼っていると、その言葉が飽きられたら終わりです。たけしさんなどは、そういう笑いではなく、いま話題になっていることをネタにして、何か面白いことを言ったりやったりしてくれます。彼らは、いわばお笑いの「視点」が面白いので飽きられないのです。

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