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[対談] イノベーションの視点

ネットとリアル店舗網の結合が
今後の流通業のカギを握る

ルディー 鈴木さんは「セブン‐イレブンをこれからの流通サービスのプラットフォームにする」とおっしゃっていますが、いまや日本ではコンビニエンスストアがクリーニングなどの日常的なサービスや支払いなどの窓口であり、ネット通販のサービス拠点にもなっています。今後、ネット通販はますます伸びていくと思いますが、それとともにコンビニの役割もいっそう広がっていきそうですね。

鈴木 業態は時代とともにどんどん変化していきます。コンビニは飽和状態だという人もいますが、私は時代とともに変化していくことで、これからも大きな成長力を備えていると思っています。
いま日本は人口減少の中で世帯数が増えていますが、これは1世帯当たりの人数が確実に減少していることを示しています。ですから、かつてのように、大勢の家族の食事のためにたくさん食材を買って、家で調理する必要がなくなりました。しかも、高齢化が進む中で、一人か二人の世帯なら、自分で料理をつくるために、遠くまで買物に出掛けるより、身近なコンビニで惣菜などを少し買って食卓に出す方がずっと便利です。実際にセブン‐イレブンでは、そういうニーズに応える惣菜などを販売していますが、たいへん好評です。また、そのようなニーズへの対応を図ることで、50~60代のお客様が増え、1店舗当たりの来店客数は伸びています。世の中の変化とともに業態の内容も変化していきます。

ルディー 消費者の利便性を図るために、最近ではお客様の自宅まで商品を届けるサービスがどんどん広がっていますね。ネットスーパーの人気も高まっています。少子化や人口減少で、労働人口が減っている中で、かえって人手がかかるサービスが求められるようになっているのではありませんか。

鈴木 イトーヨーカドーも各店舗を拠点としたネットスーパーを展開していますが、当初は採算に合わないと言ってなかなか本格的な取り組みが進みませんでした。しかし、各店舗で注文を受け、売場担当者が商品をピックアップして梱包し、小さなトラックで効率良く配送する仕組みを整えたことで、いまでは業界の中でいち早く利益を出せるようになりました。ただ、現在もどんどん利用者が増加しているので、さらにシステムを見直していく必要があります。
今後、ネット社会になっていくことは間違いありませんから、セブン&アイグループとしても、ネット事業に力を注いでいます。ネットで戦略的なマーケティングを進め、その成果をリアルの店舗に広げていくという方法が重要になっていくと考えています。

ルディー ネットビジネスを成功させるうえで、リアルな店舗網を持っていることは大きな強みになりますね。ネットビジネスからスタートしてリアルな店舗網を構築するのは、コスト的にも困難ですが、セブン&アイのようにリアルな店舗網を背景にネットビジネスを進めるなら、ネットとリアル店舗の結合がスムーズにできます。

鈴木 そういう点で、私どもはネットとリアル店舗を結ぶビジネスモデルを成功させる大きなチャンスを持っていると思っています。
今日は、ルディーさんのお話を聞いてマーケティングをきちっと行って、お客様心理をとらえていく重要さを、改めて確認できました。お忙しい中、ありがとうございました。

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