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[対談] イノベーションの視点

消費税率引き上げはタイミングが重要

鈴木 来年、再来年と続けて消費税率の引き上げが予定されていますが、これは消費市場には大きな影響があると考えています。もちろん、財政再建などの点から消費税率引き上げは必要だと思いますが、経済の先行きがまだはっきりとしない中、2年連続で引き上げたのでは、消費回復に水を差すことになるのではないでしょうか。

伊藤 前政権が決めたことですが、5%から一気に10%に引き上げるのは、インパクトが大き過ぎるということでしょう。8%、10%と段階的に引き上げれば、「駆け込み需要」の効果も続くはずですし、そういう意味でインパクトを緩和したいという意図があったのではないかと思います。

鈴木 しかし、2年連続では増税の影響を長引かせることになりかねません。消費税率を5%に引き上げた時や総額表示に切り替えられた時は、消費が落ち込み、その影響が長く続きました。そういう経験からしても、日本人は税金に対してたいへん敏感だと思います。ですから、タイミングがたいへん重要ですし、2回よりも1回ですませる方が影響を長引かせないですむと思います。
 そのうえ、「消費税還元セール」という売り出し企画もだめだという話が出ています。前回3%から5%に税率が引き上げられた時に、他社に先がけて消費税分還元セールを行いました。10%引き、20%引きをしてもお客様が反応しなくなった時に、幹部社員の反対を押し切って行ったところ大反響を呼び、全国的に波及したのです。

伊藤 値引きのしわ寄せが中小の卸業者やメーカーなどに行くのではないかという危惧から、政府は還元セールを認めないと言っているようです。大手小売業の存在感が日本経済の中で大きくなったので、その動向に敏感になっているのかもしれません。

小売業は価格競争ではなくイノベーションで勝負する時代に

鈴木 いま小売業では、自分たちで商品を開発しているところだけが伸びています。つねに新しいものを求める、お客様ニーズが変化したことの表れです。一方で、価格競争を続けているところは、むしろ業績が悪化しました。すべてのお客様が価格競争を望んでいるわけではないのです。仮に価格に価値を置くお客様が6割いたとすると、味や質を重視するお客様が4割いらっしゃるのです。私たちは、この4割のお客様のニーズにきちんとお応えしないといけないと考えます。
 私たちが重点的に取り組んでいるのが、グループ共通のPB(プライベートブランド)、「セブンプレミアム」です。グループ各社が商品開発のノウハウを結集し、一流のメーカーさんと組むことで、価格優先ではない、お客様の求める質とおいしさにこだわって開発しています。単品で年間10億円を超えるものが92品目にのぼるなど、PBでは他に類を見ない売れ行きを示しています。さらに上質を求めた「セブンゴールド」ブランドの商品も多くの支持をいただいています。

伊藤 やはり、価格を下げることに逃げてしまうのではなく、イノベーションを進めることで勝負することが大切です。コンビニはそういう意味では、つねに新しい商品を開発するだけでなく、料金収納代行サービスやミールサービスまで手がけています。そういうイノベーションが、流通業のさまざまなレベルで進めばいいと思います。

鈴木 日々お客様と接してきて、いま、日本では質を問うお客様が増えており、消費に対する態度も変わってきたと痛感しています。そういう変化に、政策のあり方も変えていっていただければと願っています。
 今日は、これからの経済環境を考えるうえで有益なお話をいろいろとうかがえました。ありがとうございました。

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