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[対談] イノベーションの視点

締め切り間際になるほど
高揚する集団心理

鈴木 私は「人の心理」も重視しています。たとえば、昨年、イトーヨーカドーで「下取りセール」を実施しました。これは、その日に一定金額以上お買上げいただいたお客様には、不要になった衣類などを現金で下取りするというセールです。この時も手間をかけて下取りを行うより、割引セールをした方が効果的ではないかという声がありました。
しかし、いま各家庭にはたくさんのモノがあふれていて、新しい商品はほしいけれど、これ以上モノを買って増やすことにも抵抗があるという心理状態にある人が多いと思います。そうかといってまだ使えるモノを捨てることには抵抗がある。その時、下取りということで、不要なものがいくらかでもお金になるなら、喜んで不要品を持ってきて、そこで得たお金を足しにして、買物をしてくれるはずだと考えました。実際に下取りセールを実施したらたいへん好評で、他のスーパーや百貨店も次々と下取りセールを始めました。

高安 確かにそういう心理はありますね。心理という点では、物理学の視点から「締め切り効果」という人間心理の法則性が見つかっています。これは、締め切りを設けて参加者を募ると、応募者数は締め切りまでの日数の逆数に比例するという簡単な法則性が成り立ちます。つまり、募集開始日から少しずつ応募者が増え始め、締切日に近づくと急速に増加して、最終日にピークに達するというものです。
いまはツイッターや最近のスマートフォンなどを活用すればリアルタイムで情報を流していくことができます。「締め切り効果」などを活用して、徐々に人の心理を高揚させていくような情報を提供し、臨場感のあるプロモーションを進めていくことで、商品購買に結び付けるといったマーケティングも、今後考えられるようになると思います。

鈴木 おっしゃるとおり、臨場感のある情報提供を通じて、「いま」という感覚をお客様と共有していくマーケティングは、これから重要になっていくでしょうね。すでに、ツイッターなどを使った、そういう機動的な仕掛けが大きな効果を上げ始めています。

高安 私たち物理学者は、次に何を仕掛けたらヒットするかということはわかりませんが、鈴木さんのように心理を読める人が仕掛けてくれたことに対して、その効果を事前に予測することも可能になってくると思います。
お話をうかがってみて、想像以上に科学的な目で商売をされていることがわかりました。私たちの研究も今後さらに進めば、人の集団活動の中からもっといろいろな法則性を発見できると思います。それを実際の商売の現場で活用していただけるようになればと考えています。

鈴木 今日は、たいへん興味深いお話をうかがえました。また、機会損失のお話などは、日頃から私が考えてきたことを裏付けていただけたと、たいへん心強く感じました。本日は、ありがとうございました。

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