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[対談] ブレイクスルーのヒント

正しい決断をするためにはぶれない「軸」を持つことが重要

鈴木 改革の一環として高校生の募集を廃止されたと聞きました。これも経営的には大きな決断ですが、どんなお考えからですか。

確かに高校入試の廃止は大きな減収を伴いました。また高校入試で多様な価値観を持つ生徒が入学してくることによる教育的効果もありました。それをやめることはたいへん大きな決断でした。しかし、中高一貫という私たちの方針を明確にすることを最優先に考えました。本校では、中等部の3年間は企業とのコラボレーションを行うなど、社会との接点をつくって自分がやりたい方向を見つけられるように視野を広げ、高等部では、それを実現できる進学先へと目標をフォーカスしていきます。この教育方針を徹底するには、中高6年間という時間がどうしても必要になります。高等部から受け入れても十分なことがしてあげられなくなってきました。

鈴木 ある程度のリスクを覚悟した上で、方針を明確にする方を選んだわけですね。

はい。そして、高校の入試を廃止するという決断を通じて、全職員で「中高一貫」という方針に賭ける決意を共有できました。失うもののない決断はなく、変革はリスクと批判を伴います。鈴木さんは、周囲の反対を押し切ってセブン‐イレブンを国内に導入されましたが、周囲をどう説得されたのですか。

鈴木 セブン‐イレブンを導入した時、そして経営不振に陥ったアメリカのサウスランド社(現セブン‐イレブン・インク)を買い取った時、中国にイトーヨーカドーを出店した時、いずれのケースも、社内の大勢は基本的に反対でした。しかし、私はこれだけの投資額ならというリスク範囲を算出し、それを超えるようならその事業は撤退すると決めて、説得に当たりました。
改革するには自分がそれに取り組んだそもそもの目標は何だったのかを見失わず、そこから結果を検証していく、それしかないのではないでしょうか。

判断の「軸」をぶらさないためには、つねに本来の目標に立ち返ることが大切ですね。たとえば、さきほどの「28プロジェクト」の一環で、こんなことがありました。生徒が靴下メーカーさんとのコラボレーションで、校内で履くソックスの開発に取り組んだ時のことです。広くみんなの意見を集めるためにファッションショーを企画したのですが、設定した時間が悪くて人が集まりませんでした。その時、一人の生徒が「私たちはきちっと告知をしたのだから、来た人の意見だけ聞いてこのまま進めていいんじゃない?」と言いました。すると別の生徒が「ちょっと待ってよ。目的は何だっけ? みんなの意見を聞くためだったよね。だったら、それは達成されてないんだからもう一度やり直そう」と言いました。私は、生徒からそういう意見が出たことを、とてもうれしく思いました。

鈴木 つねに目標から見て結果を判断するという考え方や姿勢は大切なことです。それが学生生活の中で身についていくのは素晴らしいですね。今日は、学校や企業という枠を超えた示唆に富んだお話をいろいろうかがうことができました。ありがとうございました。

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