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[対談] ブレイクスルーのヒント

新鮮な情報を多面的に収集しお客様の潜在ニーズに応える

鈴木 自分たちでお客様のニーズを察知して商品開発をするには、自店だけでなく外部からも積極的に情報を取り入れていくことが不可欠です。お客様の変化が速い時代には、過去のデータではなく、お客様が次に何を求めているのか、先行情報を幅広く収集し、その変化を敏感に感じ取らなければいけません。髙島さんは、つねに世界を飛び回って情報をとっていらっしゃるとうかがっていますが、やはりそれが世の中の変化を察知することに結びついているのではありませんか。

髙島 確かにニューヨーク、ロンドン、パリなどの街の情報は定点観測的に、自分の目でじかに見て、感じとっています。その情報というのは、とくに商品の情報ではなく、社会の動きやファッションのトレンドなどさまざまな情報で、そこから「仮説」を導き出すことが大事だと考えています。もちろん、商品開発を担当しているメンバーも、連日世界中を駆け回り、目を四方八方に配って、多面的な情報収集に努めています。
また、感性を磨くために、社員には残業をしないで、プライベートな時間を大切にするように言っています。会社でしている仕事というのは大半が作業です。大事なのは作業ではなく、感性を磨くというようなクリエイティビティにあるわけで、それはプライベートの時間に培われるものだと考えています。
さらに、お店に対しては、本部からあれこれと指示を出さずに、できる限り自分たちで考えるようにさせています。鈴木さんが以前からおっしゃっているように小売業は科学だと思いますから、科学的に考えて、それぞれの店で最適な答を見出せるようにすることが必要だと考えています。

鈴木 小売業でお客様に一番近いのは店舗です。その店舗で日々、お客様の動きに合わせて、仮説・実行・検証を繰り返しながら自主的に品揃え、売場づくりに工夫を重ねることはたいへん重要です。
現在のように消費飽和の時代には、お客様はあわててモノを買う必要がありません。そうしたお客様に一点でも多くお買い上げいただくためには、店舗で工夫を重ねながらお客様の目をひきつけ、お客様の心に訴える、衝動買いを促す売場づくり、演出が不可欠です。

髙島 私たちの店舗でお買い上げいただくお客様の半数以上は、目的がなく来店されたお客様です。つまり、とくに何かを買おうと思って来店されたのではなく、店内を回るうちに衝動買いをしてくださっているということです。
私たちの店は、生活になくてはならないモノを売っているわけではないので、行くだけでワクワク、ドキドキする、楽しいと思ってもらえる店づくりをしなければなりません。ですから、楽しいもの、夢のあるものを売るという自分たちが決めた枠を守り、生活感が強いものは売らないと決めています。たとえば、便座カバーなどは、売場に置けば必ず売れるとわかっていますが、決して売りません。お客様が私どもの店に求めていない商品で、売上げを上げても、意味がないと考えているからです。目先の100万円の売上げのために、将来の1億円を失うようなことがあってはならないと思い、その点はこだわりをもってやってきました。

鈴木 なるほど、永続性のある商売を構築するには、そういう枠組みを守る努力が必要です。事業を取り巻く環境はますます厳しくなっていますが、お話をうかがっていると、ビジネスの基本では、私たちの考え方と共通する点が多いと、たいへん意を強くしました。本日は有益なお話をうかがうことができました。お忙しい中、ありがとうございました。

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