2017年11月 |
2018年に向けたセブン&アイグループの成長戦略
今、日本国内では、大きな環境変化が進行しています。すでに少子高齢化が進行していますが、2025年以降、さらに急激な人口減少、世帯人数の減少などが進み、消費市場の縮小、労働力不足などの深刻化が予測されています。また、小売業界においても、従来の業態の枠を超えた新規プレイヤーの参入が顕著になっています。食品分野では、ドラッグストア、ディスカウントストア、家電量販店などが食品や酒類などの販売を強化し、集客力の拡大による売上成長を戦略的に進めています。
さらに、EC・IT企業が、音声認識端末やボタンを押すだけで商品を注文できる小型端末などの新しいツールとともに販売力を高めています。これらのツールだけでなく、IoTの進化とともに電子調理器、掃除ロボット、自動車などあらゆる機器が、顧客情報を収集する「顧客接点」としての機能を果たすようになっています。これらツールは、情報の集積・分析を通じて、お客様一人ひとりのニーズに応える商品・サービスの提案力を有しており、店舗や売場という従来の顧客接点の考え方を一変させ、顧客を囲い込む役割を果たそうとしています。
さらに、スマホ決済など決済手段の多様化も、顧客情報の収集に大きな役割を果たしています。日本国内では、決済全体に占めるキャッシュレス化の比率はまだ20%台で推移していますが、中国や韓国ではすでに50%以上、米国でも40%以上となっています。そのキャッシュレス化の主役がスマホ決済です。2020年のオリンピック・パラリンピック開催などを控え、海外からの訪日客の増加が見込まれる中、日本国内でもスマホ決済のニーズが高まるでしょう。今後、国内でも急速にスマホ決済が進展していくものと考えられます。
ここにあげた4点の変化要因は、どれも従来の小売業のあり方を根底から変えるインパクトを持っています。この点をふまえ、セブン&アイグループは、グループとしての成長戦略を推進していきます。
一つには、これまで私たちが培ってきた強みをいっそう強化していくことです。「人材」「店舗」「商品・サービス」というコンテンツに磨きをかけることで、店舗をお客様にとって魅力ある接点として再認識していただき、集客力を強化していきます。新しいプレイヤーが参入する中で、私たちは鮮度や味、品質などあらゆる点で他社に真似のできないマーチャンダイジング力を発揮していくことが不可欠です。イトーヨーカドーやヨークベニマルでは、お客様の目の前で調理し、できたてを提供するといったライブ感あふれる売場の魅力をいっそう強化していきます。
また、拡大し続ける「中食」ニーズへの対応として、セブン‐イレブンではセブンカフェや揚げ物などのカウンター商品や冷凍食品の売場の拡大を目指した新しい店舗レイアウトの導入を進めています。
加えて、人材の育成や店舗作業の効率化を通じて、売場の従業員がよりきめ細かな接客対応に取り組める環境の創出にも積極的に取り組んでいきます。とくに、ロフトやセブン&アイ・フードシステムズなどの専門店事業においてこの効果が出ており、収益性の向上に結び付いています。
もう一つは、CRM※(顧客管理)を通じた、お客様との結びつき強化です。セブン&アイグループでは、POSデータ、nanaco、オムニ7、各種カードの会員情報などを通じて、顧客情報の集積に取り組んできました。しかし、それぞれの連携による組織的な情報活用や購買情報を超えた幅広い生活スタイルの提案力は課題となっています。
そこで今後は、グループ各社によるスマホアプリの提供をはじめ、ネットと結び付いた新たなサービスツールの開発、オムニ7の購買情報、外部の情報プラットフォームや携帯キャリアとの連携によるID連携など多様な顧客接点の創出を図り、情報の一元管理を実現することで、グループのCRMを強化していく方針です。これらを通じて顧客接点の多様化、情報の集積・分析に基づく顧客への適切なアドバイス機能の充実などを追求し、お客様満足度の向上を図っていきます。
グループの金融戦略の一環として、新たな決済システムの開発も進めていきます。環境の変化をしっかりととらえたキャッシュレス決済システムの開発をリードしていくことで、決済手段の多様化とともに、金融事業においてもCRM戦略と連動したビジネスチャンスの開拓を追求していきます。このため、グループ横断的なプロジェクトを立ちあげ、新たな決済システム開発を始動させています。
これまでにあげたCRM強化や新しい決済システムの開発、物流システムと技術の革新にあたっては、外部パートナーとの積極的な連携を通じて、高度な技術力とスピーディーな開発を実現していきます。技術の革新に向けては、情報分析へのAIの活用、お客様が手にして楽しいと感じていただける専用端末、決済システムに欠かせない認証技術など、お客様ニーズの情報を共有しながら、より生活実態に即したシステムや端末装置の開発をスピード感を持って推進していく方針です。
セブン&アイHLDGS.は、急速に変化している経営環境の中で、企業としての価値を高め続けるために、変化の中から成長機会を見出し、継続的な経営資源の分配を実現していく考えです。そのために、グループ力の源泉である人材をはじめ、店舗や商品力などに磨きをかけ、新たな取り組みに果敢に挑戦していきます。