2017年8月 |
新社長インタビュー
株式会社イトーヨーカ堂 代表取締役社長
三枝 富博
1949年12月15日生まれ。明治大学卒。1973年、証券会社入社。76年イトーヨーカ堂入社。97年成都イトーヨーカ堂有限公司出向、2006年成都イトーヨーカ堂総経理、09年成都イトーヨーカ堂董事長、北京華糖ヨーカ堂副董事長、11年イトーヨーカ堂執行役員中国室長、12年執行役員中国室長、イトーヨーカ堂(中国)投資有限公司董事長、成都イトーヨーカ堂董事長、北京華糖ヨーカ堂董事長、13年イトーヨーカ堂常務執行役員中国室長、16年常務執行役員中国事業部長。17年3月より現職。
現在、短期的な業績回復と中長期的な成長戦略の具体化に向けて、整理を進めています。その中で喫緊の課題と考えているのは、お客様との接点である売場を中心に組織を組み立て直し、社員全員がお客様に顔を向けて仕事ができるようにすることです。
私たち小売業にとって利益をもたらしてくださるのは、お客様にほかなりません。このことを、十分に認識して日々の仕事の中でお客様の期待にお応えしていくことが、小売業の基本です。そのために必要な徹底力と求心力の軸となるものは企業の理念、哲学であると考え、「お客様からたくさんの『ありがとう』をいただけるイトーヨーカドーへ」というメッセージを社内に発しました。また、「自分たちがどのようなイトーヨーカドーにしたいのか、自分たちで考えよう」という呼びかけも行ってきました。自分たちでそれぞれ目標を決め、意志を持って仕事に取り組むことこそが、徹底力の源泉となるからです。
また、社員教育とともに自分たちの店舗、売場、商品・サービス等の商圏における立ち位置をベンチマークとして確認し、分析することを徹底していきます。3月にはその第一弾として、店長を中心にしたメンバーで成都イトーヨーカドーの視察研修を実施しました。成都は、中国の小売市場の中でも厳しい競合環境にありますが、その中で成都イトーヨーカドーは成長を続けてきました。それは、お客様に満足していただくことが自分たちの成長につながることを、現地のスタッフ一人ひとりが理解し、高いモチベーションを持って仕事に取り組んできた結果です。視察したメンバーは、現地スタッフの意欲と徹底力に強い衝撃を受けて帰ってきました。現場をけん引するリーダーを育てていくために、今後ともこうした現場視察をはじめ、さまざまな教育や体験ができるチャンスを準備していきたいと考えています。
また、さまざまな店舗や本部各部門から選んだ30代〜40代の社員、約30名からなる「明日のイトーヨーカドー創造プロジェクト」を始動させました。これは、組織の枠を超えてイトーヨーカドーの問題点を洗い出し、これからのイトーヨーカドーがどうあるべきか、お客様にどういった商品やサービスを提供すれば喜んでいただけるかを検討し、全社的に実行していくためのものです。自分たちで考え、提案することで、社内に徹底的に実行していく力を生み出していきたいと考えています。
お客様の7割以上が、モノの豊かさ以上に精神的な豊かさを求めていらっしゃいます。これにお応えするためには、従来のように単に商品を販売する拠点としての機能だけではなく、店舗が地域コミュニティの拠点としての役割を果たしていく必要があり、すでに、地元自治体のイベント開催や地域情報の発信の場として活用していただいている店舗もあります。今後、すべての店舗が個店ごとに地域の中での役割を見出し、地域ニーズにお応えできるよう、また、お客様のご期待に添えるよう、商品、売場、店舗環境の整備、サービスなどあらゆる面からお店のあり方を見直していきます。
株式会社そごう・西武 代表取締役社長
林 拓二
1953年7月27日生まれ。慶応義塾大学卒。1976年、西武百貨店入社。2000年商品部商品統括部長、06年東戸塚店店長、ミレニアムリテイリング広報室長、07年取締役経営企画室 長、10年そごう・西武取締役執行役員経営企画部長、11年取締役執行役員神戸店長、14年取締役常務執行役員経営企画室、財務経理部、総務部、人事部、CSR推進室、オムニチャネル推進室管掌、16年セブンカルチャーネットワーク代表取締役社長(現任)。16年10月より現職。
私の使命は、そごう・西武の業績を一刻も早く回復させ、セブン&アイグループの持続的な成長に貢献していくことです。この使命を果たすために、現在、当社ではグループの中期経営計画のもと、事業の選択と集中を進めています。
その柱の一つが基幹店の強化です。百貨店は定番の商品を画一的に並べるだけではなく、地域のお客様のライフスタイルを豊かにする品揃えや情報発信などの特色を加えることで初めて本来の価値を発揮します。この原点に立ち返り、基幹店においては、西武池袋本店のラグジュアリー拡充、そごう横浜店におけるビューティーゾーンの強化、そごう千葉店別館のファッションからフード&ライフスタイルへのコンセプト転換など、店舗ごとに個性を磨くための重点投資を進めています。郊外型の店舗においては、西武所沢店を郊外型百貨店のモデル店舗として、地域密着型の食品売場を構築するなど、地域一番店を目指した店舗づくりを進めています。
こうして店舗ごとの競争力を維持・向上させていくとともに、そごう・西武がこれまで培ってきた独自の強みである文化発信力をグループと共有し、シナジー効果を創出していくことも、当社がグループの成長に貢献できる有効な施策の一つと考えています。たとえば美術展などのイベント開催や、八ヶ岳高原ロッジ、西武池袋本店の屋上庭園など文化的価値の高いコンテンツ、キレイステーションなどのきめ細かなカウンセリングサービス、おもてなしのノウハウは、モノからコトへと消費トレンドが移行する中、グループ各社にとって大きな武器になるはずです。
これら施策を着実かつスピーディーに実施していくためには、従業員一人ひとりが課題を自分のこととしてとらえ、社内コミュニケーションを活性化し、個々の能力を最大限に発揮できる風土づくりと、従業員の声を組織の意思決定に反映できる仕組みが必要です。
当社は2017年の元旦に「わたしは、私。」という企業メッセージを発信しました。これは、「地域に根ざした個性ある店舗をつくる」というお客様やお取引先へのメッセージであると同時に、「思う存分、個を発揮してお客様の新たな需要を創出しよう」という従業員向けメッセージでもあります。
また、こうした攻めの姿勢を発揮していくために、「利益と価値の追求」「責務の遂行」「PDCAサイクルの徹底」という3つの行動指針を定めるとともに、1月から組織も再編しました。これにより、個々の事業の役割と責任を個人にまで落とし込んで可視化し、浮かび上がった課題をそれぞれがPDCAサイクルを通じて解決し、利益の最大化を図っていきます。
再起への道のりはまだ始まったばかりですが、社員一人ひとりがこうした経験を重ねながら主体的に仕事に取り組むことで、そごう・西武は着実に成長していける企業体質に生まれ変わると確信しています。