このページの本文へ移動します

セブン&アイの挑戦

2017年5月

特集 セブンプレミアム10周年 プライベートブランドを超えたクオリティブランドへ

今年5月、セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド(PB)である「セブンプレミアム」が10周年を迎えました。この3月には、ブランドの「進化」に向けて、PBの定義を更新するとともに、生鮮食品を扱う「セブンプレミアム フレッシュ」の導入など商品ラインを拡充。コンビニエンスストア、総合スーパー、食品スーパー、百貨店という多様な業態のグループ店舗での販売とともに、積極的な海外展開も視野に入れたPB戦略の構築を進めています。

常識を打ち破り、プライベートブランドのイメージを一新

有力メーカーと共同開発しメーカー名を表記

 2007年5月、「セブンプレミアム」はセブン&アイグループの共通PBとして誕生しました。当初の総アイテム数は49。ささやかな始まりでしたが、商品は従来のPBを見慣れたお客様に驚きをもって迎えられました。なぜならそれまでのPBの常識を、ことごとく否定していたからです。それまで、PBとは人気のナショナルブランド(NB)商品と似た内容で、かつ価格が断然安い商品のこと。一般的にはそのように考えられていました。ところが「セブンプレミアム」は、おいしさ、安全・安心などの面で独自の高いクオリティを生み出し、しかも価格競争力を持つ商品という考え方を、商品づくりの基本に据えていました。そして、セブン‐イレブン、イトーヨーカドー、ヨークベニマル、そごう、西武など業態を超えたグループ店舗において、同一価格で販売しました。
 そのために取り入れたのが、各商品分野で技術力のあるNBメーカーさんとの共同開発、最適な生産能力を持つ工場での製造など、グループがそれまで培ってきたチームマーチャンダイジングの手法。しかも、各社が連携することで、開発、原料調達、生産などあらゆる面でシナジーを生み出し、それまでにないクオリティを実現することができました。このような開発のあり方は、コスト削減=低価格を最優先項目としてPB生産専門メーカーなどに委託して商品づくりを行ってきた従来のPBとは180度異なるものでした。
 そして「セブンプレミアム」は、そのクオリティの証しとしてあえて生産者(製造元)のメーカー名を商品に明記しました。この点も、販売者名だけを表示した従来のPBの常識を打ち破るものでした。それだけに、小売業の専門家などの間では、当初賛否両論が巻き起こりました。しかし、お客様からは「わかりやすい」「安心して買える」という支持の声をいただくことができました。そして、2008年日経優秀製品・サービス賞の「最優秀賞」を受賞するなど、社会的な評価を勝ち取るに至り、PBのあり方を大きく変えたのです。

ベンチマークを導入し開発プロセスを標準化

 「セブンプレミアム」のクオリティ創出を実現するモノづくりの特色は、いくつもあります。第一に商品開発にあたって、「ベンチマーク(目標/指標)」の考え方を取り入れ、客観的な商品分析に基づいて、新商品のクオリティをつくり上げている点。
 第二に、商品開発はグループ各社の開発担当者であるマーチャンダイザーを結集したプロジェクト体制で進めている点。それぞれの業態や売場からの情報や商品トレンドなどの情報を共有しながら開発を進めることで、開発現場と販売現場の距離をぐっと縮めています。
 第三に、セブン‐イレブンが自主商品の開発にあたって培ってきた「見える化」の手法を取り入れることで、全員が同じ視点で開発過程を共有できるようにしていること。主観に左右されやすい味(おいしさ)においても、ベンチマークを用いた商品分析と標準化された商品開発プロセスによって、科学的に検討し、客観的に評価できる体制を生み出すことに成功しました。

ニーズ変化への積極的な対応と市場創造

 新規商品の開発と並行して、「セブンプレミアム」は既存商品のリニューアルにも注力してきました。少子高齢化の進展と、単身世帯の増加、女性の社会進出にともなう共働き世帯の増加など、この10年間の社会の変化とそれにともなうお客様の購買行動の変化は、大きなものがあります。このような変化に応えるには、つねに品揃えとクオリティの見直しを続けることが必要です。また、人気の商品ほど、あるいはおいしい商品ほど飽きられるのも早い傾向にあります。こうしたお客様のニーズの変化にタイムリーに対応していくため、商品の発売時点から「次」のクオリティを目指してリニューアルに取りかかるといったスピードと一切妥協のない開発姿勢を持って、商品の革新を進めてきました。
 そして、2010年には、ワンランク上のクオリティを目指した「セブンゴールド」ブランドを創出。味や品質の目標水準を、「人気専門店の味」に設定し、こだわりのある上質な味わいを、手軽に家庭で再現できる商品づくりに取り組みました。その中から生まれた人気商品が「金のハンバーグ」や「金の食パン」などです。それまでNB商品にもなかった品質と価格帯の商品でしたが、多くの人気商品が生まれることで、新たなマーケットを生み出しました。「セブンカフェ」もコンビニコーヒーという新しい市場を開拓し、現在も販売数を伸ばし続けています。「セブンプレミアム」のクオリティ戦略は、少子高齢化社会=マーケットシュリンクという「常識」も打ち破ってきたといえます。
 同時に、「セブンプレミアム」は、売場変革、そして新規客層の獲得にも成果を上げてきました。たとえば、2008年に始まった小容量の冷凍食品は、セブン‐イレブンに女性客層の拡大をもたらし、従来、すぐ食べられるお弁当や調理パンなどを主軸としていたセブン‐イレブンの売場の中で、調味料、冷凍食品などの販売機会の拡大をもたらしました。ニーズの変化とともに進んできた「セブンプレミアム」は、時代の変化に応じた売場革新をもリードしてきたといえます。

社会環境の変化を追い風に国内最大級のブランドに成長

  • 全3ページ
  • 1
  • 2
  • 3