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四季報 VOL.148 セブン&アイグループ新時代へのアプローチ(2)

2020年8月

首都圏食品戦略

グループ資産を最大化しお客様のニーズに応える

グループシナジーを活かして“首都圏ならではの制約”を突破

 国内全体では人口減少が進む中でも、人口流入が続く東京都を中心に首都圏の食品マーケットは拡大し続けています。しかし、人口密集地なども多く、首都圏での店舗展開には店舗面積、コスト、雇用などさまざまな制約があります。この中で、店舗数を増やし、お客様との接点をさらに拡大していくには、狭小な売場面積への対応、生産性の向上などが不可欠です。セブン&アイグループでは、グループシナジーを活かした新たな食品スーパー事業の体制を構築することで、この首都圏の食品マーケットへの対応を強化していきます。
 この6月1日には、グループの食品スーパー事業の中心となる株式会社ヨークが発足。同社のもとに、従来のヨークマート店舗、イトーヨーカドー食品館およびザ・プライス店舗、コンフォートマーケットなどを集約、運営する体制が誕生しました。これにより、これまでグループ各社が培ってきた食品スーパーの知見やノウハウを結集し、500~600坪クラスの「標準型」、150~300坪クラスの「小型」、イトーヨーカドーの「ザ・プライス」を承継した低価格と低コスト運営を実現する「プライス型」、標準型とプライス型の良さを融合し、競合環境への対応力を高めた「融合型」という4つの店舗フォーマットを確立することで、立地条件への柔軟な対応とお客様ニーズへの的確な対応を進めていきます。

生産性の向上と高品質で店舗を支えるインフラ構築へ

 同時に、惣菜などの調理加工を集中化するセントラルキッチンや一次加工センターの新設、精肉などの加工・配送を行うプロセスセンターや生鮮食品の物流センターなど、グループ各社が磨きをかけてきた既存機能の共有化なども進めていきます。専用工場ともいえるセントラルキッチンをはじめとした、クオリティーの高いインフラを構築することで、品質のすぐれた原材料を一括して調達し、他社との差別化を図る独自商品の展開が可能になるとともに、店舗の作業負担の軽減や生産効率の向上も実現。さらに店舗のバックルームの減積などを通じて狭小な立地でも売場面積を確保できるなど、出店条件に対して柔軟に対応することができます。また、グループ各社が培ってきた売場づくりや販売ノウハウを統合することで、個店ごとの商圏ニーズに合わせた品揃え、価格対応、サービスの提供などを実現して競争力を強化。これまで以上に地域のお客様の暮らしに寄り添う店づくりを通じて、生鮮・惣菜を主役とする「暮らし提案型」の食品スーパーとして首都圏のお客様の期待にお応えします。

「首都圏食品戦略」の
4つのポイント

ポイント14つの店舗フォーマット

店舗フォーマットを使い分け柔軟な出店が可能に

ヨークが推進する新たな店舗フォーマットは、ヨークマートの標準モデルを踏まえた 500 ~600 坪クラスの「標準型」、150~300坪 クラスの「 小型」、イトーヨーカドーの「ザ・プライス」の品揃えを承継した「プライス型」、低コストの店舗運営を組み合わせた「融合型」の4つ。これらを使い分けて多様な商圏を持つ首都圏において、地域のお客様ニーズを捉えた「暮らし提案型」の店舗づくりを機動的に進めていきます。
ヨークが展開する4つの店舗フォーマット ①標準型・500~600坪の店舗・お魚惣菜やタルトなど新規MD導入・ベーカリーなど中食の強化 ②小型・150~300坪の店舗・立地特性に合った売場・品揃えで集客力を強化・省人化で生産性を向上 ③プライス型・イトーヨーカドーの「ザ・プライス」を承継・独自仕入れによる低価格の実現・低コストの店舗運営を追求 ④融合型・標準型とプライス型の融合型・生鮮食品の上質さを訴求・お買得品の打ち出し

ヨークフーズ 新宿富久店で成長の兆しが見えた

都市部の標準型店舗の実例として、今年6月17日に開店した「ヨークフーズ 新宿富久店」では、都市型のライフスタイルを志向する上質な商品を求められるお客様が多いため、高級ワインやブランド和牛の取り扱いを強化。併せてレシピを提案するなど、さまざまな売場づくりの工夫が施されています。また、新宿富久エリアはオフィスも隣接しているため、ランチ需要が高いのも特徴。そのニーズに対応して新しいMDも多く導入しています。結果、オープン直後から多くのお客様にご好評をいただいています。

セブン&アイグループが推進する 「首都圏食品戦略」
(株)ヨーク誕生

「ヨークフーズ 新宿富久店」の
売場づくり

  • 上質な生鮮食品の取り揃え

    高所得層の多い地域特性に合わせ、精肉部では生産者指定のブランド黒毛和牛の5等級を常時品揃え、また天然本まぐろや季節に合わせた高級果実などの高級食材を品揃え。

  • ワインとおつまみ品の強化

    品揃え豊かなワイン売場横に、ローストビーフや生ハム、チーズなどのおつまみ品を隣接し、食提案とともに買いまわりを向上させました。

  • ランチ需要への対応

    入口近くにインストアベーカリーや惣菜・お弁当売場をレイアウト。さらにお客様がスムーズにお買物ができるよう、惣菜売場にセルフレジが隣接しています。

  • アジアを中心とした簡便調味料の拡充

    外国人の方が多く住むエリアの食品スーパーとして、中国や韓国、タイ、ベトナムなどの調味料を幅広く取り揃えています。

ポイント2供給インフラの構築

グループのインフラを活用し供給インフラを整備

 現在、ヨークの店舗では生鮮食品の加工や惣菜調理を店内のバックヤードで行い、一部の商品は、外部企業に委託またはグループ会社から供給を受けています。そのため、作業工数を減らすことが難しく、人手を要していました。
 一方で、福島県を中心に店舗を展開しているヨークベニマルは、子会社で惣菜、寿司などを製造、販売するライフフーズと連携し、製販一体となって、高品質のオリジナル商品を低コストで開発。お客様のニーズに対応するだけでなく、効率にすぐれたサプライチェーンを構築しています。
 ヨークでは、こうしたヨークベニマルのノウハウや、グループ企業のインフラも活用、整備することで、より高品質で効率的な商品づくりと、高効率な供給体制を実現します。

供給インフラの整備は出店戦略にも効果的

多様なライフスタイルを持つ方が多い都市部では、エリアごとのニーズにもきめ細かく対応することが必要です。差別化しにくいものでも、グループ内のインフラであれば、こだわりの素材や独自の調理法を商品に反映でき、工程も最適化できるのです。
 また、都市部の小型店舗では、調理加工などをするバックヤードに充分なスペースを確保することが難しく、商品の提供スピードや品揃えに課題がありました。供給インフラが整備されれば、お客様ニーズに合った魅力的な商品を最適なタイミングで安定的に提供することができます。店舗面積が狭くても売場面積の確保ができるため、出店可能エリアが広がります。
 このように、インフラ整備は都市部への出店のカギになるのです。

供給インフラを共有する3つのメリット

  • メリット1

    グループのノウハウを
    活用できる

    自社インフラならノウハウの蓄積が可能。
    商品開発や改善のための「財産」として活用できます。

  • メリット2

    調理技術を
    安定的に高められる

    質の高い商品の提供には、精肉加工や調理技術を習得した従業員を全店に配置する必要があります。セントラルキッチンでは従業員を集約して、高品質な商品を安定的に供給することができます。

  • メリット3

    食品ロスを抑えられる

    セントラルキッチンでは、プロセスセンターの処理で生じる原料の端材も余すことなく活用できます。調理が効率的になるだけでなく、製造過程で発生してしまう廃棄する食材の量も抑えられます。

首都圏食品戦略を支える供給インフラ 供給体制 供給インフラ共有 プロセスセンター アイワイフーズ セントラルキッチン 生鮮センター 常温センター 各店舗へ供給 合理化 独自の供給体制をつくることで、サプライチェーンが高効率化されます。 販売拠点 食品スーパーマーケット 総合スーパー イトーヨーカドー ネットスーパー 販売強化 「製販一体」のMD・デリカ製造によって、店舗の販売機能も強化されます。 お客様

ポイント3新規マーチャンダイジング(MD)の
開発

まさに「飛ぶように売れる」!
ヨーク自慢の商品力

 ヨークでは、生鮮食品の強みを活かしたオリジナル商品の開発を強化しています。
 ヨークの生鮮食品は、仕入れ担当者が産地に赴き、自信を持っておすすめできる高品質の生鮮商品を仕入れています。生鮮食品売場に並ぶ商品と同じ新鮮な素材を使用した手作りサラダやデザート、お魚惣菜を店内で製造。たとえばアジフライでは、冷凍のアジでは味わえないふっくらとした食感と魚肉の旨味が、人気商品となっています。また、500度の高温専用窯によって短時間で店内で焼き上げる本格的な窯焼きピッツアも人気を博しています。
 また、パエリアなどのメニューの食材をパッケージした「ミールキット」は、「withコロナ」時代における内食需要に応えて提案。「手軽で贅沢な内食を実現したい」というお客様にご好評いただいています。
  • 店内で手作りしているお魚惣菜は、お客様の中食・内食需要にお応えし、品揃えを拡充。

  • 「ミールキット」は、満足できるボリューム感で、ヨークならではのヒット商品。

  • 自営のベーカリー売場では、高品質ながらコストを抑え、リーズナブルな価格で提供。

商品開発を支えるテストキッチン

惣菜や「ミールキット」などのヨークオリジナル商品の試作の場となるのが、ヨーク本社に設置されたテストキッチンです。一流シェフや料理専門家を招き、店舗で販売するメニューの提案や食のトレンドを教わるなど、さらなるマーチャンダイジングのレベルアップを図ってまいります。

社員の料理に対する知識を深める目的でもテストキッチンを活用していく予定です。

ポイント4人材育成とオペレーション

「理想の売場をつくる」ためのオペレーションを徹底

 新しい店舗フォーマットを構築し、新しいインフラを整備しても、「人の力」がともなわなければお客様に支持される売場づくりを実現することはできません。
 たとえば、新規MDを高品質で提供するには従業員の技術力が求められます。そのため、ヨークの設立に先駆けてオープンしたヨークマート中町店、そしてヨークフーズちはら台店や新宿富久店でもオープン前から徹底した調理研修を実施。さらにヨーク本部に設置されたテストキッチンでは、毎月1回の研修会も開催しています。一流レストランのシェフを招き、本物の調理技術と知識が生み出す味を学ぶ場となっています。
 また、ヨークではエリアごとにモデル店舗を選定し、実際の売場で標準・基準となる陳列や売場づくりを実現。他の店舗がこれに学び、オペレーションの向上を進めています。
  • 産地直送の新鮮な生鮮食品を取り揃え、つねに最高の売場でお客様をおもてなししています。

  • ヨークでは調理スタッフの技術力の向上に力を入れているだけでなく、作業の標準化や2S(整理・整頓)など生産性の向上にも努めています。