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セブン&アイの挑戦

第2部 未来への布石

「近くて便利」~新たな挑戦の始まり~

社会構造の変化に対応してさらなる自己革新へ

東日本大震災では、被災した店舗も早期に再開。生活必需品を提供し続けました。
 2009年、セブン‐イレブンは「近くて便利」というキャッチフレーズを新たに掲げました。1980年代以来、中小規模の小売店の数が減少し続ける中で、少子高齢化などが進み、地域生活に密着した身近なお店の役割がますます高まってきたという、大きな消費環境の変化を見据えたものでした。その前後から、セブン‐イレブンは、矢継ぎ早に新たな取り組みを進め、この社会変化への対応を強化していきました。

 2007年にスタートした「セブンプレミアム」や唐揚げなどのカウンター調理商品の展開は、忙しい主婦層や働く女性、遠くまで買物に出かけられない高齢者から大きな支持を得てきました。

 また、セブンネットショッピングの代金支払いや商品の受け取りサービス、2010年にスタートしたマルチコピー機による住民票の写しの発行ができる行政サービスなど、サービス機能を拡充しています。

 さらに、数多くの地方自治体と包括連携協定を結び、地産地消への貢献や災害時の迅速な地域救援にも備えていきました。2011年3月に東日本大震災が発生した際には、被災地救援とともに、首都圏への生活必需品の供給に、セブン‐イレブンの商品調達ネットワークや物流システムをフル稼働させることで、生活インフラとしての役割を改めて社会に印象づけました。

 また、震災直後から被災地で移動販売を実施。この「セブンあんしんお届け便」の取り組みは、店舗の少ない地域のお客様の買物支援の一環として、現在実施エリアを拡大しています。

 2012年からは、さらにお届けサービスの拡充を図り、超小型電気自動車を活用した「セブンらくらくお届け便」もスタート。お食事お届けサービス「セブンミール」なども含め、セブン‐イレブンが40年にわたって築いてきた、他の追随を許さない事業インフラをフルに活用することで、よりいっそう幅広いお客様に、新たな利便性を提供しています。

価値ある商品を通じてさらなる「上質」を追求

 2012年12月、セブン&アイHLDGS. は、「セブンプレミアム」を含むオリジナル商品の売上げを、グループ全体で2015年度に3兆円まで拡大する計画を発表しました。これは、セブンプレミアムの拡大を図るとともに、ワンランク上のシリーズ「セブンゴールド」の拡充を進めることで、着実に広がっている「品質」や「価値」へのニーズに応えるものです。
 すでにセブン‐イレブンは、ワンランク上の価値を提供するオリジナル商品として、ビール類やカップ麺で実績を上げてきました。2010年に誕生し た「セブンゴールド」シリーズも好調な販売実績を上げ、「金の食パン」は発売4カ月ですでに1500万食(グループ計)を突破するヒット商品となりました。
 また、2013年1月には1杯ごとに挽きたてのコーヒーを提供する「SEVEN CAFÉ(セブンカフェ)」の展開をスタート。9月には2億杯を突破する 好調な売れ行きをみせています。
 セブン‐イレブンは、消費飽和と言われる時代に、上質な価値の提供を通じて、新たなマーケットを切り拓き続けています。

世界のセブン‐イレブンのリーダーとして

2012年、支援をスタートした韓国でのモデル店舗がオープン。
 現在、セブン‐イレブンは世界16カ国・地域に5万店以上の店舗を展開しています。各国の連携を強化するとともに、セブン‐イレブンのブランド価値を世界的に高めていこうとしています。

 セブン‐イレブンは、日本ではもちろん、1991年に経営危機に陥った米国のセブン‐イレブンを立て直した際も、2004年に中国で展開をスタートした際も、「小売業はドメスティックな産業」という考え方を基本に、地域に密着した事業を進めてきました。その成果を受け、セブン‐イレブン・ジャパンが培ってきたマーケティングや店舗サポートなどの経験をもとに、海外のセブン‐イレブンライセンシーを支援する取り組みが始まっています。

リアルとネットの融合でさらなる成長へ

 2011年には無料ワイヤレス通信サービス「セブンスポット」をスタートしました。これは店頭でスマートフォンなどからインターネットに接続でき、オリジナルコンテンツの提供も行うサービスです。このようなネット環境を導入することで、リアルとネットの融合をさらに進めることが可能になっています。
 このインフラを活用して、ネットと実際の店舗を自在に結びつける「オムニチャネル」の実現に向けた研究もスタート。最新のITの成果を迅速に取り入れることで、お客様には場所や時間を選ばずにお買物ができる環境を提供し、店舗には取扱い商品の幅を広げるといったメリットを提供していきます。
 セブン‐イレブンは、社会やお客様のニーズの変化に合わせて自己革新を図り、さらなる成長を目指して、これからも挑戦し続けます。

 日本の生活文化に合ったコンビニエンスストア業態の創造に始まるセブン‐イレブン様の40年は、つねに日本の流通、消費市場に変革をもたらす独創的なイノベーションの歴史であったと思います。そのオリジナル惣菜やチルド米飯、「セブンプレミアム」などの商品開発、そして専用工場などの取り組みに参画し、ともに技術やノウハウを研鑽できましたことは、当社にとりましても大きな喜びです。
 現在、わが国および世界の経済、社会は、歴史的とも言える大きな構造変化の中にあります。人々の生活文化も、かつての大量生産・大量消費を前提としたものから、健康やエコロジーなどの価値観を共有していくスタイルへと大きく変化しています。このような中で、セブン‐イレブン様が創業当初から追求し続けているお客様の立場に立った商品・サービスはもとより、メーカーと小売業が一体となったチームMD、情報の高度な活用等は、いまや世界をリードするビジネスモデルとなっています。
 私どもでは、いま『グローバル健康貢献企業グループ』を目指し、さらなる挑戦を進めています。これからもセブン‐イレブン様との取り組みを通じて新たな価値を生み出すとともに、私どもの技術やノウハウをさらに高めてまいりたいと願っています。

 イノベーション経営において重要なのは、「暗黙知と形式知のスパイラル・アップ」です。セブン‐イレブンは、お客様と の対話から暗黙知を物語化して形式知に変換しています。単品管理と仮説・検証のプロセスは、暗黙知と形式知を相互交換してスパイラル・アップする知識創造なのです。
 ここで重要な働きをするのがOFCです。通常、企業の組織は階層性ですが、セブン‐イレブンの組織は、フラクタル(相似形)であるといえます。ガチガチの組織である階層性は、分解するともとに戻りません。フラクタルな組織というのは、ロシア人形のマトリョーシカのように、大きいものから小さいものまで同じ形で、分解しても全体を表現できます。フラクタル性は今やグループ全体に広がり、セブンプレミアムや金融、ネットを含むサービスを機動的に開発しています。企業トップと同じ判断力を持った社員が、スピーディーなジャッジメントで推進しているのです。
 会社全体を凝縮したOFCにより、アルバイト社員まで仮説・検証、単品管理、というプロセスがひとつの相似形としてあらゆるレベルで共有されていること、コミュニティの生きているインフラとして地域の人々の生活の質の向上に向かって無限に努力していること、これこそがセブン‐イレブンの強みなのです。

 セブン‐イレブンは、創業以来40年間伸び続け、日本の小売業で唯一単独企業として、売上高3兆円を超え、いまだに成長が続いています。小売業というものが、一定の周期で新たな企業が新規参入することで革新していく中で、40年の間トップであり続けるというのは、奇跡的であるといっても過言ではありません。

 その成長の最大の要因は、世の中のどんな小さな変化にも柔軟に対応してきたからに他なりません。単品管理もドミナント出店戦略も小口配送も共同配送もダイレクトコミュニケーションも、すべて変化対応するために必要に応じてでき上がってきたものです。

 一部では依然として、「コンビニ飽和論」を唱える経営者やマスコミがいますが、2013年9月末現在で15,852店を数えるセブン‐イレブンは、2014年度の出店目標を1,600店以上としています。現在の変化対応を続ける限り、3万店※は余裕で達成することになるでしょう。

※この数字の根拠は、『セブン&アイHLDGS.9兆円企業の秘密』260ページで紹介されています。

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