セブン‐イレブンの海外戦略
「セブン‐イレブン」グローバル戦略、本格始動
世界16の国・地域で4万7000店以上の店舗を展開し、その年間売上高合計が6兆円を超えるセブン‐イレブン。セブン‐イレブン・ジャパン(以下 SEJ)がこれまで培ってきた経験を、世界中のセブン‐イレブンのレベルアップ支援に活用して、「セブン‐イレブン」のブランド力を世界規模で強化する取り組みが、本格的に始まっています。その柱となっているのが、1.セブン‐イレブン・インク(米国)のさらなる成長拡大、2.中国のセブン‐イレブン事業の成長拡大、3.アジア地域を中心とした既存ライセンシーのレベルアップの3点の支援です。
セブン‐イレブンを創業し、世界各地にライセンスを供与している米国セブン‐イレブン。80年代末に業績不振に陥った同社の再建に向け、SEJは1991年に資本参加するとともに商品開発、店舗運営などあらゆる面の改革を支援してきました。セブン‐イレブン・インクではその改革と平行して、地域に密着した商品・サービス提供の強化に向けてフランチャイズ(以下FC)店舗の拡大にも注力。この20年間で直営店とFC店の比率は逆転し、現在ではFC店が全体の7割にのぼっています。
この一連の改革が奏功し、同社は着実に業績回復を遂げ、いまやセブン&アイHLDGS.においてSEJに次ぐ利益を貢献する優良子会社となっています。そして、米国の市場環境が大きく変化する中、さらに成長力を高めるチャンスが広がっています。
SEJはセブン‐イレブン・インクへの支援を強化すべく、この7月に新たに店舗運営および商品政策それぞれに精通した幹部級の社員と若手社員合わせて6名を派遣。商品面ではサンドイッチなどのフレッシュフードの強化をサポート。店舗運営面では、単品管理や接客サービス等のレベルアップを図り、商品改革とも連携しながらストアロイヤルティの向上を目指しています。
また、米国内では、従来ガソリンスタンドと併設する形態でCVS(コンビニエンスストア)チェーンを展開していた石油元売系各社がCVS事業から撤退する傾向が広がるなど、CVS再編の機運が高まっています。このためセブン‐イレブン・インクでは既存チェーンの買収なども含め積極的に店舗網の拡充を追求。今後、出店速度を加速する方針です。
現在、中国では香港、広州(深セン含む)、マカオ、北京(天津含む)、上海、成都の各エリアで、合計1800店以上が展開しています。ただし、各エリアの事業主体(ライセンシー)は異なっており、SEJが直接出資し、運営を支援しているセブン‐イレブン北京、セブン‐イレブン成都の両社と他のライセンシーの間には、1店舗当りの1日の平均売上げに格差が生じています(グラフ参照)。この格差を解消して中国のセブン‐イレブン全体を一段とレベルアップすることが、中国市場で「セブン‐イレブン」ブランドへの信頼を高め、成長基盤を磐石のものとするうえで欠かせません。
このため、SEJの100%子会社「セブン‐イレブン中国」を、今後、中国における持株会社として(※)、同社を通じてSEJによる中国各ライセンシーへの事業支援を強化。また、ドミナント戦略に基づいて着実に出店環境を整えながら、出店速度も加速していきます。さらに今年度中には、青島(チンタオ)に、SEJと現地企業の共同出資による新会社を設立し、新たに青島エリアへの出店を開始する予定です。
(※セブン‐イレブン中国は、2008年に中国におけるライセンス管理などを目指し、設立されました)
既存ライセンシーに対する支援では、今年1月に韓国でセブン‐イレブンを展開するコリアセブンへの支援をスタート。ライセンサーのセブン‐イレブン・インク、コリアセブン、SEJの3社間で契約を結び、1.SEJより店舗運営等のビジネスプロセスの支援や指導、2.モデル店舗の開設、3.SEJによるコリアセブンの幹部候補社員の研修受け入れという3点を骨子とした支援を進めています。
ビジネスプロセス支援は、既存商品の品質アップや新商品の開発などマーチャンダイジング改革、立地環境に即した店舗運営、店舗開発やベンダー政策などを総合的に推進。4月には既存店を改装したモデル店舗をオープンし、品揃えや陳列、接客サービスなどにSEJの経験を採り入れた店づくりの検証をしています。
さらに、韓国のコンビニエンスストアは20坪程度の売場面積が主流ですが、この秋には日本と同様に30~40坪規模の新たなモデル店舗を開発し、双方のモデル店舗から得る成果を、既存店に拡大していく予定です。
研修では、今年4月から1年の予定で、店舗オペレーション、店舗開発、商品開発の営業3部門から各1名の研修生を日本に受け入れ、研修および各専門分野での実地教育などを実施しています。
SEJとセブン‐イレブン・インクは、コリアセブンへの支援を一つのモデル事例として、今後アジア各地のライセンシーに支援を拡大していく方針で、すでにタイ、マレーシアなどのライセンシーからは、支援を求める声も挙がっています。
こうした支援事業で集積したノウハウを活用して、世界規模で「セブン‐イレブン」ブランドの強化を積極的に進めていきます。