鈴木 新しい挑戦という点では、今年10月にはオムニチャネルを本格的に始めたいと考えています。ネットだけでも、リアル店舗だけでも不便なところがありますが、両者が融合すれば便利になるはずです。たとえば、思いついた時にネットで注文したものを、仕事帰りに近くのセブン‐イレブンで受け取ることができれば便利でしょう。そこで支払いや返品までできれば、ネットでの買物もぐっと身近になります。また、私たちのグループには、百貨店、専門店、総合スーパーなどこれだけたくさんの業態が揃っているのだから、オムニチャネルでどの業態の商品でも買え、近くのセブン‐イレブンで受け取れるなら、近くに百貨店や専門店がないお客様にとって、大変便利になります。
南場 そこは重要な点ですね。一人の人間でも、リアルな店舗に行って買いたい時もあるし、隙間時間にネットでオーダーしたい時もあります。セブン&アイHLDGS. は、多様な業態をネットと結びつけることで、そういうユーザーの買物のニーズに、広範囲にわたって応えることができる、ほとんど唯一といっていい流通グループだと思います。
鈴木 おっしゃる通り、これだけの業態を擁する流通グループは、世界的に見ても他には見当たりません。ですから、世界の誰もマネができないオムニチャネルが構築できると確信しています。
南場 セブン‐イレブンの商圏は、実際の生活コミュニティと重なっており、セブン‐イレブンの店舗が、今や地域コミュニティの「ヘソ」になっていると実感しています。そういう点を活用して、地域のセキュリティや災害時、あるいはふだんの生活の中でもセブン‐イレブンのお店が地域の拠点となって、インターネットですぐに連絡がつくとか、情報が配信できるということになれば、さらに地域社会の「ヘソ」としての役割を果たせるようになると思います。
鈴木 確かに、そういったさまざまな取り組みは可能ですね。地域社会との結びつきということでは、セブンミールという配食サービスを、セブン‐イレブンの店舗を拠点として行っています。人口が減少している一方で、世帯数は増えています。単身世帯や老夫婦だけの2人世帯などが増えているわけですが、そういうご家庭では、自分で今日の夕食の買物に行ったり、手間をかけて少しだけ調理したりするより、指定した時間で食事を届けてもらう方が楽です。ですから、この配食サービスは、これからどんどん伸びるでしょう。たとえば、遠く離れた高齢のご両親に栄養バランスの良い安心できる食事を摂ってもらったり、馴染みのセブン‐イレブンから商品をお届けした際に様子を確認したりといった、安否確認にも役立ちます。
南場 セブン‐イレブンを拠点にすることで、いろいろなサービスを広げていくことができそうですね。
鈴木 よくマスコミなどは「コンビニは飽和状態」と言いますが、飽和どころか、まだまだできることがいろいろあります。時代の変化とともに、新しいサービス、商品提供の可能性はどんどん広がっているわけです。だから、コンビニが飽和するというのはあり得ないのです。
高齢化と人口減少で消費市場が縮小するとも言われていますが、高齢者が増えるという変化をとらえれば、そこに今までにはないチャンスが生まれてくるわけです。
南場 そうですね。仕事は無尽蔵にあります。
鈴木 今日は、お忙しい中、どうもありがとうございました。