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セブン&アイの挑戦

2015年7月
チェーンストアを超えた新しいカタチ より地域に密着した個店経営への挑戦

アメリカから日本にもたらされた、チェーンストア理論による大量仕入れ・大量販売の仕組みは、モノ不足の時代にはお客様から支持され、日本の流通の繁栄を支える基盤を築いてきました。しかし、モノ余りの現在、画一的な品揃えでは、一人ひとりのお客様のニーズに応えることができません。そこで、セブン&アイHLDGS.では、 地域性を重視した商品開発や店舗運営に注力しています 。

セブン‐イレブン [ ストア ・ イノベーションプロジェクト ]

「コト発想」から20年後のセブン‐イレブンをつくる

「モノ発想」 から 「コト発想」 へ」

通常、入口の窓側にまとめて陳列する雑誌は、女性誌、男性誌に分けて並べ、隣には関連商品を陳列することで購買意欲を喚起しています。
 10年後、20年後の社会はどうなっているか、その時、セブン‐イレブンはどうあるべきか。このテーマに向けセブン‐イレブンでは、2012年7月、ストア・イノベーションプロジェクトを発足しました。

 プロジェクトメンバーは、まず外部の情報収集からスタート。ギフトショーをはじめ、さまざまな展示会などに足を運びました。

 そういった活動から得たヒントは、「『モノ』ではなく、『コト』から発想してみよう」ということ。

 「たとえば、ドリルを買うお客様は、ドリルが欲しいというより、『穴を開けること』が必要なので購入されます。それならば、 他にどういったモノがあれば便利か。そのように生活シーンから発想することで、見えていなかったニーズが見えてきました」とプロジェクトリーダーは語ります。

商圏を調べ尽くしてコト提案

「家飲み」というコトから発想してつくられた酒売場の前には、豊富な種類のチーズを関連販売しています。
 次に、プロジェクトメンバーは、自らの「コト発想」によって立てた仮説を実証する場として、2013年2月より、川崎登戸駅前店(川崎市)の運営に携わります。

 この店舗の商圏の特徴として、後背に住宅立地を持ち、高齢者や女性が多いことがわかりました。そこで、「家飲み需要」が高いと仮説を立て、「お酒のある楽しい食卓」というコトをテーマに売場展開を検討。ワインの種類を増やしたほか、女性に人気のあるフルーツ系リキュールやウイスキーの品揃えを強化。また、おつまみもチーズや生ハム、ピクルス、ドライフルーツなども展開し、「楽しいホームパーティ」を連想させる売場づくりを実現しました。

衆知を集めて売場に活かす

 商圏を徹底的に調べ、「コト発想」から今までになかった仮説を立て、実証することで、川崎登戸駅前店は、プロジェクト発足当初、40万円程度だった一日あたりの売上げが、最近は100万円を超える日も出るほどに。「考え方、仕事の仕方を変えることで実績は上がってきました。今後は、他のセブン‐イレブンのお店が、このような手法を採り入れ、『どんな変化にも対応できる発想力』を持って運営できるようお手伝いするのが、私たちの仕事です」とプロジェクトリーダーは抱負を語りました。

セブン‐イレブン [ 地域別マーチャンダイジング ]

西日本MD部関西地区の取り組み

地元に根を下ろしてわかったこと

セブン‐イレブン西院駅南店(京都市)では、関西の食生活に合った売場づくりに挑戦。家庭でお好み焼きやたこ焼きをつくることが多い需要に向け、関連商品を集積しています。
 セブン‐イレブンでは、今年1月、より地域に根ざしたマーチャンダイジングを行うため、組織を改編。従来の区分けを細分化し、全国を9つの地域に分割しました。

 関西においては、先行して昨年3月、西日本プロジェクトを発足。細やかな地域対応を行ってきました。プロジェクトメンバーが感じたのは、地域独自の食文化があり、今まで推奨してきた商品は、それらの嗜好に合っていないということでした。たとえば、出汁(だし)は関東で好まれるカツオ節を中心に使っていましたが、関西では昆布出汁へのこだわりを強く持っているお店が多かったのです。そこでまず、地元の老舗や商店街に通いつめることから始めました。「そこからさらにわかったのは、それまで『関西』とひと括りに考えていましたが、大阪、京都、兵庫では、味の嗜好もずいぶん違っていたのです」とプロジェクトリーダーは言います。

手応えを感じた「だし巻き玉子」

継続して実施している「料理家研修」。座学による基礎知識から実技まで幅広い教育メニューがあります。
 セブンプレミアムの「厚焼き玉子」は、おかずに1品プラスするのに便利で人気の商品ですが、関西ではあまり支持を得られて いませんでした。出汁にこだわる関西では、玉子焼きにも出汁を使っていたからです。そこで、出汁の風味を強調した「だし巻き玉子」として関西の嗜好に合わせて新発売したところ、厚焼き玉子の約4倍近い販売を記録。加盟店のオーナー様からも好評です。「やはり地域のことを一番よく知るオーナー様から『これが関西の味だよ』と言ってもらえるのが何よりうれしい」と話すプロジェクトリーダー。今後は、もっと細かなエリアに対応した商品づくりを目指していきます。

イトーヨーカドー [ 独立運営店舗 ]

アリオ上尾店の挑戦

「好きなようにやっていい」から始まった模索

 イトーヨーカドー アリオ上尾店がオープンしたのは、2013年6月。開業してしばらくは赤字の状態が続きました。そこで昨年1月、「独立運営店舗」として、大きく舵を切ることになりました。経営トップからの指示は、「売上げが半分になってもいいから、好きなことをして構わない」というもの。そこで店長たちが行ったのは、独立運営店舗の先駆けとして成功していたセブン‐イレブン川崎登戸駅前店の視察でした。「品揃えや売り方が、ほかの店とは明らかに違う。我々もほかのイトーヨーカドーとは違う店をつくろうと思いました」と店長は語ります。初めは、「何か特別なことをやらねば」と考えていましたが、一番大切なことはお客様の立場に立って徹底的に考えることだと気づいたのです。

地域に合った品揃え・店づくり

3大うどんとそれぞれに合うつゆを併売。それ以外にも地元の麺を揃え、圧倒的なボリュームで目に飛び込んできます。
 まず、お客様の不満がどこにあるか探ることから始めました。お客様の動きや買い方を見続け、2000件近い声を収集した結果、一番多かった不満は、うどんの品揃えが少ないという声でした。埼玉県のうどん消費量は全国2位にもかかわらず、アリオ上尾店のうどんの売上げは、イトーヨーカドー約180店中102位。明らかに機会ロスが生じていたのです。全国一律の売場づくりでは、地域ニーズに対応できていな かったのです。

 そこで、地元のほうとうやひもかわうどんのほか、香川の讃岐、長崎の五島、秋田の稲庭の3大うどんとそれに合うつゆを併売。ダイナミックな売場づくりがお客様の目を引き、昨年3月以降、うどんの売上げは昨年比110%以上で推移しています。

セルフバーベキューで4カ月、2000万円の効果

 独自の発想で始まったのが、店内でお客様が買われた肉や野菜を、テラスで楽しんでいただくセルフバーベキューです。フードコート隣の屋外テラスをバーベキュー場に提供。食材以外は無料で使用できるため、お客様からは「おトクに楽しめて、おいしい」と好評をいただき、4カ月で1万人ものお客様が利用され、2000万円もの売上効果がありました。

 独立運営店舗に切り替えてからのアリオ上尾店は、入店客数・売上げとも、好調に推移。売上げは、毎月、昨年比2ケタ伸長を記録しています。

 アリオ上尾店の成功を受け、イトーヨーカドーでは昨年12月、独立運営店舗を9店舗に拡大。今年中には全店にこの考え方を採り入れていく予定です。

今までは牛豚鶏それぞれの売場に分散していた内臓肉を、思い切って集約し大きく展開したところ名物コーナーに。バーベキューでも人気。

楽しく食べている様子を撮影し、記念にさしあげるとともに、店内のポスターにも掲載。楽しげな様子が、さらに予約を呼び込んでいます。

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