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セブン&アイの挑戦
グループの競争力を支える「食」の強み“最前線”

製販一体の真髄を極める日本一の食品製造小売業を目指す
ヨークベニマル

2023年8⽉

ヨークベニマル

「食」を軸としたグループ内リソースを共有し、各社の強みをいっそう磨き込みながら食品市場におけるさらなるシェア拡大を図るセブン&アイグループ。グループ共通の基盤・インフラを活用した製販一体の体制強化を加速させる中、これにいち早く取り組み現場の知見をグループ共通の知識へと昇華させ、新たな価値を創出しているのがヨークベニマルです。

差別化された商品を生み出す独自のサプライチェーンを構築

株株式会社ヨークベニマル 代表取締役社長  真船 幸夫
株式会社ヨークベニマル 代表取締役社長
真船 幸夫

 現在のスーパーストア市場を取り巻く厳しい環境のもとでは、他社と同じ商品を販売しているだけでは企業の成長を望むことはできません。他社の商品にはない魅力を持つ差別化商品を生み出し、お客様に提供・評価していただくためには、原材料の仕入れから商品生産、販売まで一貫したサプライチェーンの構築が必要となります。そこで、ヨークベニマル(以下、YB)は2022年3月に中食用惣菜の製造販売を手がける子会社のライフフーズ(以下、LF)を統合し、製販一体の体制を強化。新たにデリカ事業本部を設置(図1)したほか、従来のサプライチェーン改革プロジェクトをサプライチェーン改革推進室へと変更し、デリカ事業本部とYB商品事業部の継続的かつ効果的な連携を図っています。
 これまでもYBでは、独自のマーチャンダイジングに取り組んできました。そこに、長年にわたりデリカの製造小売業を営んできたLFの知見やノウハウ、築いてきたビジネスモデルなどが加わり、新たな気づきを得たことでYBならではの差別化された商品づくりを実現する体制構築が可能となりました。一方で、どんなに良い商品を工場でつくっても、お客様にその価値が伝わり、販売につながらなければ製販一体の強みを十分に発揮することはできません。デリカ工場でつくった商品を売場の発注に結び付け、発注した商品を売り切る流れを着実につくっていくことが、製販一体の成功のカギとなります。
 当初からLFにあったOFT※1という個々の売場運営を本部が指導する仕組みに加え、より地域のお客様の動向やニーズを知る個店が一体となった取り組みが製販一体の成功には欠かせません。そのため、昨年度より店長が関わり販売計画を立て、売場や売り方などのオペレーションを通して売り切るところまで実施できる体制づくりなど、個店一体となった挑戦が可能な環境を整備してきました。このような販売面での取り組みが成果につながり、デリカの売上ならびに売上構成比などは、いずれも初年度目標をクリアし、全社の荒利率を押し上げるという統合効果を生み出しています。

  1. ※1オペレーションフィールドトレーナー

(図1)ライフフーズ統合後の組織図

ライフフーズ統合後の組織図

製造小売業のメリットを活かしさらに多彩な商品開発を追求

 製販一体は「SPA(製造小売業)」と呼ばれ、一般的な小売業とは異なる特徴を持っていますが(図2)、現在YBでは製造小売業として、より踏み込んだ課題に挑戦しています。
 製販一体のメリットは、お客様の声や商品の売上実績などを分析し、その情報を商品やサービスへ素早く反映できるため、ニーズにお応えした、ほかでは買えない商品を着実に生み出せることにあります。これまで店内製造を前提に考えてきたレンジアップ商品や、ミールキットといった商品も順次工場生産に切り替えるなど、自社工場の活用にも注力します。また、今まで生鮮品売場で扱えなかった規格外の野菜や果物などを、ムダなく活用できるという点も大きな利点です。産地では、生鮮品の規格外となり、出荷できない商品も少なくありません。産地に赴き、生産者の方々と協力することで、これまでムダになっていた商品を原材料などに活用する道が開け、すぐれた品質の加工商品を低コストで製造できるようになりました。また、YBのみで販売する小ロットでこだわりのある商品をつくり込むことも可能になり、生産、販売、そしてお客様と、それぞれにメリットが生まれています。
 すでに飲料や惣菜などで商品化が実現しており、今年度はよりいっそう品揃えの拡充に取り組んでいます

(図2)製造小売業と小売業の商品開発から販売までの過程

製造小売業と小売業の商品開発から販売までの過程

ニーズに的確に応えたうえでお客様の期待を超える商品を提供

ニーズに的確に応えたうえでお客様の期待を超える商品を提供

 統合により新設したデリカ事業本部では、5つの生産工場を福島県郡山市と宮城県川崎町に構えています。お客様に豊かな食生活と体にやさしくおいしいものを提案するため、長年、伝承料理研究家の方にご指導いただきながら、こだわりある商品づくりを進めてきました。その中で重視していたことの一つが、素材の調達です。
 お客様が商品を口にするタイミングは、製造から約5時間後が目安となります。時間が経過しても損なわれないおいしさを実現するには、品質の良い素材を使用することが必要不可欠です。そのため商品開発の担当者が産地に赴き、自らの目で見て徹底的に吟味した素材を使用しています。加えて味付けも旨味調味料、保存料、合成着色料などの化学調味料に頼らず工場でとった「朝採れ出汁」を活用するなどして、素材本来の味わいを引き出し、風味と鮮度を際立たせることを基本としています。
 素材の調達から開発の過程にまでこだわり、自社工場で生産した商品を自分たちで意思を持って売り込めることが製造小売業の最大の特徴です。これは、地域それぞれの食生活を把握し、お客様のニーズに迅速にお応えした商品を展開するための大きな力となっています。
 製販一体の強みを十分に発揮させるため、YBでは本部主導ではなく各店舗の裁量で運営を行う「個店経営」を強化しています。その中で販売事業部は、3つの基本方針をもとに店舗と一体となった生産性改善・利益改善に取り組んでいます。
 販売において重要なのは、差別化された魅力的な商品を品切れさせずにご提供し、ロスなく売り切ることです。個店ごとに実績データとその地域特有の情報を参考に仮説を立て、販売量を明確に決めたうえで、時間帯別の販売計画を立てています。1日の中で最も売上を見込める時間帯には各部門の責任者を配置し、状況に応じて詳細な指示を出せる体制も整備。そうして店舗から得たデータは、製造部門が商品の改善や新商品を開発する際の確かなヒントとなるため、情報共有を徹底しています。また、常にチャンスは「内部」にあると考え、各ゾーンのモデル店舗や全社の好事例を素直に学び「発注を変え、売場を変え、売り方を変える」というサイクルを日々迅速に回しています。加えて、データだけでは読み取れない潜在ニーズをとらえるため、地域の方をエキスパート社員として採用。地域のニーズをよく知る人が発注し、売場をつくり、接客して売り切るという高精度の「製販一体」体制を確立しています。
 このほか、マーケティングにおいては、グループで最も高い知見を有しているセブン‐イレブンを参考にしています。レンジアップ後にもおいしく召し上がっていただく商品を常にベンチマークとすることやお弁当、惣菜などの品揃え、価格帯など多くの知見がYBの商品開発や売場づくりに活かされています。一方で、店内調理の強みを活かしたでき立てで、専門店のおいしさを追求した仕上がりの商品は、YBオリジナルのデリカブランド「with mom 365(ウィズマム365)」として「アジアンデリ」や「レストランデリ」といったカテゴリーでYBのみならずグループ各社でも取り扱いを開始しています。

3つの基本方針

  1. 1異常値、ばらつき、ムダ・ムラ・ムリの是正
  2. 2基本4項目*と正しい単品管理の徹底
  3. 3良いお店の良い取り組みに素直に学び、ベンチマーク

*基本4項目
明るく元気なあいさつ  清潔な売場  鮮度と味の追求  豊富な品揃え

商売の原点に立ち返り日本一の製造小売業を実現

 こうした取り組みをさらに進化させ強固なものにするためには、従業員の力が必要不可欠です。
 業務の習熟度を測る「目標設定カルテ」や、部門マネジメント・部門オペレーションを行うための「見える化5項目※2」などを活用し、個店経営・部門経営を実践するための「YBMS(ヨークベニマル・マネジメントシステム)」によって、個店と部門単位に軸足を置き、従業員一人ひとりの知恵と挑戦を土台とした改善活動でそれぞれ成果を出し、企業として成長し続けていきます。
 コロナ禍でコミュニケーションのあり方も大きく変化しましたが、改めて「お客様ファースト」「お客様の立場に立つ」という商売の原点に立ち返り、お客様の困りごとや店舗の提案を本部の各部門がしっかりと受け止め、課題解決を図っていきます。
 今後もこれまで培ってきた製造・販売のノウハウを活かし、製販一体の体制をさらに昇華して新たな「食」のシナジーを創出するとともに、グループ共通基盤・インフラのさらなる強化に寄与します。そして、「一人のお客さまに誠実を尽くす」といういついかなる場合でも変わることのない創業の精神を指針に、お客様の期待を超えた価値ある商品を提供していくことで、商品づくりから販売までお客様ファーストかつ、日本一の食品製造小売業の実現を目指してまい進してまいります。

  1. ※2オペレーション確認表、販売計画・部門MT、作業管理板、パフォーマンスメジャー、改善委員会の5項目でPDCAを回し、達成すべき目標や課題を明確化させる取り組み