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セブン&アイの挑戦

7-Eleven, Inc. の成長戦略
俊敏な変化対応と店舗ネットワークなど基盤の強化を進め、さらなる成長へ(2)

2021年11⽉

商品販売力の強化に向けたフレッシュ・フードの質向上

お客様ニーズの変化に対応し続ける

Jack Stout
7-Eleven, Inc. シニアヴァイスプレジデント
商品本部 兼 ディマンドチェーン

Jackジャック Stoutスタウト

 当社のマーチャンダイジング(MD)戦略は「セブンイレブンでしか手に入らない商品」を提供していくため、お客様ニーズの変化をつねにとらえ続けることを最も大切にしています。とくに、新型コロナ以降この1年数カ月間におけるお客様ニーズの変化は、これまで体験したことのない劇的なものでした。中でも私たちのビジネスに大きな影響を与えた変化は、第1に多くの外食施設が閉鎖され、お客様の食事に関する選択肢が減ってしまったこと、第2に多くのお客様がテレワークにシフトした結果、朝食メニューを提案するビジネスが大きな影響を受けたこと、そして第3にデリバリーへのニーズが高まったことです。
 とくにデリバリーでは、お客様のもとに届いて召し上がっていただくまで、おいしさや品質を保つ取り組みを強化しました。たとえば、これまでピザはフレッシュ・フードの工場で焼きあげて冷凍したものを店舗に配送し、店内で温めていました。今回、より高品質のピザを提供するため、一部の店舗では、半製品の状態で工場から出荷し、店舗で最終的に焼きあげるという仕組みに変えました。この「フレッシュピザ」は、デリバリーのニーズに対応するための技術的な革新の一例です。お客様ニーズの急激な変化に対応するために、品揃えから商品生産や店舗への供給方法など、あらゆる点で改革を進めています。

スライダーの品揃え

ホットスライダーの品揃え

生産〜配送インフラを革新し、フレッシュ・フードの拡大を追求

 当社がほかにはない差別化商品として、とくに注力している領域は、フレッシュ・フードやコーヒー、スラーピー、ファウンテンなどセブンイレブンだけで販売している「専用飲料」、PB商品です。これらの商品の売上構成比は、現在21%に達していますが、将来的には50%以上に拡大し、中でもフレッシュ・フードの売上を高めていくことを重視しています。
 「温かいものは温かな状態で食べたい」「よりいっそう高品質なものがほしい」というように、お客様がセブンイレブンに求める品質の要望はより高まっています。また、ミレニアル世代以降の若い世代のお客様が増えるにつれ、「今までにないものを」という冒険心に富んだ要望も高まり、ニーズの多様化も進んでいます。
 フレッシュ・フードの味、品質の向上で、大きな役割を果たしているのが、2017年から進めているわらべやテキサスとの取り組みです。私たちはわらべやテキサスとチームを組んで、新たな商品開発を進めるとともに、商品製造のプロセスや品質を維持したまま商品を店舗に供給する仕組みを構築しています。このチームで開発した新商品は、現在テキサス州ダラス周辺の約650店舗以上に供給、さらにこの開発プロセスを手本にして、ほかの地域で私たちとパートナーシップを組んでいるフレッシュ・フードのメーカーに拡大しています。実際に、ホットスライダー(ミニハンバーガー)などの新商品は、ニューヨークやロサンゼルスで展開を始めており、今後フロリダでも展開する計画です。
 各地に拡大する場合、地域性に合わせて味付けやソースなどレシピを変えています。たとえばチキンスライダーという商品の場合、西海岸ではバッファローソースが好まれますが、他の地域ではマヨネーズベースのソースが好まれるなどの違いがあります。また、牛肉を使ったレシピでも、地域によってはハラペーニョ・チーズステーキを使い、別の地域ではバーガーパティにするなど、地域性への対応を図っています。
 また、このフレッシュ・フードの商品開発で、重要な役割を果たしているのがチームMDです。チームMDの取り組みについては、セブンイレブン・ジャパンとも人財交流などを含めた連携のもとで進めており、私自身も2014年に9カ月間日本でセブンイレブン・ジャパンの商品開発チームに加わって、開発プロセスに関する知見を深めました。
 当社では原材料、製造加工、パッケージなど商品に関わるさまざまなサプライヤーが参加し、お客様ニーズなどの情報を共有しながら、ベンチマークを設けて、既存の売筋商品を超える品質や価値を持つ商品を開発するというプロセスを構築しています。そして、商品の発売にあたって、重要なパートナーとなるのが店舗オペレーションのチームです。具体的には販売量を個店レベルに落とし込んだ販売計画を立ててテスト販売を行い、その販売実績をフィードバックして計画を修正していきます。そして、実際に販売する時には、店舗からの発注や売場演出が必要であり、また商品によっては店舗での調理も必要になります。さらに、店舗の皆さんに商品の情報や特色を十分理解していただくことも重要です。

フレッシュ・フード戦略にも寄与するレストラン事業

LAREDOTACO

 今後強化していく事業の一つがレストラン事業です。現在、私たちは約500店のレストラン併設店舗を展開しています。レストラン併設店舗は通常の店舗と比べてフレッシュ・フードの売上も高いという特徴があります。こうした点をふまえ、2025年度までにレストラン併設店舗を1600店に拡大していく方針です。十分な広さのある場所に店舗、レストラン、駐車スペースをフルサイズで確保するのが理想的で、併設店舗の展開は新規出店が中心ですが、既存店舗の中でも十分なスペースがあり、お客様のニーズが見込まれる店舗を改装して、レストランを併設する事例もあります。
 現在、展開しているレストランの多くは「ラレドタコ(Laredo Taco)」というタコスのレストランで、これは2018年に統合したスノコ(Sunoco LP)のチェーンが展開していましたが当社で拡大を図ってきました。また、現在はまだ20店舗ほどですが、「レイズ・ザ・ルースト(Raise the Roost Chicken & Biscuits)」というチキンメニューのレストランも展開しています。この2つは全国的に受け入れられるメニュー内容であり、今後のレストラン事業の中心になっていくものと考えています。

デリバリー、キャッシュレス決済などデジタル戦略で開く「次の便利」への扉

利便性を革新するデジタル戦略の展開

Raghu Mahadevan
7-Eleven, Inc. シニアヴァイスプレジデント
最高デジタル責任者

Raghuラグー Mahadevanマハデヴァン

 お客様ニーズが多様化する中で、「利便性」の再定義が必要になっています。近年、とりわけお客様が強く望んでいるのは、「一人ひとりのニーズに即したサービス」と「いつでもどこでも買物ができる」ということです。さらに、コロナ禍で「非接触」や「スピード」も強く求められるようになりました。今当社が展開しているデリバリーサービス「7NOW」、セブンイレブンのアプリを通じて提供している「7Rewards(セブンリワーズ)」、「7-Eleven Wallet(セブンイレブンウォレット)」、「モバイルチェックアウト」、給油時の利便性を高めるサービス「Fuel Loyalty(ガソリンロイヤリティプログラム)」は、まさに変化するお客様ニーズにお応えするものです。そして、これらを進めていくほど、当社がお客様に最初に選んでいただけるCVSになるという期待を強く感じています。

7NOW

高まるニーズに応え、最速デリバリーを追求

 コロナ禍以降、とくにお客様のご要望が高まったのは、宅配サービスです。「デリバリー料金がかかっても良いので、フレッシュ・フードや飲料を届けてほしい」というお客様の声が多く聞かれるようになりました。幸い私たちは「7NOW」をコロナ禍以前の2018年にスタートしてサービスを拡大してきたので、スピーディーに対応できました。その中で私たちが強みとしているのが、24時間体制でサービスを提供できること、そして短時間でお届けできるという点です。現在ではさまざまなデリバリーサービスが登場していますが、どのデリバリーサービスも主眼に置いているのがスピードです。その中でも私たちは、つねに全米で最もスピーディーに宅配できることを目指しています。また、Speedwayが統合されたことで、全米の半数の人々の2マイル以内に店舗を有するようになり、この店舗網を活かすことで、ご注文から約30分以内という短時間でのお届けを実現しています。また、DoorDashやUber Eatsといった宅配サービス事業者とも連携することで、より幅広いお客様にご利用いただける体制も構築しています。
 「7NOW」は、現在4000店舗で実施、とくにフレッシュ・フードのニーズが高いことから、店舗に比べ一人当たりの買上点数が多く、客単価が高いという傾向も見えています。
 「7NOW」を導入するにあたり、リアルタイムに店舗在庫を把握するシステムを構築してきました。この仕組みを活用することでお客様も店舗の在庫を知ることができます。また、在庫量が僅少の商品については、注文時に在庫があっても店内のお客様が購入される可能性があるので、欠品した場合に代替商品にするか、キャンセルするかといった選択をあらかじめしていただけるようにしています。配達先については、当初はご自宅やオフィスなどでしたが、現在では「7NOW PINS(セブンナウ ピンズ)」というサービスで、公園など公共の場所であればご指定いただいた所にピンポイントでお届けできます。さらに、「置き配」にも対応するなど、サービスを進化させ続けることで「7NOW」のお客様につねに新しい体験価値を提供しています。

7Rewards

お客様一人ひとりとの関係強化を促進

 「7Rewards」は、セブンイレブン・アプリをご利用のお客様一人ひとりに特化した利便性と特典をお届けするプログラムです。アプリをたちあげると、すぐにいつものお気に入りの商品にアクセスできることに加え、時間帯によってご提案する商品にも変化をつけています。また、お客様一人ひとりに特化したプロモーションを展開することで来店動機も高まり、お客様に高く評価していただいています。
 「7Rewards」のアクティブ会員数は、約1600万人に達し、お客様だけでなく店舗にとってもメリットのあるサービスとなっています。

7-Eleven Wallet

店舗利用の促進にも寄与する決済サービス

 「7-Eleven Wallet」(以下、「Wallet」)は、セブンイレブン・アプリに組み込まれた決済サービスで、お客様はキャッシュレスでお支払いいただけます。チャージは、現金、クレジットカード、デビットカードなどから選択でき、オートチャージにも対応しています。また、「Wallet」をご利用のお客様の1回当たりのチャージ金額は平均22.7ドル(約2500円)で、こまめにチャージしながら頻繁にご来店いただいています。このように「Wallet」は、店舗のロイヤルティを高めることにもつながっています。

Fuel Loyalty

給油のお客様への簡便・お得なプログラム

Fuel Loyalty

 「Fuel Loyalty」は、セブンイレブンの給油所をご利用いただくお客様に提供しているサービスプログラムで、給油機の番号と給油量を入力すると、支払いを済ませることができます。また、給油所の従業員と接触することなく給油を済ませ、一連の入力を音声認識で行うことができるのも特徴です。さらに、サービスのご利用を促進するため、一部地域で「プライスロック」のテスト導入も実施しています。これは、ガソリン価格を地域内の給油所の中で最も安い価格に合わせるサービスで、お客様は地域内で安い給油所を探し回ることなく、セブン - イレブンでいつでも最安値で給油できます。「Fuel Loyalty」は昨年12月にサービスを開始、現在会員数は220万人を超えています。

モバイルチェックアウト

レジに並ばず決済できるサービス

モバイルチェックアウト

 「モバイルチェックアウト」はお客様がご自身で商品をスキャンして、キャッシュレスで支払いを済ませることができるサービスです。2018年に展開を開始しましたが、コロナ禍を契機にこのサービスへの需要も一気に高まりました。約3500店舗(2021年9月時点)で展開しており、サービス開始以来、延べ100万人以上のお客様にご利用いただいています。
 お客様にとってこのサービスの最大のメリットは、レジに並ばなくて済み、お店での滞在時間を最短にできるということです。一方、お店の側からは、お客様に確実に精算していただくということが重要です。そこで、私たちはこのサービスのための専用カウンターを店内に設置し、お客様が決済画面をかざすことで、音により従業員に決済ずみであることを通知できるようにしました。また、お店の在庫確認用の端末には、店頭でお客様がスキャンした商品を確認する機能が設けられています。
 さらに当社では、このようなDXを活用した利便性の拡大に向けて、「7NEXT」というチームを設け、最先端のデジタル技術や知見を活かした研究開発を進めています。このチームでは、つねにセブンイレブンに求められる「次代の利便性」とは何かを検討し、新たなテストにも次々と取り組むなど、お客様に驚きと期待をもって迎え入れていただける新たな価値を提供できるよう努力しています。