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セブン&アイの挑戦

7-Eleven, Inc. の成長戦略
俊敏な変化対応と店舗ネットワークなど基盤の強化を進め、さらなる成長へ(1)

2021年11⽉

7-Eleven, Inc.の成長戦略 俊敏な変化対応と店舗ネットワークなど基盤の強化を進め、さらなる成長へ

今年5月にSpeedway買収を完了し、北米に13,000を超える店舗を展開する7-Eleven, Inc.
セブン&アイグループの成長戦略の一翼を担う同社の戦略についてインタビューとともにご紹介します

俊敏な対応力と基盤の拡充で着実な成長を追求

 2020年から2年近くにおよぶ新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の拡大は、世界規模のパンデミックとなり、米国においても社会、経済に大きな影響をもたらしました。私たちは新型コロナが猛威を振るい始めた時、まずお客様、従業員、加盟店の皆様など私たちのビジネスに関わるすべての人々の安全と健康をいかに守るかという点に、最も心を砕きました。米国内でも外出規制が課せられるなど、私たちのビジネスにとっても厳しい環境となりましたが、セブンイレブンは社会生活に不可欠な「エッセンシャルビジネス」と認められ、連邦政府から営業要請がありました。お客様が必要な時に必要な商品・サービスを提供し続けるという私たちの取り組みが、パンデミックの状況下でも積極的な役割を果たしてこられたことに私は大きな誇りを持っています。
 今回の新型コロナの拡大は、お客様の消費行動に大きな変化をもたらし、ほとんど一夜にして変わったとさえ感じるほど急激です。お客様が感染を回避するために外出を減らした結果、店舗への来店頻度が減少した一方で、ご来店時には数日間の生活に必要なものをまとめて購入される傾向が高まり、客単価は上昇しました。
 また、必要な商品を自宅や今いる場所に届けてほしいというニーズが高まりました。当社では2018年以来、スマートフォンなどを使ってご注文いただき、短時間でお届けする「7NOW(セブンナウ)」というデリバリーサービスの展開に取り組んでいたことが奏功し、このプラットフォームを活用することで、コロナ禍によるデリバリーへのニーズにも迅速に対応できました。その結果、2020年1月に比べ、9月末現在で「7NOW」の売上規模は約10倍に拡大しています。

7NOW(デリバリー)の利用状況

7NOW(デリバリー)の利用状況

 当社に限らず、世界の小売業を取り巻く環境においては、過去数年来、VUCAの時代といわれるように不確実性が高まっています。コロナ禍は、この不確実性の高まりを一気に顕在化させました。このような中で着実に成長を継続していくには、俊敏な対応と変化への備えがきわめて重要であると考えています。
 成長に向けた基盤強化という点では、3000店舗超のネットワークを持つ「Speedway」の統合はその中核となる重要な取り組みです。私たちは買収完了後、Speedwayの事業についてさらに細部にまで踏み込んで調査を進めてきました。その結果、統合効果は、昨年買収を決定した当初の想定を大きく上回り、現時点では3年目の想定シナジーとして6億~6億5千万ドルに達すると見込んでいます(2021年10月公表時点)。

Speedway統合後3年目の想定シナジー

Speedway統合後3年目の想定シナジー

Speedway統合による優位性の強化

Speedway

 現在、米国のコンビニエンスストア(以下、CVS)市場は、個人経営を含めた10店舗以下の小規模チェーンの店舗数がマーケット全体の約65%を占める細分化された業界であり、大手3社で90%以上を占める日本のCVS市場とは大きく異なっています。このような環境下で米国内では、売却や買収が盛んに行われており、当社でも戦略的なM&Aを進めることで、市場でのシェア拡大を図り、効率的な店舗運営、物流体制の整備を進めてきました。
 Speedwayは、米国中西部において多くのお客様に認知されており、7-Eleven, Inc. の既存出店エリアを強力に補完するものとなります。また、今回の統合によって、CVS市場として魅力的な全米50都市のうち47都市に、当社は店舗網を展開することとなります。これは、全米の人口の50%以上の方の半径2マイル(約3.2km)以内に店舗を展開することになり、デリバリーサービス「7NOW」などの拡大をさらに有利にするものになります。このようにSpeedwayの統合は、CVS市場でナンバーワンの店舗シェアを有する当社の優位性をより高め、成長を加速させるものと確信しています。
 当社はこれまでのM&Aを通じて、統合に関する経験とノウハウを積み重ねてきました。今回のSpeedwayの統合でもその知見を活かし、よりいっそう円滑な統合プロセスを推進していきます。マーチャンダイジング、プライベートブランド(以下、PB)、物流、IT、燃料調達など20のプロジェクトチームをたちあげ、取り組みを進めています。チームには7-Eleven, Inc. とSpeedway双方からメンバーが参加し、運営委員会の下で各チームが計画的に仕事を進め、進捗状況や課題に関する報告が私のもとに毎週上げられます。さらにガバナンスの点においては、セブン&アイグループと密接に連携して統合を進めています。
 私は統合プロセスにおいて、次の3つの点を大切にしています。第1にリーダーシップ、第2に人と人との信頼関係、第3にコミュニケーションです。これらはそれぞれリンクしています。
 リーダーが現場に姿を見せ、直接方針を示して統合をリードするとともに、働く人々と対話を交わしながら、公平、公正な評価を進めていることを従業員の皆さんに理解してもらうこと。そして統合が、7-Eleven, Inc. とSpeedway双方の従業員にとって、成功のチャンスを広げ、より良い未来につながると確信を持ってもらうこと。これが統合を成功させる基盤になると考えています。
 また、勝利(WIN)の体験をともにすることが、教育効果を高めるうえで大切であると考えています。このため、あらゆる機会を通じて、すぐれた取り組み事例を従業員の皆さんに発信し、ケーススタディとして共有するようにしています。たとえば、7-Eleven, Inc. のPB商品を積極的に導入することでどれだけ販売力が高まったか、あるいは単品管理をしっかりと実行していくことでどれだけお客様ニーズに対応する力がついたかなど、すぐれた取り組みをした従業員一人ひとりを全国規模の会合などで表彰しています。当社のビジネスの根幹を支える取り組みについて理解を深めるとともに、従業員のモチベーションを高めることにもつながります。統合によってこれまで異なる企業文化のもとにあった人々が当社のビジネスに参加するわけですが、私はこうした勝利の共有を通じて当社が大切にしている「お客様の立場に立って考える」「お客様のニーズにしっかりと対応する」といった共通の価値観が育まれ、一体感が高まっていくと確信しています。

成長戦略のカナメとなる「 シックス・ポイント・プラン 」

  私たちは成長戦略として「シックス・ポイント・プラン」を策定しています。この取り組みは2016年以来、継続して進めていますが、市場環境が大きく変化する中で、随時見直しを行ってきました。策定にあたって最も重視している点は、お客様ニーズの変化です。現在、私たちにとって重要な「変化対応」の要点は、
①迅速・フレンドリーなサービス
②売場はつねに清潔さと安全・安心が確保されており、ほしい商品の欠品がなく機会損失を回避すること
③商品は「新鮮」「でき立て」などお客様にとってつねに魅力的であること
④あらゆる商品・サービスでお客様に満足していただけるよう、「質」と「価値」を絶対的に追求すること
⑤セブンイレブンの商品やサービスが「いつでも」「どこでも」手に入り、利用できるよう、さらなる利便性を追求すること
 これらを実現するためのカナメの戦略「シックス・ポイント・プラン」を通じて「7-Eleven」ブランドのさらなる認知向上を図ります。
 このシックス・ポイント・プランの達成にも、Speedwayの統合が大きく寄与します。とくに第4の「スケールを活用したコスト構造の改革」は、統合によるシナジー効果を活かすことで、仕入原価の低減、店舗運営の効率化、販売管理費など間接費の削減、ITシステムの統合・標準化によるコスト削減、事業ポートフォリオの適正化などを促進できます。また、第6の「店舗・デリバリーネットワークの構築」において、より短時間で注文に対応する「クイックコマース」の推進やラストワンマイルソリューションの構築に大きく貢献することが期待できます。
 私はこのシックス・ポイント・プランを、当社が培ってきた企業文化に根差した取り組みとして推進することが大切であると考えています。当社の企業文化とは、「お客様の立場に立って考える」「お客様ニーズにしっかりと対応する」という価値観であり、従業員それぞれが主体的に仕事に取り組むことを定めた「7-Eleven, Inc. リーダーシップ・プリンシパル」の精神です。この価値観や精神のもとにESGプログラムの強化、人財育成、より良い仕事環境・お買物環境の構築などを推進することで、当社の事業基盤をさらに強固なものとしていきます。そして、この基盤の上に立ってシックス・ポイント・プランを実行することで急速に進むお客様ニーズの変化に対応し、さまざまな経営数値による検証を通じて、取り組みのチェックや修正を重ねていくというサイクルによって、より着実な成長を期待しています。

シックス・ポイント・プラン

シックス・ポイント・プラン

CO2 削減目標の早期達成などサステナブル経営も加速

EV化に係る外部環境 (米国新政権によるEV化促進施策)
EV化に係る外部環境
(米国新政権によるEV化促進施策)

 今、気候変動などの問題は、地球規模で取り組む課題であり、「持続可能な社会の実現」に貢献することは、企業の社会的な責務となっています。現在、米国内のCVSの約80%がガソリンスタンド併設店舗になっており、当社でも約60%の店舗がガソリンスタンドを併設しています。もちろん、中長期的に見ればガソリン自動車から電気自動車(EV)などへの転換が進むことが予想されますが、現状、米国内ではガソリンに対するお客様ニーズは依然高く、そのためガソリン事業と併せたサステナブルな施策を推進することが重要です。
 私たちは、ガソリン車からEVへの転換という変化に対応して、EV充電設備の設置をスタートさせ、2022年には計画を5年前倒しして250店舗に500台分以上の充電設備の設置が完了する予定です。この充電設備に関しては、お客様にとってより便利なものとなるよう、さまざまなノウハウを蓄積している最中です。最終的には現在のガソリン補給と同様に短時間で充電できるよう、急速チャージの技術なども取り入れたものになると考えています。
 また、CO2排出量の削減に関しても、2027年に(2013年対比で)20%削減することを目標として取り組みをスタートし、2020年には計画を大幅に前倒しして28%削減を達成しました。このCO2排出量の削減にあたっては、店舗の空調、照明などのきめ細かな省エネルギー化を推進するとともに、風力発電、太陽光発電など再生可能エネルギーも積極的に導入しています。たとえば、テキサス州に展開している約1000店舗の全店に風力発電による電力を導入しており、フロリダ州では約800店舗が太陽光発電による電力を導入しています。今後、こうした取り組みをさらに拡大していく方針です。加えて、プラスチックの削減では、2030年までにPBの約50%がパッケージの素材を環境にやさしいものに転換する目標を掲げています。そして、食品ロスの削減や食品リサイクル、持続可能な調達に関しても2030年の目標達成に向けて取り組みを進めています。
 これらの取り組みにあたっては、環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』に取り組むセブン&アイグループと課題を共有しながら、企業としてしっかりと責務を果たしていきます。持続可能な社会づくりに貢献することで、未来世代や地球全体の人々と連携していくことは素晴らしく、誇らしいことです。

7-Eleven

ブランド価値の最大化を図るグローバル戦略の推進

 セブン&アイグループとして推進するグローバル戦略には、「既存国との連携強化」「新地域への出店促進」「グローバル連携拡大」という3つの目的があります。
 グローバル戦略に基づく包括的なプログラムにより、既存のエリアライセンシーはさらなる成長を期することができるでしょう。また、現在当社が提供しているフレッシュ・フードなど、お客様のニーズが高く、大きな販売チャンスのある高品質商品を、世界の各地域で展開していくことで、新たにグローバルなバリューチェーンも生まれると考えています。
 さらに、ITソリューションやESGに関するソリューションの提供を通じて、世界の各地でセブンイレブンのビジネスモデルを革新し、ブランド価値を最大化することができると期待しています。このグローバルな取り組みを推進するために、7-Eleven, Inc. とセブンイレブン・ジャパン、セブン&アイHLDGS.が連携して、新たな会社7-Eleven International LLCをたちあげました。このグローバル戦略によって、世界のどこでもセブンイレブンの質の高い商品やサービス、利便性を享受できるようになる将来像を描いています。
 最後に、日本のステークホルダーの皆様に、当社の取り組みをお伝えする機会を得たことを光栄に思います。また、世界規模のパンデミックという非常に厳しい経営環境の中でも、セブン&アイグループの一員としてグループ各社との連携を深めながら、着実に成果をあげられたことをたいへん誇りに思います。ステークホルダーの皆様には、今後いっそうのご理解とご支援をお願い申し上げます。

セブン&アイグループのグローバル戦略

セブン&アイグループのグローバル戦略