鈴木 百田さんの小説がどれもベストセラーになり、『海賊とよばれた男』が「本屋大賞」に選ばれたのも、百田さんが読者に満足してもらうものをという姿勢で書いてこられた結果なのでしょう。書店に勤めている方には、読書好きが多いです。その人たちに「たくさんの人に読んでほしい本」と認められたわけですから、素晴らしいですね。
百田 私も「本屋大賞」をいただけたことは、他のどんな文学賞をいただくより名誉なことだと思っています。
鈴木 百田さんの小説が多くの読者を惹きつけている魅力の一つに、読みやすい文章で書かれているという点があると思います。この点については、何か心がけていることがあるのですか。
百田 私はずっとテレビの仕事に携わり、ナレーションや番組の台本を書いてきました。放送の場合は耳で聞く文章ですから、ややこしい長い文章や複雑な文章は伝わりにくいんです。ですから、テンポやリズムを大切にした、わかりやすい文章を書くよう心がけてきました。小説を書く場合でも、そういう点に気を配っています。
鈴木 なるほど、お話をうかがって納得がいきました。読者の立場で考え、喜んでいただけるように心配りをすることが、読者からの支持につながっているわけですね。小売業でもまったく同じことが言えると思います。お客様はつねに変化し続けています。今日おいしいと感じる商品も、明日はもう飽きてしまいます。そういう変化に対応し続けるのが、私たちの使命です。
本日はいろいろと私たちの仕事にも参考になるお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。