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[対談] ブレイクスルーのヒント

きめ細かな戦略で大きく仕掛けヒット作品を生み出す

鈴木 最終的にヒットするかしないかという点は、どのくらいで見当がつくものですか。

見城 だいたい発売当初3日間の売上げでわかります。プロモーションや宣伝を行うことでごく稀に、売れ行きの悪い本を途中からヒット作に「化けさせる」こともできますが、そのまま放っておけば最初の3日間の動きが示した通りの成績になります。
幻冬舎でも年間20作品くらいがテレビや映画の原作になり、ノベライズ本が出たりしますが、これらも本の売れ行きで視聴率や映画の興行成績の予測ができます。TVドラマや映画がスタートする一週間前の本の動きがよければ、ドラマや映画も好成績になります。

鈴木 プロモーションや宣伝は、どのように取り組んでいらっしゃいますか。

見城 これはいけると思ったものは、最初から一点集中主義で大きく仕掛けます。通常の初版は7千部程度ですが、最初から10万部を刷ったり、メディアとタイアップしてインパクトを高めることで、より話題性を上げることができます。
また、私はいろいろな戦略を立てる時に、自分の戦いやすい環境をつくるようにしています。広告代理店などは、最大手を使いません。大きな代理店で出版界で20番目のクライアントでは、こちらのわがままを聞いてくれません。むしろ中小規模のところで、幻冬舎がトップクライアントという方が、機動的に動いてもらえます。
たとえば、私は毎朝、POSデータを1時間以上かけて見ていますが、ある本が北海道地区で突然動き始めたとします。そうすると、2日後には北海道で新聞広告を打ち、その本を増刷して5日後に北海道の書店に並べてもらう、そして地域の放送局が独自につくっている情報番組で取り上げてもらう。そういうきめ細かな戦略を実施するには、印刷会社でも大手ではなく、小回りの効く対応をしてくれるところが不可欠です。

鈴木 なるほど。流通業でも、そういうきめ細かい戦略が重要です。自信を持って売ろうと思えば、最初から大きく目立つように打ち出し、効果的に広告を打つなどの戦略が必要です。いまの流行はペンシル型で、すぐにピークが来て下降してしまう傾向にあるので、いかに初期段階でお客様の目に留まるかが売上げを大きく左右します。さらに、日々の動きを見て、すぐに手を打つことが最も大切です。新しい商品開発や販売方法を生み出すには、つねにそういうきめ細かさを持ち続けることが大切だと思います。

見城 そうして仕掛けたものがブレイクして世間が注目する頃には、もう次の無名を仕掛けていく。それが美しい編集者だと思っています。

鈴木 今日は、挑戦し続けることの大切さを教えていただきました。見城さんの挑戦意欲に満ちた仕事ぶりは、新たな消費環境をどうやって切り開いていくか、流通業にとっても刺激になるお話でした。本日は、ありがとうございました。

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