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セブン&アイの挑戦

2017年8月

特集 グループの成長に寄与する「海外コンビニエンスストア事業」北米で1万店を視野に躍進する7-Eleven, Inc.

セブン‐イレブン・ジャパンとともにセブン&アイHLDGS.の成長戦略を支えているセブン‐イレブン・インク(以下、SEI)。オリジナル商品による差別化、出店戦略、事業インフラの革新などを通じて「質をともなった成長」のさらなる加速に踏み出しています。今号では、SEIの現在の姿をデピント社長のインタビューとともにご紹介します。

大きく変化している米国の消費市場に新たな「コンビニエンス」で挑戦する

 イトーヨーカドーは2008年、生産者とともに「環境循環型農業」を行う農業生産法人として(株)セブンファーム富里を設立し、新たなビジネスモデルをつくりあげてきました。
 セブンファームの設立は、日本の農業を元気にしたいという思いと同時に、2007年に「食品リサイクル法」が改正されたことが一つの契機でした。同法によって、小売業は2012年度までに食品循環資源のリサイクル率を45%とする目標が設定されました。そこで、セブンファームではイトーヨーカドーの各店舗から出る野菜くずなどの食品残さを堆肥に変え、その良質な堆肥を使って野菜を栽培し、おいしくて安全・安心な野菜を新鮮なまま店舗で販売する「リサイクルループ」の仕組みを構築。現在では全国13カ所に農場を設置し、栽培面積は総計200ヘクタールに達しています。また、2018年度のリサイクル率は53.2%まで向上。2019年度の新たなガイドラインである55%に向けてさらなる向上を図っています。

セブン‐イレブン・インク  ジョセフ・M・デピント社長に聞く

2005年にセブン‐イレブン・インク社長兼CEOに就任し、商品、オペレーション、出店政策などあらゆる面で同社の改革を推進してきたデピント社長に、直近の米国の市場環境とそれに対応する成長戦略について聞きました。

所得層や地域間の差にきめ細かく対応

Joseph M. DePinto

セブン‐イレブン・インク社長兼CEO

1962年生まれ。ウエストポイント陸軍士官学校卒。95年、Thornton Oil Corporation入社。99年、同社上級副社長COO。2002年、7-Eleven, Inc. 入社、同社部長。03年、オペレーション本部長。05年、同社社長兼CEO(現任)。10年、Brinker International, Inc. 取締役(現任)。15年、セブン&アイ・ホールディングス取締役(現任)。

 米国内の経済環境は大きく変化しています。新政権の発足にともなう新たな施策の実施、税金還付の遅れ、保険料支払いの増加などが、消費行動に抑制的に働きました。一方で、引き続き雇用状況は好調に推移しており、賃金も上昇傾向にあります。これらの効果は、今後も消費の伸びに結び付くものと期待しています。

 また、近年、米国では資産を保有する富裕層と資産を保有していない層の二極化にともなう消費行動の差が生じています。地域間でも、税制面で有利な州や都市部に人口が集中など、地域によって成長性に格差が生じています。

 このような環境の中、私たちSEIは、すべてのお客様にご満足いただくには、味・品質にこだわった商品を適正な価格で提供するとともに、個店ごとに商圏環境に合わせたきめ細かな品揃えが必要と考え、対応を進めています。

「6ポイントプラン」を軸に新たな「コンビニエンス」へ

 具体的には「6ポイントプラン」という6つの戦略の柱を策定しました。これは、私たちが消費動向を調査・分析する中でとらえた「新しいニーズ」に対応するものです。新しいニーズの背景には、現在のお客様の生活が、全般的に忙しくなっており、食事、買物といった生活に欠かせない活動にも「時間の節約」が強く求められている点があります。たとえば、お客様の中心となる「ミレニアル世代」と呼ばれる18歳から35歳の年代層では、朝昼晩と決まった時間にしっかりと食べるのではなく、時間のある時に簡単な食品を口にする「スナッキング」という習慣が広まっています。また買物も、1店舗で必要なものをすべて買い揃える「ワンストップショッピング」が主流になっています。さらに、インターネット環境が整ってきた結果、24時間つねにネットに接続して、情報を得たり、買物をしたりするお客様が増えている点も見逃せません。

 こうしたすべての変化の中で、私たちは、「コンビニエンス」ということを再定義する必要があります。今、お客様が買物に求めていることは、快適で時間を節約できるサービス環境の創出であると考えています。そこで「6ポイントプラン」を軸に、商品力の強化、物流の効率化、店舗運営の効率化などに取り組んでいます。

積極的な出店とM&Aで店舗網を強化

 現在、米国では15万5千店舗にのぼるコンビニエンスストアがありますが、そのうち9万店が10店舗以下の小規模チェーンあるいは個人経営です。小規模チェーンの経営環境は年々厳しくなっており、大手チェーンへの売却等によるチェーンの再編が進んでいます。このような中で、私たちは新規出店や既存店舗の活性化によって収益性を強化するとともに、中小規模のチェーンの買収も適宜行うことで、成長性の高い地域での出店を進めてきました。また、M&Aに必要なノウハウも蓄積してきました。このような流れの中で、今回Sunoco LP社※(以下、Sunoco社)のコンビニエンスストア事業の一部を取得する計画を進めており、実現すれば1000店規模の買収になります。このような大規模な事業取得を円滑に進めていくため、社内に特別なプロジェクトチームも立ち上げました。Sunoco社の店舗にはすぐれた立地環境の店舗が多く、南テキサス、フロリダ、あるいは北東部のチェサピーク湾周辺などで私たちの出店戦略に資する店舗網の拡充が期待できます。

※ Sunoco LP社:テキサス州に本社を置き、ガソリンの卸売・小売とコンビニエンスストア事業を運営。

グローバルにブランド力を高めていくために

 グローバルビジネスについては、現在17の国と地域で展開していますが、各国の店舗の質も高めていく必要があります。私たちはセブン‐イレブン・ジャパンと連携して「ELS(Enhanced Licensee Support)」と呼ぶプログラムをつくり、世界のエリアライセンシーの支援を行っています。とくに食品の品質については、どの国も共通課題としてとらえています。商品の品質向上や生産性の向上を図ることで、グローバルで「セブン‐イレブン」のブランド価値を高めることが、私たちのビジネスにも多くの利益をもたらすものと確信しています。すでにシンガポールなどのエリアライセンシーの支援を実施しており、成果をあげています。
 2015年に私はセブン&アイHLDGS.の役員となり、セブン&アイグループの全体の動きが見えるようになったことを大変うれしく思っています。グループの一員として連携を深めていくことで、「セブン‐イレブン」のブランドをより強固なものにしていきたいと思っています。

企業の社会的責任として店舗等の環境対応を推進

私たちは、市民社会の中でしっかりと社会的責任を果たす会社であることを大切にしています。今、地球規模で取り組まれている環境対応も、私たちの重要な課題です。これまで、店舗ではエネルギーマネジメントシステムの導入、照明のLED転換、空調設備の刷新などを進めており、年間3.8億キロワットを削減するなど省エネ効果をあげています。また、テキサス州内では、今後風力発電も活用する方針で、温暖化ガス削減に寄与しています。

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