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セブン&アイの挑戦

2020年11月

「with/afterコロナ」の経営戦略

事業プロセスの抜本的な革新を図り
世界的な視野で成長機会をとらえる

世界全体がコロナの影響を大きく受けた2020年。
グループ各社はお客様の行動変容と価値観の変化に誠実に対応し、「with/afterコロナ」の時代のニューノーマルと呼ばれる新たな生活のあり方に、グループシナジーを活かして積極的にお応えしようとしています。
ここでは、その背景となる考え方とグループ戦略についてご紹介します。

「存在意義」の再確認と改革の加速

企業価値と社会価値の両立

(図1)with/afterコロナの経営方針

 このたびのコロナ禍では、国内における感染拡大の初期段階でお客様の購買行動に大きな変化が生じていることを、あらゆる現場の情報から確信するとともに、この変化が一過性のものではなく、潜在的に進行していた消費の変化を加速度的に顕在化させる「消費市場の潮目」ととらえています。この消費市場の変化は、コンビニエンスストア、食品スーパー、スーパーストアや百貨店などの大型店、レストランをはじめとした専門店など、あらゆる事業領域に表れています。セブン&アイグループのあらゆる業態で、売れる商品、買上点数、来店頻度などが、コロナ禍以前と比べると顕著に変化しましたが、これは、お客様の店舗のご利用の仕方が変化し、生活の中の位置づけが変化していることを物語っています。私たちは、このお客様の消費行動とその背景にある価値観の変化を、セブン&アイグループの事業の存在意義を根底的に見直す機会ととらえ、グループの取り組みを整理しました。(図1)
 また、グループの各事業会社においてもこれまで積み重ねてきた改革の成果を活かしながら、新たな対応を図っています。たとえば、デニーズを運営するセブン&アイ・フードシステムズでは、店舗のご利用が大幅に減少する中で、調理済み惣菜など中食ニーズの高まりに対応したテイクアウトやデリバリーサービスを強化。デリバリー専門店舗の実験を開始しています。(148号参照)
 当社グループでは各事業領域でこうした新たな事業と根底からの見直しを含む事業プロセスの改革を、これまで以上に俊敏なサイクルをまわして、進めていく方針です。さらに、各事業会社がもつ事業インフラを積極的に活用するなど、よりいっそう強力なグループ連携のもとでイノベーションを実現していきます。

成長の柱となるコンビニエンスストア事業の強化

 国内のセブン-イレブンでもお客様のご利用の仕方に変化が生じています。とりわけ住宅街立地の店舗を中心に、近くのお店で毎日のお買物を便利にすませたいというニーズがよりいっそう高まり、野菜などの生鮮食品、納豆やお豆腐など日配食品の買上点数が増えています。このため、セブン-イレブンでは、家庭内での食事ニーズにお応えする食品・飲料などを前面に展開する新たな売場レイアウトの展開を9月よりスタート。立地に応じたきめ細かなレイアウト改革を加速し、年度内8000店舗での導入を目指しています。
 また、セブン-イレブンでは2017年以降、セブン-イレブン・チャージおよびインセンティブ・チャージの見直しにより、加盟店様が経営に専念できる環境づくりを進めてきました。加盟店様とセブン-イレブン役員の直接対話を継続的に実施するなど、加盟店様とのコミュニケーションのさらなる緊密化に努め、さまざまな声に真摯に対応していく体制を強化しています。これらの取り組みを基盤として、セブン-イレブンは本部と加盟店様が一体となってよりクオリティーの高い商品・サービスを提供することで、地域社会での存在意義を高め、成長力の強化を図っています。

首都圏食品戦略の推進と大型店の改革

 グループシナジーを活かした首都圏食品戦略も着実に進捗しています。6月には、首都圏食品戦略の重要な役割を担う新会社ヨークが発足。同社のもとに従来のヨークマート、イトーヨーカドー食品館とザ・プライス、およびコンフォートマーケットなどを集約しました。今後、惣菜等の調理、原材料調達、物流などのグループインフラを共有していくことで、狭小な店舗でも高いクオリティーで食へのニーズに応える店舗づくりを可能にして、出店機会の拡大とストアロイヤルティの向上を推進します。
 またイトーヨーカドーでは「ふだんの生活」に欠かせない食品、日用品、文具などの売上が伸びています。これも、できるだけワンストップでお買物をすませたいという「withコロナ」の状況下でのお客様ニーズの表れといえます。イトーヨーカドーでは2016年以来継続して進めてきた売場構成やフロアレイアウトの見直しにこの変化を取り入れ、9月には新しい生活様式や新たな価値に対応した売場をたまプラーザ店で実現しました。1階に食品、日用品を集約して、毎日のお買物がワンフロア、ワンバスケットですませられるようにするとともに、2階にはお客様の生活視点で構成した衣料や住関連商品のフロア、3階にはビックカメラをテナントとして導入。 やかた 全体でお買物ニーズに応えるとともに、お客様の日常に「わくわくドキドキ」できるお買物体験を提供する店づくりを行っています。
 抜本的な構造改革に取り組んでいるそごう・西武では、地域生活に密着した売場構成を追求した郊外店舗が着実に売上を伸ばしています。地域のお客様に支持されるテナントを導入し、プロパティマネジメントによる店舗経営の効率化をさらに強化するとともに、百貨店の強みを活かした接客サービスなどの取り組みを強化することで事業の再構築を図っています。

グループシナジーを活かして成長戦略を強化

 今、グループの収益機会はグローバルな規模で拡大しており、世界的な視野で成長機会をとらえ、適切に投資を進めていくことが不可欠です。こうした経営環境の変化をふまえ、セブン&アイ・ホールディングスが中心となって、すべてのグループ会社と成長戦略を共有し、グループシナジーを活かして各事業のトランスフォーメーションを推進する体制をいっそう強化。適切な資源配分により成長力を高めて、企業価値と社会価値の提供を通じて、目指すべき姿の実現に力を注いでまいります。

(図2)目指すべき姿―CVS事業を軸に食の利便性を提供する「暮らしになくてはならない」グローバル企業を目指す