2019年4月 |
セブン&アイグループの「SDGs」
SDGsと本取り組みの関係
2018年4月、福島県郡山市にある屋内遊び場「PEP Kids Koriyama(ペップキッズこおりやま)(以下、ペップキッズ)」の来場者が累計200万人を超えました。開設の契機となったのは、2011年の東日本大震災。津波と原発事故という未曾有の状況の中、「外で遊べない子どもたちの心と体の成長には、思い切り遊べる場所が必要」――。そんな地域の人々の想いが結集し、構想から3カ月余りという異次元のスピードでオープンを迎えたペップキッズ。その想いと施設が地域社会に果たしてきた役割は、平成という時代を超えて、新たな時代にも引き継がれていきます。
ペップキッズは、原発事故の影響で屋外に出る機会が減った子どもたちが思い切り体を動かして遊ぶことができる屋内施設として、2011年12月23日に開館しました。
そのコンセプトは、「遊び・学び・育つ」。施設の発案者である小児科医で、現在は運営主体者「認定NPO法人郡山ペップ子育てネットワーク」の理事長でもある菊池信太郎氏はそのねらいをこう語ります。「遊ぶことは、体力を養うだけでなく、仲間と協調する、ルールを守るといった社会性を学ぶことにも通じており、子どもの心と体の成長や発達に不可欠な要素なのです」。
このコンセプトをもとに、ペップキッズでは、東北最大級となる約7000m²の敷地の中にある約2500m²の遊び場に「人の成長に必要な36の動き」を実現する多種多彩な遊具を設置。また、食育施設を備えるなど、子どもが安心して遊び、学ぶために必要な空間、時間を提供するとともに、子どもたちが仲間と一緒に遊びにのめり込めるような仕掛けと工夫を凝らしています。
そんな仕掛けと工夫を凝らし、「遊び・学び・育つ」というコンセプトを体現しているのが、現在17名が活躍する「プレイリーダー」です。プレイリーダーは、子どもたちに発達段階に応じた遊びのきっかけを提案すると同時に、一緒に遊びながら仲間同士の助け合いや競い合い、ルールを守るといった社会性・向上心を育むリーダーです。また、場内の安全性を確保する役割も担っています。
施設の開設および維持にあたっては、郡山市に本社を置くヨークベニマルが土地・建物を無償貸与するほか、遊具やメンテナンス費用を寄付するなど全面的に支援しています。
また、施設管理については郡山市役所をはじめ地元の警察署、消防署に、企画・運営にあたっては「認定NPO法人郡山ペップ子育てネットワーク」をはじめ玩具メーカーの専門家や医師、大学教授など、活動に賛同する産官学医の多くの関係者に支えられています。
「遊び」 ペップアクティブ
身体の発達が著しい幼少期に多様な動きを十分に経験し、身につけることは、子どもたちの健やかな成長をうながします。遊び場では、遊びを熟知した「プレイリーダー」が、身体の発達段階に応じた 「36の動き」を採り入れたアクティビティを通じて、子どもたちの遊びに対する意欲や運動効果を高めるサポートを行います。
「学び」 ペップコミュニケーション
実験やものづくり、大縄跳び…親子で触れ合いながらチャレンジできる各種イベントを開催。子どもたちの知的好奇心や感性を引き出し、豊かな精神を育みます。また、臨床心理士による親御さんへ向けた定期的な育児相談・セミナーを実施しています。
「育つ」 ペップキッチン
「食べる」ことの大切さ、「つくる」ことの喜びを、実際に料理をしながら楽しく学べる施設です。五感を使って季節の野菜や果物を中心とした食材に親しむことができる調理体験は、子どもたちの自ら食べようとする気持ちを育みます。お子さんのみの参加でも楽しく体験できるようスタッフがサポートします。
ヨークベニマル 代表取締役会長
大髙 善興
INTERVIEW
ペップキッズこおりやまの開設から現在まで、全面的な支援を続けるヨークベニマル。東日本大震災以降、どのような課題を克服して施設を開設していったのか、その原点とは何かについて、同社の大髙善興会長に聞きました。
「福島の子どもたちが思い切り遊べる常設施設をつくろう」――きっかけとなったのは、震災から約半年後に見たニュースでした。画面には3日間限定の室内遊技場のオープンを待つ数千人も の親子、夢中になって遊ぶ子どもたちの笑顔が映し出されていました。
震災ではヨークベニマルも甚大な被害を受けましたが、被災地域のお客様に食品をはじめとした生活必需品をお届けし続けることが私たちの使命と考えました。そのため営業継続に全力をあげて取り組み、セブン&アイグループの支援などを受けながら店舗の再開も進んで少しは希望を見出せる状況になっていました。そんなタイミングで見た子どもの笑顔は、「地域のお役に立つ事業」を天命と考える私に強く訴えるものがありました。
私はすぐにイベントの主催者である「郡山市震災後子どもの心のケアプロジェクト」チームリーダーの菊池信太郎氏に連絡をとり、常設施設づくりのプラン策定をお願いしました。菊池氏は「被災地域だけでなく、全国的にも子どもの発育に不可欠な体を使った遊びが失われている」と指摘されました。その問題意識に深く共鳴し、私自身が構想実現の先頭に立とうと決心しました。原発事故を契機にした室内遊技場づくりのプロジェクトですが、その底流には全国の子どもたちの発育に必要なモデル施設をつくるという志があります。その想いを郡山から発信していこうと考えたのです。
さっそく私は、行政の皆さんとも話し合いを始めたのですが、私たちの考えるような公共施設をつくるには、相当の時間がかかることが判明し、それなら自力でつくろうと決断しました。グループのイベントなどでお取引のあった遊具メーカーやクッキングスクールの方々にもご協力いただき、施設の企画、設計などを進めていきました。
また、「子どもたちへのクリスマスプレゼントに」という想いから、開設日は3カ月後としました。当初、「その期間では無理」と反対意見もありましたが、多くのお取引先に私たちの強い想いをご理解いただき、12月23日、計画通りに施設が完成。子どもたちの笑顔に大きな喜びを感じるとともに、関係者の皆さんのこれまでの奮闘に思いいたり、涙がこみ上げてきました。
「なぜそこまでして」とよく聞かれます。そこで私自身、改めて考えてみたのですが、今回の取り組みの根底には、ヨークベニマルの「野越え山越え」という創業の精神があると気づきました。70年前、両親がわずか6坪のお店を始めたのが、ヨークベニマルの始まりです。創業当初はご来店客もほとんどなかったので、両親は行商を始めることにしました。ところが、まともに取り合ってくれるお客様はほとんどおらず、ようやく25軒目で商品を見てもらうことができたそうです。お客様お一人おひとりに、25軒目に出会った最初のお客様に出会った時と同様、感謝と誠実の気持ちで接すること。お客様にご満足いただくために、困難を乗り越えて努力し続けることが「野越え山越え」の精神です。
もう一つ、私個人の想いもあります。子どもの頃に黒沢明監督の「生きる」という映画を見て以来、「地域のお役に立つ仕事」に取り組むことこそが自分の務めだと考えるようになりました。困難なことにも誠実に取り組む創業精神、そして「地域に役立つ」という人生の目標、この2つが原点となってペップキッズの取り組みが生まれました。多くの関係者の皆様に改めてお礼を申し上げたいと思います。
おかげさまで昨年4月、施設の来場者は累計200万人を超えました。県内の皆様に繰り返しご利用いただいているだけでなく、最近は県外のお客様も多くなっており、この取り組みに大きな手応えを感じています。今後も、オンリーワンでナンバーワン“日本一の遊び場”と呼ばれるよう、関係者の皆様とともに精進を重ねていきたいと思います。
対象
生後6カ月~12歳のお子さまとその保護者の方
利用時間(90分完全入替制)
①10:00~11:30 ②12:00~13:30 ③14:00~15:30 ④16:00~17:30
アクセス&お問い合わせ
〒963-8803 福島県郡山市横塚一丁目1-3
郡山市元気な遊びのひろば「PEP Kids Koriyama」内
TEL. 024-942-6777 FAX. 024-942-6778
E-mail info@pepnet.jp
WEBサイト
2011年 |
8月26日 夏のキッズフェスタ開催(3日間) 9月12日 屋内遊び場設置準備委員会設立、施設整備開始 12月23日 PEP Kids Koriyamaオープン |
2012年 |
10月12日 入館者累計30万人達成 12月22日 1周年記念イベント・感謝の集い 12月29日 森まさこ少子化対策担当大臣ご訪問 |
2013年 |
1月19日 根本匠復興大臣ご訪問 3月12日 入館者累計40万人イベント 3月24日 安倍晋三首相ご訪問 7月19日 ペップバス運行開始 9月22日 皇太子ご夫妻ご訪問 |
2014年 | 4月26日 リニューアルオープン |
2015年 | 3月21日 入館者累計100万人達成 |
2017年 | 12月23日 リニューアルオープン |
2018年 | 4月23日 入館者累計200万人達成 |