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セブン&アイの挑戦

2019年2月

事例2アリオ葛西
キッズと食の拡充を軸に「アリオ」への業態転換に成功

「アリオ」への業態転換でファミリー層のニーズに応える

集客の柱として拡充したキッズパークには、子どもたちが体を動かして楽しめる広場を設置しています。

 2017年11月、東京都江戸川区にある「イトーヨーカドー葛西店」は、ショッピングセンター「アリオ葛西」へと生まれ変わりました。
 東京メトロ東西線をはじめ都心へのアクセスが便利で、川や海など自然環境にも恵まれたこの地域は人口密度が高く、子育てファミリーの構成比も高い地域です。イトーヨーカドー葛西店は20年前にオープンし、6万m²近い広大な売場と多数のテナントを擁する新タイプの大型商業施設として地域住民から高い支持を集めてきました。
 ところが、地域住民の世代交代への対応が遅れ、この10年ほどは売上げ、客数ともに伸び悩んでいました。こうした状況を改善するために、テナントを中心とした「アリオ」への業態転換を実施。来店機会が減っていた子育てファミリー層の支持を獲得し、子どもからシニアまで幅広い世代が集う「館」として新たなにぎわいを取り入れることに成功しました。

「アリオ葛西」の顔となるキッズパーク・フードパーク

 リニューアルにおける大きなポイントの一つは、3階に展開するキッズパークです。「アカチャンホンポ」をはじめ、キッズファッションの専門店「マザウェイズ」、絵本の読み聞かせコーナーがある室内遊戯場「キンダープラッツ」、さらには自営の子供服、スクール用品、文具・玩具などの売場もすべて3階に集約。家族で長時間ゆったりと楽しめる地域最大級のキッズスペースが誕生しました。
 もう一つのポイントは、1階に誕生した地域最大級の「フードパーク」です。席数はフードコート部分で700席、イートインスペースを加えると820席に上り、店舗数も従来の7店舗から16店舗に拡充。食品売場の弁当や惣菜類なども含めバリエーション豊富なメニューが気軽に楽しめる空間として毎日たくさんのお客様で賑わっています。
 これらに加えて、アリオ葛西ではイベントスペースを利用して毎週イベントを開催するなど、お客様が集まる仕掛けを展開。館全体の持続的な成長を目指しています。

イートインスペースと合わせて820席となる「フードパーク」では、多彩なメニューを提供しています。

イベントスペースでは、毎週さまざまなイベントを開催しています。

良好な立地を活かしながら、真に地域のニーズに即した“コンテンツ”をグループ内外の連携で提供していきます。

株式会社イトーヨーカ堂 代表取締役社長

三枝 富博

「地域にご支持いただけるお店」を目指して

 イトーヨーカドーは、お客様やお取引先、地域社会など、これまで多くの方に支えられ、皆様の暮らしとともに歩んでまいりました。イトーヨーカドーとしてお客様の暮らしに寄り添い、ニーズにお応えし続けるためには、少子高齢化や単身世帯の増加、働く女性の増加など社会環境やお客様のライフスタイルの変化にスピード感を持って対応する必要があります。
 そこで私は現在、「地域に根差した館づくり」をコンセプトに、1店1店が立地環境や地域ニーズをふまえた抜本的な改革を実施し、改めて地域の皆様にご支持いただけるお店づくりの実現に注力しています。
 店舗改革を実現するためには、我々の持つ経営資源を最大限に活かしながらグループ内外の連携を進めることが重要です。物販に加えて、サービスやイベントなど、地域のお客様に「イトーヨーカドーに行ってみよう」と思っていただく仕掛けが必要なのです。「イトーヨーカドーの売場」としての成功体験の延長線上ではなく、賑わいのあるコミュニティーを生み出すために、社内外のリソースを柔軟に活用して地域に求められるコンテンツを提案する館になること、それがイトーヨーカドーとしての改革です。

人材を最大限に活かす

 店舗改革を成功に導くためには、お客様のニーズを熟知した「人材」という経営資源を活かすことが不可欠です。そこで私は就任後、全店舗を回って従業員たちと対話を重ね、現状を変えていこうと呼びかけるとともに、従業員の意見一つひとつに耳を傾けていきました。そして、目の前のお客様のために誠意を尽くす人材、挑戦する気概を持った人材は全国に存在しており、従業員たちの自主的に取り組もうとする志を引き上げる強いリーダーシップが必要であることを確信しました。

「集客数」を指標に継続的な改革を

 改革の効果を測定する指標としては「集客数」を重要指標としています。この目標をもとに、品揃えやテナント構成、接客サービスなどを変えていく中で、改革後の店舗の客数は確実に増えているとともに、館としての生産性も改善するなど一定の手応えを感じています。
 さらに、こうした成果をもとに持続的に成長していくためには次世代の人材育成が重要です。「事業を通じて地域社会とともに成長したい」という強い意思を持った人材をいかに育てていくか。店舗改革の成果が見え始めた今、中長期的に成果を出し続けていくことと、地域社会の発展を担う人材を育成していくことが、私の経営者としての使命だと考えています。

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