特集

7-Elevenの変革

次世代のビジネスモデル構築を視野に今、事業のあり方を根本から変える

2025年9⽉

経営を一新する「変革プラン」の策定

当社は、コンビニエンスストア(以下、CVS)事業に特化した新たな体制をスタートするにあたり、お客様に対する価値の創出に焦点を当てた事業に変革し、新たな体験価値を提供、株主の皆様へのすぐれたリターンを提供する「変革プラン」を策定しました。この変革を通じて、筋肉質な組織を構築し、スピーディーに対処してまいります。

当社は、7-Eleven事業をグローバルに展開し、長年にわたってトップポジションを維持し、マーケットリーダーの地位を確立してきました。しかし、数多くの成功の反面、近年はイノベーションの鈍化と事業の推進力の低下というリスクが顕在化していました。新たな経営チームは、この点について深い危機感を抱き、事業運営の手法をスピーディーに変革する必要性を共有しています。

このため、事業会社の経営陣と緊密なコミュニケーションを積み重ね、当社および事業会社の経営陣が一体となって、ともに「変革プラン」の策定に注力してきました。私たちは、この「変革プラン」を通じて、主な施策、優先度とともにタイムラインと目標を明確に設定し、その規律ある推進を担保するために、厳格で透明性のあるマネジメントプロセスを導入します。これにより、当社と傘下の事業会社の経営は、過去とは大きく異なるものとなります。

創業者の精神を取り戻し、スピーディーな自己革新イノベーション

8月6日(水)に行った「事業変革を含む今後の戦略およびその実行計画に関する説明会」
8月6日(水)に行った「事業変革を含む今後の戦略およびその実行計画に関する説明会」

この変革を推進するにあたり、私たちは創業者たちが掲げ、確立してきた創業の精神「信頼と誠実」「変化対応」を、変わることのない経営理念とし、謙虚に学び、積極的に変化を起こす姿勢を持ったグループの企業文化カルチャーを育成していきます。

当社は、これまでの歩みの中で、セブンプレミアムやセブンカフェの開発、店舗内にATMを設置するなど商品・サービスの革新をはじめ、単品管理などの独自の手法、独自のサプライチェーンの構築など、小売業における数多くのイノベーションを成し遂げてきました。しかし、近年、そのイノベーションのスピードが鈍化しています。今、改めて自分たちの事業を再定義し、自ら挑戦し、積極的に考え、行動を変えることが必要であり、すべての従業員が創業者のように考え行動することで、イノベーションを起こし、成長を加速していくことが必要です。

このような全社規模の企業文化カルチャーの再構築と本プランで示す抜本的な変革は、先に述べた(こちらを参照)経営チームが、各事業会社のリーダーシップ・チームとも緊密に連携して、ワンチームとして経営を推進していく体制を整え遂行していきます。

早急に対処すべき経営課題を特定

経営チームは、「変革プラン」の策定にあたり、各事業会社とも対話と議論を積み重ね、早急に対処すべき経営課題を特定しました。

(表1)既存の成長機会の最大化

1 グローバルビジネスのマネジメントプロセスの強化

第1のカテゴリーは、グローバルビジネスの管理手法に関するものです。従来、統合されたグローバルな企業としての一貫したマネジメントプロセスが欠けており、ホールディングスによる監督や各事業会社との相互の連携、調整が十分に行われていませんでした。その一貫性と明確さの欠如が、事業会社の実行力やスピードを阻害してきたといえます。新たにグローバルビジネスのマネジメントプロセスを導入することで、事業会社のリーダーシップ・チームは、KPIを明確に把握し、高い自律性を持って業務を遂行できるようになります。また、進捗状況も定期的に確認、評価できるようになります。

そして、テクノロジー、DX、人財管理、サプライチェーン、オペレーションなどの機能を集約した中枢組織(Center of Excellence、以下、CoE)を設け、グローバルに共有できる体制を整えることで、主要分野での各事業会社の競争優位性を高めていきます。これにより、当グループが持つ既存の、または潜在的な優位性をグローバル規模で最大限に活かし、これまで以上に着実な成果をあげることが可能になります。

同時に当社の本社機能は、多角的なコングロマリット※1 から焦点を絞ったサポート体制へと変革することで、より筋肉質な組織になります。これにより、2030年までに約400億円のコスト削減を行います。

  1. ※1異なる分野や業界の企業を複数所有し、一つの大きな企業グループを形成する経営形態

2 各事業会社の成長機会の最大化

このカテゴリーでは、セブン‐イレブン・ジャパン(以下、SEJ)、7-Eleven, Inc.(以下、SEI)、7-Eleven International LLC(以下、7IN)の3社共通の課題、各社ごとの課題を併せ、「7つの課題」を特定しました。これらは、数年間で大きな価値と成長機会をもたらす重要なグローバル・イニシアティブであり、各事業会社とともに主要なKPI、マイルストーン、責任を明確にするため、徹底した議論を積み上げることで計画を策定しました。

(表2)2030年のオペレーショナルKPI 目標

差別化された食品提供のための店舗・設備への投資

1 差別化された食品提供のための店舗・設備への投資

SEJは「セブンカフェ ベーカリー」のようなカウンターでのでき立てのホットフードの提供が成果をあげています。今後5年間で必要な店舗・設備、その他のイノベーションへ3,000億円の投資を実施します。

また、SEIでは好評を得ているレストラン併設店舗を今後5年間で約2倍に拡大していきます。

2 店舗ネットワークの拡大

北米、日本国内とも出店スピードを加速。SEJは多様な店舗フォーマットを活用し、異なる商圏のニーズに対応することで、5年間でさらに約1,000店舗を純増し、出店スピードを40%※2 加速します。

また、SEIは大型店舗を中心に新規出店数を年間125店から250店以上に加速させ、今後5年間でさらに1,300店を新規出店します。

  1. ※22019年度から2024年度との数値比較
「7NOW」の拡大・強化

3 「7NOW」の拡大・強化

お客様は今、新しいお買い物体験を強く求めています。商品のお届けサービス「7NOW」は、次世代のCVSのあり方を再定義するサービスとなる可能性を有しており、他社の追随を許さない新たなお買い物体験として、お客様から好評を博しています。すでにSEIでは、「7NOW」が、全米約7,500店舗で展開されており、まもなく人口の50%をカバーする見込みです。

また、SEJも同じく「7NOW」を全国展開しており、今後、さらに実施店舗を拡大することで、真の差別化に資するサービスとして育成を図っていきます。

4 競争優位性に資するコントロール可能な要素の厳格な管理

事業環境には、景気動向をはじめ不確実性の高い要素が、数多く含まれています。その中にあって、着実な成長を図っていくためには、コントロール可能な要素を、厳格に管理していくことが不可欠です。そうした中で、さらに「販管費」の管理に注力していきます。それによって生まれる資金を、お客様が価値を実感できる分野に投入することで、競争優位性を伸ばすことができます。

SEIでは、すでに24年度からそのコントロールに注力しており、利益の向上に結び付ける成果を生んでいます。

SEJでも、今年度からバリューチェーン全体にわたる変化に向けた、全社的な取り組みを始め、利益改善への寄与が期待できます。

5 SEI オリジナル商品・PB商品の強化

オリジナル商品およびプライベートブランド(PB)商品は、ナショナルブランド(NB)商品よりも高い利益率、品質、高い成長率を有し、真の競争優位性をもたらしており、日米両地域で今後ともさらに強化していきます。とりわけ、この分野が未成熟といえる北米地域では、適切な人財とプロセスの整備によりその取り組みを強化することで、今後数年間で、PB商品の伸びを商品売上全体の伸びの3倍以上に高めることを目指し、お客様からのブランドへの支持獲得と利益率向上の両面でより大きな成果をあげることが期待できます。

6 SEI ガソリン事業の垂直統合

米国内で最大のガソリン小売業者であるSEIは、その事業を担うすぐれた人財、ガバナンス体制、テクノロジーなどの組織と機能を活かし、さらなる付加価値を創出します。また、物流インフラへのアクセスを確保しながら、ネットワークの最適化を図り、収益機会を最大化していきます。

7 SEJ お客様とのエンゲージメント強化

近年、日本では若年層を中心に、セブン‐イレブンのブランドイメージが低下しています。

SEJの経営陣はこの問題を認識しており、商品開発、店舗活動、コミュニケーションの統合的なアプローチの確立を通じて、迅速にブランドイメージを向上させていく取り組みを進めています。同時に、セブン&アイ・ホールディングスも、予算配分の調整等を通じて、より統合された積極的なコミュニケーションの確立をサポートし、お客様とのエンゲージメント強化を図っていきます。

次世代に向けたお客様と加盟店様のための新たな事業モデルの構築

この「変革プラン」の最後の要素は、テクノロジーと膨大なデータを活用して、お客様により便利で魅力的なお買い物体験を提供し、同時に加盟店様をはじめとした個店の生産性と利益性をさらに向上させる新たなモデルを構築することです。

当社は日本と北米に3万店舗を超えるネットワークを擁しており、毎日3,000万人のお客様にご来店いただいています。その一方で、AI活用やデータ分析などテクノロジーの活用の面では、強みを発揮できていません。ここに手を入れることで、競争優位性を獲得する機会が広がっていきます。私たちはこの分野でのパートナーの協力を得て、新しいテクノロジーを積極的に活用することで、より良い顧客体験を実現するとともに、パートナーにも利益を生む新たなビジネスモデルの実現を図ります。

これは一朝一夕に実現するものではありませんが、焦点を当てて取り組まなければ、実現は不可能です。グローバルテクノロジー戦略を策定するとともに、事業変革を支援する中枢組織(CoE)を整備していきます。CVSに求められる利便性は急速に変化しており、私たちはその変化の先頭に立つことを強く決意しています。

長期的な株主価値の最大化へ

この「変革プラン」の実行を通じて、私たちは事業のパフォーマンスを管理する厳格なプロセスとフレームワークを導入します。このフレームワークによって事業会社は意思決定、アクションをスピーディーに実行でき、当社は全体観を持ったバランスの良い事業管理が可能になり、目の前にある事業機会を最大限に活用、獲得することに注力できます。

そして、私たちは、あるべきキャピタル・アロケーションの実行と長期的株主価値最大化のアルゴリズムにコミットしてまいります。

一連の変革と日々の事業活動を通じて、株主の皆様にはこれまでを大きく上回る株主還元を実現できると確信しています。

(表3)株主価値最大化に向けて、規律あるキャピタル・アロケーションを継続