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セブン&アイの挑戦
サプライチェーンの中に潜む「負」を追放する

お取引先と協調の輪を広げ食品ロス削減へ(1)

2023年2⽉

お取引先と協調の輪を広げ食品ロス削減へ

 セブン&アイグループの環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』の4つのテーマの一つ「食品ロス・食品リサイクル対策」。
 セブン&アイグループは今、その目標達成に向けて、納品期限の緩和、賞味期限の年月表示の導入など、従来の商慣習を見直す取り組みを進めています。2022年には、お取引先と販売情報や在庫情報などを共有するサプライチェーンプラットフォーム(SCPF)の第一ステップを始動。お取引先の売れ行き予測の精度向上や生産計画の最適化などにお役立ていただいています。今号ではサプライチェーンが抱える食品ロスの課題についてお取引先と意見交換を行いました。

日本における食品ロスの現状
出典:農林水産省 日本の食品ロスの状況(令和2年度)

日本における食品ロスの現状

 

食品ロスの削減は、「持続可能な開発目標(SDGs)」のターゲットの一つであり、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人あたりの食料の廃棄量を半減させることが盛り込まれています。
 日本の食品ロス量推計値(令和2年度)は、食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量と、一般家庭から発生する家庭系食品ロス量を合わせて、年間522万トン。推計を開始した平成24年度以降最少となりましたが、製造・卸・小売の食品関連事業者はもちろん、消費者や地方公共団体、関係省庁など日本全体が一丸となり、よりいっそうの食品ロス削減の取り組みを進める必要があります。

ロス削減、在庫管理の効率化に寄与する「納品期限緩和」

セブン&アイHLDGS. 石橋(以下、石橋)
 当社では、2019年にグループ商品戦略本部を立ち上げましたが、その目的の一つは商品の生産から販売までの過程で発生するムリ・ムラ・ムダの解決に、小売業の立場から真剣に取り組むことにありました。この取り組みは当社グループだけでなくお取引先との協力が非常に重要となるため、お取引先と接点を有するグループ商品戦略本部が、旗振り役を務めることになりました。
 セブン&アイグループの環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』の一環として、従来の商慣習の積極的な見直しによる食品ロスの抑制に取り組む中で、食品業界における「3分の1ルール」に着目。これは製造日から賞味期限までの期間を「1」とした時、メーカーから小売に納品する「納品期限」までの期間が3分の1、小売がお客様へ販売する「販売期限」までの期間が3分の1、お客様が賞味される「賞味期限」までの期間が3分の1とするものです。このメーカーから小売に納品するまでの期間を全体の「2分の1」に変更することで、食品ロスを削減できます(図1参照)。そこで当社グループではソフトドリンク・菓子・カップラーメンなどの加工食品の納品期限を順次「2分の1」に変更し、2022年にはセブン‐イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、ヨークベニマル、ヨークの4社で、常温加工食品全体に「2分の1」を拡大しています。
 まず、この取り組みについて、メーカーのお立場としてどのようにお考えでしょうか

図1 納品期限「1/3ルール」と「1/2」 ●製造日から賞味期限が6カ月の場合

納品期限「1/3ルール」と「1/2」

コカ・コーラ ボトラーズジャパン 西村(以下、西村)
 当社の場合、現状では6割ほどのお取引先が「2分の1」に転換しています。納品期限が3分の1から2分の1に変わることで、私たちの在庫の持ち高も削減できるといった成果が生まれています。ただし、まだお取引先の4割は、さまざまな事情で3分の1ルールを採用していますね。

カルビー 本田(以下、本田)
 当社でも同様に、お取引先の卸店や小売店の6割くらいが「2分の1」になっています。西村さんがおっしゃる通り、二つの納品の考え方が併存している状態ですと、それぞれに対応するために在庫を分けて管理することも必要になります。過渡期特有の問題ととらえていますが、卸店の中には「2分の1」に転換したものの、商品を納入する小売店側が対応していない状態では在庫管理が煩雑になり、3分の1ルールに戻したところもあると聞いています。セブン&アイグループ様のような小売業のリーディングカンパニーが中心になって、流通業全体に商慣習の見直しを広めていただくことが重要かと思います。すでに、食品ロスの削減や在庫管理の効率化などの成果が見られますが、流通業全体が変わらなければ、その成果も部分的なものにとどまり、本来期待される成果にはつながらないのではと考えています。

株式会社セブン&アイ・ホールディングス 常務執行役員 グループ商品戦略本部 本部長 石橋 誠一郎

石橋 納品に対する二つの考え方が併存することによる弊害、というのは重要なご指摘ですね。地域の小規模な卸店では、販売量が限られているなどの理由で3分の1ルールでもそれほどロスが大きくないのかもしれません。しかし、私どもは全国にネットワークを持つリテーラーとしての使命感を持って、商慣習を変えることで食品ロス削減の効果が上がり、同時に在庫管理なども大きく効率化できるという点を積極的に発信していくことが大切ですね。

本田 おっしゃる通りだと思います。納品期限が延びると生産も効率化し、ムダもなくなります。物流センターも出荷止めになる商品が多ければ、その管理の工数が増えるわけですが、出荷止めが減ることで作業の効率化も図れるので、物流事業者の負担も軽減できますからね。

賞味期限の「年月表示」がもたらすロス削減効果

賞味期限の「年月表示」がもたらすロス削減効果

石橋 商慣習を変えるという点では、賞味期限表示を「年月日」から「年月」へ変更していることもあげられます。セブン&アイグループでは、セブンプレミアムをはじめとするプライベートブランド商品の食品について、2019年より年月日表示から年月表示への転換を進め、2022年度までにおよそ7割の商品で実施し、現在も拡大中です。ナショナルブランド商品でも年月表示への転換が進んでいますが、いかがでしょうか。

西村 飲料の場合は、賞味期限が長いものと短いものがあり、賞味期限が短いものについてはまだ年月表示に変えることができていないため、全商品の約5割にとどまっています。

本田 当社ではだいたい8割が年月表示になっています。しかし、コカ・コーラ様と同様に、賞味期限がおよそ6カ月以下の短い商品については、まだ年月表示の対応ができていません。その部分も年月表示ができるよう生産技術の革新などにチャレンジしています。
 当社では、年月日表示から年月表示に変えた際に、商品の品質という点でお客様からお問い合わせをいただくケースがありました。たとえば、年月表示で賞味期限6カ月の場合、1月1日につくった商品は、1月31日につくった商品と同様に7月31日が賞味期限になります。お客様からは、月のはじめに製造した商品の賞味期限は実質1カ月延びることを心配する声をいただきましたが、当社で品質の検証を十分に行って、約1カ月延びても十分にご賞味いただけることを確認しており、この点を皆様にご説明して、ご理解いただきました。ただし、賞味期限が短い商品では、月のはじめと終わりの約1カ月の違いは大きいため、現状では年月日表示になっていますが、ロス削減という視点から見ると年月表示への変更は、確実に貢献できますね。

賞味期限の「年月表示」がもたらすロス削減効果

石橋 当社グループの物流センターや売場では商品の先入れ、先出しを行っています。年月日表示の場合は拠点間の移動の際に日付が逆転してはいけないため、日付までチェックして賞味期限を確認する必要があります。当然、売場でも同様に確認作業が必須で、陳列されている商品一つひとつの鮮度管理を行っているのですが、たとえば時間管理の商品ですと一日複数回チェックして、販売期限が近づいているものは手前に陳列し、期限を過ぎたものは撤去しなくてはなりません。つまり、メーカーから売場まで、すべてのプロセスで管理の工数が増える要因になっているというわけです。しかし、年月表示に変えたことでこの手間を格段に減らすことができ、管理の手間の削減と不良在庫の削減という両面から効果が確認できました。ですから、ぜひ多くのメーカー様にも年月表示にご協力いただければと考えています。