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セブン&アイの挑戦

エリアライセンシーとともに
世界規模でのバリューチェーン構築の針路
~「7-Eleven」ブランドのさらなる価値向上に向けて~

2022年8⽉

7-Eleven

質の高い商品やサービスなどの提供を通して、さらなる高みを目指す「7-Eleven」ブランド。世界規模で信頼されるブランドへと進化するための取り組みが、日米のグローバル連携のもと始まっています。

新たな戦略がスタート

セブン&アイHLDGS. 代表取締役社長 井阪隆一
セブン&アイHLDGS.
代表取締役社長 井阪隆一

 セブン&アイグループでは「中期経営計画2021-2025」において、海外コンビニエンスストア事業を成長戦略の柱としています。2023年2月期第1四半期決算においても、連結営業利益の4割以上を占める規模になっており、同事業の成長戦略を加速させていくことが、今後のグループ成長にとって重要性を増しています。その一環として、当社グループは今、グローバルな規模で「7-Eleven」ブランドの価値向上に挑戦しています。昨年には、セブン‐イレブン・ジャパン(以下、SEJ)と7-Eleven, Inc. (以下、SEI)の共同出資により7-Eleven International LLC (以下、7IN)を設立し、7-Elevenのエリアライセンシーとの連携とサポート、および新規エリアへの展開に向けた施策を推進していく体制を整えています。
 従来は、SEIの担当部門が、7-Elevenのエリアライセンシーの窓口として役割を果たしてきました。1927年の創業から間もなく100周年を迎えるSEIは、その歴史の中で各地域へのライセンス供与を通じて、「7-Eleven」を世界的なブランドに育成することに努め、現在7-Elevenは18の国と地域に店舗展開するまでにいたっています。SEIがこのようにグローバルブランドの基盤を営々と築いてきた点に、私は大変敬意を抱いています。一方で、今後、グローバルブランドとしてよりいっそうの成長を期していくには、エリアごとの販売力の格差を縮小し、7-Eleven全体として競争力を高めていくことが必要であると認識しています。そのための重要な取り組みの一つが、2010年からSEJとSEIが協力して進めてきた「ELS(Enhanced Licensee Support )」と呼ぶライセンシー支援拡大プログラムです。同プログラムでは、マーチャンダイジングから店舗設備にいたるまでさまざまな分野でサポートプログラムをつくり、エリアライセンシーの皆様にご利用いただいてきました。
 しかし、さらに一歩踏み込んだエリアライセンシー支援を図るには、SEJとSEIがより緊密に連携し、それぞれの強みを活かす体制が必要です。SEJではお客様のニーズにお応えする商品・サービスの提供とニーズの変化への適切な対応を実現するため、お取引先の皆様とともにバリューチェーンを構築してきました。一方、SEIは、DX(デジタルトランスフォーメーション)にいち早く取り組み、アプリと店舗在庫が連動したお届けサービス「7NOW」をはじめ、新たな体験価値の創出に一日の長があります。こうした双方の強みを提供していくには、それぞれのエリアライセンシーとの関係をより密接なものにして、国や地域ごとに異なる法律や制度、生活文化などを十分に理解しながら、具体的な支援策を立案していくことが必要です。7INは、まさにその要の役割を果たしていきます。

グローバル連携の目指す姿

図1 グローバル連携の目指す姿

連続的な価値創造を実現するバリューチェーンの構築

世界の国(地域)別平均日販(2021年度・物価調整済)
図2 世界の国(地域)別平均日販(2021年度・物価調整済)

 「7-Eleven」ブランドの強化には、世界のあらゆる地域でお客様から絶対的な信頼をお寄せいただけるまでに、7-Elevenの商品・サービスの質を高めていくことが重要です。そのお客様からの信頼のバロメーターは、7-Elevenの1店舖あたりの平均日販であると考えています。図2は各地域の購買力平価に基づいて算出したエリア別の平均日販の比較で、そのトップはSEVEN-ELEVEN HAWAII, INC. (以下、SEH)です。その背景としては、同社が地域のお客様ニーズに応えるため、フレッシュフードを中心とした商品開発に真摯に取り組んできた点があげられます。
 また、フレッシュフードの売上構成比が高いエリアライセンシーは、平均日販も高いことがわかっています。日販の高い日本における売上構成比が29.4%であるのに対し、ハワイは日本を上回る30.9%となっています(2021年度実績)。
 フレッシュフードの販売力を高めていくうえで大切な点は、地域のお客様の日常的な食に関するニーズをしっかりととらえ、そのニーズに合った味、鮮度の商品を開発していくことです。SEJは創業以来、そのための取り組みを積み重ね、ノウハウを培ってきました。SEJの商品開発では、お客様ニーズにお応えするという共通認識のもと目標品質(ベンチマーク)を定め、お弁当やおにぎりなどのメニューごとに最適・最善の専門家とチームを組み、レシピづくりから原材料調達、製造プロセスまで、あらゆる領域で独自の商品づくりを実現してきました。
 一般に、商品がお客様の手元に届くまでの調達、製造、在庫管理、配送、販売といった一連のプロセスをサプライチェーンといいますが、私たちはこれを単なるサプライチェーンではなく、バリューチェーンの一環であるととらえています。お客様の求める価値の実現という共通目標のもと、常に商品の革新を図りながら連続的に商品開発を進めていくチームワークの構築を進めてきました。このような継続的で連続した価値創造の仕組みを世界各地の7-Elevenに根づかせていくことが、7IN設立の目的の一つでもあります。

エリアライセンシー参加のSEH視察会を開催

SEHにおけるバリューチェーンの視察会

 バリューチェーンの重要性をエリアライセンシーの皆様にご理解いただくには、何よりも実際の取り組みをご覧いただくことが重要と考え、この7月にSEHにおけるバリューチェーンの視察会を開催しました。7-Elevenの展開を開始したばかりのベトナム、インド、そして今まさに積極的な事業成長に取り組んでいるマレーシアのエリアライセンシーの皆様にご参加いただき、現場視察とともにバリューチェーンの重要性について説明しました。あわせて、SEIが進めているデジタル技術を融合した「7NOW」のような取り組みはお客様の生活に今までにない利便性を提供し、店舗運営の効率化や省力化を格段に高めること、そして今、持続可能でより良い社会の実現を目指す、世界共通の目標であるSDGsや環境・社会課題などに関しても一緒に取り組んでいくことで、より大きな成果を共有できるという点について具体的にご説明しました。
 視察ではSEHの店舗をご覧いただくとともに、フレッシュフードを製造していただいているWARABEYA U.S.A., INC. 様の工場見学を行いました。エリアライセンシーの皆様には、大変大きな関心を持ってご覧いただき、各視察地で熱心にご質問をいただきました。また、SEJのバリューチェーンを長年にわたってお支えいただいているわらべや日洋ホールディングス様、武蔵野様、Fホールディングス様、プライムデリカ様にもご参加いただき、当社グループのグローバル戦略、バリューチェーン、環境や社会課題など、幅広い話題に関して充実したディスカッションを行うことができました。

地域の実情に合わせたサポートを推進

SEHにおけるバリューチェーンの視察会

 グローバルでの「7-Eleven」ブランドの価値向上に向けた戦略は、当社グループだけでなくバリューチェーンを構成するチームが一体となって進めるべきと考えています。
 SEHが現在のようなフレッシュフードの製造から販売体制に取り組み始めたのは、1990年代に入ってからです。SEHは、観光地ではなく住宅地域に店舗展開しており、地元のお客様にご利用いただくことをビジネスの中心に据えた店づくりを進めてきました。同社はもともとサウスランド社(現SEI)のハワイ事業部として出発しましたが、1989年のSEJによる買収以降、フレッシュフードなど地域のお客様のニーズにお応えする商品開発に力を注いできました。私が1990年から4年間ハワイに赴任した際、当時すでにハワイでフレッシュフード事業を手がけていたわらべや日洋様にお声がけして、「スパムおむすび」の開発に取り組みました。まだ専用の製造ラインもなく、倉庫の一角でSEHの担当者やわらべや日洋様のご担当者と活発な議論を重ねたことをよく覚えています。米国での食品衛生などに関する法律や制度の下では、日本と同様の売り方が困難でした。そのような制約の中で、現地のスタッフとともに工夫を凝らし、最善の売り方を模索した結果、スパムおむすびはお客様に歓迎されてヒット商品となり、現在まで続くロングセラー商品となっています。これは、お客様の求める価値に応えようというSEHの強い熱意と、目標とする品質を実現しようというわらべや日洋様のご尽力があって初めて可能になった取り組みでした。
 このような経験から、「7-Eleven」のブランド力を高めていくには、現地のライセンシーの皆様が主体となって注力することが何よりも大切だと私は実感しています。そのような取り組みを実現するために、エリアライセンシー支援は一律のプログラムではなく、各地域のニーズや生活文化に合わせた柔軟な対応を進めていくことが肝要です。また、これまでハワイや中国などでの7-Eleven展開にあたり、日本国内のメーカー様にもご協力いただいてきました。こうしたバリューチェーンを構築するために、当社グループが適切にサポートしていくことも必要です。7INでは、そのような点に考慮しながら、各ライセンシーやサプライヤーの皆様とのコミュニケーションを密にし、地域特性に応じたサポート体制をつくってまいります。

SEHにおけるバリューチェーンの視察会
SEHにおけるバリューチェーンの視察会


信頼関係で結ばれた現地の方々とのチームづくりが海外事業を成功に導く

国内、ハワイ、中国、北米で、セブン‐イレブンのフレッシュフードの開発・製造などを手がけるわらべや日洋ホールディングス株式会社。同社グループの海外事業を統括する、わらべや日洋インターナショナル株式会社 森社長にお話をうかがいました。

手作業の生産ラインから始まった「スパムおむすび」

わらべや日洋インターナショナル株式会社 代表取締役社長 森 浩司氏
わらべや日洋インターナショナル株式会社
代表取締役社長 森 浩司

 わらべや日洋の海外事業は、創業者である大友太郎が海外での事業展開を志し、1982年にハワイに進出して、米飯やサンドイッチなどの製造に取り組んだことに始まります。現在ハワイで事業を展開しているWARABEYA U.S.A., INC. は、ハワイでのビジネスの知見もあまりない中でスタートし、原材料の仕入れ先なども一つひとつ現地のパートナーに教えていただきながら、事業を根づかせていきました。
 1989年に、7-Elevenのハワイ事業をSEJ様が買収した際、フレッシュフードの拡充に向けて当社にお声がけいただきました。その取り組みの中から生まれたのが「スパムおむすび」。当初はおむすび用のお米を手作業で成形し、スパムも手焼きするなど、すべて人手に頼った方法で製造していました。苦労を重ねたスパムおむすびは、今では1日1店舗あたり約160個を販売するSEHの代表的な商品になりました。その後1996年には工場を新設してSEH全店舗への米飯やサンドイッチの納入を始めました。私が最初にハワイに赴任したのも、ちょうどその頃のことです。

現地の生活文化を学び信頼関係を築く

 私は通算21年間、ハワイでの事業に携わりました。そこでは、商品づくりのために毎週会議を開き、マーケットやマーチャンダイジングに関する情報を共有し、SEHの皆さんと議論を重ねてきました。現地のお客様ニーズに合った商品を生み出すためには、現地の皆さんと意見交換ができる関係が何よりも重要だと考え、商品開発にあたっては、店頭での試食会も開催しました。店舗の入り口近くに試食コーナーを設けて、お客様に召し上がっていただくので、お客様の反応を直接うかがえる貴重な機会でした。
 ハワイでは、近隣に住むお客様から7-Elevenが「近所の便利なお店」として親しまれ、小学校の授業が終わると子どもたちが次々と買物にやってきます。また、子ども時代にご利用いただいていたお客様が、大人になって自分の子どもを連れて来店され、親子でご利用いただくなどお客様との良好な関係が築かれていました。
 世代を超えてお客様に心からご満足いただける商品をつくり続けるには、やはりその土地の生活や食のし好などを、しっかりととらえることが不可欠です。私たちは、現地の人たちと交流を重ねることで、その生活ぶりを実際に知ることを大切にしています。これは工場の運営でも同様で、人種や生活文化、信仰なども異なる地域でビジネスを円滑に進めるために、まず、そこに暮らす皆さんの実情を知り、それに合わせて柔軟に対応することを心がけています。

情報や知見を共有するチームづくりが大切

 2016年からは米国テキサス州でSEIのサンドイッチ、パスタなどの製造に携わっています。当初は既存のデイリーメーカー様に出資する形でスタートし、2017年に子会社WARABEYA TEXAS, INC. を設立しました。近年、米国では温かい食べものへのニーズが高まっており、そのニーズに応えるため、電子レンジで温めてお召し上がりいただくサンドイッチ「スライダー」を開発しました。その際、新たな包装機や包装資材の導入なども提案しました。サンドイッチの製造は、中具の伸ばし方など工場によって違いが生じやすく、最終的な品質に影響することもあります。こうしたきめ細かな点までしっかりと管理するには、チームとしての取り組みが必要です。商品製造を担う当社をはじめ、商品レシピや原材料調達、包材、パッケージデザインなど情報と知見をSEIと各ベンダーが共有しながら、チームが機能するよう力を注いでいます。
 現在、東海岸エリアの7-Eleven店舗に商品提供を行うバージニア工場の建設も進行中です。テキサスとは食へのニーズや生活スタイル、客層の特性なども異なる地域のため、新しい国に進出する心持ちで現地の方々と信頼関係を築き、良いチームづくりに努めてまいります。

パートナーシップで海外進出のハードルを下げる

パートナーシップで海外進出のハードルを下げる

 中国・北京でも2012年に工場を稼働させ、7-Eleven店舗にフレッシュフードを納入しています。ここでの事業については、原材料仕入れなど現地でパートナーとなる企業様の選定を慎重に進めた結果、工場の稼働まで数年を要しました。海外での事業展開には、地域ごとに多様なリスク要因があるため、現地のマーケット調査、パートナー企業様の選定などを入念に検討しなければなりません。食品の衛生管理に関する法制度一つとっても、国によってまったく異なります。たとえば、中国で食品製造を行うには、食品衛生許可にあたるQSマークの取得が必須要件であり、お弁当製造でQSマークを取得したのは、私たちの子会社、北京旺洋食品有限公司が中国で初の事例となりました。同社が許可を求める以前は、中国の食品衛生に関する商品分類にお弁当やサンドイッチがありませんでした。私たちの事業を展開するには、現地の行政機関などに事業を十分に理解していただくためのていねいな説明と交渉を重ね、一歩ずつ進めていく必要があります。
 今、多くの国内食品メーカーにとって、海外進出へのハードルが高いのは事実です。この点、セブン‐イレブン様とのパートナーシップを背景に事業進出する場合は、現地の情報などを共有しながら進めていけるので、ハードルがぐっと低くなると実感しています。
 セブン‐イレブン様とのパートナーシップは信頼度が高く、サプライヤーも安心して取り組めるというメリットを感じます。新たな地域への進出において、現地との信頼関係を構築し、パートナーシップを育む。そうしてライセンシー、7-Eleven店舗、そして当社が一つのチームとなってメリットを共有できる関係を築いていければと期待しております。