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セブン&アイの挑戦

2018年8月

激変する流通サービスに、新たな成長基盤を築く

「リアル×デジタル」戦略

1日2300万人以上の来店客、コンビニエンスストアから専門店まで全国2万店以上の店舗網。この事業基盤を活かし、さらなる成長力を生み出すリアルと融合したデジタル戦略が始動。お客様お一人おひとりとの結び付きを強化するための、グループ一体となった取り組みが進んでいます。

Part Ⅰ
お客様との連携を強化するCRM戦略

統合ID「7iD」と新「アプリ」が始動

 今年6月、セブン&アイグループは、グループ横断の「セブンマイルプログラム」とグループ共通のID『7iD(セブンアイディ)』の提供を開始しました。これと連動して、セブン‐イレブンとイトーヨーカドーでは新アプリを導入。これら施策は、セブン&アイグループのデジタル戦略の第一弾となる取り組みです。
 その背景について、セブン&アイHLDGS.デジタル戦略推進本部長の後藤克弘副社長はこう語ります。「いま、スマートフォン(以下、スマホ)一つで、商品情報の検索から商品の注文、さらには決済までできる環境が整い、お客様の消費行動は大きく変化しています。セブン&アイグループは、この変化を消費構造そのものの変化をもたらすものととらえ、そこから新たな成長力を引き出していこうと考えています。その答えの一つが、店舗網、商品開発力、質の高い接客サービスなど、私たちが〝リアル〞の世界で培ってきた事業基盤と融合したデジタル戦略なのです」。

双方向の「会話」を通じて新たな価値を提供

 デジタル戦略の柱の一つは、お客様との連携を強化するCRM戦略です。従来、小売業は商品の販売動向などを通じてお客様ニーズの変化をとらえてきましたが、スマホにインストールされたアプリをご利用いただくことで購買動向がより明確になり、お客様お一人おひとりの顔が見えてきます。加えて、グループ統合の「7iD」の導入によって、これまでグループ内に分散していたお客様情報をグループ全体で共有できるようになります。「大切なお客様の個人情報ですので、その管理、取り扱いは慎重かつ厳正に行いますが、この取り組みの最大のポイントは、データ活用によってアプリをご利用いただくお客様に実際のお買物に活かせるタイムリーなご提案やご優待サービスを提供できること。いわばお客様と私たちグループの双方向の『会話』を進めていくことなのです」(後藤副社長)。
 コンビニエンスストア、スーパーストア、各種専門店からECサイトまで、グループ各社が連携してお客様との絆を深め、お客様お一人おひとりのプロファイリングの精度を高めることで、お客様に提供できる利便性の高い情報のクオリティもより高まっていきます。「世界にも類のない流通サービスグループを展開しているセブン&アイグループならではの『新しい価値提供』を実現することが可能になると自負しています。さらに、この取り組みによって、グループ各社間の相互送客もよりいっそう進展し、個店の集客力も高まっていきます」と後藤副社長は意気込みを語っています。

CRM:Customer Relationship Management
情報活用を通じて利便性の提供などを強化し、お客様との信頼関係を高めていくマネジメント手法。

Part Ⅱ
未知のマーケットを開拓するビッグデータ戦略

グループ外とのデータ連携を進める「セブン&アイ・データラボ」

 デジタル戦略のもう一つの柱は、データの活用によって、現在見えていない「潜在ニーズ」、さらには「潜在マーケット」にアプローチすることです。今年6月に立ち上げた「セブン&アイ・データラボ」は、その一翼を担うプロジェクトで、グループ外の多様な事業会社、研究機関などとビッグデータの連携を図り、データ分析などを通じて新たなビジネスチャンスの創出や社会的課題の解決につなげていく取り組みです。「セブン&アイ・データラボ」は10社以上の多彩な企業の参画を得てスタート。今後さらに取り組みを拡大していく計画です。

潜在ニーズやヒットの予兆をいち早くとらえる

 プロジェクトを主導するセブン&アイHLDGS.デジタル戦略部の担当者はこう語っています。「『セブン&アイ・データラボ』の取り組みは、お客様との新たな結び付きを生み出し、新しい価値体験を提供するために欠かせません。いま、さまざまな分野に散在している多様なデータを重ね合わせることで、一見つながりが見えない事項にも関連性を見出し、新たな販売機会やご提案の機会を創出できる可能性があるからです」。
 たとえば、個人情報を取り除いたデータを活用することでも、あるアイドルのファンがどんなファッションを好み、どんな本を読み、いつ、どんな場所で買物をするか、といった関連性や傾向が見えてきます。そのような関連性や傾向から、いち早くブームやヒット商品の「予兆」や「潜在ニーズ」を見通し、セールスプロモーションを仕掛けたり、新しい客層にアプローチすることが可能になります。また、既存のお客様に対しても、購買・行動履歴からライフステージの節目をいち早く察して、積極的な商品・サービスのご提案を行うなど、より緊密な関係を築いていくことが可能です。この「未知のマーケット」の広がりにアプローチする機会を生み出すことこそが、新たな成長の基盤の育成へとつながっていきます。

社会性、公共性に根差したビジネスモデルの創出へ

 さらに、さまざまな企業が有するビッグデータやSNSなどの検索情報と連携することで、「どのような地域で平日のお買物に制約が生じているか」など、社会的課題を具体的に見出していくことも可能となります。「セブン&アイ・データラボ」では、こうした課題解決に向けた仮説を生み出し、企業連携による仮説の実証実験も推進。その先には社会的課題の解決に根差したビジネスモデルの創造も見えてきます。いま、国連が提唱する「SDGs(持続可能な開発目標)」をはじめとして、環境問題や社会的課題の解決に資する事業を推進することが企業に強く求められています。こうした中、「セブン&アイ・データラボ」は、社会性、公共性を併せ持ったビジネスモデルの創出を通じて、グループの成長基盤と持続可能な社会の構築を推進していきます。

Part Ⅲ
社会的課題の解決に向けたデジタル技術の活用

生産性向上による働き方改革への寄与

 グループ各社では、店舗の生産性向上などにも、デジタル技術を活かした取り組みを始めています。その一つが、セブン‐イレブンが実験を進めている「RFID」を活用した検品です。これは、お弁当などデイリー商品の納品ケースにICタグを取り付け、店舗への納品時の検品を省力化する取り組み。実験店舗では、検品作業を1日当たり100分短縮できるという成果が出ています。
 また、イトーヨーカドーでは、デイリー食品や加工食品などの発注にAIを活用するシステムの実証実験を実施。自己学習能力を備えたAIを活用することで、天候、曜日、店舗周辺の行事など、多様な要素によって変動する商品の販売量を予測して発注量を決定する精度が大幅に向上。売場担当者の発注業務の負荷が顕著に軽減されるという成果が上がっています。
 これらの省力化による生産性向上は、従業員の働き方改革といった社会的課題への対応に道を開くとともに、売場での接客に専念する時間を拡大するなど、店舗のサービスの質を高めるといったメリットを生み出しています。

RFID:電波の送受信により、非接触でICチップの中のデータを読み書きする技術。

「RFID」による検品では、センターでの仕分け時にICタグで商品と納品ケースを紐づけし、店舗への納品時にデータを読み取ることで、作業を省力化。

イトーヨーカドーでは、AIの活用によって発注業務を軽減し、接客を強化するなどお客様満足度の向上につなげています。

異業種との連携による社会的課題の解決にも

セブン‐イレブンでは、セイノーHD、NTTデータと連携してネットを利用して既存の店舗と店頭の商品を活用する新サービス「ネットコンビニ」の実証実験を推進。

 さらに、デジタル技術は、異業種間と連携した社会的課題の解決の実現にも役立っています。その一つが、日常的なお買物が困難な地域のお客様ニーズへの対応を視野にセブン‐イレブンが北海道で実証実験に取り組んでいる「セブン‐イレブン ネットコンビニ」です。これは、セブン‐イレブンとセイノーホールディングス(株)(以下、セイノーHD)、(株)エヌ・ティ・ティデータ(以下、NTTデータ)の3社が連携した取り組みです。NTTデータの有する先進的なシステム開発力、セイノーHDの物流ノウハウと、セブン‐イレブンの事業インフラを組み合わせることで、店舗がネットでお客様の注文を受け、店頭の商品をお客様のもとにお届けする新しいサービスを可能にしています(次ページ参照)。

デジタル技術によって事業基盤を新たな成長基盤に

 このように、グループ各社の店舗サービスの質的向上や異業種連携による社会価値の創出など、これからの流通サービスの成長に欠かせない課題の解決に、セブン&アイグループは最新のデジタル技術を幅広く活用しています。「どの取り組みにも共通しているのは、小規模の実証実験などを通じて、速やかに問題点を抽出して、プランを修正し、取り組みを広げていくという『PDCA』の高速回転です。変化の激しいマーケット環境にあって、多様な仮説をスピーディに検証しながら、社会への新たな価値提供に結び付けていくことを大切にしています」と後藤副社長。
 2万店を超える店舗網をはじめとしたセブン&アイグループの事業基盤は、デジタル戦略によって、さらに新たな成長のプラットフォームへと変貌しつつあります。

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