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セブン&アイの挑戦
パートナー企業とともに[特別編]

大阪府松原市×セブンパーク天美 特別対談
地域交流の拠点となる館づくりが生み出す
新たな街づくりのかたち

2023年11⽉

セブン&アイ・クリエイトリンクが開発から運営まで一貫して手がけた複合施設「セブンパーク天美」。賑わいを生み出し、地域活性化への一助となる館づくりを進めるため、自治体と企業がどのような考えのもと、連携してきたのかについて大阪府松原市長の澤井宏文氏を迎え、セブンパーク天美支配人の秋本和宏とお話しいただきました。

松原市市長とセブンパーク天美支配人

官民連携のもと難局をともに乗り越え出店

セブンパーク天美

澤井 松原市は大阪市と堺市に隣接し、都会的な一面もある半面、大阪南部への玄関口になっており、ベッドタウンとしても人気を集めています。また、10年前に大阪府として初めてWHO(世界保健機関)のセーフコミュニティ認証都市となり、安全・安心の街づくりを進めてきました。2022年度からは、転入が転出を上回る「社会増」を実現しているものの、さらに街の利便性を上げ、若年層を取り込む仕掛けは欠かせません。セブンパーク天美には、そうした意味でも大きな期待を寄せています。
秋本 セブンパーク天美は、当社が開発から運営までのすべてを一手に引き受けた初めての複合施設です。セブン&アイグループが大阪府内で出店しているアリオ八尾、アリオ鳳の中間地点に位置し人口や世帯数、そして学生も多く住むエリアでありながら、大型商業施設がなかったことから、2021年にオープンしました。
澤井 この計画が持ち上がったのは、私が市長になった直後の頃でした。まずは市街化調整区域だったこのエリアを市街化区域に編入するということで、府との交渉に苦心したのをよく覚えています。土地区画整理事業も山あり谷ありで、多くの地権者様の同意を得つつ、市とセブン&アイグループ様との三者で「やるからには協力し合いましょう」と、お互いの負担を減らす調整を行いました。
 当時は、まだまだ新型コロナウイルス感染症の影響が強い時期でしたので、建築資材の高騰など材料調達で「オープンが1年遅れる」というような話も2、3回はあったように思います。
 「施設ができれば市にとって必ずプラスになる。今はそのための投資の時期だ」と腹をくくってはいたのですが、「とにかく早くオープンしてくれ!」と祈るような気持ちでいました。
秋本 運営面でもコロナ禍の影響は大きく、テナント様の誘致が進まず、ようやく出店にこぎつけても密になってはいけないことからイベントなどの集客施策が打てない時期もありました。そういう時期を乗り越え、今振り返れば本当にいろいろな経験を積ませていただきました。

テナント店舗は市内事業者を優先 Win–Winの関係を地域と構築

組織・施設紹介

澤井 大きな商業施設が進出すると、地元の商店街の皆さんは「競合」というイメージを持たれることが多いですが、私は「競合」ではなく「共存共栄」だと思っています。今回もセブンパーク天美ができることで街に賑わいが生まれ、それが商店街にも波及することを期待していました。
秋本 それについては本当に同感です。商店街の方が「お客様が離れてしまう」と感じるのは、商品・サービスなどを「点」として考えているからかもしれません。私もさまざまな地方での勤務を経験してきましたが、実際は大きな商業施設ができると、周辺の商店街の売上が落ちるどころか今までの1・5倍、2倍のお客様が来てくれたこともありました。
澤井 商店街とショッピングセンターではターゲット層も異なるので、お互いに自力では呼び込めなかった層を呼べるということもありますよね。
秋本 その通りです。そうしたことへのご理解をいただくためにも、地域とのコミュニケーションが大事だと考えています。過去の商業施設の事例などをしっかりお伝えし、地域とWin‐Winの関係をつくっていくことは、セブンパーク天美の開発の際にも常に意識していました。
澤井 セブン&アイグループ様の考え方はまさに地域密着。テナント店舗もまずは市内の事業者を候補にしていただき、実際に市内の主立った店がたくさん入っています。また、市街化調整区域が市街化区域になるということは、雇用が生まれ税収も上がるため、それを商店街の活性化に 還元することもできます。雇用といえば、実際セブンパーク天美のスタッフは6割以上が松原市民なんですよね。パーク内を歩いていても、すれ違うスタッフの10人に6人は松原市民だと思うとプライベートで買物する時も気が抜けませんね(笑)。

民間のネットワークと大学の知見を地域包括連携協定で最大限に活かす

座学連携協定締結記念イベント

澤井 以前より、地元の商工会議所、阪南大学との「産官学」の連携を図ってきましたが、2021年にセブン&アイ・クリエイトリンク様とセブン‐イレブン・ジャパン様とも地域活性化包括連携協定を結び、大学のアイデア、民間のネットワークを活かしたさまざまな仕掛けづくりが進んでいます。毎年実施している地産地消フェア「まつばらマルシェ」や、地域ブランド「La Matsubara」の認証活動における協働のほか、松原市の特産品である難波葱を使ったおにぎりを開発し、府内の150店舗のセブン‐イレブンで発売していただくなどセブン&アイグループ様に市を宣伝していただきありがたいです。災害時の協力まで申し出ていただいていますし、私自身は良いことしかないと思っています。
秋本 確かに地域活性化包括連携協定を結んだことは大きいですね。こうした協定は結んで終わりになってしまうケースも多いのですが、ここではまさに協定をスタートとして、一つひとつ実行し続けることができています。市長ご自身がフランクなこともありますが、市もとても柔軟です。市長公室が窓口となって担当部署を紹介してくださるのもありがたいですし、紹介された先でも「どうもどうも!」という雰囲気ですぐに話ができるんです。雑談を通してアイデアが生まれることもあります。
澤井 秋本さんが来られると何か一つ二つ頼まれるのがわかっているので、こっちも三つ四つお願いを準備しています。それをきちんと受け止めて、「やってみましょう」と言っていただけることがありがたいですね。
 民間との協定は、何かの縁がないと発展しないもので、今回についてはとにかくセブンパーク天美が松原市に「来ていただいた」ことが大きい。セブン&アイグループ様が持つ日本全国へのネットワークは大きな魅力ですから、このご縁を大切にして、活かす方法を考えていきたいと思っています。

施設のコンセプトを決めるのは「地域で本当に求められるもの」

澤井さん

秋本 セブンパーク天美のコンセプトは、「LIVE STADIUM〜普段の暮らしに、感動・興奮・驚きを〜」。ハードとしての施設をつくるだけでなく、まさに暮らしの一部として、地域の方々に関わっていただき、育てていただくことが大切です。そのためにもエンターテインメント性をとくに意識しています。
澤井 エンターテインメントという点で市から強く要望したのは、「映画館をつくってほしい」ということでした。実際、自転車や徒歩で行ける場所に、これだけのシアター数を揃えた映画館があるということで、市民にはとても喜ばれています。
秋本 これまで地域の皆さんと対話してきた中でもイベントスペースや映画館への要望は非常に強く、そのことがコンセプトづくりの柱にもなりました。我々は常に「あるべき商業施設の形は地域ごとに違う」と意識しています。今、地域にないもの、あれば喜ばれるものは何かを考えることが大切です。
 施設の中心にある「AMAMI STADIUM」も、暮らしの中にエンターテインメントをつくる発想から生まれました。現在はこれを使って、ライブやイベントなど1年52週すべての週末に「何かある」状態ですが、次は平日にも何かできないか、松原市とも相談しながら考えています。
澤井 1階から3階のどこからでも舞台が見える「AMAMI STADIUM」のつくりは、まるでコンサート会場のよう。多くの市民がイベントで舞台に立っていて、私の子どもたちも踊らせてもらったことがあるんですよ。何かに懸命に取り組んでいる人は発表の場がほしいものですし、3フロアから観客に見てもらえて、スターのような気持ちで舞台に立てるこのスペースは、市民にとってはとても晴れやかな場所。ぜひこれからも積極的に使わせていただきたいです。

コミュニケーション創出の場所として多くの方が集う施設へ

秋本さん

澤井 2年後には『2025年 日本国際博覧会(大阪・関西万博)』が開催されます。万博といえば、半年で2800万人が訪れる一大イベントで、その賑わいを会場だけで終わらせるのはもったいない。松原市は高速道路が整備され、万博会場からセブンパーク天美へは車で20分ほどです。この立地を活かして、万博の賑わいをぜひ松原市に呼び込みたいと考えています。
秋本 万博を機に多くの方に集っていただくことは、SDGsを含めさまざまな社会課題の解決にもつながります。たとえば、各種団体や企業が万博に向けて行うテーマセッションの会場にセブンパーク天美を使ってもらうなど、地域の方に向けた発信の場にしたいと考えています。
澤井 松原市としても開催年の2025年には、周辺イベントとして、常々力を入れている国際交流にも取り組みたいと考えています。また、「挑戦したいが踏み切れない、きっかけがない」といった地元の事業者様の背中を押す機会として、セブンパーク天美の施設を活用した取り組みなども計画しています。地域活性化を通して市としての魅力や発信力を高めることで、さまざまな可能性が広がってくるのではないかとも考えています。
秋本 目標達成のためにもぜひ施設を使っていただきたいです。セブンパーク天美は若い世代の方々にも来ていただきやすい施設なので、「若い世代にとって暮らしやすい街づくり」という点でお役に立てることは多いはず。施設としての発展が街づくりにもつながるという思いで、子育てしやすく定住しやすい環境づくりに、微力ながら貢献していきたいと思っています。
澤井 セブンパーク天美のような施設は「情報を得る場所」でもあります。実際、セブンパーク天美での情報発信で住民が子育て情報を得るといったこともあり、そのような役割を担っていただけていることに市としては非常に助けられていますし、今後も引き続き期待しています。
 また、人が集う場所では、自然とコミュニケーションが生まれます。市民がイベント出演で集まれば、新しいコミュニティーが生まれる。地域コミュニティーが希薄化する今、こうした場の意義は大きく、とりわけ若い世代が交流を図れるのは素晴らしいことだと思います。
秋本 そのためにも、「買物をしていただく」「見ていただく」だけでなく、「参加していただく」施設にしたいですね。今までお付き合いのなかった隣近所の方とセブンパーク天美で出会い、それがきっかけで親しくなる、そんな交流の場をつくっていければうれしいです。

ムービー

地域交流の拠点となる館づくりが生み出す新たな街づくりのかたち(3:10)