「7つの重点課題」活動レポート

2021.3.12

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生産者様とともに取り組む“持続可能な調達”

サステナブルな社会を実現するためには、環境と社会に配慮した生産・消費が欠かせません。セブン&アイグループでは、人と地球に優しい持続可能な調達を目指し、さまざまな取り組みを行っています。今回もライター吉田が取材を担当し、持続可能な調達推進チームのリーダーである荒谷一徳さんにお話を伺いました。

Chapter 1

地球上の限りある資源とどう向き合うか

さまざまな場面で使われる「サステナブル」という言葉。直訳すると「持続可能な」という意味になります。
セブン&アイグループは、2019年5月に発表した環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』に伴い、4つのプロジェクトチームを発足しました。そのうちの一つが、サステナブル調達(持続可能な調達)推進チームです。
持続可能な調達という聞き慣れない言葉について、その内容を整理してみましょう。持続可能な調達とは、「モノ」と「コト」の両面から考える必要のある問題です。

ここでいう「モノ」とは、地球上の限りある資源のこと。私たちの生活は、あらゆる資源を活用して成り立っています。しかし、その資源の中には、近い将来に枯渇するのではないかと予測されているものもあり、収穫・採取や管理の見直しが必要とされています。
一方の「コト」は、気候変動などの環境問題や労働・人権問題を指します。原材料を調達する過程で生物多様性を破壊する、あるいは低賃金や児童労働によって労働力を搾取するといった課題があるとするならば、持続可能な状態へと改めていく必要があります。

セブン&アイグループは、5つの柱からなる「持続可能な調達基本方針」を定めています。持続可能な調達の推進チームリーダーである荒谷一徳さんは、「これからの時代は、『どのように生産されたのか』というストーリーを伝えることが大切です。そのためには我々だけではなく、お客様、お取引様と三位一体で取り組んでいく必要があります」と、力を込めて語ります。

Chapter 2

持続可能性を考えた商品

ここからは、セブン&アイグループにおける取り組みについて触れていきましょう。初めにご紹介するのは、世界基準として認められている日本発の水産エコラベル「MEL認証」の取得です。
『MEL認証』は、水産資源や生態系などに配慮して漁獲・養殖された水産物を認証する制度です。イトーヨーカ堂は、日本の大手小売業として初めて流通加工段階(COC)認証を取得し、店内で加工・販売ができるようになりました。現在は、オリジナルブランド商品『顔が見えるお魚。』シリーズの一部に認証マークを付けています」

また、イトーヨーカドーの「顔が見える野菜。」「顔が見える果物。」、そして環境循環型農業セブンファームでは、食品安全と環境保全に配慮した農業従事者に与えられるJGAP認証の取得を推奨。荒谷さんによると、「数名の商品の仕入れを担当するマーチャンダイザーがGAP認証の指導員資格を取得しており、農家の方々に持続可能な農業についてご理解いただきつつ、そこで生産された商品を我々が販売するという流れができつつあります」。

水産エコラベルMEL認証を取得した「顔が見えるお魚。」

さらに、2020年からはセブン‐イレブンやイトーヨーカドーなどで大豆ミートの商品を販売開始。荒谷さんは、「家畜の飼育はたくさんの飼料や水資源を利用し、同時に二酸化炭素を排出しますが、大豆ミートであれば環境への負荷を低減できます。近年の大豆ミートは味もおいしくなり、また植物性タンパク質はさまざまな健康効果が期待できるため、今後その需要はさらに伸びるでしょう」と語ります。

食品以外では、化学・日用品メーカーのサラヤ様と共同企画した洗剤やハンドソープなどを、プライベートブランド「セブンプレミアム ライフスタイル」より販売。これらの商品に使用しているパーム油は、森林破壊などの悪影響を最小化するために設立されたRSPO認証を取得したもので、持続可能性に配慮しています。ほかにも、農水省・消費者庁・環境省が連携して立ち上げたプロジェクト「あふの環」に賛同。グループ店舗の特設売場で持続可能な生産に配慮した商品を紹介するなどサステナブルについてお客様と一緒に考える取り組みをしています。

Chapter 3

お客様が感じる生産者様情報の必要性

イトーヨーカドーの『顔が見える食品。』

持続可能な調達に関するさまざまな施策を行っているセブン&アイグループ。荒谷さんは、お客様からの確かな反響を感じていると語ります。
「イトーヨーカドーの『顔が見える食品。』Webサイトへのアクセス数は、新型コロナウイルス感染症が広がり始めた昨年から飛躍的に増えています。多くのお客様が、「この商品は誰が、どこで作っているか」といった生産者様の情報を知りたいと感じているのだと思います」
そこで、店頭でもお客様にこうした「顔が見える食品。」の商品価値をお伝えするために、売場では販促物やデジタルサイネージで商品の情報を発信しています。荒谷さんはそこで、ある事実に気づきました。

ASC認証やMEL認証など水産認証の説明をする店内販促物

「社会科見学でイトーヨーカドーのお店に来られた子どもたちが、認証制度について説明したPOPを見て『このマーク、知ってる!』といった反応がありました。今の小中学生は、SDGsについてしっかりとした教育を受けていますから、環境問題への知識があります。企業として環境問題に対してできることをもっと取り組んでいこうと強く感じる出来事でした。
また、持続可能な調達というテーマは、『GREEN CHALLENGE 2050』に関わるさまざまな課題と密接につながりがあります。荒谷さんは、「さまざまな課題に対して、グループ全体でビジョンを共有し、推進していくことで、持続可能な未来につなげていきたい」と考えています。

Chapter 4

加工品のトレーサビリティ確立の大切さ

一方で、持続可能な調達を進めるにあたっての課題もあります。荒谷さんは、「認証を受けた商品はそもそもの絶対数が少ないため、グループ全体での販売が難しい現状にあります。」と、語ります。
さらに荒谷さんは、「魚や野菜といった素材こそトレーサビリティ(※1)が確立できるようになってきていますが、加工品はまだまだというのが正直なところです。加工品においても素材や生産者のトレーサビリティが確立できるようになると、その商品のコンセプトが明確になり、生産者様や中間の業者様までどのような方が関わりどんな想いが込められているかという、ストーリーのある商品提供ができるようになると思います」

※1:商品の生産や流通過程などお客様の手元に届くまでの生産履歴を追跡可能

未来に向けた試みの一つして、「顔が見えるキッチン。」コーナーを設けています。この「顔が見えるキッチン。」は、原料・保存料・合成着色料不使用といったこだわりのもと、顧客の「台所代行」として素材・調理工程がわかる商品を取り揃えております。素材および加工の過程を知ることができるようにすることで安心感が生まれるようで、「顔が見えるたまご。」の「まごころたまご」を使った自家製だし巻きたまごの売上は非常に好調とのことです。荒谷さんは、「イトーヨーカドー大和鶴間店ではまごころたまごを使った"まごころたまごのプリン"も、プリン売場からこのコーナーに移したことで、売上が2.5倍になりました」と、「顔が見えるキッチン。」の効果を実感しています。
商品のコンセプトを理解していただき、お店まで足を運んでいただくことで、ストーリーのある商品提供が完結します。この取り組みをグループ全体で拡大できるようにしていくのが、私の役割だと考えています」

「顔か見えるたまご。」まごころたまごを使った自家製だし巻きたまご

荒谷さんはセブン&アイグループが今後やるべきことについてこう付け加えます。
「これまでのように販促物などで各種認証の基準を説明するだけでは、お客様に伝わり切らない部分があったように思います。認証マークの商品を買っていただくことで、地球環境にどのような良い影響があるのかを知っていただく――そこに焦点を移す必要があります。ストーリーのある商品提供をすることで、目的のある買物をするお客様を増やしていきたいですね」

Writer:吉田勉
Photographer:落合明人
サステナブル調達(持続可能な調達)推進チーム
チームリーダー

荒谷 一徳

イトーヨーカ堂
取締役 執行役員 食品事業部長

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