「7つの重点課題」活動レポート

2023.8.4

  • 課題3
  • 食品ロス・食品リサイクル対策

【イトーヨーカドー】使用済み食用油回収の取り組み

イトーヨーカドーでは、資源循環型社会の実現に向けた取り組みの一環として、日本初の、専用リターナブルボトルを使用したご家庭における使用済み食用油の回収・リサイクルに関する実証実験を2023年2月1日より実施しています。
イトーヨーカドー ネットスーパー西日暮里店でご注文された商品をお受け取りになる際に、専用リターナブルボトルを配布及び廃食油を回収し、協力企業の株式会社吉川油脂※にてリサイクル処理が行われています。この取り組みが始まった経緯と今後の展望について、セブン&アイ・ホールディングス総務部の藤乘さんにお聞きしました。

取り組みが始まった経緯

店舗・工場などで発生する事業系廃油回収とリサイクルは積極的に行われていますが、お客様のご自宅から発生する家庭用油回収・リサイクルはなかなか進んでいないという社会課題があります。イトーヨーカドーは、この課題に対して手を打ち、お客様の回収・リサイクルにつなげたいと考えていました。同じように協力企業の株式会社吉川油脂でも、「家庭用油」の回収に対して課題を感じており、回収・リサイクルにつなげる道を探していたそうです。ドイツでは町中に廃油の回収機が設置されており、家庭用油の回収が日常化されています。これを見て株式会社吉川油脂は、この回収方法を活用することで、日本でも浸透させることはできないかと考え、機械とボトルをドイツから取り寄せました。その後、イトーヨーカドーの様な商業施設で回収事業を展開していけないだろうか、という提案を受けることから、イトーヨーカドーの取り組みへの検討が始まりました。
これまでは家庭で固めるテンプル等を使って、可燃ごみとして廃棄していた家庭用油。この未利用の資源をリサイクルし、少しでも地球の為に役立てていきたい。
もともと全国の市区町村でペットボトルを利用して油の回収は行われていますが、ほとんど集まっていないのが実態だそうです。一方で、スーパーマーケットには買い物のついでに、トレーやペットボトルをリサイクルボックスや回収機にお客様が持ってくるという文化がもともとあります。スーパーマーケットが取り組みを進めていくことで回収率を飛躍的に上げられるのではないかと考えた、と藤乘さんは語ります。

また、今では店舗の店頭でよく見かける様になったペットボトルの回収機ですが、この取り組みが始まった経緯も、「お客様がこれまで廃棄していたものを店舗に持ってきていただければ、リサイクルできますよ」ということを知っていただくことから始まっています。ペットボトルと同じ考え方で、廃油の回収に関しても認知を広げることが、取り組みの拡大につながる可能性があると考えた、と藤乘さんは語ります。

ペットボトル、リサイクルボックスのイメージ

※株式会社吉川油脂
関東・信越を中心に、工場・コンビニ・スーパーで発生する一度使った油(事業系油)の回収を行っており、これを飼料への活用、石鹸・化粧品といった工業用製品の原料として100%リサイクルを行っている。

回収専用容器の開発と目的

「家庭用油」を回収するためには課題も多くありました。市区町村の自治体と同じように、ペットボトルで回収をしてしまうと、ペットボトルが廃油で汚れてしまい、結果としてリサイクルされずに「廃プラスチック」として廃棄するしかありません。これでは、ペットボトルの回収とリサイクルを10年継続してきたコンセプトとずれてしまいます。そこで、専用容器を使った回収をする必要があり、開発を進めてきました。専用容器を使った回収で苦労している点は、容器の中身の洗浄について、容器内の残油を取り除くため、専用の洗浄機が必要となります。専用機の設置に際して、費用や場所という大きな壁がありました。各店舗に機械を設置することは難しく、まずは、機械が無くても回収できる形はないのかということで、ネットスーパーで宅配を活用したテスト回収がスタートしました。この形であれば、回収した油を株式会社吉川油脂にも滞りなくお届けが可能になっています。
利用されているお客様からも、今まで困っていた廃油の処理が手軽にできるようになったとのお声も頂戴しています。
また、実際にテスト回収を始めてみると、想定外の出来事も起っているそうです。
「使用済みの油以外にも、お中元やお歳暮で頂きながら、賞味期限が切れてしまった未使用品の回収も見受けられています。こういった油は量も多く、捨てるのにも面倒に感じられてしまいます。こういったお客様の負に対して今回の取り組みが役に立っていることが分かり、とても嬉しく感じる」と藤乘さんは語ってくれました。

回収専用容器の画像

今後の計画

8月からは、これまで進めてきたネットスーパーを使った回収に加えて、実店舗での回収もスタートしていくそうです。年度内には都内のイトーヨーカドー10店舗でサービスカウンターによる対面回収の開始を予定しています。
この取り組みは、東京都との共同の取り組みとして始まっていく予定です。このイトーヨーカドーの回収事例をモデルパターンとし、他の事業会社の店舗(ヨーク、デニーズ、セブン‐イレブンなど)も回収拠点として参加していくことを目指します。小売業だからこそできる形として、お客様と一緒に取り組んでいきたいそうです。また、この取り組みを拡大していくことで、これまでゴミとして廃棄するしかなかった家庭用油を少しでも再利用につなげ、お客様の負を解消したい。取り組みを拡大しいていくことで多くの社会課題解決につなげて行きたい、と藤乘さんは語ってくれました。イトーヨーカドーはこれからも地域の皆様と一緒に社会課題解決に向けて取り組みを続けていきます。

セブン&アイ・ホールディングス
総務部

藤乘 照幸

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