ホーム サステナビリティ 明日にいいこと。つなげる、つづける。 「7つの重点課題」活動レポート 「ちびっこ職場体験ツアー」に潜入!子どもたちが学んだイトーヨーカドーの舞台裏とは!?

「7つの重点課題」活動レポート

2021.11.26

  • 課題4

「ちびっこ職場体験ツアー」に潜入!子どもたちが学んだイトーヨーカドーの舞台裏とは!?

イトーヨーカドーでは、地域の子どもたちに働く体験を通して社会の仕組みや環境への取り組みを知ってもらうことを目的として、「ちびっこ職場体験ツアー」を実施しています。子どもたちが実際に従業員としてお客様に接したり、商品が売場に並ぶまでの工程を見学するなど、営業中の店舗内で実際に働くことを体験していきます。その中には、環境問題を解決するための取り組みを知ってもらうためのプログラムも盛り込まれていました。今回は茨城県にあるイトーヨーカドー竜ヶ崎店で行われた「ちびっこ職場体験ツアー」の模様を、ライター村田がレポートします。

取材当日参加した子どもたちとイトーヨーカドー竜ヶ崎店の従業員。

Chapter 1

働くって、こんなに楽しくて、面白い!

8月の開店前の朝、店舗の入り口に集合したのは「ちびっこ職場体験ツアー」に参加する5~10歳の子どもたちと保護者の方々。子どもたちは少し緊張している様子で、朝のあいさつはちょっとおとなしめ。従業員の誘導で、今日は従業員通用口から特別に館の中に入ることが案内されると、普段できない体験とあって、興味津々の様子でした。

営業時間前に説明を受けてから、従業員通用口へ向かう参加者たち。

新型コロナウイルス感染症の対策のために検温や消毒を終えたら、さっそく入店です。まずは従業員通用口の横に掲示されている『自衛消防隊編成表』の説明を受けます。これは自然災害や火事など非常事態が起こった際にお客様の避難誘導や通報連絡、消火活動、救護などの担当が細かく割り振られているもの。従業員は入店すると自分の名前が記載された赤い札をひっくり返して白い面を表にします。こうすることによりひと目で従業員の出勤状況を把握することができるようになっています。有事の際には各人の役割に従って迅速な行動ができるようになっており、お客様と従業員の安全安心の確保につながっています。普段では気づかない仕組みに、子どもたちも保護者の方々も関心をもって説明に耳を傾けていました。

『自衛消防隊編成表』の説明を受ける子どもたち。

さて、開店30分前に一行は研修室へ向かいます。出迎えてくれたのは店長の多部田揚啓さん。「地域の方々に愛されるお店づくりを心がけ、イトーヨーカドー竜ヶ崎店は開店から21年が経ちました。今日は皆さんにお客様としては見ることのできない、イトーヨーカドーの舞台裏を体験していただきます。短い時間ですが、一緒にがんばりましょう!」と、多部田さんのあいさつで子どもたちの緊張も少しずつほぐれてきたようです。

その後、お客様を迎えるための準備をします。「ちびっこ職場体験ツアー」用として各々のテーブルに用意されていたのは、子ども用の制服です。従業員制服を着ることができるとあって、子どもたちの気分もとても盛り上がっていました。名札に名前を記入して着替えを終えたら、あいさつの練習開始です。あいさつ時の姿勢を習い、元気良く「おはようございます。いらっしゃいませ!」を繰り返します。おじぎのタイミングも確認し、準備完了! 1階のお客様用入口に移動します。

研修室でツアーの説明を受け、制服に着替える子どもたち。
10時の開店にお客様をお迎えする子どもたち。

10時の開店とともに、お客様をお迎えします。子どもたちがお揃いの制服に身を包み、一生懸命「おはようございます。いらっしゃいませ!」と、あいさつをしている様子に、お客様も目元がにっこり。マスク越しでもわかるぐらいに笑顔であいさつを返してくださる方もいらっしゃいました。気持ちの良いあいさつは、人を元気にする、改めてあいさつの大切さを子どもたちから学ばせていただきました。
あいさつ業務を終えたら、ペットボトル回収機の説明と体験のために、再び館の中を移動します。ペットボトルの回収に関する取り組みについて、食品売場を担当されている深澤京介さんが手づくりのパネルを使いながら説明をしてくれました。

再利用できるペットボトルや海のゴミ問題についての説明に聞き入る子どもたち。

「(パネルでウミガメの写真を見てもらいながら)ペットボトルやポリ袋などをウミガメが誤って食べてしまう事故は、海のゴミの問題が原因って知ってたかな?プラスチック素材は分解できないけど、実は再利用が可能なんですよ。そこで、ペットボトル回収機をイトーヨーカドーやセブン‐イレブンなどのお店に置いて、回収したペットボトルは再びペットボトルとして再生利用したり、粉々にしてお洋服に生まれ変わったり、リサイクルしているんだ。2020年度は、セブン&アイグループ全体で、年間になんと約3億3,000万本ものペットボトルの回収実績があったんだよ」と子どもたちにも伝わりやすいように熱のこもった説明をしてくれる深澤さん。

店外に設置されたペットボトル回収機を体験。

回収したペットボトルから再生されたものとして「セブンプレミアム ライフスタイル ボディクーラー」など具体的な商品も紹介されたことで、保護者の方からも「知らなかったので、勉強になった」という声がありました。さらに建物の外に設置されたペットボトル回収機で、実際にペットボトルを入れる体験も行いました。

次は、生鮮売場のバックルームを巡回するツアーです。まず説明を受けたのが、バックルームでのトイレの使い方についてです。トイレを使用する前にはエプロンを一度外し、ドア横にかけてから入室をし、トイレ内から出てくる時は手の消毒をしないとドアのロックが解除されず退室できない仕組みになっています。さらに各生鮮売場の作業エリアに入る前には、粘着式クリーナーで体に付着したホコリや髪の毛などを除去。この時もタイマーを使って、きっちり一定時間をかけて全身をくまなくきれいにします。従業員にとっては習慣化した日々の取り組みですが、保護者の方々からも「こんなに徹底した衛生管理を行っているんだ!」と驚きの声が上がっていました。

精肉コーナーなど、バックルームも見学。

さらに精肉や鮮魚、お惣菜コーナーのバックルームを見学。お肉がスライサーでカットされて商品としてパックされるまでの様子や、お寿司の自動にぎりマシーンを見学しました。日常的に見慣れた商品ですが、商品になるまでの工程を見るたびに子どもたちからは「おぉ!すごい」と歓声が上がりました。中でもとくに大きな反響があったのは、マイナス20℃に設定された巨大冷凍庫内での冷え冷え体験です。日常では経験することのできない冷たい世界を体感した子どもたちは、「足元も凍っていた!」、「とにかく寒い!」と、楽しそうにはしゃいでいました。普段当たり前のように食べている肉や魚などは徹底された衛生管理、加工の工程などがあって売場に並びます。このような体験をすることで、食の尊さも学べると感じました。

マイナス20℃の巨大冷凍庫の寒さに驚く子どもたち。

最後に行ったのは、レジ打ち体験です。特設レジが用意され、従業員がお客様役を担当。「いらっしゃいませ!」から始まり、商品のバーコードをスキャンし、電子マネー「nanaco」でお会計。商品をレジ袋に入れて、お客様にお渡しして「ありがとうございます」とあいさつをするところまで、一人ひとりが体験しました。今回の「ちびっこ職場体験ツアー」では一番人気のプログラムだったようで、子どもたちのうれしそうな笑顔を写真や動画に記録しようと保護者の方々も大忙し。短い時間ながらも楽しいひと時となりました。

店内に設置された特設レジで、実際にレジ打ちを体験。

ひと通りの「ちびっこ職場体験ツアー」を終えたら、研修室に戻って認定式です。今回参加してくださった子どもたちに、認定書と給与(お菓子のセット)が店長の多部田さんから一人ずつ手渡しで贈られました。ブラウスやエプロン、帽子を脱ぐのが名残惜しそうでしたが、最後は従業員の拍手に見送られて笑顔で帰路につきました。

満面の笑みで認定書とお菓子のセットを受け取る子どもたち。

参加した子どもたちからは「レジ打ちがとても楽しかった」、「夏休みの楽しい思い出づくりになった」という感想が。保護者の方からは「惣菜や生鮮食品の衛生管理に感心した」、「店舗への親近感が湧いた」など、さまざまな声があがりました。

Chapter 2

ツアーに組み込まれた環境問題の学び

「ちびっこ職場体験ツアー」を取りまとめたイトーヨーカドー竜ヶ崎店の店長の多部田揚啓さんに話をうかがいました。カリキュラムの中には、環境問題に取り組むイトーヨーカドーならではのプログラムも組み込まれていました。また、子どもたちにより理解していただくためにと、従業員自らが工夫をこらした道具を用いて説明していたのも印象的でした。

イトーヨーカドー竜ヶ崎店の店長 多部田揚啓さん。

ペットボトル回収機の体験では、参加してくださった5~10歳の子どもたちにも、それが環境問題と直接関わっていることを知っていただくには、言葉だけではどうしても伝わりづらいです。そこで身近な絵や写真を駆使したパネルをつくって説明し、考えていただくきっかけになればと、担当した食品売場担当の深澤さんは一生懸命準備してくれました。子どもたちにどうやったらわかりやすく伝えられるかを追求していく上で、我々自身の勉強になったことも良い成果でした。さらに最後の認定式では、海洋プラスチックを再生してつくったボールペンもプレゼントしています。実際のリサイクル品に触れることで、環境問題に対する取り組みに子どもたち自身がより関心を持つきっかけになっていただけるとうれしいですね」と、店長の多部田さんは語ります。

イベントに参加した子どもたちにプレゼントされるノートと海洋プラスチックゴミ(※)を再生してつくったボールペン。
※生活ゴミなどが原因で海洋に浮遊しているプラスチックなど

子どもたちが体験し、学びとなった職場体験。取材した私自身もスーパーマーケットの舞台裏の仕組みやSDGsへの対応を体験することができ、大きな学びとなりました。このような素晴らしい取り組みについて、全国のイトーヨーカドーの店舗で導入されている「ちびっこ職場体験ツアー」を企画したイトーヨーカ堂CSR・SDGs推進部の強矢健太郎さんに企画に至った経緯をうかがいました。

Chapter 3

「ちびっこ職場体験ツアー」を企画した理由とは?

2014年に現在の部署に配属された強矢さん。
「イトーヨーカドーでは以前から環境問題を意識した取り組みを行っていましたが、企業として本格的に取り組みを改めて考えたタイミングが2014年でした。翌年の2015年に国連総会で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されたこともあり、世界的にこうした取り組みの加速度が増していったことも追い風となりました。しかしながら、CSR・SDGs推進部に配属された当初は、なにをどこから始めれば良いのかもわからなかったので、現場となるイトーヨーカドーの各店に直接話を聞きに行ったり、地域や行政の方と対話をすることからスタートしました」
とCSR・SDGs推進部に配属された時の経緯を説明します。

イトーヨーカ堂のCSR・SDGs推進部で職業体験ツアーを企画した強矢健太郎さん。

そうして地域の拠点として多くの人たちに愛される場づくりに加えて、未来を担う子どもたちの学びとなるような場として企画されたのが「ちびっこ職場体験ツアー」です。
「職業体験は、学校教育の一環として行政からの依頼もあり全国のイトーヨーカドーで協力して実施していました。その規模は年々大きくなり、小・中学生を対象に年間一万人を受け入れていました。ところが、せっかくの取り組みなのに、社会課題の解決や環境問題へ関わりを実感いただく学びの場としては伝え切れていないのではないかという声が社内であがっていました。そこで2020年に創業100周年を迎えたイトーヨーカ堂が掲げた『いいもの。いつもの。いつまでも。』のキャッチフレーズとともに、改めて社会や環境への取り組みを考えました。『未来のためにできること』は何かと再考した時、子どもたちと一緒にご家族も体験することができるファミリー向けの企画として、『ちびっこ職場体験ツアー』は新しいプログラムとしてスタートしました。」と、強矢さんは語ります。

続けて、お店の取り組みについて、
「カリキュラムはこれまで培ってきた職業体験の取り組みがベースにありますが、具体的なプログラムづくりは現場に任せています。『ちびっこ職場体験ツアー』を行った従業員の企画力には、素晴らしいものがありました。たとえば、子どもたちによりよく理解していただくために紙芝居を自主的につくったり、従業員自らが環境問題の最新情報をリサーチしたりと、各店によって取り組み方がバラエティーに富んでいました。また、通常の業務では見えなかったスキルが発揮され、それが仕事においても新しい活躍の場を広げるきっかけになったりするんです。こちらから一方的なカリキュラムを渡すのではなく、各店で工夫してブラッシュアップさせていくことで、より良い『ちびっこ職場体験ツアー』を実現しています」と、強矢さんは説明します。

従業員自らが自主的に制作した「ちびっこ職業体験ツアー」用の紙芝居

強矢さんは、続けて語ります。
「こうしたイベントを行うことに対して、社員とパートさんの垣根はないこともうれしいですね。さらに従業員が日常的に行っている当たり前のこと、たとえば衛生管理や有事の際の危機管理などは、お客様にとっては初めて知る取り組みです。『ここまで衛生管理を徹底して取り組んでいるんですね。とても安心します』といったお声を、リアルにお客様からいただくことで、自分たちの当たり前をお客様が喜んでくださることにつながっていることを強く実感。こうしたコミュニケーションを介して、日々の業務の大切さを改めて痛感したという声もあります。だからこそ私たちのモチベーションアップにも直結する『ちびっこ職場体験ツアー』は、とても大切な取り組みといえます

イトーヨーカドーの店舗に設置されているリサイクル回収ボックス。

環境問題に対する全社をあげた取り組みとして、古紙回収やペットボトル回収だけでなく、フードドライブ(※)の回収ボックスなど多彩な取り組みを行っているイトーヨーカドー。さらに従業員には、eco検定を積極的に受けることもすすめているようです。

※家庭などで使い切れない未使用食品を持ち寄り、それらをフードバンク団体や地域の福祉施設・団体に寄贈する活動

「私自身もeco検定資格は持っていますが、この資格を持っている従業員が増えてきたことで、社内全体で環境に対するマインドが年々高まっていることを実感しています。たとえば、先日とある店舗で『カーボンオフセット(※)の商品は取り扱っていますか?』というお問い合わせがあったそうです。以前なら、こうしたお問い合わせがあると『カーボンオフセット商品ってなんですか?』という従業員からの相談がCSR・SDGs推進部にきていました。しかし最近では、環境用語の理解度も高まり、お客様に満足いただけるご提案ができるようになった、という報告が入るようになりました。自主的に調べて、きちんと正しい情報を発信できる従業員が増えていることは、とても心強く感じています」と、強矢さんは語ります。

※人間の経済活動などによる温室効果ガスについて、削減しようと努力をしてもどうしても削減できない分の全部または一部を、植林・森林保護・クリーンエネルギー事業(排出権購入)などで、埋め合わせすること。

また、定期的に各店舗から報告される内容には、強矢さんも知らなかった環境への取り組みや商品があるといいます。
「未来世代につなぐための取り組みを多角的に実施していくことで、イトーヨーカドー自体がより多くの人たちに愛される存在になったことが、なによりうれしいです」と、強矢さんは最後に語ってくれました。

これから学校に通う未来世代は、環境問題はもちろん、SDGsの取り組みは授業の一環として学びます。もちろん企業や地域などを通して、こうした取り組みの現状を知る機会は増えていくと思いますが、未来世代の彼らの一般常識と同じ目線を持つためにも、大人たちも自主的な学びはより必要になっていくことを痛感しました。今回の「ちびっこ職場体験ツアー」は子どもたちに向けた内容でしたが、実際に参加してみると40代の私でも初めて聞くことが多々ありました。ペットボトルの回収は意識的に行ってきましたが、環境を意識した商品選びなど、私自身の生活にも取り入れていきたいと思いました。

Writer:村田奈緒子 Photographer:山北茜
イトーヨーカ堂
CSR・SDGs推進部

強矢 健太郎

イトーヨーカドー竜ヶ崎店
店長

多部田 揚啓

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