ホーム サステナビリティ 明日にいいこと。つなげる、つづける。 「7つの重点課題」活動レポート 安全・安心のその先へ 日本の食卓の未来を担う「持続可能な調達」

「7つの重点課題」活動レポート

2021.4.16

  • 課題2
  • 課題3
  • 持続可能な調達

安全・安心のその先へ
日本の食卓の未来を担う「持続可能な調達」

Chapter 1

水産資源の枯渇や動植物の絶滅危惧といった問題が叫ばれる今、地球上の自然環境は、かつてない速度で衰退を続けています。持続可能な食品原材料の調達をしていかなければ、近い未来、私たちが当たり前に食べている魚などの自然資源は、食卓から姿を消してしまうかもしれません。最近、食の未来が気になっているライター岸が、持続可能な調達の現状から今後の展望までを探るべく、イトーヨーカ堂 マルシェ部 総括マネジャーの井上浩一さんとマルシェ部 シニアマーチャンダイザー(SMD)の久留原昌彦さんにお話を伺いました。

作り手の「顔」がひと目で分かる食品

イトーヨーカ堂を代表するオリジナルブランドの一つ、「顔が見える食品。」。安全・安心、おいしさにこだわって作られた、バラエティ豊かな国産の農畜水産物を展開しています。
日本を取り巻く自然環境が刻々と変化する中、日々、心を込めて、生産に励む生産者様を応援したい。そして、環境にも、人にもやさしい食品の良さをお客様に知っていただきたい。そんな想いのもと、2002年に5~6名の生産者様とともにスタートしたこのブランドには、現在、7,000名を超える生産者様が賛同されています。

「顔が見える食品。」の最たる特徴は、「誰が、どこで、どのようなこだわりを持って 」生産したのかがひと目で分かり、また、厳選された生産者様の商品のみを取り扱っていることをお客様に伝えることともに、一人ひとりの生産者様のお名前を記載することで温かみのある心のこもった商品としてお客様にご提供することができます。
店頭に並ぶ商品のパッケージは、生産者様一人ひとりの顔を似顔絵イラストで打ち出したユニークなデザイン。その一つ一つに貼られたQRコードを読み取ると、商品を生産している畑や牧場、養殖場の様子や、生産者様のこだわり、おすすめの食べ方などを紹介する映像が視聴できるようになっています。
※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です

最近では、小学校の授業で、環境問題について学ぶお子様に教えられて、30~40代のお母様が関心を持つという傾向も見られるそうで、「顔が見える食品。」のWebサイトへのアクセス数は、伸びています。
ブランドの立ち上げ以来、安全・安心な食品を日本の食卓に届けるべく、生産者様と二人三脚で歩み続けてきたマルシェ部 総括マネジャーの井上浩一さんは、こう話します。
生産者様のお顔や、想いを知っていただくことによって、野菜嫌いだったお子様が、喜んで野菜を食べるようになったなど、多くの声が寄せられています。お客様からいただいたお手紙やメールの内容は生産者様と共有し、喜びとやりがいにつながっています」

Chapter 2

「安全・安心」の一歩先にある、新たな課題

「顔が見える食品。」におけるさまざまな取り組みを進めてきた中で、「近年、新たな課題が見えてきた」と井上さんは話します。
「安全・安心な食品に対するお客様の意識がどんどん高まる中、食の安全・安心が“当たり前”になってきたと同時に、環境問題や持続可能性に配慮された商品へのニーズが、徐々に高まっています。食の安全・安心を守るのはもちろんのこと、その一歩先の課題として、こうしたニーズにしっかり対応していく必要がありました」

現在、イトーヨーカ堂では、2019年5月にセブン&アイグループが発表した環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』のもと、持続可能な調達への取り組みに力を注いでいます。
その一つが、世界基準として認められている日本発の水産エコラベル「MEL(マリン・エコラベル・ジャパン)認証」の取得。「MEL認証」は、水産資源の持続的な利用や、環境、生態系の保全に配慮して漁獲・養殖された水産物を認証する制度です。

イトーヨーカ堂は、この取得に向けて、オリジナルブランド商品「顔が見えるお魚。」シリーズの生産者様と共に取り組み、日本の大手小売業として初めて流通加工段階(CoC)認証(※)を取得しました。これによって、生産段階からお客様の元に届けられるまでの間、MEL非認証の水産物が混ざることがないことが証明されて、店内で加工した商品にも認証マークをつけて販売できるようになりました。2020年4月からは、「顔が見えるお魚。」のぶり、かんぱち、真鯛、平目の4魚種に認証マークを付け、全国各地の店舗で販売をスタートしました。
※:MEL認証を受けた水産物が生産段階から店頭に並ぶまでの、生産履歴が追跡可能な状態になっていることを証明する流通加工段階での認証。(MEL認証には、生産段階(漁業)、生産段階(養殖)、流通加工段階(CoC)の3種類があり、すべての段階で認証が必要。)

MEL認証などの国際認証は、漁師様や養殖業者様をはじめ、加工や物流、販売を含むすべてのサプライヤー(仕入先、供給元、納品業者など)が認証を取得することで、持続可能性に配慮して生産された水産物を確実にお客様に届けられる仕組みになっています。
「持続可能な漁業で育てられた養殖魚をお客様にお届けしたいので、一緒に取り組んでいただけませんか?と、お願いをしたところ、数名の生産者様に賛同いただくことができました。MEL認証は、生産者様、サプライヤー様、我々の三者の合意のもとに、力を合わせて取得できたものです」と井上さんは話します。

Chapter 3

農家の人々に寄り添い、共に学び、共に成長する

持続可能な調達を実現するために、イトーヨーカ堂が力を注ぐ、もう一つの取り組みとして「JGAP」認証取得の推奨があります。
JGAPは、食品安全、環境保全をはじめ、労働安全や人権・福祉に適切に取り組む農場に与えられる認証です。現在、イトーヨーカ堂では、日本初の環境循環型農業を行う「セブンファーム」をはじめ、「顔が見える野菜。」「顔が見える果物。」において、この認証取得を奨めています。

セブンファームを担当するマルシェ部 SMDの久留原昌彦さんは、これまでの経緯について次のように話してくれました。
「JGAPでは、農作物の安全性の確保や自然環境の保全に加えて、農場の適正な経営、雇用など人権への配慮も求められます。こうした認証制度にきちんと対応していくために、自身を含む6名のスタッフが、JGAP認証の指導員資格を取得しました。農家様に持続可能な農業についてご理解いただきつつ、JGAPについて共に学び、寄り添いながら、一緒に取得していくという形で進めてきました」

農作物の出荷に関する内容や農薬・肥料の使用に関する情報の記録・保管、労働環境の整備など、慣れない作業に対して、当初は、マイナスイメージを抱く農家様も少なくありませんでした。しかし、1年、2年と、地道に認証取得に向けて、一緒に取り組みを続けることで、その大切さを徐々に実感されていったそうです。 「JGAPについては、残る1ヵ所を除き、全国各地に点在する11ヵ所のセブンファームでの取得が完了しました。最近では、セブンファーム富里などの地域拠点に、近隣の農家様が、JGAPに興味を持ってお話を聞きに来られる、取得に向けて動き出すといった広がりが見られています」

Chapter 4

先頭を切って「持続可能な調達」を進めていきたい

今後の展望について、井上さんは力を込めてこう話します。
「持続可能な食材の調達は、お客様の暮らしにとってとても重要な課題です。より良いかたちで実現するためには、生産者様をはじめ、サプライヤー様など、多くの方々との連携が必要です。乗り越えるべき課題はさまざまにありますが、より多くの方からの理解を得られるよう、先頭を切って進めていきたいと思います」

コロナ禍によって、自宅で過ごす時間が増えている今、下ごしらえをした鮮魚や精肉商品が、とりわけ人気を集めているそうです。
「『顔が見える食品。』シリーズは現在食材のみの取り扱いですが、今後は、安全・安心で持続可能性を追求することに加えて“便利”という価値を付加するべく、惣菜品など、お客様に利用いただきやすい下ごしらえした商品の展開を検討しています」と話します。
環境問題を解決するためには、食品を生産する人、運ぶ人、届ける人たちのみならず、それを食べる人たちの協力も欠かせません。最後に、お客様に対する想いについて尋ねると、井上さんからこのような答えが返ってきました。

「自分たちの子どもの世代、孫の世代まで、持続可能なかたちで食材を調達していくためには、お客様のご協力が必要です。認証マークがついた商品など、環境問題や持続可能性に配慮した商品を選んでいただくことで、持続可能な社会づくりに貢献することができれば、我々も嬉しいかぎりです。一人ひとりの力が集まれば、それはやがて大きな力になると信じています
久留原さんも、「今後は、各種認証マークの基準を説明するだけでなく、物語のある商品提供など、さらに工夫を凝らしてお伝えしていく予定です。お客様におかれましても、ご理解いただければありがたいです」と力強く語ってくれました。

Writer:岸由利子
Photographer:甲斐俊一郎
イトーヨーカ堂
マルシェ部総括マネジャー

井上浩一

イトーヨーカ堂
マルシェ部 シニアマーチャンダイザー

久留原昌彦

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