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セブン&アイの挑戦
トップインタビュー

中国市場における「食」と「近くて便利」を追求し
『7-Eleven』ブランドを確立

2024年2⽉

高まる「食」の安全・安心と健康志向に応えて

董事長兼総経理 厳 茜
セブン‐イレブン(中国)投資有限公司
董事長兼総経理 厳 茜
1974年生まれ。一橋大学商学部卒業(在学期間中米国公認会計士資格取得)。2004年セブン‐イレブン・ジャパン入社、08年セブン‐イレブン北京有限公司財会本部(本部長代理、本部長、董事副総経理)、14年セブン‐イレブン(中国)投資有限公司(管理本部長)、21年4月より現職。

 2004年の北京出店当初から、私たちが最も重視していることの一つが、「食」の安全・安心です。これは中国政府も重視しており、消費者の関心も年々高まっています。
 食の安全・安心には、原材料はもちろん、製造工程における衛生管理の徹底が重要です。私たちは定期的にスタッフの研修を行うとともに、第三者機関による検査をさまざまな形で行っています。具体的には、国に認められた食品専門の検査機関に、年1回、商品の製造工場の検査を依頼。その結果、課題のある工場には、改善指導を行い再検査を実施しています。安全・安心な商品を提供するために妥協せず、お客様に信頼される『7-Eleven』ブランドの構築を目指しています。
 また、食の安全・安心とともに昨今、健康志向が高まっています。そこで、一部のデイリーメーカーでは、おにぎりやサンドイッチなどのカロリーとアレルゲンの表示を始めました。このように消費者の価値観の変化をとらえ、迅速に対応をすることで、新たな価値を提供しています。
 健康志向を表す象徴的な商品に日本の伝統的な食べものである「おでん」があります。おでんの具材は種類が豊富でカロリーの低いものが多く、ヘルシーと好評です。そのため昨年は塩分をカットするなど、これまで以上に健康を意識したスープに進化させました。加えて、中国では温かい料理を温かいうちに食べることが好まれます。その点でもおでんはこうした食習慣に合っており、日本のおでんが中国で新たな食文化を形成しています。

中国でのおでん販売
中国でのおでんの売筋は、日本と同じくたまご、大根、白滝。このほか、中国独自の商品として、歯応えのあるえび団子が人気。

 商品開発においても材料や配合量などの組み合わせを客観的に数値化するSEJの知見を採り入れ、お客様のし好に合わせて日々改善に努めています。おいしさと品質を追求した商品は、お客様に選んでいただける大きな理由の一つとなっており、一店舗あたりの売上が最も高いコンビニエンスストアチェーンとなっています。

24時間お届け可能なデリバリーで差別化を図る

デイリーメーカー製造のサンドイッチ
わらべや日洋様の海外食品関連子会社(北京旺洋食品有限公司)をはじめとしたデイリーメーカー製造の新鮮でおいしいサンドイッチは、7-Elevenのデリバリーが選ばれる理由の一つとなっている。

 女性の社会進出が進んでいる中国社会はデリバリーとの親和性が高く、そこにコロナ禍やスマートフォン、電子決済の普及が加わったことで一気に需要が拡大しました。現在、飲食業界全体の売上の25%をデリバリーが占めており、これまで以上に飲食店が私たちの競合となっています。
 私たちがデリバリーを始めた当初は、店舗システムとデリバリーの端末が接続していなかったため、オーダーを受けた時にすぐ在庫が確認できないなどの問題がありました。
 2022年8月にSEJの知見を採り入れたシステムを整備し、リアルタイムの在庫表示がプラットフォーム上で可能になりました。これにより店舗の作業効率が改善され、店舗とお客様の利便性が高まったことでお客様のデリバリー利用率が一気に伸びています。
 現在1店舗あたり1日平均50件以上のデリバリーの注文があり、店平均売上の約17%を占めるまでに成長しています※。デリバリーでお届けする商品の約半分は、すぐに食べられるフレッシュフードで、売上上位商品はサンドイッチ、コーヒー、おでんとなっており、わらべや日洋様の海外食品関連子会社などデイリーメーカーが製造した質の高い商品が支持されています。また、私たちと飲食店との差別化を図る最大のポイントは、24時間デリバリーに対応していることです。時間帯別のデータを見ると、多くの飲食店が閉店する夜9時以降の注文が多く、お客様にデリバリーの利便性が浸透していることがわかります。
 そして、お届けできる商品のバラエティーが豊富な点も、お客様に選ばれる理由だと認識しています。約3000品目の中から、食品だけでなく日用品まで自由に組み合わせ、注文できることも私たちの強みです。
※セブン‐イレブン北京有限公司の実績

接客のレベルアップと人財育成

接客レベル向上の取り組み
朝礼時の接客六大用語の確認や、OFCの店舗訪問によるきめ細かいチェックなどを行い、日々接客レベルを高めるとともに『7-Eleven』ブランドの価値向上に努めている。

 私たちは創業時から接客にも力を入れています。これは先に中国で展開していたイトーヨーカ堂が「信頼と誠実」の社是と「お客様第一」という考えを、言葉だけでなく行動を通じて示してきた姿勢が大きく影響しています。アンケートの結果を見ると、7-Elevenのイメージは、「品揃えが豊富」「質の高い商品」に次いで、「質の高い接客」が上位に位置しています。商品はもちろん、気持ちの良い接客を求めてご来店いただいています。
 接客のレベルを上げ、店全体をレベルアップするため日本と同様に、OFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)が店舗を訪問し、お客様の立場に立って店全体をチェックし、改善提案しています。加えて覆面調査員によるチェックも月1回実施しており、その結果はOFCやその上司の評価になります。
 人財育成については、専門性やキャリアアップ志向の高い中国社会に合わせて従業員とキャリアプランの共通認識を持ち、達成度を評価することで働きがいとやりがいにつなげています。

リアルでもネットでもお客様から最も近い存在となることを目指して

 私たちは祖業であるイトーヨーカ堂から綿々と受け継がれている「信頼と誠実」の精神を礎に、長年SEJが掲げてきたコンセプト「近くて便利」を中国の社会や文化に合わせて展開してきました。
 世界で最もEC化が進んでいる中国においては、リアルでもネットでもお客様から近い存在になることが大切です。そのために、品質の高いオリジナル商品やデジタル技術を駆使した買物のしやすさなどで、差別化を図っていきます。今後もお客様に選んでいただけるブランドを目指して、取り組みを続けてまいります。