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セブン&アイの挑戦
日本式の「便利」を今、世界基準へ

日米の強みを掛ける『7-Eleven』ブランドのさらなる
グローバル展開への挑戦

2024年2⽉

7-Eleven International LLC

加速するグローバル戦略

7-Eleven International LLC Co-CEO SEJ取締役 執行役員 海外事業本部管掌 阿部 真治 7-Eleven International LLC Co-CEO SEI取締役 執行役員 若林 健

 現在、7-Elevenは世界の20の国と地域に8万店以上の店舗を展開しています。2007年にはファストフード店を含めたチェーンストアの中で世界最大の店舗数となりました。この全世界の7-Elevenを、お客様からさらに高い評価と信頼を寄せていただけるブランドにすることが、セブン&アイ・ホールディングスのグローバル戦略の要です。
 また、私たちが2030年までに目指すグループ像「セブン‐イレブン事業を核としたグローバル成長戦略と、テクノロジーの積極活用を通じて流通革新を主導する、『食』を中心とした世界トップクラスのリテールグループ」の実現に不可欠な課題でもあります。
 このため、セブン&アイ・ホールディングスではグローバル戦略を加速。コンビニエンスストア(以下、CVS)事業に経営資源を集中し、日本や北米以外の7-Elevenについても、その商品力や店舗運営、店舗網などの強化を図り、グローバルなブランド力の育成、確立に注力しています。
 その推進役として2021年6月に設立されたのが、7-Eleven International LLC(以下、7IN)です。当社は日本のセブン‐イレブン・ジャパン(以下、SEJ)と米国の7-Eleven, Inc. (以下、SEI)の共同出資によるもので、グローバルな『7-Eleven』ブランドの確立に向け、既存国ライセンシーへの支援および新たな国や地域への進出に中心的な役割を果たしています。

3本の柱と7INの役割

 当社のグローバル戦略は、①既存展開国の支援②既存ライセンシーへの戦略的投融資③新規エリアへの進出という3本の柱で進めています。
 これまでも、SEJとSEIの両社は協調してグループのグローバル戦略の方針に沿って、各地域のライセンシー支援の強化などを進めてきました。その役割を担ってきたのが海外のエリアライセンスをマネジメントしてきた、SEJ海外事業本部とSEI国際本部です。両社はこれまでもパートナーとして緊密な連携を図ってきましたが、2021年に当社が設立されたことで、このグローバル戦略に関する組織が1本化されました。この結果、意思決定や計画推進などのプロセスが従来に比べて簡素化され、事業執行も一段とスピーディーになりました。もちろん当社がSEJやSEIと緊密に連携しながら事業を進める点は変わりません。両社が培ってきた商品、品揃え、店舗開発、インフラ構築、デジタル融合などあらゆる分野のリソースの提供を十分に受けながら、既存エリア、新規エリアを問わず必要な支援をリードしています。

7-Eleven International LLCのグローバル展開

2022年7月 ハワイに、エリアライセンシーおよび日本国内の日本デリカフーズ協同組合各社、SEJ、SEIのトップが参集し、SEVEN-ELEVEN HAWAII, INC. のバリューチェーン視察会を開催
2023年1月 イスラエル・テルアビブに新規出店、マスターフランチャイズ契約により、高品質のフレッシュフードと利便性のニーズを満たすワンストップショッピングのソリューションを提供
2023年2月 ベトナムの7-Elevenに追加投融資を決定
2023年9月 ラオス・ヴィエンチャンに新規出店、ラオス国民と観光業の盛んな同地において観光客に対して質の高い便益の提供を開始
2023年11月 7-Eleven Australiaの買収契約締結
 7-Eleven International LLCの役割

ライセンシーの意識を変えたハワイ視察会

高い人気を誇る高品質なSEHのフレッシュフード
高い人気を誇る高品質なSEHのフレッシュフード。

 2022年7月、ベトナム、インド、マレーシアのエリアライセンシーがハワイに集まり、SEVEN-ELEVEN HAWAII, INC. (以下、SEH)のバリューチェーン視察会を開催しました。ハワイでは、1989年以降わらべや日洋様の海外食品関連子会社に、フレッシュフードの開発・製造でご協力いただき、バリューチェーンを構築してきました。その製造ラインや商品の品質を実際に見て、現地の声に触れていただくことで、参加者の皆様に、バリューチェーン構築の成果を実感していただくことが大きな目的でした。
 現在20の国と地域の7-Elevenの販売力には、地域間で格差が見られます。当社では、既存ライセンシーの支援を通じてその格差を是正し、販売力の底上げを図っていくことが、グローバルなブランド力の育成と強化に不可欠であると判断しています。その要となるのが「食」、とりわけフレッシュフードの品質です。フレッシュフードの売上構成比と客数の間には密接な相関関係があります。SEHもフレッシュフードの強化を図る以前には平均日販3000ドル強、フレッシュフードの売上構成比16%だったものが、事業改革を進めた結果、現在ではフレッシュフードの構成比が34%に倍増し、平均日販は約1万2000ドルと4倍に成長しました(図2)。クオリティーの高い「食」の提供に加え、コロナ禍の中で遠くのスーパーまで買物に行かず、身近な7-Elevenで日常の買物を済ませたいというお客様ニーズが高まり、SEHではコロナ禍でも客数増となりました。
 こうした実態は、いくら口頭で説明しても、本当の納得感は得られません。ハワイでの視察会を通じて各ライセンシーの皆様に、「フレッシュフードによる差別化が、客数増を生み出している」ことを、強く実感していただけた手応えを感じました。実際に、日本デリカフーズ協同組合(以下、NDF)の主要会社の1社とアドバイザリー契約を交わし、フレッシュフードの強化に乗り出すライセンシーも現れました。お客様に支持していただけるフレッシュフードの重要性を認め、その開発や近代的な製造ラインの構築に投資を進める意思決定を下して、製造設備を含め日本で培われ、海外においても成果を上げているノウハウを積極的に導入しています。このように、既存のライセンシーの中から、市場での競争力を高めるために、フレッシュフードの強化に向けて意欲的に投資を行う姿勢が生まれています。

SEVEN-ELEVEN HAWAII, INC. の平均日販とフレッシュフードの売上推移

"ヒーロープロダクツ"がブランド力向上のカギ

スパムムスビ
1日1店舗あたり、約160個を販売するSEHの「スパムムスビ」。当初はおむすび用のお米を手で成形し、スパムを手焼きするなど手作業の生産ラインで製造されていました。

 しかし、フレッシュフードの導入によってすぐに成果が上がるわけではありません。販売力の向上に結び付けるには、お客様に支持していただける主力商品を生み出すことが重要です。たとえば、SEHの場合は「スパムムスビ」でした。
 販売力を飛躍的に高める商品を、私たちは"ヒーロープロダクツ"と呼んでいます。ヒーロープロダクツを生み出すには、現地に入り込んでお客様のニーズをきめ細かくとらえ、商品の味、鮮度などのクオリティーに反映させていくことが欠かせません。SEHの場合は、1989年以降の事業改革を進めるにあたって、社長をはじめスタッフをSEJから派遣。現地スタッフと一体となって店舗の実態、お客様ニーズなどを調査し、品揃えや売場の改革を進めました。

緊密なサポートが現地を動かす

 SEHの改革のように現地スタッフと一緒になって取り組むことが、信頼関係を醸成するうえでもきわめて重要です。現在、当社でも現地に入り込んで実態を把握し、どのような改革が必要かを見極め、現地スタッフとともに課題を一つひとつ解決していくという方式を採り入れています。このため、当社のメンバーは既存のライセンシー支援や後述する新規エリアへの出店の際には、繰り返し現地に入り、現場のスタッフとともに市場分析を行い、次回までに解決すべき課題を具体的に提示するなど、アドバイスを行っています。また、現地から戻った後、リモートのミーティングを通じて、相談などに対応し続けています。

ベンダー・メーカー様の海外プラットフォームとして

 各地域の7-Elevenでヒーロープロダクツを生み出していくには、当社やSEJ、SEIだけでなく、バリューチェーンをともにつくり上げるベンダー様、メーカー様の存在が不可欠です。このため、当社ではその発足当初から、NDFの参加会社をはじめとする日本国内のお取引先様に、「ともに海外の事業を」と呼び掛けてきました。
 これまでも中国での商品開発・製造やSEIのフレッシュフードの強化で、NDF各社のご協力を得て成果を上げてきたように、日本国内で培ってきた質の高い「食」の開発・製造のノウハウは、海外のバリューチェーン構築にも大きなポテンシャルを有しています。バリューチェーンの強化によってライセンシーの商品力を強化していくには、このようなお取引様の協力が欠かせないと確信しています。
 少子高齢社会などを背景に日本国内市場が変化する中、当社が支援する海外の国や地域へお取引先様各社の皆様に進出していただくことは、リスクを抑えながらチャンスを獲得するという点で、お取引先様にもメリットのある取り組みだと考えています。このため、多くのお取引先様には、海外の7-Elevenを一つのプラットフォームとして活用し、海外進出の際の市場の情報収集や活動拠点としてご利用いただくようおすすめしています。SEHの視察会は、海外バリューチェーン構築の実例と成果をご覧いただくことで、NDF各社の皆様にこのような海外でのビジネスについてご理解を深めていただく機会となりました。

3大重点施策を全面的に支援

戦略投資による成長 : 3大重点施策

 当社は、SEJとSEIが培ってきた強みを掛け合わせ、フルに活用してグローバル事業の成長を加速させていくことを使命としています。両社の力が結集した強みというのは、次の3つです(図3)。
①より多くのお客様が集まる立地に質の高いお店を開店する出店戦略
②お客様ニーズに合致かつ差別化された商品を開発し続ける商品力
③店舗オペレーションを強化するとともにお客様の利便性を向上するデジタル技術
 これらを既存ライセンシーへの戦略的投融資の3大重点施策として、各国で徹底的に実施していきます。とくにデジタル技術においては、お客様の利便性はもちろん、店舗運営の効率化や生産性向上など、さまざまな面で大きな役割を果たします。そこで開発されたのが、SEIの技術をベースにSEJのノウハウを掛け合わせ、双方の英知が大いに活かされたグローバルマーケット向けのITソリューション「7GT(7-Eleven Global Technology)」です(図4)。

7GT(7-Eleven Global Technology) : デジタル革新による業務改革

日米のデジタル戦略が生んだ成果

 SEIがほかに先駆けて進めてきたデジタル技術活用は、顧客サービスの向上や顧客接点の重層化と店舗運営の効率化および生産性向上の両面で、世界の7-Elevenと共有できるすぐれたリソースです。
 SEIがお客様一人ひとりとの関係を強化するサービスとして開発した「7REWARDS(セブンリワーズ)」は、米国公式アプリに組み込まれているサービスです。
 お客様一人ひとりのお気に入り商品に簡単にアクセスできるほか、好みに合った商品の推奨、特典付与などの機能を有しています。加えて、時間帯によっておすすめする商品が変わるなど、きめ細かなサービスを行っています。こうした利便性が支持され、現在、7REWARDS会員は9500万人に上っています。
 さらに、お買物をより簡単、便利にするサービスとして、さまざまな特典が入手でき、キャッシュレス決済が可能な「7-ELEVEN WALLET(セブン‐イレブンウォレット)」や、レジに並ばずにキャッシュレス決済ができる「モバイルチェックアウト」を導入しています。これは、お客様のお買物の利便性を高めるとともに、店舗ではレジ作業の負担軽減にもつながっています。
 スマホで簡単に商品のデリバリーができる「7NOW」については、米国内では1店舗あたり1日平均17件利用されており、全米で約6400店舗(2023年9月末)という実施店舗網を活かして、お近くの店舗から平均28分でお届けできる点がお客様に評価されています。
 一方、日本では、独自に開発したお届けサービス「7NOW」を展開しており、2023年秋には新たな「7NOW」アプリの配信も開始。店頭在庫と連携し、最短30分でお届けするなど、利便性を追求しています。2023年11月末時点で約8800店舗で実施しており、2024年度には全国に推奨予定です。
 デジタル技術を活用して顧客との接点を強化するサービスは、現在SEJでも積極的に展開中です。顧客への特典付与などは、セブン&アイグループ共通のサービス基盤として立ち上げた「7iD」を通じて行っており、「7iD」会員は現在およそ3000万人に達しています(2023年)。

7GTを全世界の7-Elevenの標準装備に

7NOW

 デジタル技術の活用は、店舗運営の効率化や生産性の向上にも寄与しています。前述の通り、「モバイルチェックアウト」は店舗の作業負担軽減に役立っています。ほかにも単品管理を支援する「オペレーションワークベンチ」をはじめ、日本で先行して取り組んでいるAI発注、店内調理の管理や在庫管理の支援など、さまざまな面でデジタル活用が進んでいます。
 こうした日米の成果を基盤とした、良質な顧客サービスと効率的な店舗運営の両面に寄与する7GTを既存ライセンシーに導入していきます。
 現在SEHで実証実験を行っており、バリューチェーンと同様に7GTをグローバルな支援にも活用し、将来的には全世界の7-Elevenの標準装備として、『7-Eleven』ブランドの優位性をさらに強化するツールに育てていく方針です。

ベトナムへの戦略的な投融資

ベトナム1号店の7-Eleven
ベトナム1号店の7-Elevenの様子。オープン初日は長蛇の列ができ、店内は大変な賑わいを見せました。

 2017年に店舗展開をスタートしたベトナムでは、出店スピードの加速と強固なバリューチェーンの構築が課題となっていました。この解決を図るために、2023年2月にベトナムへの戦略的投融資を決定し、ベトナムでの7-Elevenの運営を合弁事業化しました。これまで7-Elevenのエリアライセンス事業は、あくまでもライセンスビジネスと位置づけており、投資を行わずに現地での7-Eleven経営は現地ライセンシーに一任してきました。この原則に基づいて、ベトナムでの事業も現地のライセンシーの投資によって進める契約になりました。
 ライセンスビジネスは、低リスクで確実にライセンスフィーを獲得できますが、その反面、収益規模の急速な拡大などは望めません。世界的な規模で『7-Eleven』のブランド力を確立していくには、必要に応じて現地に直接投資を行う、あるいは機動的にライセンシーに融資を行うといった取り組みも必要です。こうした視点から、ライセンシーを支援する当社の設立を一つの機会として、戦略的な投融資を通じて現地ライセンシーの事業への関与を深める決断を下しました。ベトナムでは、現地のライセンシーと資本提携を行い、COO(最高執行責任者)やオペレーション、店舗開発、ファイナンスなどのマネジメントに日米のエキスパートを派遣し、体制の強化も図っています。
 既存エリアへの支援でも触れましたが、改革を加速していくには現地にスタッフが入り込んで、現地との信頼関係を築いていくことが大変重要です。合弁事業化によって、現地にSEJやSEI出身のスタッフが常駐し、市場を実際に見て判断を下していくことで、日米が培ったノウハウを適切に導入することが可能になり、店舗展開や収益成長を加速度的に改善していくことが期待できます。

オーストラリアの7-Elevenを取得へ

 2023年11月にオーストラリアの7-Eleven事業の買収を公表しました。
 2023年6月時点で、オーストラリアの7-Elevenは約750店舗を展開しており、現地で最大手のCVSです。一方でビクトリア州をはじめ、オーストラリア国内にはさらなる成長余地があり、積極的な新規出店が可能であると想定しています。
 オーストラリアは世界の人口増加スピードを上回るペースで人口増加が進んでおり、全人口の平均年齢も37歳台と日本と比べて10歳ほど若く、今後いっそうの経済成長が期待されている市場です。
 直接投資を通じて、バリューチェーンやインフラの構築を図り、セブン&アイグループのノウハウを導入します。そうして商品力をよりいっそう高め、現地のお客様ニーズに対応することで、さらなるシェア拡大を目指していきます。
 この契約については、交渉完了を2024年度の第2四半期(4~6月)を目途としており、詳細については完了後にご報告いたします。

2030年には30の国と地域に

 2023年3月現在、世界には196の国※のほかいくつかの地域があります。そのうち7-Elevenを展開しているのは20の国と地域であり、新規参入の可能なエリアが数多く広がっています。しかも、現地ニーズに密着した商品・サービス提供を基本としている7-Elevenは、新規エリアでお客様の支持を獲得し、加速度的な成長を遂げる可能性を有しています。こうした視点から、新規エリアへの進出をグローバル成長戦略の重要な柱と位置づけ、力を注いでいます。
 1927年に創業したSEIは約100年におよぶ歴史を有し、SEJも創業から半世紀にわたる歴史を重ねています。そんな中、これまで新規エリアへの進出が積極的に進められなかった背景には、①あくまでも北米や日本というそれぞれの市場でのお客様ニーズへの対応を最優先に取り組み、そのために必要なバリューチェーンなどのインフラ構築に集中してきたこと。②グローバルなライセンス事業は、出店要請があった市場を精査してビジネスの可能性を探り、エリアライセンスの契約締結に徹してきたことなどがあります。また、SEIは1990年代の経営再建を経て事業改革に集中し、2010年代以降の目覚ましい成長を実現しました。
 これらをふまえ、SEIの成長性や先進的なデジタル融合のノウハウおよびSEJが半世紀にわたって培ってきた独自のノウハウなど、日米が磨きをかけてきた優位性を、グローバルな7-Elevenの成長に活かす環境が整ってきました。さらに、グローバルビジネスを推進する当社の誕生により、新規市場への参入を加速することが可能になりました。このため、新規エリアへの進出は当社が出店候補エリアを定めてアプローチし、ライセンシーを募る方式に転換。ライセンシー候補の企業と面談し、ビジネスのインフラやリソースをはじめ、理念なども十分に相互確認しながら進めています。また、7-Elevenのビジネスモデルや優位性を生み出す基盤を深く理解していただくため、SEIのフレッシュフード製造ラインなどのバリューチェーンまでを実際に見ていただき、目指す姿の共有に努めています。

  •  外務省HP「世界と日本のデータを見る」より
7-Elevenの世界展開状況と成長エリア

候補地域の評価を通じて優先地域を選定

 当社は候補エリアについて、人口(市場規模)、大都市圏の都市化率、商圏のお客様の購買力や平均年齢、成長性などを指標としています。同時に、周辺地域まで含めて地政学リスクを精査して評価マップを作成し、優先的に出店すべき地域の選定を実施。夫婦共働き世帯で、時短や中食需要の高い地域などは成長性が期待でき、優先度が高くなります。
 現在、優先地域と考えているのは、ヨーロッパや中南米です。ヨーロッパで7-Elevenを展開している国はデンマーク、ノルウェー、スウェーデンの3カ国であり、G7に参加する先進国のイギリス、フランス、ドイツ、イタリアは、いずれも空白地域です。ここに進出するには、各国単体ではなく大都市圏ごとにとらえる方が合理的と考えています。バンコク、タイペイ、香港、マニラなどアジア圏の世界的な大都市で成果を収めた点もふまえ、ヨーロッパの市場規模などを勘案すれば、大都市圏を一つのエリアとしてリソースを集中し市場を確保していくのは現実的な戦略といえます。
 また、EU域内は経済や交通などの生活インフラが国境を越えて結び付いており、域内の人的な交流も活発です。一つの大都市圏に参入し、バリューチェーンや物流拠点を整備すれば、近接した都市圏への商品供給なども可能になります。そのためヨーロッパ市場へ参入していく際は、7-Elevenの基本出店戦略である広範エリアへの散発的出店ではなく、一定エリアに絞った出店を積み重ねていく方式が有効です。出店エリアを絞った戦略は、商品供給や物流体制の構築に有利なほか、『7-Eleven』に対する認知度を高めるうえでも効果的だと考えています。ヨーロッパでは小売店の営業時間をはじめ、さまざまな面で伝統的な商慣行があり、地域内での競争も厳しいという面があります。しかし、それらを織り込んでも『7-Eleven』の市場として、高いポテンシャルを有していると考えています。

『7-Eleven』ブランドの育成に欠かせない視点

 既存展開国の支援と新規エリアへの参入のいずれにも重要なのは、7-Elevenがお客様の立場で商品・サービスを考え、商圏のお客様ニーズに立脚した品揃えを追求することで優位性を生み出している点を、ライセンシーにご理解いただくことです。SEJは創業以来一貫してこの点に取り組み、高度成長期には当たり前だった商品の送り込み(プッシュ)という商品供給のあり方を、店舗の発注に基づいた品揃え(プル)へと転換し、根づかせてきました。そのための具体的な取り組みが個店の単品管理です。SEIでも改革の中でこれを定着させ、店舗が意思を持って品揃えを行う体制を築いてきました。
 海外では現在もプッシュ型の商品供給が行われており、単品管理や発注の重要性をなかなか理解していただけないこともあります。そうした中で当社のスタッフが現地に入り、既存エリア支援や新規エリアとの緊密なコミュニケーションを重ねていく意義は大きいと感じています。その理由は、最初は「日本だからできた」と思われていたことも支援地域のライセンシーに直接伝え、繰り返し実践して成果を上げることで、現地のライセンシーも納得して取り組んでいただけているためです。
 今後とも、ライセンシーとの接点を緊密化し、グローバルなブランド戦略を推進してまいります。