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セブン&アイの挑戦

2021年2月

セブン&アイグループが目指すニューノーマル

~新たな顧客体験価値の創出に向けて~

変化の訪れを成長機会として改革を加速する

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって社会環境は大きく変化、お客様の価値観や購買行動も大きく変わり、ニューノーマルと呼ばれる「withコロナ」を前提とした新しい生活様式が生まれました。

 この「withコロナ」の新時代に、私たちがお客様の暮らしになくてはならない存在であり続けるためには、セブン&アイグループ各社が存在意義を見直し、これまで取り組んできた改革を加速化する必要があります。同時に、セブン&アイグループではお客様や地域社会に期待以上の体験をしていただける質の高い価値を生み出し、お客様にお届けする挑戦をしています。ここでは、そうした取り組み事例をご紹介します。

業務の効率化、省力化にとどまらないDXでサービスの質向上、お客様満足の向上を目指す

デジタル活用

 買物から決済まで、先進のデジタル技術で人々の生活を便利に、円滑にする「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の推進。事例の一つが、イトーヨーカドーにおけるAIによる発注提案システムです。AIを活用した発注提案による効率化で店舗の生産性の最大化を目指し、全店に導入しました。また、ヨークベニマルでは、スキャンカートの導入により、コロナ禍において顕著になった買物時間の短縮、非接触といったお客様のニーズに対応すると同時に、レジ業務の省人化を図っています。いずれの取り組みも、生産性を高めて確保できた時間を使い、接客や売場づくりなど、人にしかできないことに注力することを目的としており、お客様との関係性をより深めていくためのデジタル化の一例です。

 一方、コロナ禍において新たな視点で取り組んでいるのがそごう・西武のオンラインによる接客です。お客様との新たなコミュニケーション手段としてDXを推進しています。

イトーヨーカドー

AIによる発注提案システムを全店導入
より魅力的な売場づくりへ

 店舗における主要業務の一つである発注は、経験によって得たノウハウによる個人差が大きな課題でした。これを平準化することを目的に、2018年春より、発注業務におけるAI(人工知能)活用に向け、一部の店舗にて実証実験を開始。その成果をふまえ、昨年9月1日、AIを使った発注提案システムを、イトーヨーカドー全136店舗に導入しました。商品の価格や、気温・降水確率などの天候与件、曜日による特性といった基本情報をAIが分析し、最適な販売予測数を提案します。発注数量の確定は発注担当者が行う仕組みで、対象となる商品は、カップ麺や菓子などの加工食品、冷凍食品、アイス、牛乳など計約8000品目に上ります。

 AIによる発注提案は、システムを導入すればすぐに効果を発揮するわけではありません。適切な発注提案ができるようにするためには、基本情報を入力し、実際に運用しながら精度を高めていく必要があります。そのため、実験開始当初は発注のノウハウを持つ担当者が、AIが提案する発注内容を精査し、修正を加える作業が必要でしたが、運用を続けるに従ってAIの精度が向上。最終的に、AIを活用することで基準・標準に合った適正数量を効率的に導き出すことが可能になっています。これにより、開店前に適正な数量を陳列することができるため、日中の補充が最低限で済み、営業時間中に品切れになる頻度が減っています。さらに、不要な在庫が減りバックルームには余裕が生まれており、今後、売場面積の拡大も検討しています。

 また、担当者が発注作業にかける時間はAI導入以前に比べて平均約3割短縮されました。発注業務にかかる時間が減り、発注数量を確定する時間が早まったことで、物流センターでの作業も前倒しで行うことが可能に。スタッフの業務負担を軽減しています。AIを使った発注提案システムの導入は、発注業務のみならず、あらゆる業務の効率化、生産性向上などの成果につながります。今後、さらにAI発注の対象商品を拡大。業務の効率化によって生み出された時間を接客や売場づくりなど、お客様満足の向上につなげていきます。

AI活用の目的を明確にし人にしかできないことに注力

AI技術活用の目的

 現在、弁当や惣菜などの製造部門でのAIによる製造数の提案のテストも進めています。基本情報をもとに、どの商品を何個つくるのが適正か、AIがその店が持つ最大ポテンシャルの製造計画を推奨値としてはじき出し、人がそれを参考に製造します。時間帯でその日の変化や与件変化をAIが確認してアラームを出す仕組みで、必要なタイミングで、必要な数量を提供することができ、販売機会ロスが削減され、弁当・寿司などの売上が2桁の伸びを示しています。

 AIの提案に従うことに抵抗を感じる従業員もいましたが、それに対して強制的に押し進めるのではなく、現場の課題を吸い上げながら、システムを有効活用できる環境づくりをしていくことが重要です。製造の担当者にとって、自分たちがつくったものを廃棄しなくてはならないのは非常に辛いもので、売れないと、確実に売れる分しかつくらなくなります。すると、品切れを起こし販売機会の損失になるなど縮小均衡につながります。それがAIの活用によって解決されることで、従業員のモチベーションアップにもつながっています。

 AIは、あくまで「人が使うもの」であり、何のためにAIを活用するのかという目的を、店舗の従業員一人ひとりが理解して初めて、AI活用による売上伸長や作業の効率化などの成果につながります。たとえば、スーパーでお客様が求めているのはでき立ての惣菜です。AIは、最適な製造個数や時間をはじき出すことはできても、でき立ての惣菜を売場に手早く並べ、お客様に「でき立てです」と、お声がけすることはできません。売場の従業員は、お客様に快適にお買物いただく環境づくりに注力していきます。

 イトーヨーカドーには、人でなければできないことがたくさんあります。そのための人員と時間を確保するために、機械にできることはできるだけ機械に任せる。それが、私たちが考えるDXです。リアル店舗の最大の強みである、お客様と売場スタッフとの関わりを大切にしながら、生産性の向上、さらには利益につなげていく。そのためのDXを進めています。

ヨークベニマル

スキャンカート導入で買物時間短縮、非接触で感染予防も

スキャンカート

購入する商品をスキャンしてカートの中に。専用タブレットではチラシ情報やレシピも閲覧可能。

 ヨークベニマルでは、福島県郡山市の片平店で新型カート「スキャンカート」の本格導入を開始しました。

 バーコードをスキャンするタブレットや重量センサーを搭載したショッピングカートで、お客様自身が商品をスキャンしながらお買物をしていきます。精算は専用レジで行い、「現金」「nanaco」「クレジットカード」が利用でき、カートにマイバッグをセットすれば袋に詰め替える作業もなく、有人レジと比べて3分の1〜2分の1の時間で買物が完了します。

 AI機能や重量センサーを活用したカートの導入は、東北や北関東の食品スーパーでは初の試みとなり、新型コロナウイルス感染症の拡大防止にも役立つとしてお客様にもご好評をいただいています。また、レジの人員を売場に配置することで品切れなどに対応しやすくなり、お客様満足の向上に貢献します。

そごう・西武

ビデオ会議システムを活用したオンライン接客で外商を拡充

 そごう・西武では、ビデオ会議システムを活用したオンラインによる接客やライブコマースを開始、ECサイトでのサービスを拡充しています。

 そごう・西武における外商事業(お得意様)は、そごう・西武の店舗売上の約25%を占める大きな柱ですが、コロナ禍でお客様との対面によるコミュニケーションが取りにくいことが課題となっていました。そこで、昨年7月下旬、外商顧客向けにビデオ会議システムを活用した店外催事を実施したところ、お客様からご好評をいただきました。

 課題となったのは、顧客情報などのセキュリティ確保と、商品の詳細をわかりやすくお見せできるかということでした。大きさの違いや、素材の質感、色合い、光沢などをよりリアルに映し出すための技術を学ぶとともに、宝飾品や腕時計は細部を映し出すための接写用のボックスを用意するなど、準備に2カ月を費やしました。

 会場とお客様のご自宅、店舗などを結ぶ形で開催。広島店ではお客様を店舗にお招きし、店長が東京の会場からご挨拶するといった、新たな趣向も取り入れました。4日間の開催で、想定を上回る多くのお客様にご成約いただきました。その後の催事でも、お客様のことをよく知る外商の担当者が、お客様の嗜好や興味の度合いを考慮しながら、ご紹介する商品の数や順番を検討、販売員と連携して商品説明の仕方を工夫するなど、対面による接客と同等以上のご提案ができる環境をつくり、売上は好調に推移しています。

 さらに、同年8月にはコスメ情報サイト「キレイデパート」をオープン。百貨店ならではの「ブランド力」を活かしたサイト構成で、化粧品だけにとどまらず、“キレイになりたい”という関心事をテーマに、販売員による専門的なアドバイスを紹介する動画など、eコマースならではのコンテンツの充実を図っています。

 また、お客様との双方向のコミュニケーションが可能な点に着目し、毎月最終金曜日にライブコマースを実施。店頭でのイベントの集客数が1回に数十人であるのに対し、ライブコマースの視聴者数は2000〜3000人。アーカイブの視聴も多く、手応えを感じた各ブランドが、積極的に世界・日本のトップレベルのメイクアップアーティストを 招聘(しょうへい) 。ネットで視聴できる気軽さから、これまでそごう・西武をご利用ではなかったお客様にもe.デパートでご購入いただくなど、新たな顧客獲得にもつながっています。

 外商と「キレイデパート」、アプローチの方法は異なりますが、お客様との新たなコミュニケーション手段の一つとして、積極的に取り組んでいきます。

イベント会場から、販売員が商品説明をします。商品を美しく見せるための照明にもこだわります。

お客様はご自宅のパソコンからご参加。外商の担当者がお伺いし、説明をフォローしたりお客様のご要望を会場に伝えます。

生活シーンの変化に合わせて商品を見直し、売場を刷新

ワンストップニーズへの対応

 コロナ禍により、ワンストップショッピングのニーズがさらに高まっています。必要なものが1カ所でお買い求めいただけるだけではなく、「ニューノーマル」にふさわしい商品や環境に配慮した商品を提案することで、お客様満足の向上を目指しています。

イトーヨーカドー

新たな価値、新たなニーズに応える『新しい生活様式店舗』を提案

イトーヨーカドーたまプラーザ店

 長引くコロナ禍において、お客様の消費行動は大きく変化しています。「できるだけ短時間で買物を済ませたい」「複数の専門店を回るより、1カ所で必要なものを揃えたい」、このような社会背景からイトーヨーカドーに求められる役割も変化しています。イトーヨーカドーたまプラーザ店は昨年9月、衣料・住居のフロアを改装し、『新しい生活様式店舗』としてリニューアルオープンしました。

 新しい生活様式に対応したフロアをテーマに、お客様の生活シーンの変化に合わせてフロア全体のレイアウトを刷新。特に、昨今の環境問題への関心・意識の高まりに対応してイトーヨーカドー過去最大の品揃えとなる、約1800アイテムの地球環境に配慮したエコ素材を使用した商品を展開しています。

 衛生面においては、日常使いやファッション性を持った約400アイテム以上のマスクと関連グッズを集めた「マスクの森」や、抗ウイルス関連の衣類を集約した売場を新たに設置。また、コロナ禍において需要が増した「イエナカ生活」を快適にするキッチン雑貨、寝具、健康グッズを集約した売場も開設しました。

 業務の効率化に向けては、リニューアルに合わせて背高の什器を導入、従来の約1.5倍の陳列量となり、商品のアピールも効果的に行えるようになったことに加え、在庫確認のためにバックルームに戻る回数が減少。また、従来分散していたレジカウンターを1カ所に集約することで生産性の向上を図っています。今後もお客様の声を聞き、スピードを持って売場を改善し続けていくと同時に、たまプラーザ店をベースに、商圏やエリアの特性に合った『新しい生活様式店舗』の展開を進めていきます。

ラストワンマイル

 社会環境の変化の中で、毎日の買物に不便を感じる方のニーズにお応えすべく、移動販売車「イトーヨーカドー とくし丸」の運用、セブン‐イレブンの商品をお近くのお店から自宅や職場へお届けする「セブン‐イレブン ネットコンビニ」の展開を進めています。混雑を回避できる買物スタイルは、今後さらにお客様ニーズの増加が見込まれます。今回は「イトーヨーカドー とくし丸」についてご紹介します。

イトーヨーカドー

必要とされるお客様のもとへ ラストワンマイルを担う「とくし丸」

2022年には首都圏、関西を中心に、100台以上の稼働を見込んでいます。

 高齢化や単身世帯の増加、中小小売店舗の減少といった社会環境の変化を背景に、日常の買物にお困りの方が増えています。こうしたニーズに対応すべく、イトーヨーカドーは昨年4月30日より、移動販売車「イトーヨーカドー とくし丸」の運用を開始しました。冷蔵機能を備えた軽車両に加工食品や生鮮食品、日用品など約400品目1200アイテムを積載、お客様の玄関先まで訪問し販売します。ネットスーパーは売場の担当者がプロの目で商品を選定してお届けするのに対し、とくし丸ではお客様が実際に手に取って商品をご覧いただけることも好評をいただいており、2020年12月現在、14店舗16台が稼働しています。

 また、ご高齢のお客様の見守りの役割を果たすことができるなど、地域の安全・安心にも貢献しています。

 今後もイトーヨーカドーならではの品揃えを活かして、地域やお客様のニーズに対応し、随時エリアを拡大していく予定です。