CSR

トップメッセージ

セブン&アイグループのCSRを考える

社外取締役であり、経営戦略がご専門で 世界のCSRの動向にも造詣の深いスコット・トレバー・デイヴィス氏とグループ代表・鈴木敏文が、セブン&アイグループのCSRについて語り合いました。


セブン&アイHLDGS. CEO兼会長 鈴木 敏文
対談

スコット・トレバー・デイヴィス氏
立教大学経営学部国際経営学科教授。 企業の社会的責任について研究。 2004年5月〜2006年5月(株)イトーヨーカ堂社外取締役。 2005年9月(株)セブン&アイ・ホールディングス社外取締役(現任)。 経営管理・CSRの見地から取締役会の意思決定の妥当性・適正性を 確保するための助言・提言を行っている。


立教大学経営学部国際経営学科教授スコット・トレバー・デイヴィス氏

セブン&アイグループのCSR

デイヴィス(文中敬称略、以下同)  今年発行予定のISO26000※1では、SR(社会的責任)を「健康および社会の繁栄を含む持続可能な発展への貢献」「ステークホルダーの期待への配慮」と定義しています。 持株会社設立当初から、社外取締役としてセブン&アイの経営を見てきて感じることは、セブン&アイの経営そのものに、自然な形でCSR(企業の社会的責任)が組み込まれてきているのではないのでしょうか。

鈴木  CSRという概念がまだない頃から、当グループでは創業以来「お客様・お取引先・株主・地域社会・社員に信頼される、誠実な企業でありたい」と社是に掲げ、誠実な経営、言い換えると「ステークホルダーの立場に立った経営」を心がけてきました。「ステークホルダーの立場に立った経営」とは、我々が商売をするさいに忘れてはならない視点である「お客様の立場で考える」ということと同じ考え方です。わかりやすく言うと、たとえ売り手にとって不都合で不合理なことであっても、買い手にとって好都合で満足につながることであれば、それを実行することです。このことがセブン&アイの経営の基本であり、今後も変わりません。

デイヴィス  「お客様の立場に立った経営」をされてきたことはよくわかります。日本初の本格的なコンビニエンスストア「セブン-イレブン」の創業、それまでは家庭の味とされていたおにぎりや弁当などの日本型ファストフードの開発、セブン銀行の設立など、独自の新しい取り組みをされてきました。どうしてお客様や社会のニーズを的確に把握できたのでしょうか。

鈴木  私はその都度「何か新しいことをやらなければならない」などと気負って考えていたわけではありません。いずれも「この状況ではこうあるのが当然だ」という自分なりの発想から生まれた結果です。

デイヴィス  必然ということですね。
 ほかにお客様の立場に立った商品や、社会のニーズに合った商品・サービスにはどのようなものがありますか。

鈴木  食品なら、お客様のニーズは、安全・安心は当然として、健康への配慮や環境への配慮など、日々変化しています。セブン-イレブンでは2001年から米飯類、サンドイッチ、惣菜、調理麺など、全てのデイリー商品から保存料、合成着色料を完全排除しました。その他には、リン酸塩やトランス脂肪酸を低減させてきました。
 またイトーヨーカドーでは、店舗で発生した食品残さを回収して堆肥化し、その堆肥で育てた野菜を再び店舗で販売しています。

デイヴィス  昨今のSRの議論の中で、重視されている視点の1つが、サプライチェーンマネジメントです。事業を継続するうえで関係する川上から川下までの全てのステークホルダーに対して、配慮することが求められています。

鈴木  メーカーや物流業者、さらに出店地域やお客様といったサプライチェーンの中での結節点としての我々小売業が、チェーンにおける社会的課題に応え、環境負荷の低減などに主体的に取り組むことが事業を継続するうえで非常に重要であると認識しています。
 ところで、今日コンビ二エンスストアは、「24時間いつでも開いている便利さ」に加えて、地産地消商品の開発や販売、住民票の発行などの地域行政との連携を進めています。さらに防災・防犯の拠点となるなど、お客様の生活そのものをご支援する、地域に密着した「生活の基盤」としての役割へと進化しています。
 イトーヨーカドーでは高齢者や妊婦の方など、買物弱者※2の方を含め、店舗にご来店いただかなくてもインターネットでご注文いただければ、商品をお届けするネットスーパー事業を展開しています。

デイヴィス そうしたお客様や社会の変化への対応を私は「社会感受性」と呼んでいます。「社会感受性」とは、「社会的課題をビジネスに置き換えること」です。これにより活動が一過性のものでなく、持続可能な形になる。CSRを経営に落とし込むのではなく、CSRそのものが経営となっていることを指します。

地球温暖化問題への対応

デイヴィス 地球温暖化が世界的に喫緊の課題となっていますが、セブン&アイはどのように考えていますか。

鈴木 国内では、商品開発や販売と同じように、省エネ施策の効果や店舗のマネジメントについて、グループ各社で情報共有しています。他にも、セブン-イレブンのライセンシーが一堂に会す「インターナショナル・ライセンシー・サミット」では、日本の最新の省エネ技術を世界のライセンシーと共有するなど、世界規模での低炭素化に取り組んでいます。
 こうした努力をする一方で、日本国内での大幅なCO2排出量の削減が難しいのも事実です。そこで当社は、ITTO※3と「RE DD※4プロジェクト」を2010年から開始しました。これにより国内グループ会社の1年間のCO2排出量の約50%にあたる120万トンのCO2の排出抑制効果(炭素蓄積量の維持・管理)が期待できます。費用対効果で優位性がある熱帯林の保全活動によるCO2の排出量抑制に貢献していきます。

従業員のやる気を引き出す

デイヴィス セブン&アイグループの従業員数は約14万人です。企業にとって、人材が全てにおいてキー(鍵)になると思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

鈴木 まさにそうですね。人にとって大切なのは、仕事のやりがいや働きがいがあるかどうかです。給料の高い会社には社員が定着するかと言えば、必ずしもそうではなく、逆の場合もあります。要は自分の存在価値を実感できるかどうかです。人は本来、善意の生き物です。人は「こうありたい」、「ああなりたい」と思っている時のほうが心が安定し、仕事においても積極的に何かを求めようとします。その心境こそが、生きる充実感ということです。自分を啓発する力は誰もが秘めています。それを最大限に引き出すきっかけや仕掛けや場があるかどうかが重要でしょう。

デイヴィス 女性の活用についてはどうでしょうか。

鈴木 我々グループは小売業ですから、当然お客様の多くが女性です。そのため商品開発も接客も、女性の力、女性の活躍がとても重要です。
 制度については、社員とパートタイマーといった属性とともに、独身、既婚、子育て中、介護、さらには地元で働きたいなど、それぞれが希望する生き方の多様性も考慮し、女性が働きやすい職場環境をつくることに努めています。
 女性にのびのび活躍してもらうためには、「女性を育てる環境づくり」が重要であると同時に、女性自身の意識改革も重要です。この2つがあって初めて女性にもっと活躍してもらうことができます。これから男女を問わず能力のある人がのびのび働ける場を拡大していくことが、セブン&アイの使命でもあると考えています。
 企業は社員が希望するライフスタイルを実現する働き方を構築できなければ、社員の勤労意欲を高い水準で維持することはできません。

今後の方向性について

デイヴィス 最後に、変化の激しい時代ですが、今後セブン&アイはどんな挑戦をしていくのでしょうか。

鈴木 やはり今後もお客様をはじめステークホルダーの方たちの立場に立った経営を徹底し、自ら変革し続け、新しい商品の開発と新しいサービスの提供に挑戦し続けていきます。

デイヴィス それでは社外取締役として、これからもセブン&アイの動向を見守っていきたいと思います。



※1 : あらゆる組織を対象とした社会的責任に関する世界初の国際規格
※2 : 食料品等の日常の買物が困難な状況におかれている人々
※3 : 熱帯林に関する問題を扱う国連の条約機関
※4 : 途上国の森林減少・森林劣化に由来する温室効果ガスの排出削減