ホーム サステナビリティ 明日にいいこと。つなげる、つづける。 「7つの重点課題」活動レポート 人と自然と社会を深くつなげるセブン‐イレブン記念財団【高尾の森自然学校編】

「7つの重点課題」活動レポート

2021.9.3

  • 課題6

人と自然と社会を深くつなげるセブン‐イレブン記念財団【高尾の森自然学校編】

東京ドーム約六つ分の広大な敷地において、自然環境の保全と環境体験学習を展開する『高尾の森自然学校』。子どもはもちろん、大人も参加可能で、さまざまな活動で自然の大切さを再発見することができます。一般財団法人セブン‐イレブン記念財団(以下セブン‐イレブン記念財団)の概要を取材したライター吉田が、魅力あふれる『高尾の森自然学校』を訪れて取材を実施しました。

Chapter 1

東京都と協働で地域の自然を次世代に継承

セブン‐イレブン店内のレジの側に設置された募金箱に寄せられた募金と、(株)セブン‐イレブン・ジャパン、企業、団体、個人の皆様の寄付金をもとに、環境をテーマに社会貢献活動に取り組んでいるセブン‐イレブン記念財団。その取り組みは多岐にわたりますが、他の団体ではあまり見られない事例の一つに「自然学校」の運営があります。

『高尾の森自然学校』の運営スタッフの方々。左から後藤さん、石井さん、梶浦さん、小野さん。

自然学校とは、子どもたちの心身の成長促進を目的として19世紀にアメリカで始まった少年少女のための自然体験活動のことで、場所、指導者、プログラムを通年提供できる環境にあり、それらを運営するシステムを確立していることが条件となっています。

セブン‐イレブン記念財団では、『九重ふるさと自然学校』と『高尾の森自然学校』を運営していますが、今回は『高尾の森自然学校』に焦点を当ててご紹介します。

『高尾の森自然学校』が開校したのは、2015年4月。敷地である東京都八王子市川町地区は、市街化区域に指定されているエリアでした。セブン‐イレブン記念財団は、同地の豊かな自然に着目し、東京近郊での自然学校の設立を模索。2014年6月には、東京都と「民間主体との協働による緑地保全モデル事業に関する協定」を締結し、拠点の整備をスタートしました。

東京都の事前調査により、八王子市川町地区には豊かな自然が残っていることが判明した。

「開校に向けて草刈りや木のつる切りを行う際には、たくさんのボランティアの方たちがお手伝いをしてくださいました。『高尾の森自然学校』は、何も手が入っていないところから手作りで始まり、今も地域の方に支えられながら運営を続けています」そう語るのは、『高尾の森自然学校』の代表を務める梶浦正人さん。現地に行ってまず目に入るのが管理棟です。この管理棟は環境に配慮して『宮城セブンの森』の間伐材のみを使用しています。建物内は木の香りが心地よく、リラックスして過ごせます。

スタッフの小野弘人さんによると、「ウッドデッキなど、風雨に晒されて腐食した箇所もみんなで協力して補修しています」とのこと。『高尾の森自然学校』は、人と人、人と自然、人と社会を深くつなげる役割を果たしていると言えるでしょう。

『高尾の森自然学校』 代表 梶浦 正人さん
Chapter 2

人と自然、自然環境と地域社会の共存・共栄を自然から学ぶ五つの活動

「人と自然、自然環境と地域社会の共存・共栄を自然から学ぶ」ことを基本理念とする同校の活動内容は、大きく五つに分けられます。『森林の保護・保全』『希少動植物の保護・保全』『環境体験学習』『森林整備者育成』『ネットワークの構築』です。

『森林の保護・保全』では、来訪者により親しんでもらえるよう、新規散策路の開拓、沢の源流やビオトープの整備、案内板や休憩場所の設置といった活動を継続して実施。スタッフの後藤さんによると、「これまでに、敷地全体の26.5haのうち、保全ゾーンを除いた面積の48%あたる8.5haを整備しました」とのこと。

『高尾の森自然学校』 小野 弘人さん(左)、後藤 章さん(右)

また、間伐や下刈りによってコナラが群生する人工林の環境を整えることで、CO2吸収量の増加に貢献。伐採した木の循環利用も推進しており、管理棟の薪ストーブや炭焼き、地域の中学校の授業で使うほかに、今後は他の教育機関や都立施設での活用を検討しているそうです。

焼杉の外壁を使った管理棟(左)、薪ストーブを使うなど、間伐に使った木々を循環させている(右)。

『森林の整備』は、動植物の保全・保護にも良い影響をもたらします。梶浦さんは、「間伐をして森林に光が差し込むようになると、地表にあるタネが芽吹き、植物が育ちやすくなります。その数は2018年に160種類でしたが、2020年には185種類に増えました。動物も同じで、整備が進めば進むほどその数は増えていて、最近のモニタリング調査では新たにキツネやノウサギを確認することができました」と、話します。

豊かな自然と、そこで暮らす生物たちの憩いの場所になることを目指す。

実際に散策路を歩いてみると、美しい自然を維持するための努力や工夫がそこかしこで感じられます。柵やスロープも設置されており、安全への配慮も行き届いています。専門知識を有するスタッフおよびボランティアのみなさんの活動が、森を活性化しているようです。

『環境体験学習』では、自然を楽しむためのさまざまなプログラムを用意。長期的に取り組むプログラムとしては、田植えから稲刈りまでを行い、収穫したお米でおにぎりやお餅を作る「田んぼ de まなぼ!」、森から海に至るまでの水の流れを追う「森里川海」などを実施。一日体験のプログラムも、「ものづくりワークショップ」「高尾の森の動物しらべ」など盛りだくさんの内容です。また、地域の小学校に出向き、SDGsの授業を行うことも検討しています。

田植えや昆虫、野鳥の観察会など、さまざまな参加型プログラムが用意されている。

参加者の反応は大変好評で、子どもたちからは「図鑑でしか見たことのない生きものを見れた」「自然の材料を使った遊具で遊んで楽しかった」、保護者からも「都心では難しい自然体験ができて有意義だった」という声が届いているそうです。

地域の方たちの関心も高く、「『もっと日常的に関わりたい』という要望が多いため、蕎麦畑の開墾も始めました。いずれは収穫した実で年越し蕎麦を打ちたいです。自ら耕し、タネを撒き、収穫して食べるという一連の流れは、日常では味わえない充実感や達成感をもたらしてくれます」と、梶浦さんは話します。今後は、蕎麦以外の作物を育てるプログラムも増やしていく予定です。

プログラム「田んぼdeまなぼ」の様子。

体験学習への参加者は、リピーター、新規参加者ともに年々増え続けています。あるイベントでは、15名の枠に100名以上の応募がありました。体験学習は、コロナ禍における自然回帰でより注目を集めていますが、大々的に参加者を募れないのが現状です。そこでオンラインプログラムを新しく考案し、里山の魅力を一般参加者に発見してもらうためのオンライン観察会や、自然素材を作った炭づくり、草木染めなどのクラフトワークの動画配信もスタートしました。

『森林整備者育成』では、自然環境を残していくための知恵やノウハウを、未来を担う次世代に継承。ボランティアリーダーの育成に加え、ジュニアボランティアを募集し、子どもたちが自ら考え行動する力を養っています。これらの活動は、行政、教育機関、NPO法人、市民団体、企業などの協働、つまりはネットワークの構築によって実現できています。

ボランティアやNPOによる施設内の整備の様子。
Chapter 3

自然の循環・共存を意識して豊かな未来へ

『高尾の森自然学校』を開校・運営するにあたり、大いに参考になったのが大分県玖珠郡九重町飯田はんだ高原にある『九重ふるさと自然学校』の活動です。

広大な飯田高原に広がる九重ふるさと自然学校があるエリア。

『九重ふるさと自然学校』の開校は2007年4月。飯田はんだ高原に広がる草原と田んぼを中心とした美しい景色、そこに息づく動植物を守り、自然とともに暮らす知恵を次世代につなげることを目指しています。コロナ禍となった現在は両校による連携をより強化しており、両校の季節感あふれる自然の様子をふんだんに盛り込んだ動画「高尾・九重 140秒のエコツアー」の配信や、互いの地域で採集した生きものを紹介するといった試みにもチャレンジ。より深い学びを提供しています。

『九重ふるさと自然学校』では、飯田高原に広がる田んぼで、田植え体験などのプログラムを実施しています。

また、『高尾の森自然学校』の取り組みの中には、自然学校のフィールドを出て行っているケースもあります。たとえば、先述した水の旅を観察する体験プログラム「森里川海」は、多摩川の中から下流域での生きものを観察したり、水のゴール地点・大森の砂浜ではマイクロプラスチックの採集なども行う予定です。参加者にとっては水や生きものの循環についての知見を得るだけでなく、環境問題についても自分たちに何ができるのかを考える絶好の機会になります。

高尾の森自然学校での「最初の一滴採取」(左)と、「生きものしらべ」の模様(右)

「海で魚が獲れるのは、森の栄養分が川を通って海に流れ込むからです。それゆえ、森の整備は非常に大切。気仙沼の森づくりで有名な合言葉『森は海の恋人』とは、そういう意味を持っています。『高尾の森自然学校』の活動を通じて森や海との共存を意識し、昔より薄れてしまった自然を大切にする思いを、もう一度広めていきたいです」

セブン‐イレブン記念財団 事務局長 森永 仁さん

そう語るのは、セブン‐イレブン記念財団の事務局長を務める森永仁さん。今後も『高尾の森自然学校』の活動のすべてにおいて進化を目指しており、「スタッフそれぞれの個性を踏まえ、他の施設にできないプログラムを実施していきたいと思っています。自然環境における教育の充実と、地域の方とのつながりの強化を目指していきたいですね」と、意欲的に語ります。

今回は取材で訪れましたが、緑あふれる景色を眺めながら森を散策していると、次第に気持ちが晴れ晴れとしていくのが分かりました。豊かな自然を維持するために、スタッフやボランティアのみなさんがどのような活動をしているのかを学べ、非常に勉強になりました。『高尾の森自然学校』は、管理棟で受付を済ませればどなたでも自由に来館でき、森の中の散策路や遊具で自由に遊ぶこともできます。 また、散策路内は季節によってさまざまな生きものや植物を観察することができます。個人的にも再訪したくなる、じつに魅力的な施設です。

【連絡先】
「高尾の森自然学校」
(運営: 一般財団法人セブン‐イレブン記念財団)
東京都八王子市川町705-1
Tel042-673-3844
E-mail takao-sizengakkou@7midori.org
URL https://www.7midori.org/takao/
開館時間:夏季(3月~9月)9:30~17:00 冬季(10月~2月)9:30~16:00
定休日:火曜日、年末年始、夏季休館有り
※新型コロナウイルスの影響により、営業形態が通常とは異なる場合があります

【アクセス】

● 車をご利用の場合
圏央道「八王子西IC」外回り出口より約8分
圏央道「高尾山IC」出口より約15分
無料駐車場(15台)あります。

● 電車・バスをご利用の場合
※バスは本数が少ないため時刻表を確認してください
高尾駅から
「高尾駅」北口 1番バス停

●「高尾の森わくわくビレッジ」行
(西東京バス) 約14分、終点(わくわくビレッジの玄関前)にて下車、徒歩12分

●「グリーンタウン高尾」行
(西東京バス)約14分、「グリーンタウン高尾」下車、徒歩12分
西八王子駅から
「西八王子」北口4番バス停

●「グリーンタウン高尾」行き(西東京バス)約25分、「城山中入口」下車、徒歩5分

Writer:吉田勉
Photographer:山北茜
セブン‐イレブン記念財団
高尾の森自然学校

左から
後藤 章(リーダー)
石井 麻美子
梶浦 正人(代表)
小野 弘人

セブン‐イレブン記念財団
事務局長

森永 仁

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