

鈴木 今は、消費飽和の時代で、お客様はつねに今までにないものを求めています。ですから、そうしたイベントを積極的にどんどん仕掛けることも重要ですね。私はよく言っているのですが、今や景気や経済は、経済学ではなく心理学で考える時代です。セブン‐イレブンでも、時間帯によってお客様が変化していますから、それに合わせてゴンドラのどの段にどの商品を陳列するのかまで時間帯ごとに変えています。
鎌田 エキナカの場合は、シーズンモチベーションに合わせて変化させていくことがお客様に喜ばれています。今の売れ筋商品をおすすめしているとか、一番の新商品を紹介しているといったメッセージが、明確にお客様に伝わる売場づくりに取り組んでいます。また、2週間から1カ月単位で入れ替わるイベントの売場を展開し、売場に変化をつけています。
鈴木 お客様に飽きられないように売場を変えていく時、重視しているのはどういう点ですか。
鎌田 単に新しいものというより、今のお客様のニーズから見て、抜けている部分は何か、「エキュート」に何が今必要かということを考えています。それをお取引先にも共感をもって理解していただくためには、情報をとることが何よりも重要だと考えています。
鈴木 私も、現在のビジネスでは情報がもっとも重要だと考えています。何もないところから仕事を立ち上げる時は、よく言われるように「人・物・金」が必要ですが、ある程度「人・物・金」が揃ってしまうと、仕事が内向きになって、マンネリ化しがちです。それを打ち破るには鮮度のいい情報が必要です。マンネリ化を防いで、人材を育てていくにも情報が必要ですし、また、今は情報があれば自ずとお金も調達できます。
鎌田 情報をとって、お客様の変化に合わせてどんどん変えていくことが、これからますます必要になりますね。
鈴木 最近ではコンビニが飽和しているという声をよく聞きますが、私はまったくそうは思っていません。そもそも、飽和とは同質のものが高密度で展開していることです。しかし、現状では、コンビニの数が増えたといっても、それぞれのお店の質はまったく異なっています。質の劣る店が淘汰されていくだけで、飽和しているわけではありません。それなのに売上げが落ちたことを飽和のせいにしてしまっては、それ以上の発展が望めません。売上げが落ちたとしたら、それはお客様の支持を得られなくなった結果で、世の中の変化に対応できていないと考えなければいけないのです。
鎌田 そのお考えはセブン‐イレブンを始められた時と同じですね。大型店が進出したら小規模の小売店は、もう生き延びることができないと考えたら、それ以上の発展はなかったのでしょう。しかし、世の中の変化に合わせて商売の仕方を変えていけば、小さなお店でもまだ成長できると考えてセブン‐イレブンを始められたわけですね。現状がすべてだと考えたらそれ以上の発展は望めませんが、自ら変わっていこうと考えれば、無限に可能性が広がるのですね。
鈴木 おっしゃる通り、無限に発展できると思います。現在のように情報技術が発展し、インターネットをはじめとした情報網が飛躍的に発達した時代には、小売業も当然、リアルな店舗だけでなくネットなどバーチャルな世界との融合を図っていく必要があります。私どもも、日本テレビさんと共同で「日テレ7」という会社を設立して、この春から放送やネットで情報を提供し、店舗やネット通販で商品を販売するといった取り組みを進めていきます。昨年、実験的にこうした取り組みを実施したところ、お客様は予想以上に利用してくださいました。
高度情報化時代に合わせた新しい小売業のあり方を追求していけば、まだ無限に可能性があるのです。コンビニやスーパーの既存のお店も、単に物を並べて売るだけではなく、これからは、ネットなどと連携することで、商品販売の中継基地やプラットフォームに変わっていくでしょう。
鎌田 コンビニの役割は、物販という枠にとどまらず、夜間営業のおかげで街の治安もよくなるというように、社会的なインフラにもなっていますね。
鈴木 コンビニの夜間営業について、最近は環境問題から24時間営業を見直すべきという議論も起こっています。しかし、24時間営業というのは、お客様にたいへん大きな安心感を提供しています。これは私も実際に確かめたことですが、夜の11時までの営業を24時間営業に変えると、夜間の売上げと同じくらい昼間の売上げが伸びるのです。24時間営業によってお店に対するお客様の安心感や好感度を高める結果だと考えています。
省エネルギーという面でも、夜間の営業をやめて節約できるのは照明にかかる電力くらいです。冷蔵庫などは閉店している間も稼動しますし、開店前と閉店後の前後各1時間くらいは準備や後かたづけにかかりますから、実際に照明を落とせる時間は限られます。また、セブン‐イレブンでは、お店の省電力化を、早い時期から進めてきましたから、今ではかなり省エネ化が進んでいます。そうしたことをトータルに判断すると、社会的にみても24時間営業をやめるメリットよりもデメリットの方がずっと大きいと言わざるを得ません。
鎌田 そのような判断を下す際も、既成概念にとらわれずに、心理面をはじめ、ものごとを総合的にとらえる視点が大切ですね。先ほども申し上げたように駅を考える場合も、いろいろな既成概念がありました。しかし、私はつねにお客様の立場に立って、既成概念にとらわれずに、刻一刻と変わっていくお客様のニーズに対応していくことが重要だと考えています。
鈴木 まったく同感です。既成概念を打ち破ることで、商売は無限に広がっていきます。この点を社員に認識してもらうために、私はブレイクスルー思考といった言葉で、つねに過去にとらわれない仕事の仕方を指導し続けています。今日は、鎌田さんに新しいチャレンジのお話をうかがうことができ、私どもがこれから挑戦を続けていくうえで、たいへん参考になりました。お忙しい中、ありがとうございました。